あの頃に波乗りをしていた人は、いま何をしているんでしょうか?
千葉の街にまだマリン・スタジアムもなければ、ロッテもいなかった時代です。フクダ電子アリーナなんか、工場か倉庫だった時代です。
ショートボードは存在せず、ロングボードは父親の月給と同じ金額でした。
それは、とても、おねだりして買ってもらえるような物ではなく、そもそも、どこに行ったらそれが変えるのかさえ知りませんでした。
一人で海に行こうにも車はなく、近所にUコンをやっているお兄さんはいても、サーフィンをしているかっこい兄貴はいませんでした。
「サーフィン」というものは、どこか遠い豊かな国の若者がするスポーツ。決して、一ドル360円の国の少年少女が気軽に楽しむことはできないスポーツでした。
要するに、「サーフィン」という<言葉>はあっても、実態は<夢とあこがれ>という手に取ってさわることができないものだったのです。
そんな時代に、その映画は公開されました。
「ビッグ・ウェンズデー」、・・・・。
この言葉の響き。そして、あの静かな、マーチ風のテーマソング。そして、あの波。
いつかは手に入れてみたいな、と思いながら、
「でも、そんなのは、無理なんだろうな」
と、半ばあきらめていた生き方。
この映画を、まだご覧になっていない方がいたら、「ぜひ見てください」とお勧めします。
すでに何度もご覧になっている方は、おわかりだと思います。
嫌なことがあったとき、「自分は、今、ここで、なにをしているんだろう」という思いに沈むとき、
そして、
「ああ今日もフラットで、高速代が無駄だった」と、セブンイレブンの駐車場に転がる空き缶をけとばしたくなるとき、
そんなときに、自分を助けてくれる映画が「ビッグ・ウェンズデー」。
あの映画は、カリフォルニアのコンセプシオン岬が舞台だといわれていますが、そんなことはどうでもいい。
あの三人組が、遊び、愛し、戦いを挑む波は、九十九里だって、仙台新港だって、内灘だっていいはずです。
あなたが地元の砂浜を歩くとき、ビッグ・ウェンズデーに三人が向かっていく時のあのメロディーを口ずさめば、そこはもうカリフォルニア。
その時と場所は、永遠なんです。
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