いい波を求めて,ただひたすら旅をする。
なんて、女の子には無理だろうと思われますか?
そうでもないんですよね。メキシコの、とある海岸で、そんな女性サーファー二人に出くわしたことがあります。
その海岸は、まあ、いわゆる、シークレット・スポットで、地元のサーファー以外は、ほとんど見かけない場所でした。
とにかくアクセスが悪く、なんとか最寄りの村までは車で行けるのですが、そこには泊まる宿などなく、旅するサーファーがその波の噂を聞いても、なかなか、そこに行こうと決断できないブレイクなんです。
とにかく、村はずれの家の軒先まで車で行って、そこからは歩きます。
丘を越え、川を横切り、肝心のスポットまで、三十分は軽くかかってしまいます。
その海岸に、あり日のこと、テントが張られているのを見かけました。
「すごいなあ、ここで寝泊まりしているのか」
と驚いたのですが、
そのテントから出てきたのが女性二人組だったので、また驚き。
話を聞くと、彼女たちは、カナダのブリティッシュ・コロンビアから来たサーファーで、バハ・カリフォルニアから、メキシコの有名ブレイクをライドしながら、南下してきて、プエルトエスコンディードでこのブレイクの噂を聞いたので、来てみたのだそうです。
「テントを張って、何日になるんですか?」
「まだ、三日目。ここの波は、楽しいでしょ。だから、もうちょっといようと思うの」
「でも、浜じゃ、水がないじゃないですか? 食べ物とかどうなさってるんですか?」
「ときどき、ここに、子供たちが遊びにくるでしょ。あの子たちに頼んで、村の店から買ってきてもらうの。食べ物もいっしょにね。子供たちには、いいお小遣い稼ぎになるし、私たちは、とっても助かってるわ」
そう言って、彼女たちは、大きな10リットル容器を見せて微笑みました。
「こんな所でキャンプして、怖くないですか?」
「ううん。怖いって言ったら、街のほうが怖いもの」
海岸に一番近い家の女の子たちが遊びにきたので、彼女たちは立ち上がり、近くの川で水を浴びると、シャンプーで髪を洗いはじめました。
こういうのを、「どうにもおさえられない冒険の気持ち」とでも呼べばいいのでしょうか?
二十一世紀の魂のサーファーたちは、女性なのかもしれません。
男には、家族とか、会社とか引きずっちゃって、「ポンと、ひとつ、飛び越える」がなかなかできにくい時代になってしまったようです。
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