先細りの不動産仲介業③ 業者は時代にどう抗うか
(前回の続き) 今後、仲介をメインとする不動産業者は売上が減少し、倒産、廃業、事業譲渡が増加すると予想されます。そこで多くの不動産業者は仲介業のウェイトを減らし、不動産転売業や大家業にシフトチェンジを図っていくと思われますが、中には仲介業として生き残るためビジネスプランを模索する業者もいるでしょう。 模索されるビジネスプランの中で、これまで客付をメインでサービス展開していた業者が導入を検討すると思われるのが、バイヤーズエージェントです。 バイヤーズエージェントとは (1)買主側の仲介を専門に行う (2)サービス選択型料金設定 これまでの客付業者は元付業者の情報発信力、顧客情報力を補う役割が主でした。例えるなら、売主はメーカー、元付業者は問屋、客付業者は小売店、買主は消費者です。バイヤーズエージェントは弁護士がクライアントの代理人として相手方と交渉するように、買主の代理人として、買主の立場を守り、有利な条件を引き出すために、売主の代理人である元付業者と交渉するのが役目です。利益相反取引にならないよう売主、買主双方の代理(両手取引)は原則不可です。 サービス選択型料金設定では、例えば、物件調査、価格査定、売買条件交渉、契約書類作成といった業務ごとに料金が設定され、顧客は必要なサービスのみを選択し報酬を支払います。これまでは物件価格によって報酬額が決められていましたが、物件価格に比例して業務量が増えるという訳ではありません。作業の量や専門性の高さ、もたらした便益で報酬額を決定する方が買主の目的に沿っています。 バイヤーズエージェントを導入することにより買主に寄り添った質の高いサービスが期待されます。同時に、買主がサービスを限定することにより従前より報酬が減るケースも予想されます。むしろ、現実的には低い報酬を求めてバイヤーズエージェントを利用する顧客の方が多くなるでしょう。例えば、顧客は検索サイトで物件を自分で検索し、目星を付けたらバイヤーズエージェントに元付業者との交渉を依頼する、物件検索業務が省かれる分、報酬の課金は減ります。 元付業者の中には、両手仲介をバイヤーズエージェントに妨げられるくらいなら手数料を安くしてでも買主側仲介も取ろうと考える者もいるでしょうが、さすがに利益相反の起こりうる不透明な市場に逆戻りはしないでしょう。 バイヤーズエージェント以外のサービスとしては (1)売主にもサービス選択型の料金体系に (2)エンドユーザー直接売買用のサイトを運営し、有料オプションで不動産業者がサポート (3)売買契約後に物件引渡しまでを安全・公平に行うエスクローサービス などが予想されます。不動産取引の先進国であるアメリカのシステムを参考に、透明性、安全性、顧客主体のサービスが出てくるのではないでしょうか。 しかし、これらのサービスはアメリカにおける本来の目的は顧客の利益のために専門家が分業・連携し公平、安全、透明性の高いサービスを行うものであり、高いコンプライアンスと専門性が求められます。仕事に困った不動産業者が喰うために形だけ真似するものではありません。コンプライアンスと専門性を持ちえない業者が競合を出し抜くためだけに行えば、結局はサービスの質を落とした値引き合戦に陥ります。 とはいえ、現にその流れはできつつあります。そして、不動産業界への従事者のほとんどがいまだにバブルの頃とさして変化のない不動産屋的発想のままであることから、新たなサービスをしかたなく導入しながらも、本来の趣旨に沿ったサービスではなく、業者同士のたたき合いとなるのは必至です。多くの中小は吹っ飛び、大手ですら合併等で糊口をしのぐことになるのかもしれません。 (完)