「データベース登録情報の誤記」からの続きです。
米国特許第5,323,976号に対して、次の4とおりの出願日がでていました。
| PublicPair：1993年01月22日 公報とUSPTO全文データベースでの出願日表示：1929年10月12日 esp@cenet ＆ Google：1992年09月03日 公報とUSPTO全文DBでの継続出願の表示：1992年3月9日 |
継続の表示上で、1992年3月9日付の出願（すでに放棄）に対応する出願番号は、07/848,155です。
一方、第5,323,976号の公報に表示された出願番号は、08/008,221です。
この2つの出番番号の出願日を、確認してみます。
まず、07/848,155から。
PublicPairを検索すると、「03-09-1992」と表示されています。3月9日です。
念のため、全文データベース上で前後の出願の出願日を確認したところ、以下のとおりです。
| 07/848,152 March 9, 1992 07/848,153 公報なし 07/848,154 March 9, 1992 07/848,156 March 9, 1992 07/848,157 公報なし 07/848,158 March 9, 1992 |
よって、07/848,155に対応する出願日は、継続の表示どおり92年3月9日と判断できます。
次に、08/008,221です。
PubliｃPairでは、「01-22-1993」となっています。これも念のため、前後を確認します。
| 08/008,218 January 25, 1993 08/008,219 January 25, 1993 08/008,220 January 25, 1993 08/008,222 January 22, 1993 08/008,223 January 22, 1993 08/008,224 January 22, 1993 |
PublicPairが正しいですね。
さて。
USPTOの全文データベースにある1929年10月12日は、シリーズコードや引例公報の登録日などから、おそらく誤りだろうと判断できます。
公報のカバーページも同じ内容で、これも誤記でしょう。
全文データベースでは、たとえば「APD/1/1/1990->12/31/1991」といった条件指定で出願日の範囲を指定できますが、誤りの頻度からみて、検索に漏れが出る確率は高めかもしれません。
（出願から登録までの期間が長い特許を検索した結果、相当数の誤りがあることが判明しています。）
ただ、米国特許に関しては有料・無料のデータベースが多数ありますし、他の手段でカバーすれば良いだけなので、さほど問題にはならないでしょう。
むしろ問題なのは、単独で同等のデータベースが他に存在しないesp@cenetのほうだと思います。
今回の例でも、特許第5,323,976号の書誌情報には、次のように表示されます。
Application number欄には、米国特許第5,323,976号の出願番号008,221「ではなく」、親出願の出願番号848,155が表示され、年号もこの番号に連動したものとなっています。
加えて出願日も、「9月3日」と表示されています。
本来であれば、
Application number: US1993008221 19930122
Priority number(s): US1993008221 19930122 ; US19920848155 19920309
であるはずのところ、そうなっていないのです。
この連載で使用した①～⑪の米国特許は、USPTOの全文データベースを使って出願から権利化までの期間の長い特許を検索し、一覧から「適当に」拾いました。
esp@cenetは、USPTOの全文データベースよりは誤りが少ないように見受けられますが、それでも無作為抽出で今回のような誤情報が混じってきます。
調べる内容によっては、各国特許庁が提供しているデータベースで確認することも、必要でしょう。
データベースに100%の完璧さを求めることのほうに無理がありますから、使う側の対処が求められます。
ただし、3月9日が9月3日になっている点だけは、おそらくesp@cenetは「無罪」すなわち、誤記に責任はありません。
その理由は、別記事で。
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