美味しいワインが飲める今 その2 | ろくでなしチャンのブログ

美味しいワインが飲める今 その2

      美味しいワインが飲める今 その2

 

 

 1940年代のフランス・ワインは、現代の我々が飲むと果実味が薄く、酸味が強く、若干の腐敗臭を感じるだろうと言われています。それでは、何故ワインが美味しくなったのでしょうか。

                

 前回は、エミール・ペイノー氏による、マロラクティック発酵の推進、完熟葡萄の収穫法の提唱、発酵温度の徹底的管理の推進、選果の徹底等、栽培技術や醸造技術の改革をご紹介しましたが、これらはほんの40年~50年前から行われ始めたことなのです。

他にも大きな変革がなされています。

 

葡萄畑の改革

 

 1970年代から葡萄畑では腐敗病予防の為、スプレー式薬剤の散布がなされるようになっています。仮に薬剤散布が行われていない1950年代や1960年代と同様の手法を採っていたならば、1970年代以降のグッドヴィンテージの殆どはベト病に見舞われ大打撃を受けていただろうと言われています。

 

 冬季剪定や夏季の摘房も1980年代の後半から1990年代になって一般化したものであり、収穫量の減少をもたらしています。

 当初トップシャトーでも60~100hl/haであったとされ、昨今は25から50hl/haとなっているようです。

 空気の流れを良くし、十分な日光を葡萄に当てる為の摘葉や若枝の整枝も行われるようになっています。
 これらの手法の導入により、葡萄畑の葡萄は樹勢が弱められ、実が小粒化し、品質は向上してきました。

 

  ※拙稿 2010.12.12葡萄樹の特性 こちらへ

      2010.12.14葡萄樹の剪定 こちらへ  

      2010.12.17葡萄樹の摘葉、摘房 こちらへ

 

 収穫された葡萄果実に対する慎重な配慮もなされ始めています。収穫時の小型カジェットの導入や、葡萄果実に対する負担軽減ポンプの導入や、重力利用による葡萄果実の移動対策がなされ始め、エレベータの導入、醗酵槽の地下化等も行われています。

 

  ※拙稿 2010.12.20葡萄の収穫 こちらへ

 

醸造所に於ける改革

 

 まずは低温浸漬や醗酵前マセレーションの導入が挙げられるでしょう。フェノール類の抽出を行い、香りと色をより引き出そうとする手法であり、1週間前後の期間が多いようです。

 また、発酵期間は従前は10日から15日程度でしたが、より長期間に渡るようになってきています。21日以上とか30日に及ぶケースもあり、長期間の醗酵がタンニンを和らげ、円熟すると言われているからのようです。

 

   ※拙稿 2010.5.26低温マセラシオン解説  こちらへ

 

 逆浸透膜の使用や真空蒸留法による果汁の濃縮技術が導入され始め、1980年代にはトップクラスのシャトーでも利用され始めているようです。レオヴィル・ラス・カーズは先駆けと言われています。もちろん、従前から行われてきたセニエ(血抜き)と呼ばれる醗酵槽内の果汁の一部を抜き取り、果汁に対する果皮の比率を高める方法も行われているようです。これらの最新技術は批判も多いものの、収穫期の雨で水膨れした葡萄に対する逆浸透膜法の利用はもはや一般化していると言われています。

 ただし、ワインの凝縮とともに、欠陥である好ましからざる香味等も凝縮されることがあるようです。

  

  ※拙稿 2010.11.16逆浸透膜法等 濃縮・解説 こちらへ


 瓶詰め管理と期間短縮化も変革をもたらしたと言われています。有名なシャトー元詰も1972年に法制化されていますので、従前の品質管理の甘さが解消されるとともにシャトーの責任明確化が進んでいます。ほんの30年~50年前までは、瓶詰めに6ケ月から9ケ月かかることもあったようで、その期間の衛生管理に問題があったと言われています。


 新樽使用比率の増加も間違いなく、品質向上に寄与しているでしょう。ただし、新樽を使えば良いと言うものではなく、新樽に太刀打ちできるだけの凝縮感や深みのあるワインでなければならないと言う条件が付きますが。

 カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド等は樽との相性が良いとされ、風味が増すと言われています。しかしながら、使用法を間違えると風味を壊し、品種の特性やヴィンテージの特性、テロワールの特性を捨て去ることにも繋がるリスクもある様です。皮肉をこめて、新樽を使うと少なくとも衛生面の向上に繋がるとおっしゃる方もいらっしゃいます。

 

  ※拙稿2010.11.15ワイン樽 解説 こちらへ

 

                           溜め息  改・ブログ総索引-1 こちらへ

                          溜め息 改・ブログ総索引-2 こちらへ

                          溜め息 改・ブログ総索引-3 こちらへ  

                          溜め息 改・ブログ総索引-4 こちらへ