雨月物語(’53)
原作は、上田秋成
監督は、溝口健二
ジャン=リュック・ゴダールをはじめ、フランソワ・トリュフォー、ベルナルド・ベルトルッチ
ビクトル・エリセなど、ヨーロッパの映画作家に多大な影響を与えた、溝口健二
ゴダールにいたっては、溝口の墓参りまでして、好きな監督を3人挙げると? との問いに
「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」と答えるほどだった。
淀川長治さんも、好きな日本人監督は? と聞かれ、真っ先に挙げたのは、黒澤明ではなく、溝口健二だった。
「私は、溝口健二狂」とも言っている。
溝口作品を初めて観て・・・・
ひざまずいた・・・・
ひれ伏してしまった。
人間の美しい心だけではなく、醜い心も描いている作品には、とても感銘を受けてしまう。
特に、女の描き方
美醜の両極があって中間がない。
愛欲に溺れていく男、物欲や出世欲に目のくらんだ男
そして欲望にかられた男たちの陰で犠牲になった女たちが描かれています。
田中絹代の母性の暖かさ
旦那の森雅之に小袖を買ってもらって
「この小袖が嬉しいのでは、ありません。買ってくださる、あなたの心が・・・・」
京マチ子のうすら恐ろしい妖しさ
森雅之とは、黒澤明監督の 『羅生門』 のコンビ
「いいえ、帰しませぬ・・・」
ゾッとする美しさ、薄気味悪さに、後ずさりしてしまう。
水戸光子の凄まじい女の迫力
私、この人に1番やられた
野武士に手ごめにされるシーン
溝口監督は、情婦を怒らせ斬りつけられるほど、女性に対する暴言は有名だったそうで。
このシーンで、水戸光子に向かって、「あんたは輪姦された経験がないんですか!」 と言い放った。
野武士が去った後に 「見るがいい、この姿。女房がこんな目に遭わされて・・・大馬鹿野郎!」
と言って座り込むのですが、このシーン何十回もテストをして本当に水戸光子を疲れさせ
クタクタと座り込む真実性を描いたとのこと。
旦那の小沢栄太郎との再会のシーンで
「女房がこんなに落ちぶれても、お前が出世すれば、それで帳消しさ!」
「さっ! 今夜、お前もお客になって、落ちぶれ女を買いっ!」
私、このシーン鳥肌立ちました。
こんな凄みのあるシーン見たことない・・・・
女の美しさ、怖さ、哀しさ・・・・
最後に、田中絹代がこう語るんですよ。
「これが、この世の中というものでしょうね・・・・・」
たった1作で、溝口健二狂になりました。
ベネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞作
ベネチア国際映画祭受賞作
※参考Wikipedia
戦国の世、貧しい陶工・源十郎が若狭姫という女性と知り合い、生活をともにするようになる。だが美しい若狭姫の正体は・・・・。
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