「わたしを離さないで」第3話~初恋の行方は・・・閉ざされた未来に見た儚い夢と希望 | 日々のダダ漏れ

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「わたしを離さないで」

 
第3話
初恋の行方は・・・
閉ざされた未来に見た儚い夢と希望



介護人は、提供者の検診や、体調管理、
日常の掃除、洗濯から、入浴の介助や、
下の世話までする。

提供者もこちらも、
日々すり切れていく仕事だ。

そして、私にとって、あの女といることは、
ただ、それだけですり切れていくことだ。
 
奪われたものを、思い出し続けることになる。
こちらがそれに触れぬようにしていても、
何のつもりか、嫌がらせのように突きつけてくる。
 
過去を。
あの女に支配され続けた、
みじめな私の、過去。

**********

その年、私達は、
陽光を卒業する年になっていた。
卒業すると、私達は2~3人単位で、
コテージやマンションという施設に移ることになり、
そこで、外の世界での暮らしに慣れるための
生活をするといわれていた。
そのために、恵美子先生による外で暮らすための、
社会の授業も始められていた。

なぜ、それが通常の紙幣や硬貨ではなく、
マネーカードなのかということには、
さして疑問は持たず、
私達の大問題はもっぱら、
誰と、どこの施設に行くかだった。


**********

恭子) のぞみが崎…。
恵美子) ここは海流の関係で、
     なくしたと思ったものが、
     ここに流れ着いていたっていう昔話があって。
恭子) 流れ着く…。
恵美子) ここに行けばあるかもしれない。 
     そういう気持ちから、
     この地名が付いたんだそうですよ。
恭子) へえ~。


**********
 
龍子) あなたは、サッカー選手にはなれません。
    あなたが料理人になることも、ありえません。
    あなた達は、何者にもなれません。
    あなた達には、一生のうちに何度か
    提供する義務があるのではない。
    提供して一生を終える、
    提供者にしかなれないの。
    なれないように管理されてるの。
    提供ってのはね、生活の合間に
    できるようなことじゃないの。
    提供して、回復して、提供して、繰り返し、
    早ければ10代ですっからかん。
    死ぬから。だから夢なんか、
    夢なんか見たって無駄なの!
    あなた達の未来は、決められてるんだから。
恵美子) 堀江先生、何やってるんですか?
龍子) 天使とか、ウソよ。あんた達は、ただの部品。
    壊れたところを取り替えるためだけの、
    道具だから。家畜と一緒だから。
    こいつも、こいつも、ただの偽善者だから。
    あんた達を育てると、
    膨大な補助金がもらえるから。
    そうやって、食いものにしてるだけだから。
    だからお願い。だまされないで!

**********

恭子) ウソじゃなくて、希望だから。
    いいじゃない。ちょっとくらい夢見たって。
    うすうす気付いてたって、感じてたって…
    はっきり言われるまでは、
    希望を持ってたいって。
    そう思いたいもんじゃない。
    みんながみんな、
    真実みたいに強いわけじゃないんだよ。
真実) でもそうやって逃げ続けるから、
    何も変わらないんだって。
    私達、そこにつけ込まれてるんだって。
    そう思わない?


**********

真実) これあげる。ゴキブリじゃないわよ。
恭子) ホント? 何? これ。
真実) 発信器。
恭子) 発信器?
真実) 靴の中にあったの。私達を見張るために。
    ここを出ても、きっとそう。
    逃げられないように、支配し続けられる。
    その上、ずっとあの子に支配されるつもり?

   
**********

こうして、
私の世にもみじめな日々が始まったのだ。
あの女をうらやみ、憎み、許し。
うらやみ、憎み、許し。その繰り返し。
同じところを、グルグルと回されるような。
それなのに、なぜ、
私はまた、会いに行ってしまったんだろう。
 
**********

外の世界を知らない子供時代、陽光学苑編は終了。
何も知らずにいられた頃の束の間の自由、まだ世界
に夢や希望を持っていられた無垢な時間はおしまい。
卒業して外に出て行く彼らの過酷な運命が切なすぎ
る。彼らの現在を見せつつ、そこに至る過去をたどる
手法は、その先の未来に少しでも希望はあるのだろ
うかと不安になるぐらい…救いが見えなすぎて辛い。

せっかちな私としては、早く先が知りたくてしょうがな
いのだけれど…我慢我慢。学苑を卒業してから現在
に至るまで、恭子が笑顔になれた時間はあったのか、
幸せを感じる時はあったのかが一番気になるところ。

そもそもこのお話に救いはあるのかな? あるよね?
いつか恭子の笑顔が見られますようにと願うばかり。


「わたしを離さないで」関連ブログ↓
第1話~愛しく儚い命の果ての希望とは
第2話~因縁の再開・・・20年前の嘘が今、3人の運命を動かす
第3話~初恋の行方は・・・閉ざされた未来に見た儚い夢と希望
第4話~開かれた扉・・・新たな恋は希望か絶望か
第5話~ついに見えた希望!!提供の"猶予"が導く波乱の恋
第6話~求めた愛と希望の行末は・・・永遠の別れ
第7話~再会の夢近づく終末に望むのは許しと愛
第8話~友との別れ…解ける因縁、託されたのは最期の希望
第9話~未来を取り戻す!!最後の希望の行方・・・
第10話~生きること愛することそして生まれてきた意味とは?

●「わたしを離さないで」HP


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