「わたしを離さないで」第10話(最終回)~生きること愛することそして生まれてきた意味とは? | 日々のダダ漏れ

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「わたしを離さないで」

 
第10話(最終回)
愛と希望の結末は・・・
生きること愛することそして生まれてきた意味とは?



3度目の提供は、特別だ。
たいていの提供者は、
3度目で終了を迎えるが、
中には3度目を耐えられる体の持ち主もいて、
彼らは、4度目の提供までは、
心身ともに、過酷な時間を過ごすことになる。


恭子) 3度目で終わるのがいいって、
    ずっと思ってきたんです。
    でも…割り切れないところもあって。
下等) 彼はどう思ってんの?
恭子) 今は何の気力もないって感じです。
加藤) 「よかったな~」って思いたいなあ。
    小さなことでいいから。
    「生まれてきてよかった」って…
    思いたいかな。僕だったらね。


(回想)
真実) 何か、「生まれてきてよかった」って
    ことを見つけて。


生まれたきた意味があったと思えること。
生まれてきてよかったと思えること。
そんなことが、何かあるんだろうか?
私たちに。


**********

医師) 提供を希望されますか?
恵美子) 提供を受ける? 私がですか?
     フッハッハッハッ…。
医師) えっ?
恵美子) こんなおばあちゃんに…って事ですよ。


**********

恵美子) 私も、医師から興味深い話を聞きました。
     最近は、ある程度年のいった方だと、提供
     を拒否する場合も増えてきているそうです
     よ。クローンによる提供のおかげで、どんど
     ん長寿になって。長すぎる人生を扱いかね
     ると考える人が増えてきているそうですよ。
     いずれ…この仕組みは、終わりを迎えるか
     もしれませんね。私達は、私達のつくりだし
     たものに逆襲をされるんですよ。
     よくあることですけどね。
山崎) やっと夢がかないますね。
    本当は、ずっとそれを望んで
    らっしゃったんじゃ…ないですか?


**********

恭子) そんなに…私がいるのが、嫌?
    だから、こんなことしたの? それとも…
    提供そのものを、拒否したいの?
友彦) 分からない。何がしたいかなんて。
    もう…早く終わってほしい。
恭子) 私は…終わってほしくないよ。
    私は…トモにいてほしいよ。
友彦) 4度目まで粘れってこと? 本気で?
恭子) 聞かないでよ、そんなこと。私だって、
    そんなの、分かんないんだから。


**********

出口が見えなかった。
あと、1週間で終わるかもしれないのに。
私は何をすればいいのか。


**********

龍子) 私ね、陽光を出たあと、提供者から、提供
    を受けた人達へのインタビューを始めたの。
    中には、「触れないで欲しい」って人もいたり、
    あなた達の存在すら知らない人も…。でも彼
    は、自分に提供してくれた人が、どんな人か
    知りたいって言ってくれたの。それで調べた
    ら、提供者は…あの広樹君だったってことが
    分かったの。広樹君のことね、いっぱい話し
    たよ。バッジョが好きだったとか。やんちゃで、
    いじめっ子なところもあったとか…。そのとき、
    彼がどう思ったか分からないけど。ずいぶん
    たって、子供が生まれたってときに連絡をく
    れてね。「子供は、広樹って名前にしました」
    って。「広樹君がくれた、命だから」って。あな
    た達からすれば、身勝手な善意でしかない。
    あなた達の命が、役に立ってますって言わ
    れたところで、それが何?って話よね。でも
    私は…私はその事実に、少し救われた。救
    われて…しまった。そこに感謝があることに。
    生まれてきてくれて…ありがとう。
    ありがとうございます。
友彦) 嘘じゃなかったんですね。
    世界は、僕が思うより、ずっとずっと広い
    って、昔教えてくれたじゃないですか。
    世界は広い。やっぱり広いんですよ、先生。
龍子) (泣)


**********


恭子) 龍子先生も、嬉しそうだったね。
友彦) 龍子先生も、苦しかったんだろうな。
    うまくいかなくて。失敗ばっかりで。
    この人、俺と同じだって…。
恭子) だから、あんなこと言ったの?
    「やっぱり、世界は広いんですね」って。
友彦) どうなんだろうなあ…。
恭子) えっ?
友彦) 何か…
    もういいんじゃないかって思ったんだ。
    隣に恭子がいてくれれば。
    もうそれでいいんじゃないかって。
    ちっこい頃も、今も、恭子はいっつも、
    俺の心配してくれてさ。
    ずーっとそうなんだなあって思ったら。
    それだけで俺はもう十分幸せなんだって…。
    それに、俺、バカで、忘れてたんだよ。
    実は、一つだけは夢がかなってたこと。
恭子) えっ? そうなの?
友彦) 俺…ずっと、恭子にもう一回会いたいな
    って思ってたんだよ。コテージで別れてか
    ら、ずーっと。それが…会うどころか、
    一緒に住んだりまで出来てさ。
    夢は、もうとっくに…
    かないすぎるぐらい、かなってたんだ。
恭子) 喉、渇かない?
友彦) 恭子…俺生まれてきてよかったよ。
    この世に、恭子がいてよかったよ。
    会えてよかった。
    こんな…終わり方ができてよかったよ。
恭子) トモ…離さないで。私を…離さないでよ。


**********

恭子) トモ。もし、もし、今日…今日、
    3度目で、トモが終わらなかったら、
    私…終わりにしてあげてもいいよ。
友彦) ホントに?
恭子) トモがそっちの方がいいんだったら、
    そのくらいなら、できるよ。
友彦) じゃあ…できるだけ、ちゃんと終わるよ。
    そんなことしたくないでしょ?
恭子) 平気よ。慣れてるから。


**********

また…翌年の春が来た。

風の噂で、
タマちゃんも、終わったと聞いた。
だけど、私には、
一向に提供通知は来なかった。

私は、一人になった。


恭子) みんな…いるかな?

**********

恭子) 恵美子先生…。
恵美子) お久しぶりですね。
恭子) はい。
恵美子) 何か探しに来たんですか?
     ここはのぞみが崎ですから。
恭子) ええ…まあ。
恵美子) それは…?
恭子) あっ。陽光で、昔いただいた…。
恵美子) まだ…持っていてくれたんですか。
恭子) あの…どうして陽光では、
    これを渡していたんですか?
恵美子) 誰にも…奪えないものを
     持っていてほしかったんです。
恭子) 奪えないもの…。
恵美子) あなた達の体は奪われてしまう。だけど、
     思い出は奪えない。それは、あなたたちを
     支えるよすがになってくれるのではないか
     と思ったんです。うれしいですよ。大事にし
     てくれていて。ありがとうございます。
     保科…恭子さん。
恭子) でも…みんな、いなくなってしまって。みん
    なの忘れ物を、預かっているみたいです。
    誰も取りに来ないのに。
ヘルパー) そろそろ戻りましょうか?
       冷えますから。
恵美子) 私の介護人です。
恭子) えっ?
恵美子) 一人ではできないことが増えてしまい
     ましたから。もう…提供すらできないよう
     な、ポンコツです。私は…本当に何のた
     めに生まれてきたのかって、思いますよ。
     保科さん。これから…うちに来ませんか?
恭子) じゃあ…あとで。
恵美子) 待ってます。


もしかして、みんな、
同じようなものなのかもしれない。
何のために生まれてきたかなんて分からず、
命は必ず終わる。それが知らされているか、
いないかだけの違い。


恭子) トモ…私もそろそろ、
    そっちに行っていいかな? もう、いいよね?


(海に入っていこうとする恭子の足元に
まとわりついくる、トモのサッカーボール)

(回想)
友彦) 恭子はこれからもう…
    何にも期待しないってこと?
恭子) こんなことって、あるんだね。


こんな嘘みたいなこと。

私達は、
空の宝箱を抱えてきて生まれてきて、
そこに日々を詰め込みながら、
歩いていくのだ。終わりまで…。明日を。


**********
 
生まれてきた意味など考えることもなく、生まれて
きてよかったと思うこともなく、
やりたいことも見つ
からないまま、なんとなく生きて死んでいく人の方

がきっと、自分が生きる意味を見つけた人より多
いんじゃないかと思う。恭子がそう感じたように…。

このドラマを観て、ずっと考えていたこと。もし、自
分が、このドラマのような世界に生まれたとしたら。
クローンとして生まれ、提供者にならざるを得ない
運命だったら。クローンから臓器を提供され、その
命を奪う側だったら…。自分が、人間として扱われ
ない立場に置かれたらと、ずっと考えていた。それ
はもしかしたら、荒唐無稽な話ではなく、いつでも
起こり得る事でもあるから。ある日、ある瞬間から、
一方的にある種の人間から、「人間扱い」されない
事態に追い込まれないとは、誰にも言い切れない。

現状、どうしようもできない状態で生かされていた
としたら、せめて、何か意味を見いだそうとするの
だろうかと自分に問いかける。逆に、提供すること
である種の安楽死を選べるとしたら、提供に救い
を見いだす人もいるんじゃないかと思ったりもして。
ドラマの世界でも、無駄に生き延びることを望まな
い人たちが現れたように、人の価値観はそれぞれ。

きっと、正解はないし、あるとしたらそれぞれ自分
の心の中にあるのだろうと思う。この物語は、フィ
クションなのだけれど、その世界から感じられる危
うさは観る者の心をざわつかせるものがあって…。

肉体を奪うことはできても、心は、思い出は奪えな
い。美和も、トモも、恭子も、それぞれの心に大切
な宝物があった。それを心に抱いて生きる事がで
きた。生まれてきた意味がなかったとは、思えない。

ドラマ「富士ファミリー」の中の、セリフを思い出す。
 
意味があろうがなかろうが、
既に、私たちはここにいる。
その事の方が重要なんじゃないかしら。

生まれてきて、ここにいる。意味があるとしたら…
今ここにいることに、きっと意味があるんじゃない
かなって。だって…もう、いるし。生きてるし…ねw

 
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第9話~未来を取り戻す!!最後の希望の行方・・・
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●「わたしを離さないで」HP


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