「デート～恋とはどんなものかしら～」第６話～彼女の実家へ初訪問!!奇跡呼ぶ涙のレシピが恋の鍵!?

「デート～恋とはどんなものかしら～」

第６話
彼女の実家へ初訪問！！
奇跡呼ぶ涙のレシピが恋の鍵！？

（回想・17年前）
俊雄）　おお、おいしい。
　　　　お母さんの味そのものだ。すごいね依子。
　　　　おいしい、おいしい。

（回想・16年前）
俊雄）　んっ？
依子）　ちょっと間違ったかも。
俊雄）　うん。
　　　　今年のはちょっとお母さんのとは違うかな。
　　　　でも十分おいしい。うん。おいしい、おいしい。

（回想・15年前）
依子）　ごめん。
俊雄）　お父さん、こっちの味も好きだな。フフ。
　　　　おいしい、おいしい。

小夜子）　どうせ今年も無理でしょうね。最初の時は
　　　　　まぐれだったのよ。ビギナーズラック。
依子）　私はあなたのレシピどおりに作ってるわよ。

小夜子）　料理は科学実験とは違うってことよ。

　　　　　あるいは、何かを入れ忘れてるのかしら。

依子）　何よ。

小夜子）　真心。あなたにないもの。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

俊雄）　誰かと話してたか？
依子）　いいえ。独り言よ。
（お雑煮を食べる俊雄）
俊雄）　おいしい。
依子）　気休めはやめて。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

鷲尾）　ハッピーニューイヤー。
依子）　ハッピーニューイヤー。
　　　　ニューイヤーキスもいいもんでしょ？
　　　　ほら、依子さんともして。新年を祝わないと。

　　　　じゃあ、私、仕事に戻るわ。今年もよろしく。
依子）　元日は、お節料理を作ることにしているので、
　　　　そろそろ戻らないと。
巧）　僕も元日は
　　「男はつらいよ」を見ることにしてるんで。
依子）　それでは、本年も、よろしくお願いいたします。
巧）　こちらこそ、よろしく。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

依子）　重要事項なので、直接確認しに来ました。

　　　　私の家族に会わないという事は結婚する意思
　　　　がないということで、交際もこれをもって終了と
　　　　なりますが、よろしいですか？

巧）　えっ？
依子）　はい。ではそういうことで。

巧）　ちょちょちょっ…！ちょっと待って。
　　僕はただ…親戚の集まりに参加するのは、
　　図々しくないかなって。

留美）　あら。ご招待断る方が、失礼よ。
　　　　ほら、行ってきなさい。

巧）　ん～でも、どうせお父さん僕のこと気に入らない
　　と思うよ。せっかくのお正月が台無しになるよ。

依子）　その場合も交際終了です。
巧）　あっ、ちょっと待ってって。

宗太郎）　うまくだまくらかして
　　　　　気に入ってもらうしかねえな。
依子）　だまくらかすとは何ですか。ありのままの
　　　　谷口さんを父が受け入れなければ、意味が
　　　　ありません。

宗太郎）　ありのままのこいつを
　　　　　受け入れる親なんていねえだろが。

留美）　まあね。
　　　　私でさえ受け入れられないもの。ホホホ…。

依子）　では、交際終了です。

巧）　あっ！ちょちょちょっ…ちょっと待って！

　　もう、どうしたらいいんだよ。
佳織）　とにかく最善を尽くすしかない。しっかり準備
　　　　して行こう。依子さんにも協力してもらって。

　　　　ほら、お願いしなさいよ。
巧）　お願いします。肩、お揉みしますんで。
依子）　助言はしますが、その先はあなたの
　　　　努力次第です。ダメなら…。
巧）　交際終了ね。
依子）　では、これより、事前対策会議を開きます。
巧）　事前対策会議…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

依子）　当日集まるのは、父・俊雄と、父の姉の初枝
　　　　さん、初枝さんのご主人・康行さんです。康行
　　　　さんはおとなしい方ですが、初枝伯母さんは
　　　　厳しい方なので、注意が必要です。とはいえ、
　　　　特別な事はしません。ごく普通の、一般家庭
　　　　のお正月です。谷口さん、挨拶はどのような
　　　　内容を述べるおつもりですか？

巧）　挨拶？

依子）　新年の挨拶です。
　　　　例年はどのような内容にしていますか？

巧）　「明けましておめでとうございます」だけど。

依子）　その挨拶ではなく、正月に述べる、
　　　　一年の総括と、新年の抱負のことです。

巧）　総括と抱負？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

宗太郎）　述べるか？

依子）　この地域では述べないんですか？
　　　　変わってますね。
留美）　全国的には述べてるのかしら？

依子）　述べてますよ。

佳織）　巧君、何述べるの？

巧）　述べることなんかないよ。

依子）　ありのままを述べればいいんです。

佳織）　ちなみに、お父さんやご親戚には、
　　　　巧君の事どんな感じで伝えてあるの？

依子）　もちろん、正確に伝えています。

佳織）　少しはオブラートに包んでる？

依子）　35歳の健康体でありながら、労働を拒否し、

　　　　母親に扶養されつつ、読書や映画鑑賞など
　　　　をして日々を送る、高等遊民を自称する、若
　　　　年無業者。

宗太郎）　うん。正確だな。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

依子）　昨年は、地方自治体の公共施設における民
　　　　間型不動産価値から見た公民連携手法に関
　　　　する数理モデル、応用の研究論文を作成しま
　　　　した。本年は、職務はもちろんのこと、私生活
　　　　においても、30歳までに父を安心させるべく、
　　　　努力する所存でございます。

　　　　よろしく、お願いいたします。

巧）　さ…昨年は、教養の幅を広げるため、「ワンピー
　　ス」頂上戦争編第61巻まで読破しました。さ、更に、
　　ドラマ「24」、シーズン１からシーズン６までを、６日
　　間で一気に見るという、挑戦もしました。新年は、
　　途中で挫折した、「ＬＯＳＴ」を、もう一度頑張って、
　　最後まで見ようと…。よろしくお願いします。
依子）　お父さんも、映画好きよね？
俊雄）　ああ…。谷口君は知らないかもしれないけど、
　　　　昔、スティーブ・マックイーンって俳優さんがい
　　　　てね。

巧）　もちろん、知ってます。

俊雄）　あっ、知ってるか。

巧）　名優です。

俊雄）　そうだよなあ。
　　　　「大脱走」って映画が最高なんだよ。

巧）　「大脱走」、ですか？

俊雄）　うんうん。マックイーンといえばね、「大脱走」

　　　　とね、「荒野の七人」。これ見てなかったら見て
　　　　みるといい。

巧）　もちろん見てるに決まってるじゃないですか。

　　っていうか、
　　マックイーンといえば、「ブリット」でしょう。

俊雄）　ブッ…ブリ…？

巧）　えっ？「ブリット」見てないんですか？
　　「ゲッタウェイ」は？「民衆の敵」、「パピヨン」。
　　それでよくもまあ、マックイーンが好きだなんて
　　いけしゃあしゃあと言えた…ハッ。すいません…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

初枝）　あなた、依ちゃんが好きじゃないってホント？

俊雄）　姉さん、今日はそういう突っ込んだ話は
　　　　いいんじゃないかな。

初枝）　そういう生ぬるいこと言ってるからダメなのよ。

　　　　あなた、働いてないのよね？
　　　　どうやって生計を立てていく気なの？
鷲尾）　彼は、働く気はないんです。依子さんに
　　　　寄生するために結婚したいだけなんです。
初枝）　寄生って…。
　　　　依ちゃん、あなた分かってんの？
依子）　もちろん。
初枝）　もちろんって…。あなた寄生されちゃうのよ？
依子）　私も初めは受け入れられなかったけど、重要
　　　　なのは、有意義な共同生活を送れるかどうか
　　　　であり、そのためのファクターとしては…。
初枝）　もういい。とにかく反対です。
　　　　結婚を何だと思ってるの？こんな人とお付き
　　　　合いするのは断固反対です！ねぇ、依ちゃん。
　　　　鷲尾さんとお付き合いしてみる気はな～い？

依子）　鷲尾さん？

初枝）　そう。鷲尾さん。考えてみたことあるでしょ？

依子）　今言われるまで一度もなかった。

初枝）　何でないの？真っ先に考えるでしょ、普通。

　　　　比べてごらんなさい。鷲尾さんと、ニートよ。

　　　　爽やかなスポーツマンと、ニート。

　　　　どっちが素敵な男性～？
依子）　う～ん…。
初枝）　いや、難しくない。

巧）　あっ、あの…おっ、お言葉を返すようですが…。

　　男が家庭に入ることを望んで、何が悪いんでしょ
　　うか？家事手伝いの女は普通なのに、何で男は
　　ダメなんですか？僕の事情をよく知らないのに、
　　簡単に人を否定するもんじゃないですよ。

俊雄）　確かに、
　　　　専業主夫だって大変な仕事だからな。
初枝）　もちろん悪くないですよ。
　　　　それが本当にやりたい事ならね。
巧）　本当にやりたい事ですよ。
　　僕は、専業主夫になるのが夢なんです。
初枝）　そうですか。じゃあ当然、炊事洗濯お掃除、
　　　　普段からやってらっしゃるのよねえ？花嫁
　　　　修行中の女性はみんなやりますよ。
巧）　台所でも、お貸しいただければ、
　　お雑煮でも作ります。

初枝）　いいじゃない。やってもらいましょう。
　　　　でも言っときますけどね、
　　　　藪下家は味にうるさいんですよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

（鍋の中に落ちてしまう、へびの太郎）

巧）　熱っ！熱っ、熱っ…。

俊雄）　どうした？あっ！

鷲尾）　あっ！太郎がゆだってる！

巧）　あっ、あっ…。

康行）　太郎～！てめえ～何してんだ！
初枝）　太郎はウナギじゃないのよ！
巧）　あっ、いえ、ちょっと…。

依子）　みんな、落ち着いて。
　　　　心肺蘇生措置を施します。
初枝・巧）　えっ？
依子）　１、２、３、４！１、２、３、４！
巧）　何やってんですか？
依子）　心臓マッサージです。戻ってこい。
巧）　蛇の心臓がどこか分かるんですか？
依子）　つべこべ言ってないで谷口さんは人口呼吸！
巧）　人口呼吸？蛇と？
依子）　マウス・トゥ・マウス！早く！
初枝）　あんたがやんなさいよ！
巧）　嫌だよ！
康行）　救急車呼んでくれよ！
鷲尾）　蛇で救急車は来ません。
　　　　タクシーで動物病院に運びましょう。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

巧）　「人生は、地獄よりも地獄的である」 by芥川。

依子）　トイレで吐き、父の映画の知識を愚弄し、

　　　　百人一首で惨敗し、トロフィーを壊し、太郎を
　　　　死のふちに追い。どうやったらこんなに色々
　　　　巻き起こせるんですか。

巧）　自分でも驚いてるよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

巧）　やれよ！殺せ！殺せ！偉そうに、人のこと
　　値踏みしやがって！何様のつもりだ！古き良き
　　正月を祝う、家族を演じやがってよ！茶番だよ！
　　僕は僕の生き方に、誇りを持ってるんだ！

　　あんたらにとやかく言われる筋合いないよ！
（素振りをする俊雄）

俊雄）　君と少し汗を流そうと思ったんだ。
　　　　すっきりするよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

俊雄）　妻は、数学者でね。依子も、その血を引いて
　　　　か、小さい頃から理数系の成績だけは抜群に
　　　　良かった。妻は長年、ミレニアム問題っていう
　　　　ある数学の難題に取り組んでいてね。ある時、
　　　　「解けるかもしれない」って言いだしたんだ。ノ
　　　　ーベル賞級なんだよ。で、しばらく研究室に閉
　　　　じこもった。そこで倒れたんだ。癌だったよ。気
　　　　付いた時にはもう手遅れでね。あっけなかった。
　　　　依子が、12歳の時だ。

（回想・17年前）

依子）　お母さん、本当に死んじゃうの？

小夜子）　ええ。人間は皆死ぬわ。

依子）　いつ死ぬの？

小夜子）　３カ月以内の可能性が高い。

依子）　お母さんの研究は完成するの？

小夜子）　無理ね。残念だわ。

依子）　私がお母さんの代わりに解くわ。
小夜子）　いいわよ。あなたはそんな事しなくて。
依子）　私には無理だというの？私が努力を惜しま
　　　　ない人間だ、ということをお母さんはよく…。
小夜子）　そんな事より、これを覚えてほしいわ。
　　　　　お父さんの好きな料理。お節とお雑煮の
　　　　　作り方も、正確に書いておいた。

俊雄）　妻はあの子に、普通の女の子として生きて
　　　　ほしかったんだろうなあ。そうそう、この場所
　　　　だったよ。私は妻が亡くなってホントに落ち込
　　　　んでしまってね。でもあの子は平然として、私
　　　　にこんな事を言ったんだ。

（回想・17年前）

依子）　お父さんに教えてあげる。量子力学によると、
　　　　万物は全て粒子によってできているのよ。

俊雄）　えっ？

依子）　つまり死とは、その人を形作っていた粒子が、

　　　　気体という姿に変形することにすぎないの。

俊雄）　何だって？

依子）　お母さんの粒子は存在し続けるわ。

　　　　お母さんは、ここや、そこに居続ける。

俊雄）　そうか…そうだな。
　　　　お母さんは居続けるんだよな。寂しくなったら
　　　　いつでも、話しかけていいんだな。
　　　　ありがとう。依子。
依子）　量子力学を教えただけよ。

俊雄）　大学、大学院と、数学者の道を進んで、妻の
　　　　研究を引き継ごうとした。そこで、愕然とする
　　　　んだ。母親の研究が、全く理解できないことに。
　　　　それこそ、何カ月も何年も、寝食を忘れて研究
　　　　に没頭したけど、結局は、諦めざるを得なかっ
　　　　たんだな。

（回想・６年前）

依子）　結論を得たわ。

　　　　私は数学者として、お母さんに及ばない。
俊雄）　依子！

俊雄）　丸々３日間死んだように眠り続けてね。
　　　　４日目に突然起きて、こう言った。

（回想・６年前）
依子）　国家公務員になるわ。

俊雄）　わずかな期間で猛勉強して、見事合格だよ。

　　　　うちは公務員一族だけど、キャリアは初めてだ。

　　　　藪下家の誇りだよ。そして今、あの子は頑張っ
　　　　て、結婚しようとしている。母親の願いどおり、
　　　　普通の女の子として生きようと必死で頑張っ
　　　　てるんだ。私はね、もうあの子が傷つくところ
　　　　は見たくない。絶対に幸せになってほしいんだ。
　　　　谷口君、君がどう生きようと構わない。しかし、
　　　　自分勝手な理由であの子と付き合っているの
　　　　なら、やめてくれ。あの子のことを本気で思っ
　　　　てないなら…好きでないなら…消えてくれ。ま
　　　　して、変わった子だからうまく騙せると思ってる
　　　　なら、許さない。絶対に許さない。すまないね。
　　　　こっちから招待しておいて、こんな話。

巧）　料理…普段…やってません。
　　僕は、誰かに寄生するために、結婚したいんです。
　　依子さんのこと好きなのかどうか…。

　　たぶん…好きじゃないと思います。

　　すいません。…ただ、騙せるなんて思ってません。

　　僕みたいなのを、相手にしてくれるの…。

　　依子さんぐらいでした。……消えます。

依子）　帰るのは、最後まで作ってからにして下さい。

　　　　お雑煮。私は努力を無駄にすることを良しとし
　　　　ません。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

巧）　どうですか？
　　すいません…。うまく、いかなかったですね…。

俊雄）　これ…どうやって作ったんだ？

巧）　依子さんに教わりました。言われた通りに作っ
　　たつもりだったんですけど。何か間違えたんだと
　　思います。捨てましょうか。

俊雄）　おいしい…。おいしいよ。

　　　　小夜子の…妻の味だ。とってもおいしい。
　　　　なあ、依子。
依子）　（頷く）うっ…うっうっ…うっ…（泣）。
俊雄）　依子…。
依子）　うっ…うっうっ…（泣）。
俊雄）　おいしいよ。母さんのお雑煮だ…。
　　　　おいしい…。おいしい、谷口君。
依子）　うっ…（泣（。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

留美）　「卒業」のすごさは、このラストカットよね～。
佳織）　２人とも笑ってないんですよね～。
留美）　これから待ち受ける現実に、
　　　　愕然としている表情よ。
佳織）　いっときの情熱で
　　　　突っ走っちゃダメって話ですよね。
留美）　あなたも気を付けなさい。
佳織）　は～い。
留美）　変なの好きになっちゃダメよ～。ねっ。
佳織）　はい。
留美）　フフ…。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

小夜子）　喜んでたわねえ、お父さん。
　　　　　17年ぶりに私のお雑煮が食べられて。
依子）　そうね。
小夜子）　どうして彼は再現できたのかしら？
　　　　　あなたは１年目の時だけで、
　　　　　以降ただの１度も再現できないのに。

依子）　さあね。たまたまでしょ。
小夜子）　数学者とは思えない発言ね。
　　　　　結果には必ず原因がある。この問題のヒント
　　　　　は、そもそもあなたが、最初だけ再現できた
　　　　　のは、なぜかよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

俊雄）　不思議なこともあるもんだね…。もう二度と、
　　　　君のお雑煮は食べられないと思っていたのに。
　　　　誰も作れるはずがないのに。

（回想・17年前）
俊雄）　おお、おいしい。お母さんの味そのものだ。
　　　　すごいね依子。おいしいおいしい。あ～…。
　　　　どうした？依子。おいしいよな。　
　　　　お母さんのお雑煮そのものだよ。
依子）　う～…（泣）

（レシピの分量を書き換える俊雄）

俊雄）　あの子の涙を見るくらいなら、君の味が
　　　　食べられないぐらい…。それなのに…。
　　　　君が彼に力を貸したのかい？

小夜子）　私は何にもしてないわ。

　　　　　あの子が彼に作らせたんじゃないかしら。

俊雄）　あの子が…。

小夜子）　きっとそうよ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

小夜子）　あなたは私と同じで、昔から数字は１度見
　　　　　たら忘れないものね。あなたはず～っと、作
　　　　　れたのに作らなかった。お父さんが書き換え
　　　　　た数字に騙されたふりをしていた。食べたら
　　　　　悲しくなるから。それが今回17年ぶりに封印
　　　　　を解いて、改ざんされる前の数字を彼に教え
　　　　　たのよ。谷口巧が、お父さんに気に入っても
　　　　　らえるように。答えはそれしかないわ。

依子）　彼が勝手に分量を間違えて、
　　　　偶発的にお母さんの味に近いものができた、
　　　　という答えもある。

小夜子）　ふ～ん。
　　　　　神社の絵馬に、お互い何て書いたのかしら。
依子）　それは詮索するべきものではないし、
　　　　人に言うべきものでもない。
小夜子）　願い事、かなうといいわね。
依子）　もちろん、そう願ってるわ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

ああ、もう～！何て脚本だ～！何てことはない、お
正月の一コマ。ヘビ年だけにヘビが登場して、太郎
の受難に笑わされて、チビ依子の依子っぷりに惚れ
惚れさせられて、まさかのお雑煮で泣かされるとは。
すごいね。こんなことができるんだ。本当にお見事！
Twitter上で悔しがるマンガ家さんたちの声に激しく
同意するばかり。創作に携わる人なら、見事な仕事
ぶりに感心すると同時に、激しく嫉妬しちゃうレベル。
奇をてらっているようで、極端ではあるけれど、いな
いことはなさそうなキャラと、実際、起こりそうな出来
事を舞台に、毎回毎回、斜め上を行く驚きと、笑いと
涙のバランスが絶妙すぎて、もうもう、ホントにもう！

サンタを信じるフリをしていた巧。サンタを信じるフリ
ができなかった依子。さらに、母親の料理がまずい
ことをずっと黙っていた巧。そして実は、父親がレシ
ピを書き換えた事に気づかないフリをしてきた依子。
ある日自分が何者にもなれないことを悟ってしまっ
た巧と、数学者として母親には敵わないことを認め
ざるを得なくなった依子。まったく違うようで、実はど
こか似ている２人。２人とも、不器用で、やさしくて…。
気持ちは、行動に現れる。自分の気持ちを自覚でき
ない２人の行動には、もうすでに、「好き」が見えてき
てるのに…・ああ、ホント、上手いなぁ…。天才だよ！

このドラマの、面白さも、すごさも、観ればわかるよ！
って思うので、ここからはちょっと、かなり個人的な、
ある意味、オタクな感想を書いちゃおうかなあと…ｗ
分かる人だけに分かってもらえればいいので、ここは
何か書いているな～と、さら～っと流してくださいねｗ

依子）　お父さんに教えてあげる。量子力学によると、

　　　　万物は全て粒子によってできているのよ。

俊雄）　えっ？

依子）　つまり死とは、その人を形作っていた粒子が、

　　　　気体という姿に変形することにすぎないの。

俊雄）　何だって？

依子）　お母さんの粒子は存在し続けるわ。

　　　　お母さんは、ここや、そこに居続ける。

このシーン、依子の言葉から、私は大好きな漫画家、
大島弓子さんの作品、「ダリアの帯」を思い出して…。

只野一郎と、妻・黄菜。ある出来事から、妻・黄菜は、
精神的に病んでいき、夫には理解できない世界に彼
女は生きていて、彼には見えないものと語り合ってい
るように見えるのですが…。一郎が亡くなった時、彼
はやっと、黄菜が見ていた世界を、理解するのです。

この期に及んで気づきました
黄菜が一人で話を交わしていたのは、
草や木　生まれなかった子供
旅する風　霧のつぶ　雨のしずく
有形無形森羅万象　だったことを
　　　　　　（大島弓子「ダリアの帯」より）

黄菜は、死んだ、粒子となった夫と話ができるのです。
そのシーンをね、依子の話で思い出して、泣けました。
依子の中に、父・俊雄の中に生き続ける小夜子さん。
亡くなった人は、粒子となってここやそこに、ず～っと
存在し続ける。そう父親に教える依子はとても優しい。
いつか粒子になって、愛する人の側にいたいなあと、
そんな事を思ってしまった。ああ、何てドラマなんだ！

好きなものは、説明するより感じてほしいので、興味
持たれた方は、「ダリアの帯」、読んでみて下さいね。

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