書店員ミチルの身の上話 第10回(最終回) 「告白」 | 日々のダダ漏れ

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よる★ドラ
書店員ミチルの身の上話

第10回(最終回) 「告白」

ミチル(戸田恵梨香)は香月(大森南朋)に、故郷を
捨ててからの身の上話を語り出す。香月の母、聖
子(吉村実子)が
営む食堂を手伝うようになったミチ
ルは生気を取り戻し、香
月とも少しづつ心を通わせ
てく。しかしある日、竹井(高
良健吾)からミチルに
電話がある。ミチルは香月に、これま
での全てを打
ち明ける。そして香月の前に現れた竹井は、香

のことも全て調べ上げていた・・・。

**********

私の妻ミチルは、長崎の小さな町に暮らす平凡な
女でした。偶然手にした宝くじが、1等2億円の
選券だとわかり、ミチルの人生は、思わぬ方向

舵を切ります。初めて会ったその夜、ミチルは、

さとは裏腹な、暗さと倦怠をまとい、捨て置けな

切実さが全身から放たれていました。


香月) もう、ここを閉めるし、
    ここで夜明かしはできないよ。
ミチル) はい。
香月) 歩ける?
ミチル) 歩けます。
香月) 閉める前にここを出たほうがいい。これで、
    あったかいものでも食べなさい。自分は車
    を停めてるんで、これで。
ミチル) すいません。私お金はいただけません。

香月) いいんだ、遠慮しなくても。
ミチル) でも。見ず知らずの人からこれは。
香月) 行くあては、あるの? 泊まるところがない
    なら、自分の車で送ってもいい。
    それを宿代にしてグッスリ寝れば、気持ちも
    落ち着くんじゃないのか。・・・どうする?
ミチル) え?
香月) 今夜泊まるとこ。
ミチル) じゃあ、紹介してください。
香月) こっち。




普段からお節介を焼くタイプの人間ではない私が、
なぜミチルに声をかけたのか、自分でも不思議で
なりません。重い荷物を抱えた者にしかわからな
い何か、ミチルに感じとったのかもしれません。


**********

香月) バスに乗ってると、困ってる人を見かけて
    も、降りて手を差し伸べるわけにはいかな
    い。決められた運行スケジュールがあるか
    らね。見て見ぬフリをする冷たい人間だっ
    て、妻からなじられたよ。
ミチル) それ、
    あたしに声をかけてくれた理由ですか?
香月) ああ。そうかもしれない。こんなことをす
    るのは初めてなんで、戸惑ってる。
ミチル) あたしが可哀想に見えたから、1万円く
    れたんですか?
香月) 早く宿に入って寝たほうがいいんじゃな
    いのか?
ミチル) 泊まれなくなりますか?
香月) いや、もう帳場は締めてあるから同じこと
    だ。身内がやってる宿屋だから、いつでも
    送ってやれるけど。
ミチル) 身内って?
香月) 母が一人でやってる。素泊まりの民宿み
    たいな宿屋。
ミチル) じゃあ、コーヒーもう一杯飲んでもいい
    ですか? 奥さん心配しますか?
香月) 妻は、もういないんだ。
ミチル) ごめんなさい。亡くなったんですか?
香月) いや、話せば長くなるけど。離婚届けを
    置いて、出て行った。
ミチル) そうですか。
    あの、さっきはご親切にありがとうござい
    ました。
これ、お返ししときます。
香月) あ、やっぱり、似合わないことしたな。
ミチル) あ、いえ、あの、もし差支えがなければ、
    あの、話相手になってもらえませんか?
    無理ならいいんですけど。なんか、誰かと
    話していたいっていうか。どんな話でもい
    いんです。奥さんの話とか。
香月) こんなおじさんの話じゃつまらないだろう。
    こっちが君の話を聞くよ。東京の人?
ミチル) あ、いえ。出身は長崎の外れで。
香月) 帰省の途中か。
ミチル) いえ、一人旅の途中というか、
    今さら帰りづらいっていうか。
香月) どうして?
ミチル) 事情があって・・・


ミチルは、心の結び目を解くように喋り続け、その
身の上話は、明け方まで続きました。宝くじのお
つかいからはじまって、職場の仲間たち、昔の男、
不倫相手、幼なじみ、その友人までが出揃う、詳
細なストーリーでした。しかし、その告白は、全て
ではありませんでした。

**********



ミチルは、いつのまにか母の食堂で働くようにな
っていました。やがて、ミチルは本来の若さを取
り戻し、ヨメが家を出て以来、沈みがちだった母
にも活気が蘇ったようでした。


**********

竹井) ミチルちゃん・・・



**********

ミチル) はい、代わりました
竹井) ミチルちゃん。探したよ。



**********

いつかこんな日が来る、という予感はありました。
母と睦まじく食堂で働くミチルが、ミチル本来の
姿ではないことに、私は気づいていました。




ミチル) 香月さん・・・
香月) 何があった? とにかく、一緒にうちに戻ら
    ないか? おふくろも心配してる。
ミチル) 話してないことがあるの。
香月) ああ。
ミチル) 東京で何があったか。どうして実家に戻
    れないのか。全部話したら、香月さん軽蔑
    すると思う。
香月) 全部話してみればいい。約束する。どんな
    話を聞いても、うちに戻るなとは言わない。
ミチル) 人が殺されてるの。
香月) 今日、電話してきたのは誰?
ミチル) 竹井。
    あたしが、東京で居候してた、地元の友達。
香月) 君は竹井から逃げてるんだね?
ミチル) うん。



2億円のこと、上林久太郎の死。その後始末をし
た竹井輝夫。自殺をした高倉恵利香。500万円と
共に消えた豊増一樹。そして、同僚のタテブー。
ミチルは、東京で起こったことの全てを、私に打
ち明けました。



香月) 君は、許されないほどの大罪に手を染め
    たわけじゃないよ。幾つか判断を誤ってい
    るけど、誰もがやってしまうかもしれない
    小さな過ちだ。正直に話せば、許されるこ
    とだ。・・・で、竹井はなんて?
ミチル) 香月さんのこと調べてるって。
香月) 俺のことを調べてる・・・
ミチル) あたしと関わったから。香月さんにも、
    おかあさんにも迷惑かけることになって。
    だからあたし、出て行ったほうがいいと思
    って。
香月) どこに逃げても同じことだ。逃げても逃
    げても、悪い夢の続きに戻るだけだ。



香月) 俺と一緒にいたらいい。もし、そのときが
    来たら、今日俺に話したことを、そのまま
    正直に話せばいい。君が大きな罪に問わ
    れることはないから。もう、ビクビク暮らす
    ことはないんだ。それまで、俺が君を守る。
    絶対に。

**********

それから、ミチルと私は結婚し、やがて子供を
授かったことがわかりました。絵に描いたよう
な幸せが、自分たちにも訪れたのだ、と錯覚し
始めたとき、竹井がやってきました。



竹井) どうぞ。座ってください。
香月) ミチルは留守だ。ここにはいない。
竹井) いいんですよ。話はあなたにですから。
    いろいろ調べさせてもらいましたよ。
    少し時間はかかりましたがね。



竹井) 香月さんって、普通の人なんですね。
    死体を埋めちゃダメですよ。
香月) なんのことだ。
竹井) 僕を甘く見ては困るな。前の奥さんです
    よ。僕一人で、バスターミナルの裏の空
    き地に行って、奥さんの骨をあなたの目
    の前に突き付けてもいいんですけど。
    どうします?


**********

香月) 金か?
竹井) やだな。
    僕がお金を欲しがる人間に見えますか?
香月) 2億円が目当てじゃないってことか。
竹井) そっか。ミチルちゃん全部話ちゃったん
    だ。ミチルちゃん、ちゃんと話せたかな?
    ミチルちゃんを守ってやれるのは僕だけ
    だってことを、まだよくわかってないみた
    いだけど。
香月) 守る?
竹井) 骨を掘り返して警察に知らせるかどうか
    は、それから考えましょうか?
    それが嫌なら、あなた一人でやってもら
    う別の方法もあるけど。・・・聞きたい?
香月) 一人で・・・何をやればいい?
竹井) 簡単なことです。前の奥さんのように、
    黙っていなくなってくれないかな。
香月) 自殺しろってことか。
竹井) 察しがいいな。できれば、2、3日中に
    そうしてもらえないかな?

**********



ミチル、俺はミチルの考えるようないい人間では
ない。ミチルが、何もかも話してくれて、俺を頼っ
てくれたのに、俺はそれに応えられる人間では
ないんだ。実は、妻は失踪したのではなく、俺が
殺した。毎日毎日同じ道を走って、何が起ころう
と見て見ぬフリをするつまらない男、となじられ
た時、自分の中で何かが切れた。

知らぬ間に殺人者の妻になり、殺人者の子供
を宿してしまったミチルには、謝る言葉もない。
最後に、俺が出来る事は何か、懸命に考えた。
今夜、竹井は、俺に自殺を迫った。けれど、俺
が消えたところで、ミチルの不安は解消されな
い。むしろ、ミチルを竹井に差し出す事になる。
だから、明日俺は弁護士さんのところに行く。
堺町の信号の右角にある弁護士事務所だ。
妻を殺めて以来、あの信号に差し掛かるたび
に看板を見上げては、毎日考えてきたことだ。

弁護士さんに、妻殺しの一切を打ち明け、警察
に出頭する。それから、ミチルと竹井輝夫を、
上林久太郎の死体遺棄のかどで告発する。前
にも言った通り、ミチルの罪はさして重くない、
と俺は信じている。これしか、俺が竹井からミ
チルを守ってやる術はない。ミチル、元気な子
供を産んでくれ。できれば、お父さんに子供を
見せてやってほしい。

これが、俺の身の上話の全てだ。ミチルと出会
って、やっと決心がついた。ミチル、ありがとう。



ミチル) 一緒にお父さんを待とうね。








本来なら2、3回分は費やしてもらいたい内容が詰め
込まれた最終回でした。1回ですべてを描くのは強引
だなあと思いつつ、最後までサスペンスのオチを守り
通すためにはしょうがなかったのかなあと。結果的に、
時間をかけて竹井の恐ろしさを描くことに力を注いだ
わけですね。なぜなら、竹井への恐怖心こそが、ミチ
ルの「放浪」の理由だから。冷静に考えれば、もとも
とミチルは大した罪は犯していないわけで、ミチルに
異常に執着する竹井の存在こそが、彼女が逃げたか
ったものだから。事実、観る側にも竹井の恐ろしさは
刷り込まれて、後半はもう、何もかも怪しく見えるし、
まだ誰か殺されてしまうのかと最後まで思ってました。

「身の上話」とは、ミチルが香月に語った身の上話と、
ミチルとのことを含めた香月が弁護士に語った香月
自身の身の上話と、二重の意味があったのだと、身
の上話、という題名につくづく感心してしまいました。

宝くじは、結局ミチル自身のために使われることはな
かったけれど、宝くじが当たらなければ起こらなかっ
た様々な出来事が、結果ミチルの運命を狂わせ・・・。

大金を持ったことで、そのことを知った人間が、何よ
り自分自身の心に変化が起こり、疑心暗鬼になって
しまう、それこそが「宝くじに当たることの恐ろしさ」な
んだろうなあって。久太郎が死んだ時に、警察に連
絡することをためらったのは、宝くじのことを知られ
たくなかったからだし、あの職場の同僚たちに責め
られるのが怖かったからだろうし。あのときはまだ、
そのお金を手放すことができなかったのが、間違い
の始まり。それにしても、常に「ミチル」検索をしてい
たのか、そして能力者かと思わずにいられないほど
見事に香月の犯罪を暴いてみせた竹井が怖い・・・

いろいろと疑問や謎はあるけれど、一切それらにつ
いては明かされていないけれど、そこはミステリー、
ということで。ミチルが幸せそうに、満ち足りた顔で
いる姿が見られたし、お金もようやく手放すことが
できたし、オチにはちゃんと、あっ!と驚いたし・・・。

ちゃんと、小説が読みたくなる、そういう意味では、
よくできたドラマだったのでは? と、思う私です♪


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第1回 「平凡な女」
第2回 「嘘」
第3回 「宝くじ」
第4回 「秘密」
第5回 「後始末」
第6回 「疑念」
第7回 「別れ話」
第8回 「正体」
第9回 「放浪」
第10回(最終回) 「告白」

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