よる★ドラ
書店員ミチルの身の上話
第９回 「放浪」
竹井（高良健吾）の恐るべき正体を知ったミチル（戸
田恵梨香）は、竹井をフライパンで強打しマンション
を飛び出す。放浪の旅に出たミチルは、京都で出会
った初老の夫婦に心を動かされ長崎に帰るが、父・
継徳（平田満）の思いに触れ、黙って故郷を後にす
る。タテブー（濱田マリ）も失踪したという噂が流れる
中、偶然たどり着いた町で、ミチルはある男（大森南
朋）と出会う。
田恵梨香）は、竹井をフライパンで強打しマンション
を飛び出す。放浪の旅に出たミチルは、京都で出会
った初老の夫婦に心を動かされ長崎に帰るが、父・
継徳（平田満）の思いに触れ、黙って故郷を後にす
る。タテブー（濱田マリ）も失踪したという噂が流れる
中、偶然たどり着いた町で、ミチルはある男（大森南
朋）と出会う。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
私の妻ミチルは、長崎の小さな町に暮らす平凡な
女でした。偶然手にした宝くじが、１等２億円の当選
券だとわかり、ミチルの人生は、思わぬ方向に舵を
切ります。昔の男が殺され、不倫相手も失踪。友人
が自殺。災いの連鎖は、ついに、ミチルを犯罪へと
導くのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミチルのSOSに駆けつけてくれた初山（安藤サクラ）。
初山） 古川痩せたね。大丈夫？
女でした。偶然手にした宝くじが、１等２億円の当選
券だとわかり、ミチルの人生は、思わぬ方向に舵を
切ります。昔の男が殺され、不倫相手も失踪。友人
が自殺。災いの連鎖は、ついに、ミチルを犯罪へと
導くのでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミチルのSOSに駆けつけてくれた初山（安藤サクラ）。
初山） 古川痩せたね。大丈夫？
ミチル） うん。
初山） ２ヶ月ぶりだね。
ミチル） うん。
初山） まさかあの日、豊増一樹について東京まで
来ちゃうなんて思いもしなかったよ。
ミチル） うん。
来ちゃうなんて思いもしなかったよ。
ミチル） うん。
初山） 古川にそんな大胆なところあったなんて。
ミチル） うん。
初山） 久太郎のこと嫌いだった？
ミチル） そんなことない。けどなんか、あのまま、人
のいい久太郎と結婚して、時計屋の奥さんに
なるっていうのはなんか、違うっていうか。
ミチル） あのさ、初山が一番わかってると思うけど、
ミチル） うん。
初山） 久太郎のこと嫌いだった？
ミチル） そんなことない。けどなんか、あのまま、人
のいい久太郎と結婚して、時計屋の奥さんに
なるっていうのはなんか、違うっていうか。
ミチル） あのさ、初山が一番わかってると思うけど、
あたしって、いつもいつも、誰かが決めたこと
に従ってきたんだよ。就職にしたってさ、お父
さんの口ききだったし、千秋には風まかせの
ミチルなんて言われてさ。うまく言えないけど、
風まかせじゃない、また違うものがあるんじゃ
ないかって、思ってた気がする。
に従ってきたんだよ。就職にしたってさ、お父
さんの口ききだったし、千秋には風まかせの
ミチルなんて言われてさ。うまく言えないけど、
風まかせじゃない、また違うものがあるんじゃ
ないかって、思ってた気がする。
初山） そんなこと考えてたの？古川。
ミチル） ずっと考えてたわけじゃないよ。
初山） うん。
初山） うん。
ミチル） 一樹・・・豊増さんが、
違う世界に連れてってくれる気がしたのかな。
初山） 豊増一樹は
そんな立派な男じゃなかったわけ？
違う世界に連れてってくれる気がしたのかな。
初山） 豊増一樹は
そんな立派な男じゃなかったわけ？
ミチル） あの人を悪くは言えない。
あたしが勝手についていったんだからさ。
初山） ねえ古川、どうして宝くじ東京で買ったなん
てタテブーに噓ついたの？
ミチル） え？
あたしが勝手についていったんだからさ。
初山） ねえ古川、どうして宝くじ東京で買ったなん
てタテブーに噓ついたの？
ミチル） え？
初山） 私の日傘、売り場に忘れたでしょ。
ミチル） あ・・・
初山） 古川あそこで自分の分も買ったの？
ミチル） 買ってない。
初山） そんな度胸ないか。
２億円なんて空恐ろしいよね。
ミチル） うん。恐ろしい。恐ろしいわ。
ミチル） あ・・・
初山） 古川あそこで自分の分も買ったの？
ミチル） 買ってない。
初山） そんな度胸ないか。
２億円なんて空恐ろしいよね。
ミチル） うん。恐ろしい。恐ろしいわ。
あたしね、罪深い女なんだ。昔ね、子供の頃、
お母さんとよく行った教会でね、お母さんが、
隣で必死になって祈ってる姿を最近よく思い
出すんだ。あれは、あたしのために祈ってく
れてたんだなって。娘が悪の道に進まないよ
うにって祈ってたんだと思う。
お母さんとよく行った教会でね、お母さんが、
隣で必死になって祈ってる姿を最近よく思い
出すんだ。あれは、あたしのために祈ってく
れてたんだなって。娘が悪の道に進まないよ
うにって祈ってたんだと思う。
初山） 悪の道って？
ミチル） あたし、文房具屋で万引きしたことがある
の。香水の匂いがする消しゴム。お母さんは
それを気に病んでたんだと思う。
の。香水の匂いがする消しゴム。お母さんは
それを気に病んでたんだと思う。
初山） 子供んときでしょう？ 出来心でしょう？
ミチル） でも、犯罪者の烙印は、
あたしの心に押されたままだから。
初山） 久太郎はどこ行っちゃったんだろう？
あたしの心に押されたままだから。
初山） 久太郎はどこ行っちゃったんだろう？
ミチル） わかんない。
初山） 私仕事があるから帰んなきゃいけないけど、
初山） 私仕事があるから帰んなきゃいけないけど、
古川、ホントに一緒に帰んない？
お金は大丈夫？
ミチル） うん。
初山） そっかぁ。意外と頑固だね。
もう風まかせのミチルじゃないんだもんね。
困ったら電話してね。バイバイ。
ミチル） 初山、ありがとう。
故郷から駆けつけてくれた親友、初山春子を前にし
ても、ミチルは、真実を打ち明けることができません
でした。その罪深さを、妻は、後に悔いていました。
お金は大丈夫？
ミチル） うん。
初山） そっかぁ。意外と頑固だね。
もう風まかせのミチルじゃないんだもんね。
困ったら電話してね。バイバイ。
ミチル） 初山、ありがとう。
故郷から駆けつけてくれた親友、初山春子を前にし
ても、ミチルは、真実を打ち明けることができません
でした。その罪深さを、妻は、後に悔いていました。
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バスで出会った大浦杜夫（石橋蓮司）と大浦真知子
（梅沢昌代）夫妻と共に京都をめぐったミチル。
杜夫） ミチルさん、
おかしな夫婦だと思ってるでしょう？
ミチル） あ・・・はい。
真知子） ご一緒できて、よかったわ。
ミチル） でも、
お言葉に甘えてしまってよかったでしょうか？
お言葉に甘えてしまってよかったでしょうか？
杜夫） 娘に先立たれましてね、交通事故で。いきな
り、娘が、目の前から消えちまって。代わりに、
保険金が入ってきたんですわ。
あたしらはそんな金使えるわけなくて。
り、娘が、目の前から消えちまって。代わりに、
保険金が入ってきたんですわ。
あたしらはそんな金使えるわけなくて。
いたたまれず、家を出てきたんです。
娘と一緒に来るはずの京都でした。
娘と一緒に来るはずの京都でした。
ご迷惑でしたね。もう一度、親になれたようで、
ミチルさん、ホントにありがとうございました。
ミチル） じゃあ、あたし娘さんの代わりで？
杜夫） 親にとってね、子供を失うってのは、心臓をも
ぎとられるようなもんなんです。金なんてなん
の役にも立たない。ミチルさん、ご両親お元気
ですか？ そんな親の気持ち、わかってやって
くださいね。あ、いかんいかん。説教くさくて。
娘にいつも怒られてました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミチル） 初山、私帰るから。やっと決心がついた。
実家はすぐそこにあるのに、果てしなく遠い。
ぎとられるようなもんなんです。金なんてなん
の役にも立たない。ミチルさん、ご両親お元気
ですか？ そんな親の気持ち、わかってやって
くださいね。あ、いかんいかん。説教くさくて。
娘にいつも怒られてました。
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ミチル） 初山、私帰るから。やっと決心がついた。
実家はすぐそこにあるのに、果てしなく遠い。
父親に駆け寄る勇気が、妻にはありませんでした。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミチルは、故郷で偶然に妹・千秋（波留）に会い・・・
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ミチルは、故郷で偶然に妹・千秋（波留）に会い・・・
千秋） もう帰ってこないと思ってた。風まかせのお
姉ちゃんがさ、風に乗って飛んでっちゃった。
姉ちゃんがさ、風に乗って飛んでっちゃった。
ミチル） ごめんね。
千秋） お父さんだんだん喋らなくなって。何か気に
病んでるんじゃないかな。自分がお姉ちゃん
を帰れなくさせたって。えらく堪えてるみたい。
ミチル） そんなこと・・・
千秋） あ、この写真、お姉ちゃんがもってたんだ？
病んでるんじゃないかな。自分がお姉ちゃん
を帰れなくさせたって。えらく堪えてるみたい。
ミチル） そんなこと・・・
千秋） あ、この写真、お姉ちゃんがもってたんだ？
あたしこの時からほくろあるんだ。
ミチル） え？ あたしじゃ・・・
千秋） やだ。お姉ちゃん自分だと思ってたの？
ウソ、バカみたい。
ミチル） え？ あたしじゃ・・・
千秋） やだ。お姉ちゃん自分だと思ってたの？
ウソ、バカみたい。
ミチル） ねえ千秋ちゃん、
あたしが来たこと、お父さんには言わないで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
初山からの留守電を聞いたミチルは・・・
ミチル） 竹井、もう止めて。お願いだから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
男） お嬢さん、お嬢さん、どうかしたんですか？
これが、妻ミチルとの出会いでした。その時のミチル
には、若い女性特有の晴れやかさも、健やかさもあ
りませんでした。あったのは、心ここにあらずといっ
た、うつろな視線と、曲がった背中でした。手招きす
れば、どこにでもついてきそうな危うさを、私はほお
っておけませんでした。
友達のSOSに長崎から駆けつけてくれる友達。初山
さんは本当に、ミチルにとってかけがえのない友達。
ミチルが初山の前で、ホッとして気が緩んでいく様子
に、二人の友情の絆を感じて。それでも、あまりに遠
くまで来てしまった自分への気後れからか、初山に
真実を打ち明けられないままに別れてしまうミチル。
バスで声をかけてきた夫婦は、ミチルが、思わず壺
でも買わされるのかと思ったように、観ている側も、
何か怪しい出来事が起こるんじゃないかと、ずっと
怪しんでしまって。いいお話なのに入り込めず・・・。
夫婦の話から故郷に帰る決意をしたミチルは、自分
のための自転車を磨く父親の姿を前にしながら、帰
ることができない。「風まかせのミチル」は、風まか
せなようで、意外と頑固で、その頑固さが、ミチルを
放浪の旅へと追い込んでいったような気がします。
あたしが来たこと、お父さんには言わないで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
初山） もしもし？ もう着いた？ どこで会う？
ねえねえ古川。今度はタテブーが東京に
行ったきり帰ってこないんだよ。噂ではさ、
タテブーと久太郎が駆け落ちしたんじゃな
いかって・・・
ねえねえ古川。今度はタテブーが東京に
行ったきり帰ってこないんだよ。噂ではさ、
タテブーと久太郎が駆け落ちしたんじゃな
いかって・・・
初山からの留守電を聞いたミチルは・・・
ミチル） 竹井、もう止めて。お願いだから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
男） お嬢さん、お嬢さん、どうかしたんですか？
これが、妻ミチルとの出会いでした。その時のミチル
には、若い女性特有の晴れやかさも、健やかさもあ
りませんでした。あったのは、心ここにあらずといっ
た、うつろな視線と、曲がった背中でした。手招きす
れば、どこにでもついてきそうな危うさを、私はほお
っておけませんでした。
友達のSOSに長崎から駆けつけてくれる友達。初山
さんは本当に、ミチルにとってかけがえのない友達。
ミチルが初山の前で、ホッとして気が緩んでいく様子
に、二人の友情の絆を感じて。それでも、あまりに遠
くまで来てしまった自分への気後れからか、初山に
真実を打ち明けられないままに別れてしまうミチル。
バスで声をかけてきた夫婦は、ミチルが、思わず壺
でも買わされるのかと思ったように、観ている側も、
何か怪しい出来事が起こるんじゃないかと、ずっと
怪しんでしまって。いいお話なのに入り込めず・・・。
夫婦の話から故郷に帰る決意をしたミチルは、自分
のための自転車を磨く父親の姿を前にしながら、帰
ることができない。「風まかせのミチル」は、風まか
せなようで、意外と頑固で、その頑固さが、ミチルを
放浪の旅へと追い込んでいったような気がします。
第１回 「平凡な女」
第２回 「嘘」
第３回 「宝くじ」
第４回 「秘密」
第５回 「後始末」
第６回 「疑念」
第７回 「別れ話」
第８回 「正体」
第９回 「放浪」
第10回（最終回） 「告白」
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