書店員ミチルの身の上話 第8回 「正体」 | 日々のダダ漏れ

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よる★ドラ
書店員ミチルの身の上話

第8回 「正体」

ミチル(戸田恵梨香)は竹井(高良健吾)から、高倉
(寺島咲)が自殺したと知らされ愕然とする。祖母の
葬儀のため長崎に帰った竹井は、ミチルが宝くじの
選金2億円を持ち逃げしたのではないかというタ
テブ
ー(濱田マリ)の言葉を耳にする。高倉の遺品
の中に
豊増(新井浩文)が残したメモを見つけたミ
チルは、
豊増の身に何が起こったかを悟り、慄然と
する。ミチ
ルは、真相を話して欲しいと竹井に迫る
が・・・。

**********

私の妻ミチルは、長崎の小さな町に暮らす平凡な女

でした。偶然手にした宝くじが、一等二億円の当選券
だとわかり、
ミチルの人生は、思わぬ方向に舵を切り
ます。
妻ばかりでなく、周囲の人々の人生をも巻き込
んで、
災いの連鎖は、さらに広がってゆくのでした。

高倉恵利香子は上林久太郎殺しの罪悪感に苛まれ、
自殺した。しかし、高倉は、自分を守るためにフライ
パンを手にしたのだ。次々に起こる悲劇。ミチルは、
高倉のために、久太郎のために、祈らずにはいられ
ませんでした。




**********



ミチル) 高倉さんのこと?
竹井) ショックだったよね。夕べ帰れなくてごめん。
ミチル) 今日は帰れる?
竹井) 実はさっき、おばあちゃんが危篤だって連絡
    があって、
ちょっと行ってくるから。
ミチル) 行ってくるって?
竹井) ミチルちゃん、タクシー止まったからごめん。
    とにかく、2、3日は帰れない。
ミチル) ちょっと待って竹井。あのさ・・・

**********


竹井) 明日葬式が終わったら、すぐ東京に戻らなき
    ゃいけないんだ。
沢田) 寂しがるなあ、お祖母ちゃん。
    輝ちゃんのこと、特別に可愛がってたから。
竹井) 孫は僕一人だったのに、
    僕何もできなくて、ごめんなさい。
沢田) ううん。いろいろと送ってくれて。おばあちゃん、
    喜んでたと思うよ。
竹井) そうかな。おばさん一人に任せっきりで。
沢田) もう身内も二人だけになっちゃったね。
竹井) おばさん一人で大丈夫?
沢田) だーいじょうぶ。これから青春。
竹井) お金とかは?
沢田) あるある。そうだ、おばあちゃんね、輝夫ちゃ
    んにって、貯金も随分残してくれてたのよ。
竹井) おばさんが使うべきだよ。



沢田) はぁ・・・おばさんはいいわ。
    なーんか、気が抜けちゃってねえ。使い道も
    浮かばない。つまんないね。


**********

やがて、ミチルを戦慄させる想像が、膨らんでいきま
した。
そして、それは確信に変わっていったのです。





ミチル) 初山お願い、助けて!



**********


竹井) どこ行くの? 
ミチルちゃん、何でそんな怯え
    た目をしてるの? 
帰ろう、僕らの部屋に。



ミチル) 帰ってどうすんの?

竹井) 一緒にあったかいものでも飲もう。
ミチル) ねえ竹井、高倉さんは本当に自殺したの?
竹井) ミチルちゃん、人が来るよ。上で話そう。
ミチル) イヤ! ここで話して!
竹井) 行こう?

**********



竹井) 井之頭公園の近くの踏切で、高倉さん、遮断
    機をくぐって線路に飛び出したんだって。
ミチル) 竹井は?
竹井) 高倉さんの部屋で待ってた。
ミチル) 会う約束だったんでしょ?
竹井) 部屋で待ち合わせしてた。
ミチル) 高倉さん、竹井のこと怖がってた。
竹井) 怖がる?
ミチル) 竹井は口では責めないけど、無言の圧力を
     かけてくるって。
竹井) 無言の圧力って何?
ミチル) 竹井が、高倉さんに、全部の罪を押しつけた
     がってるって。
竹井) ミチルちゃん、僕がそんな卑劣な事すると思う?
    かわいそうに。高倉さんは繊細だから。ミルクテ
    ィー。
2人で高倉さんのこと偲んであげよう。

**********



ミチル) 何これ?
竹井) ユーミンの「真夏の夜の夢」
    歌ってるのは僕だよ。小学校2、3年の頃かな?
    ミチルちゃんが家に来て、カセットテープに録音
    して遊んだの覚えてない? ミチルちゃんも一緒
    に歌ったよね。
ミチル) ずっと取ってあったの?
竹井) これ僕のお気に入りだから。高倉さんにも聞か
    せたら、彼女もすごく気に入ってね。
ミチル) もうやめて! 
     昔の歌なんか聴いてる気分じゃないの。
竹井) そうか、ミチルちゃん癒されると思って、聴かせ
    たんだけど。
ミチル) 竹井教えてよ。一樹さんの事。
竹井) 僕は、ミチルちゃんを守ってあげただけだよ。
ミチル) 竹井ちゃんと話して。



竹井) あの男はね、最初っからミチルちゃんのお金が
    目当てだったんだよ。
ミチル) 何のお金?
竹井) ミチルちゃんの持ってる大金。
ミチル) 大金って?
竹井) そのリュックの中の2億円。
    ミチルちゃんが宝くじで当てた2億円。
ミチル) いつから?
竹井) さあ・・・? あの男には聞いてもみなかったな。
    でもね、ミチルちゃんは甘すぎるよ。隙だらけだ
    もの。僕らが守ってあげなければ、全部あの男
    に毟り取られていたよ。
ミチル) じゃあやっぱり500万・・・
竹井) 僕らが取り返してあげたよ。
ミチル) ・・・殺したの?
竹井) ミチルちゃんを守るためだよ。
ミチル) 正気?
竹井) これで秘密を知ってるのは、ミチルちゃんと
    僕の2人だけ。もう何もかも上手くいくよ。浜田
    山の方はそのうち片づけて、
ここで2人で一緒
    に暮らそう。

**********

竹井) ミチルちゃん。これからは、僕がずっとそばに
    いて、ミチルちゃんを守ってあげる。
昔っから僕
    ね、ミチルちゃんと2人きりでいるのが、なにより
    幸せだったんだ。
ミチルちゃんを守るためなら、
    何だってやってあげられるよ。
ミチルちゃんと、
    僕のためになる事なら、何でも。




そのとき、竹井輝夫が振り向いたのかどうか、振り下ろ
したフライパンが、竹井の頭頂部をとらえたのか、致命
的な一撃となったのか、ミチルには、判断がつきません
でした。ただ、それは、やむにやまれぬ衝動でした。




宝くじ売り場を巡るタテブーの執念、竹井と沢田と
の関係。そしていよいよ正体を現した竹井の脅威。
一気に怖さが増して、「真夏の夜の夢」を歌う子供
の声が怖い怖い。ていうか、ホント気持ち悪い・・・
人と人のつながりを舐めてはいけませんって話?
どこで、誰がどう繋がっているか。狭い世界では
自分が思っているよりずっと、どこかで繋がって
いるもの。沢田さんと竹井が繋がっていたなんて。
宝くじのことは、高倉さん絡みで、竹井も知ったん
だろうなと想像できるけれど、邪魔者を次々と、そ
れも淡々と消してしまう竹井が何とも恐ろしすぎる。

それにしても・・・いまだかつて、料理番組以外で
こんなに「フライパン」が活躍したことってある?
一度武器としてインプットされてしまうと、どうして
もフライパンが使いたくなってしまうものなのかw

次回は語り部、ミチルの夫となる男性が登場す
る模様。残り2回で、ジェットコースター展開に?


「書店員ミチルの身の上話」関連ブログ↓
第1回 「平凡な女」
第2回 「嘘」
第3回 「宝くじ」
第4回 「秘密」
第5回 「後始末」
第6回 「疑念」
第7回 「別れ話」
第8回 「正体」
第9回 「放浪」
第10回(最終回) 「告白」

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