チャイナが主導するアジアインチキインフラ投資銀行(以下AIIB)が、設立後に初めて融資を承認しました。
4案件に対して融資することになりましたが、単独案件は1つだけで、他の案件はアジア開発銀行(以下ADB)や世界銀行との協調案件となっています。
AIIBの単独案件は、今後も限定的だという意見が多く出ています。その理由は、AIIBは格付けなしという国際銀行としては異例の状態であることと、インフラ投資について事業リスクの評価をする能力がAIIBに不足しているからです。
AIIBのような国際銀行は、発展途上国のインフラ開発などに資金を融資することが主な役割です。加盟国が出資金を拠出しますが、融資する資金の多くはAIIBが発行する債券を一般の投資家に売ることによって、インフラ開発の資金を調達します。
AIIBから融資を受けた国は元本に利息を加えてAIIBに返済し、AIIBは発行した債券を購入した投資家に元本と利息を返していく仕組みになっています。
投資家が国際銀行の債券を購入するかどうかを判断する時は、各国際銀行の格付けを参考にします。国際銀行の信用力が高いと金利が低くなり、国際銀行の信用力が低いと金利が高くなります。
金利が高くなると当然利息も多くなり、結果として利息の負担が大きくなって融資が焦げ付く可能性も高くなってしまいます。投資家からすると利息が多くてリターンも大きいのですが、元本が全額戻ってこなくなることもありますのでリスクも大きくなってしまいます。
そのリスクの大きさを判断するために格付けを参考にするのですが、格付けがないと判断のしようがありませんので、投資家はそのような債券を買うことを避けるのが普通です。
AIIBの発行する債券を食品に例えると、何の材料が使われているのか分からず、食べても安全なのかどうなのかがさっぱり分からない食品ということになります。皆さんは、そんな食品を買う気になるでしょうか?
国際銀行の信用力は、出資金を多く出している国の信用力が影響します。AIIBではチャイナが出資金全体の約3割を出していて、チャイナの信用力が大きく反映されることになります。ADBでは、日本と米国を合わせた出資比率が約3割ですので、両国の信用力が反映されます。日本・米国とチャイナの信用力には大きな差があり、金利にすると1%ほどの差が付くことになります。
1%というと小さいのではと思う人もいるかもしれませんが、金利で1%の差というのは非常に大きなものです(詳しくは「 AIIB の資金調達力」 参照)。こういうことから、チャイナは必死に日本と米国にAIIBに参加するように必死に呼びかけているのです。
このままAIIBが格付けなしのままだと、AIIBが債券を発行しても投資家は手を出しにくいため、AIIBは各国から拠出された出資金から融資せざるを得なくなり、多くの案件に融資することが難しくなります。
また、AIIBには国際銀行が行う業務のノウハウが不足しており、そのために単独の融資を実施するのが難しい状況に陥っています。
その対策として、グローバル投資銀行のインフラ関連プロジェクトの融資分野の経験のある専門家を採用しようとしていますが、思うように人材が集まっていません。今年の1月に100人の人材を年末までに採用する方針を出していましたが、採用したのは約30人に留まっています。
人材が集まらないのは、AIIBの待遇が他の国際銀行に比べて悪いことが要因となっているようです。他の国際銀行に比べて給与が10%低く、職員に対する住居費や子供の学費も支援しません(ADBは職員の住居費と国際学校の学費を全額支援)。
AIIBは当初、職員の給与を他の国際銀行よりも10%高くする予定でしたが、各国代表で構成された理事会で給与が過度に高いという批判を受けて、逆に給与を10%低く設定しました。
元々、国際銀行として先行きが怪しいのに、職員の待遇も劣っているのであれば、良い人材を集めるのは難しいのは当然のことです。しかも、途上国の発展を援助するという理念よりも、チャイナの野望を満たす為ということが透けて見えていますので、理念に共感して低待遇でも応募するということもありません。
このように前途多難なAIIBですが、この後は一体どうなるのでしょうか。日本としては冷めた目で見守り、決して関わらないようにしましょう。
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