日本の地名の中には、歴史を物語っているものが数多くあるようです。今回は「地名から歴史を読む方法(武光誠著)」から、地名の由来について幾つか紹介します。

 

地名から歴史を読む方法―地名の由来に秘められた意外な日本史 (KAWADE夢新書)/河出書房新社
¥720
Amazon.co.jp

 

都道府県名の大部分は県庁所在地の地名がそのまま県名になっていますが、県名と県庁所在地が異なる所が幾つかあります。

 

石川県は、美川町に県庁があったときに美川町が石川郡にあったことから石川県という県名になりました。その後に金沢市に県庁所在地が変わりましたが、県名は石川県のままとなりました。岩手、宮城、群馬、茨城なども石川と同じような経緯で県名と県庁所在地の地名がことなっています。

 

神奈川と兵庫は古くからあった地名が県名となりましたが、神奈川の一部であった横浜と兵庫の一部であった神戸が栄えたことで、県名ではなく横浜と神戸の地名が市の名称となって県庁所在地となりました。

 

 

日本の地名の大部分は漢字二字からなっています。これは、奈良時代の初めに地名を二字にするように命令が出されたことが理由のようです。また、戦前までは漢字表記が正式であり、仮名書きは略式だったため、仮名書きの地名が見られるようになったのは戦後になってからでした。以下のような仮名書きの地名は、戦後になってから採用された名称です。

 

・北海道ニセコ町

・青森県むつ市

・福島県いわき市

・滋賀県マキノ町

 

 

日本の地名には、地形から来る自然地名が多くあります。自然地名は七種類に分類され、川、野原、坂、山、谷(沢)、海岸、岬の地形にちなんでいます。

 

日本の地名で最も多く使われているのが”川”という文字のようです。川沿いの所では”川”を含んだ地名が多くあります。二つの川が合流する所では、落合、二俣、川合、河合、合川などの地名が付けられています。

 

古代では水が流れているところを”水流(つる)”と呼んでいました。地名に”鶴”が付くところは、鳥の鶴ではなく”水流”の代わりに”鶴”の字が当てられたところが多いようです。鶴間や鶴舞という地名は、鳥の鶴がいたからではなく川の近くだったから付けられた地名です。

 

東京の古い地名である”えど(江戸)”は河口を表しており、隅田川が東京湾にそそぐあたりを指していたことから来ているものです。奈良は”ならす”につらなる平地を表す古語であり、現在の奈良市の辺りが広い平地であったことに由来しています。江戸や奈良という地名は、縄文人が使っていた単語からきているため、縄文時代に既に”えど”や”なら”と呼ばれていたようです。

 

 

弥生時代までは、人家が集まっていたところを”むら”や”さと”と呼んでいました。このような所には以下のような地名が多くあります。

 

・村山、村上、岡村、山村、高村

・大里、中里、里中、小里

 

”田”の付く地名は”川”の次に多いと言われています。”田”が付く地名は、田畑からくるものです。新田、山田、和田、吉田、田代、野田などがあり、新田は新しく開墾された田畑を表します(詳しくは「日本によくある地名」 参照)。

 

 

明治維新後に行政区画の再編が行われて、全国で多くの市町村が合併しました。市町村が合併するときに、吸収する形の場合は大きいほうの都市名がそのまま残りましたが、対等合併の場合は下のように互いの地名を一字ずつとった合成地名となることが多くありました。

 

・山梨県忍野村(草村と内村)

・愛知県蒲郡市(形村と西之村)

・岡山県玉野市(村と宇村)

 

東京都国立市は駅名に基づいた合成地名です。国立市の辺りは谷保村と言われていましたが、昭和元年に谷保村内に中央線の国分寺駅と立川駅の間に駅が出来たとき、国分寺と立川から一字ずつとって国立駅としました。元々は国立駅は谷保村のはずれにあったのですが、国立駅の周辺が発展したため、村から町になるときに駅名の国立という名称が採用されて国立町になりました。

 

 

また、企業や産業などの名前が付いた地名も各地にあります。愛知県豊田市は、トヨタ自動車の名称にちなんでいることは知っている人も多いかと思います。町名については、以下のように豊田市のように企業名に由来するケースが各地にあります。

 

・北海道旭川市パルプ町(山陽国策パルプ)

・東京都日野市富士町(富士電機)

・大阪府池田市ダイハツ町(ダイハツ自動車)

・山口県小野田市セメント町(秩父小野田セメント)

 

江戸時代などでは、ある業種に従事する人を同じ地域に集めていたことがあり、その職業にちなんだ地名が付けられたことがありました。八百屋町、魚屋町、米屋町などが現在でも地名として残っています。

 

静岡県函南町には”新幹線”という地名があります。東海道新幹線のトンネル工事が行われた時に、工事に従事していた官舎があったところが”新幹線”という地名になりました。

 

その他にも、羽田空港の近くには大田区羽田空港という地名があり、関西国際空港には空港北・空港中・空港南という地名があります。


(関連の記事)
○中学受験と大学受験はどっちが大変?
○東京は日本の中では特殊な地域
○東京は日本の中で特殊な地域(交通編)
○地名と名称が合わないところ
○東京都は食事時間が日本一長い
○大学院進学率の全国一位は鳥取県
○北海道はコンビニ激戦区
○沖縄では全国紙の新聞がほとんど読まれていない
○京都はパン消費量が日本一
○日本によくある地名
○北陸新幹線が開業
○富山県民はハム好き?
○徳島県には医師が多い

○「○日」という地名は全国にある
○地方の人は都会の人より歩かない?
○ご当地ファミレス(1)
○ご当地ファミレス(2)
○ご当地ファミレス(3)

○ご当地ファミレス(4)
○名産土産は地元であまり食べられていない?
○あまり有名ではない産地
○日本で独自に進化したもの
○東京の専門街(書店街、道具街など)
○東京の専門街(宝飾品、繊維など)
○日本三大○○(景色編)


こちらをクリックしてください!