新国立競技場の建設については、建設費が基本設計案の1,625億円を大きく上回ることが予想され、2020年の東京オリンピック開催時に開閉式屋根の設置が間に合わないなどの問題が発生しています。

 

建設費が膨らむ要因となっているのは、2本の巨大アーチを用いた遮音用の開閉式屋根の構造にあると言われています。文部科学省では、屋根の設置を東京五輪後に先送りする考えを示しています。

 

巨大アーチの設置を取りやめれば、建設費を1,500億円程度に抑えることができ、工期の短縮も可能だという意見が出ています。

 

ちなみに、2012年のロンドンオリンピックのメイン会場の建設費は610億円、鳥の巣と言われた複雑なデザインの北京オリンピックの420億円と比べても、建設費が突出していることが分かると思います。

 

 

新国立競技場のデザインコンペが行われたのは2012年でした。一次審査(予備審査)は9月末から10月上旬にかけて行われ、二次審査(最終選考)は117日に行われました。

 

現在の第二次安倍政権が誕生したのは201212月ですので、デザインコンペが行われてザハ氏の案が選ばれたのは野田氏が首相をしていた民主党政権の時でした。

 

当時は2020年の東京オリンピック開催は決定しておらず、そもそも東京オリンピックに向けて建設するということではありませんでした。

 

 

また、ザハ氏の案はデザインコンペの募集要項の条件に違反していて、本来であれば失格になっているはずでした。

 

募集要項の応募条件として、応募者が提出する図書等について「作品は、提出後、その追加及び修正を認めない。」とあり、これに該当した場合は審査対象から除隊し、入賞発表後でも入賞を取り消して賞金の返却を求めることがあることになっています。

 

下の2つの画像は、一次審査時と二次審査時のデザイン画像です。

 

一次審査時
新国立競技場一次審査時


二次審査時
新国立競技場二次審査時


赤い楕円の線で囲んだ所を見比べると、一次審査時には立ち退きを迫られている都営霞ヶ丘アパートがありますが、二次審査時ではなくなっています。提出後は追加や修正が認められていないはずですので、ザハ案は失格となるはずです。

 

更に、これ以外にも応募条件に違反していることがありました。新国立競技場の応募条件には、高さ70メートルという制限がありました。しかし、ザハ氏の応募案は一次審査時には80メートルであり、制限を上回っていました。

 

しかし、「規定違反の状態だったのは間違いないが、修正可能と判断してデザインを優先した。ザハ氏には審査段階で70メートル以下に抑えるよう依頼し、了承を得た。それが、最優秀賞を与える条件だった。」と日本スポーツ振興センター(JSC)の担当者は言っています。

 

 

応募条件の中に「応募者は、前項に掲げる者(注1)から、デザイン教義に関し直接又は間接に援助その他情報提供を受けてはならない。」とあり、これに該当する場合は失格になると規定されていました。

 

1

(1)審査委員会の委員

(2)独立行政法人日本スポーツ振興センター職員及び事務局関係者

(3)前記(1)(2)に掲げる者と同居している親族又はこの者が自ら主宰若しくは役員、顧問等をして関係する組織に所属する者

 

以上のように、ザハ氏の応募案は幾つもの応募条件に違反していたのです。

 

二次審査では、一次審査を通過した11案に対して各審査委員が1位から3位までの順位付けをして、1位評価の多かった上位3案(コックス・アーキテクチャー、ザハ・ハディド・アーキテクツ、SANAA+日建建設)を入賞作品としました。

 

入賞となった3つの案には突出した評価を得た作品はなく、各作品について意見交換を行った上で再投票がされました。再投票でも評価は分かれましたが、再度議論をした結果、ザハ氏の案を最優秀賞に選定し、その後ザハ氏に結果報告をして了承を得て新国立競技場のデザインに決定しました。

 

ザハ氏の案に決定した理由について、「『日本が世界に発信する力』という観点からも再度議論を行い、実現性を含め、強いメッセージ性と日本の技術を世界に示すことのできる最も優れた作品として作品番号17番(ザハ氏の案)を最優秀賞に選出した。」と発表しています。

 

更に、審査委員には2名の外国人審査委員がいましたが、二次審査での議論には関与していません。二次審査については「外国人審査委員2名については、事務局が各審査委員の設計事務所に二次審査対象となった11作品のパネルを持参し、同様に1位から3位までの順位付けおよびコメントをいただいた。」と発表されています。

 

こういった経緯を含めて、審査委員会および各審査委員はJSCに責任を押し付けるのではなく、自らしっかりと説明をしていくべきだと思います。

 

 

新国立競技場の建設で混乱が続く状況で、民主党は新国立競技場の建設問題を調査する「公共事業再検討本部」を新設し、政府方針を追求するための作業に着手したようです。本部長には、国会内での撮影基準からはずれた宣伝食の強いファッション誌の撮影をしていたことで有名な蓮舫代表代行に決まっています。

 

新国立競技場のデザインが決まったのは民主党政権時ですので、そのことも含めて民主党の公共事業再検討本部にはしっかりと追及して欲しいですね。おそらく、そんなことには全く触れることなく、現政権を責めることしかしないと思いますが・・・


関連の記事)
○意味がない集団的自衛権に関する世論調査
○集団的自衛権でのデタラメな議論  
○憲法や集団的自衛権で欠けている論点
○ヨーロッパの移民政策から日本における移民受入を考える
○移民が日本を滅ぼすのか?
○憲法解釈の権限を巡る発言
○日本のリベラルは日本人に嫌われるのは当たり前
○テロを支援する政党がある?
○無投票はどの候補者にも1票入れるのと同じ
○衆議院選挙で民度が問われる地域
○まだ目覚めていない日本人が大多数
○学生の政治に対する意識
○与那国島の住民投票で陸自配備推進派が勝利
○地方では反日勢力が跋扈している?


こちらをクリックしてください!