「機動警察パトレイバー」に関する現実的考察1
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「機動警察パトレイバー」に関する現実的考察5
「機動警察パトレイバー」に関する現実的考察6 最終章

機動警察パトレイバーは1995年から2000年前後を舞台にし、その10年前の1990年前後に構築された物語でした。
この
1990年前後はバブル経済といわれた時代でありまして好景気に沸いた時代といわれています。
バブルのきっかけというのは、1985年の「プラザ合意」と呼ばれるドル価格へのG5協調介入の合意。
その結果1ドル240円前後から一気に120円前後にまで円高がすすみ、日本でものを作って国外に輸出するタイプの産業は大打撃を受けることになったのです。
いままで1ドルで売れれば240円の商いになっていたものが120円になってしまうわけですから。

そこで、政府は国内需要の喚起によって日本経済の舵取りをしました。
国外にもそう宣言してました「内需拡大」というやつですね。
その方法とは、大きく3つです。
内需拡大型の産業の最大手が建設・土木などの公共事業です。
そして低金利政策による公定歩合の2.5%への引き下げ、これは利子を下げてお金を借りやすくしてあげることです。
法人税の42%から30%への引き下げ、所得税最高税率70%から40%の引き下げ。
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その結果、
東京都臨海副都心計画、東京湾横断道路の建設計画、第二東名高速計画。
金融機関は一件あたりの融資金利が下がった分、数で補おうとして貸し出し先を増やす。
富裕層の税金が下がった分が株式や土地購入に流れ、財テクや消費の増加。
輸出型製造業も円高による原材料調達コストの低下による原価率減少による利益増。

ということで、土地を持っていさえいれば上がる、なんか作れば売れる、ちょっと高級品ならもっと売れる。
土地資産も買ったときの簿価で計上してあるため地価が上がっても持ち続けることができる。
なんだか、お金を使わなければ損、どんどんみんな儲かるような雰囲気になっていったんですね。

そういう意味で、このバブル景気と呼ばれる時代は、
土建屋と呼ばれていたゼネコンが多角化して大活躍、株屋と呼ばれていた証券会社が金融シンクタンク化して、
一般にも「ちょっとかっこいい業界」として認められるような時代になりました。

もちろん、広告やマスコミなどもそうですね、

「ユニクロ」がちょっと贅沢に感じられることが一般的になっている現在のファッション環境からは考えられないでしょうが、DCブランドが大ブームで丸井のカードによって貧乏学生でも数万もするソフトスーツやジャケットなどを羽織っていた時代です。
また、これもびっくりするのですが、「レイトンハウス」」とか「フットワーク」、「エスポ」とかいった各業界でも無名の売り上げ下位企業がワンマンオーナーの鶴の一声でF1チームを編成できたりしていたんですね。


そんなころに「機動警察パトレイバー」は連載、放映され始めたのです。

パトレイバーのアニメ版のエンディングに流れる決めゼリフがありました。
「この物語はフィクションである。・・・・が、10年後においては定かではない。」
そう思わせる状況がすでにできあがっていたといえるでしょう。

実際に、政府主導の人型ロボットの研究開発が始まったのが1998年です。
経済産業省による「人間協調・共存型ロボットシステムの開発研究」がそれですね。
しかし研究開発予算は30億程度しかありませんでした。

バブル期に多くの公共事業を抱え、東京は元より日本全体で建設工事現場は活況を呈しておりました。
どこも人手不足であり、好景気倒産とか受注倒産などといわれるような事態も起きているさなか、大手ゼネコンはじめ建設業界は、外国人労働者やバブル期の大量採用によって乗り切ろうとしていました。

本当は、この時期に大手ゼネコンを始め、重工、重機メーカーは、もっと研究予算を取って「人型汎用重機」の研究開発をおこなっていればよかったんです。自動車メーカー大手のトヨタや日産もしかりです。
大手ゼネコンといわれる鹿島、清水、大成、大林、竹中の各社とも1兆円もの売り上げを誇っておりましたし、当時レイバー開発に投入するソフトウェアには、日本が誇るトロンもありました、ジャストシステムの一太郎とかOS9/68KとかHuman68Kとかが政府採用されていれば、マイクロソフトのWindowsも存在していない時代ですし、おもしろい展開です。


そんな国内の公共事業の現場で大手ゼネコンの下で日々橋梁工事をおこなっているある企業がいました。

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「こんな大規模公共工事こそレイバーが必要だ。これからは、工事用レイバーがなくてはダメだ。」

本当にそういったかどうかはわかりませんが、いや本気でそう思ったからこそ
そこで、敢然とレイバー産業に参入してきたのが、

東京都アクアライン、レインボーブリッジ、横浜ベイブリッジ、
明石海峡大橋などの、大型橋公共工事の実績をもつ日本一の橋梁メーカー、
川田工業なのです。

川田工業の創業者である川田忠太郎は栃木県に刀鍛冶職人の家に生まれました。
祖父は藩の御用鍛冶をつとめるほどの腕前、その祖父とともに刀を鍛え長じては、
当時の足尾銅山の採掘現場の職人たちの使う折れてしまったノミやちびてしまったノミを、鍛接して直すという仕事を引き受けていたようです。
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そこから鍛冶屋として諸国を渡り歩き、最終的に妻の故郷である富山県の砺波市に、
川田鉄工所を設立します。
富山県は金属加工業が地場産業として発達した地域で、その中でも高岡はアルミや非鉄金属の地場産業が江戸時代より根強く続く地域です。
しかも、黒部ダムの電力によってもいろいろな重工軽金属工業が発展しました。
砺波は高岡から程近いエリアです。
創業者忠太郎は刃物を継ぎたすことができるという鍛接という凄い技術をもっていましたから、そこから溶接技術を発展させていたのだと思います。
その後、忠雄、忠樹社長と事業が引き継がれ、川田工業株式会社と名前を変え日本の鉄鋼橋梁工事のトップ企業にまで成長したのです。

特に、大型橋梁ということになりますと自重だけでなく、積載し通過する人や車両や荷物の加重に加え、風圧などにもしなやかに耐える必要があります。
大型の鉄鋼部材というのは、鉄のゆがみや熱の膨張などを考慮すると、溶接もボルト接合も寸法取りもエスパンションという逃がし、アソビの部分の設定などの構造設計も含め加工には、熟練と計算と精度と非常に難しい技が必要なのです。

そんな川田工業がレイバー産業に進出しようというからには、やはり決死の覚悟とわが国の次世代産業を生み出そうという気概があふれているに決まっています。

そうでなければレイバーの実用化などできませんよね。

その川田工業は2005年にHRP-2 promet といわれる二足歩行型のロボットを開発しています。HRP-2 promet
そのHRP-2の駆動時間や作業内容、防塵・防滴性能を高めたHRP-2 promet Mk-Ⅱを見る限り、promet Mk-Ⅱ
かなりパトレイバーですよね。

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それもそのはず、この promet のデザイナーはそのまんま、

「機動警察パトレイバー」のメカデザインの出渕裕さんなんです。
ITメディア記事

とするなら、1で検証した篠原重工のモデルとは20年前なら住友?三菱?石川島播磨?などが
浮かんできたんでしょうけれど、

20年後の現実は、新規参入のレイバーメーカー、
川田工業あらため川田テクノロジーズ株式会社、ここが篠原重工になる。

物語においても篠原重工は元々自動車部品の下請けメーカーであり、レイバー産業に社運を賭けて参入したということになっています。

泉巡査をフォローしている篠原巡査とは、実はこの篠原重工の御曹司なのです。
実家がレイバーを製造しているにもかかわらず、なぜか警視庁特車二課で巡査を務めている篠原遊馬(しのはら あすま)という設定は、物語の中で大きな意味をもってきます。

特車二課に襲いかかって、格闘データを取ろうとする篠原のライバル企業の実情などを、この篠原巡査を通じて伝えるという意味でもです。
最終的に篠原巡査は、やはり実家の篠原重工を継ぐことになるのではないでしょうかね。豊富なレイバー運用実戦体験を積んでいるわけですし、レイバー操縦者のことを一番わかっているわけですから。


とするなら、泉野明をフォローして「フォワードとバックアップは一心同体」
でがんばっていた
篠原遊馬は、

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定かでない20年後の今は、



川田テクノロジーで川田忠裕氏 社長をやっているということになるのです。

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川田社長は1962年生まれで放送当時25~26歳ですから、遊馬と同世代みたいですしね。


つづく

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