なんだか
おばかな方向に突っ走っていますね。
各病院の先生方、
総合診療科(総診)
が画期的な役割を果たしていますか?
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受診、最初は「総合科」→専門医に橋渡し…医療効率化狙う
2007年4月30日3時1分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070430it01.htm?from=top
厚生労働省は、専門分野に偏らない総合的な診療能力のある医師を増やすため、新たな診療科として「総合科」を創設する方針を決めた。
能力のある医師を国が「総合科医」として認定する仕組みを整える。初期診療は総合科医が行い、必要に応じて専門の診療科に患者を振り分ける2段階方式を定着させることで、医療の効率化を図り、勤務医の労働環境の改善にもつなげる狙いがある。日本医師会にも協力を求め、5月にも具体策の検討に入り、早ければ来年度中にもスタートさせる。
総合科は、「熱がある」「動悸(どうき)や息切れがする」「血圧も高い」など一般的な症状の患者の訴えを聞き、適切に治療したり、専門医に振り分けたりする診療科を指す。同省では、開業医の多くが総合科医となり、いつでも連絡がつくかかりつけの医師として、地域医療を支える存在となることを期待している。
医師が自由に看板を掲げられる内科、外科、皮膚科などの一般診療科とは区別し、総合科医を名乗るには、同省の審議会の資格審査や研修を受けたうえで、厚労相の許可を受けなければならない。国が技量にお墨付きを与えるこうした診療科は、これまで麻酔科しかなかった。
日本の医療現場はこれまで、日常の診療を行う診療所(開業医)と、24時間対応で入院と専門治療に当たる病院との役割分担があいまいだった。このため、胸の痛みやめまいなどを感じた患者が、どの医療機関にかかるか迷った末、大事を取って専門性の高い病院に集中。軽症患者から救急患者まで多数が押し寄せる病院では、医師の勤務状況が悪化し、勤務医の退職が相次ぐ一因にもなっていた。
同省では、総合科導入を「医療提供体制を改革する切り札」と位置づけており、5月にも医道審議会の専門部会で議論に入る。将来的には、診療報酬上の点数を手厚くすることも視野に入れる。
能力の高い総合科医が増えれば、初診の患者が安心して総合科を訪れるようになり、「3時間待ちの3分診療」と言われた病院の混雑緩和にも役立つ。例えば、疲労を訴える高齢者が総合科を受診した場合、高血圧など基本的な症状の改善は同科で行い、心臓などに深刻な症状が見つかれば、速やかに専門医につなぐ仕組みを想定している。
厚労省とは別に、今月から「総合医制度」の具体的な検討に入っていた日本医師会(唐沢祥人会長)も、総合的な診療能力のある医師の養成で同省に協力していくことを確認。総合科の創設についても、「患者が求める方向であり、異論はない」(地域医療担当理事)としている。
2005年10月現在、全国の病院(病床数20床以上)の数は9026で、前年比0・6%減。一方、診療所(同20床未満)は9万7442で、前年比0・4%増となっている。
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国のおいしいところは、
1.総合科を取得していない、という名目でドンドン開業医の医療費を削減できる
2.臨床研修とのシステムの整合性がとれる
3.新しい国家試験、資格であり、厚労省には新しい財源、天下り先となる
と言った所でしょうか。
1.は容易に想像がつきます。
多くの方がコメントを寄せてくださったように、
「総合科を受診すると、初診料優遇」
その代わり、今まで通りの開業医では、
「総合科以外は、初診料大幅減」
「専門医は紹介状がないと大幅収入減」
なんて、厚労省がするのは
簡単でしょう。
2.は、かねてから疑問だった、
地域医療を破壊してまで新規導入した、
「初期臨床研修は役に立っているのか?」
という素朴な疑問に答えるものです。
(1)の後半にも書きましたが、
僻地医療の大崩壊を起こしつつある
「初期臨床研修システム」
とは、(2)にあるように、
(1) 内科、外科及び救急部門(麻酔科を含む。)、小児科、産婦人科、精神科及び地域保健・医療については、必ず研修を行うこととし、研修期間はそれぞれの科目について少なくとも1月以上とすること。
(2) 原則として、当初の12月は、内科、外科及び救急部門(麻酔科を含む。)において研修すること。内科については、6月以上研修することが望ましい。
(例えば、当初の12月を内科6月、外科及び救急部門で6月研修し、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療を各3月研修することなども考えられる)
(3) 地域保健・医療については、へき地・離島診療所、中小病院・診療所、保健所、介護老人保健施設、社会福祉施設、赤十字社血液センター、各種検診・健診の実施施設等(臨床研修協力施設)のうち、適宜選択して研修すること。
なんてことをやっており、
基本的には、「医者は全身診れないとダメだから、内科と外科、救急、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科と地域医療を2年間やる」、というシステムです。
これで問題なのは、
「研修医はぐるぐる科を回っていて、お客さんでしかない」
(1,2ヶ月のみの科も結構あり、単にのぞいているだけで何も出来ないし、短期間ではやらせられない)
「結局、目指す科に入るのが2年遅れるだけ」
(精神科志望でも外科を半年とか、外科志望でも精神科を3ヶ月、と回る)
「医師の中間層の激務に拍車がかかった」
(9時5時の研修医を背中に抱えて、外来、病棟、当直などのほかに、「研修医教育」が課せられた)
という、制度上の問題です。
さらに
すでに「初期臨床研修」を
終了した医師が出てきていますが、
「この研修で、全身を診れる医師が増え、どんどん僻地医療が良くなっています」
とか、
「オールラウンドにやったから、救急は任せられます」
なんて声は
なかなか聞こえてきません。
それは当然で、
数カ月おきに、内科や外科を見たからと言って、
すぐにできるような甘いものではないからです。
単に、現存した制度をぶち壊しただけで、
メリットがなかなか見えてきません。
でも、ここに
「総合科」ができると、
「初期臨床研修」を終えて、
そのまま研鑽を積むと
「厚労省認定 総合医」の資格が取れます!
となったら、この制度自体の意味も出てくるでしょう。
ただし、
「初期臨床研修」と「総合科」を結び付けたからと言って、
医療現場が改善するとは、
限りませんが。
3.新しい国家試験、資格であり、厚労省には新しい財源、天下り先となる
は言わずもがなです。
なかなか、おいしい仕事ですね、
厚労省さん。
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総合科の問題点は、
1.総合科が、
現在すでにある「総合診療科」と
ほぼ同じコンセプトであるにもかかわらず、
「総合診療科」はシステムの打開策になっていない。
総診が増えて、専門の先生は楽になりましたか?
2.おだまきさんの言われるように、
「スペシャリストなジェネラリスト」
http://ameblo.jp/med/entry-10031956093.html#cbox
がシステム上、ねじれの位置にある、
という事です。
「総合科」は「国家資格」で、
一般診療専門。
患者さんを振り分ける。
「総合科」は優遇する。
24時間対応を基本とし、基本的人権は存在しない。
一方、
「専門科」は「国家的には無資格」
(学会認定)で、
収入の裏づけもなく、
国としては冷遇する。
…
国がこれを推し進めるのなら、
「一般診療の国」になり、
本当に必要な「専門医がますます減る」
という事になります。
3.「総合科」はつぶしが利かない。
専門性がないと、「総合科」専門では
いずれ「総合科」が比較的多くなったときに
「診療報酬切り下げ」を食らってしまいます。
他に専門があるなら良いのですが、
「総合科」のみの場合、減収を甘んじるしか手がなくなります。
私は、
将来的には
「研修医」を「総合科」に誘導して、
ある程度の「総合科医師」を
「安価な労働力」として
24時間働かせる、
という意図が見え隠れしているように
思えてなりません。
しかし現実には、
医療費抑制の名の下に、
「専門的な技量を持つ専門医」が
安価な労働力になりさがり、
「一般的な総合医」が
優遇された地位に着く、
という逆転した構図になります。
いずれにせよ、
今年から検討、来年から導入という、
あまりにも急いだ、もろいシステムの
「総合医」
を切り札にするようだと、
現在すでに起こっている
産婦人科、小児科、循環器内科、外科、脳外科など
本当に必要な「専門医の減少」
を進めてしまう可能性があると思います。
注:私は総診やその先生方に
敵対しているわけではありません。
このシステムが日本医療で稼動するには
いくつもの条件が必要である、
といいたいのです。
ご了承下さい。
(1)
『「大病院、一般外来なし」 役割分担促す 厚労省方針』 役割は本当に分担できるのか?
http://ameblo.jp/med/entry-10030973191.html
(2)
厚生労働省
医師臨床研修制度のホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/index.html
新制度の概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/shingaiyo/index.html