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病人権利と医療事故調査制度 済生会宇都宮病院 中澤堅次

        ▽ 病人権利と医療事故調査制度 ▽

                 済生会宇都宮病院 中澤堅次


 医療事故調査委員会設置法案は大綱案が出て法案化の手続きに入っているが、
まだ先行きが見えていない。ミサイルが発射台にすえられたまま点検作業をやっ
ているようなもので、いつ発射のボタンが押されるか分らない。取り返しがつか
ない惨事が起きる前に、不要なリスクを回避する議論を続けなければならない。

 厚生労働省案に対抗するのは民主党案であるが、両者を比較するとまた新しい
問題点が浮かび上がる。大綱案は当事者の間に調査委員会を、第三者として介在
させる。第三者機関は当事者ではないから、介入するためにはどうしても報告制
度が必要となる。事故は明確に定義して報告するのが難しいから、大綱案では疑
いまで網を広げて報告させ、その中からたちの悪いものを拾い上げて、警察へ通
報する仕組みになっている。犯罪を疑うなら逮捕状や任意同行など礼儀が必要だ
が、報告を怠ると罰則だというのも少し乱暴である。

 民主党案は、当事者同士の問題解決を基本にしている。問題が解決しなければ
第三者に申し出て支援を求めることになる。両者の間で問題は共有されているか
ら、大綱案のような厄介な報告制度をかます必要はない。しかし、これでは隠蔽
が見抜けないと遺族が納得しない難点がある。民主党案では、医師法と医療法を
改正し、カルテの改ざん、隠蔽を禁じ、事故の詳細を調べて説明する義務を医療
側に課している。この手のことは事故の本質とは関係しないが医の倫理と関連す
る。医の倫理はヒポクラテス以来方向性は不変で、時代を経て問題が生じるたび
に改訂を加え、最近では病人権利が定義され国によっては法制化されるところま
で来ている。

 病人権利にはインフォームドコンセントや守秘義務や実験的な医療を断る権利
など、基本的な条項が具体的に書かれている。医療事故の調査結果について説明
を受ける権利は書かれていないが、当然あってよい条項である。日本での病人権
利は法として整備されておらず、医師法はあっても病人権利法は無い。だからと
言うわけではないだろうが、エイズ騒動にしても、らい隔離政策にしても、病人
権利は無視されることが繰り返される。法制化されれば医師も役人も真剣に考え
るようになるだろう。大きいのは波及効果が期待できることで、医学教育に必須
項目として取り入れることになるだろし、現場や社会に対するインパクトは強い。
事故調法案の波及効果が現場に不信感と萎縮をもたらすのとは正反対の効果が期
待できる。

 病人権利というとしり込みする医師も少なくないと思うが、医師は病人の権利
擁護の立場に立たないと存在価値を失う。明治維新以来、日本の病院は支配層が
病院医療を文明として輸入し、昔からある施療救済の仕組みに反映されていった
いきさつがある。上から下への発展形式により、医療界には母体が異なる提供体
制がいくつも出来たが、病人の立場は最終の目的にはならず、医療のところで止
まっている。従って診療報酬は病人のためでは無く医師の報酬と考えられ、ベッ
ド数は病院経営者のためと言われる。病人権利の視点で見れば、地方の医師不足
は国の政策課題になるはずだが、医師の志向による偏在として片付けられてしま
う。

 病人権利は国家的にも議論されることが必要で、独居高齢者の生きる権利とし
て医療・介護が議論されなければならず、政府も当然それに責任を持つことにな
る。介護を地方に丸投げして貧困ビジネスの草刈場にする政策や、高齢化の需要
増にあえて病床を削減し、人材の養成を怠った政策の是非は、病人権利の視点か
ら問いなおさなければならない。

 今、日本は老人の医療介護において病者の権利を侵害するところまで来ている。
年齢階級ごとの一人当たり医療費は、それぞれの世代でこの10年間一定額を示し
増加の気配は無い。医療費の増加は純然たる高齢者の数の増加によるものであり、
技術の進歩、安全対策、スタッフの増加が、低く抑えられた医療費にすべて凝縮
され身動き取れない中で推移したと見るべきである。

 病者に掛かる保障の削減は、医療はおろか生活も出来ない人の増加につながる。
本来なら、避けられない老人のリスク管理ともいうべき社会保障が正常な経済循
環に乗らず、社会に再配分されるべき金の流れは止まり、医療費補助や崩壊した
病院再建などに、地方の財政からまた新たな支出が出る悪循環に陥っている。

 高齢病者に関する保険制度の崩壊は公費を持って補うべきである。必要の無い
道路と、一昔前の公共投資に借金してまで金を使うなら、必要なところに投資を
して金を回し、経済の循環を正常な社会のニーズに戻すべきである。この不況下
でも社会保障の厚い国は滅びていない。ぜいたく品が流通しなくても内需が安定
しているからである。これ以上社会保障削減を続けることは、高齢者が老後の危
機管理に貯めたお金を残したまま、職を失った若い世代とともに屍となる亡国の
トレンドに乗ることになる。

 医療も経済も上からボタンを掛けると下にアンバランスを生む。危機の現場に
ボタンを掛けることは、例え失敗しても国民の信頼を失うことは無い。国家の高
齢化という危機に際して、病人権利に基準を置いた普通の国になることが、不要
な国家の損失を避けることになる。

骨髄移植をすくえ 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 田中祐次

医療を救う患者主導の活動
       ――骨髄移植をすくえ――

         東京大学医科学研究所
         先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門
         特任助教 田中 祐次

 昨年12月20日付の読売新聞で、米バクスター社製の医療器具の不足により今年
の3月以降に日本では骨髄移植を受けられない可能性が報じられた
(http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20081220-OYT8T00200.htm)。
報道に前後して、日本造血細胞移植学会は今後の対応等を相次いで報告。学会が
検討している当面の方策は、保険のきかない他社製の器具を個人輸入して使用す
ることである。しかし、個人輸入、混合診療、そして莫大な費用負担等、クリア
すべき問題は複雑かつ困難を極める。その点について学会から具体的な解決策が
示されることもなく、患者や家族の方々はいまだ不安を抱いている。

 この事態を受け、いち早く動いたのは全国骨髄バンク推進連絡協議会だった。
正確な情報提供と費用負担の軽減を求める署名活動が、年明けから、患者主導で
始まったのである。

 以下、この一連の動きについて詳細を振り返る。今月末までとなっている署名
活動について、少しでも多くの読者の皆さんにご理解ご協力いただければ幸いで
ある。


【骨髄移植の1ヶ月前には確保が必要】

 今回、不足が予想されているのは、「ボーンマロウコレクションキット」とい
う骨髄移植に必須の医療器具である。骨髄提供者から骨髄を採取する際に使用す
る。

 骨髄移植は、白血病細胞の根絶を目的として大量に抗がん剤治療や放射線治療
を受けた患者さんに行われる。抗がん剤治療や放射線治療では、白血病細胞と同
時にどうしても正常な造血機能まで破壊されてしまうため、正常造血の回復に健
常な骨髄の移植が必要となるのである。

 骨髄提供者は、骨髄移植日の数ヶ月前から適正検査として身体検査、血液検査、
レントゲン検査などを受ける。また、骨髄採取時には骨髄とともに約1リットル
近い血液が失われるため、輸血が行われる。提供者は健常者であることから、骨
髄採取手術時の出血に対してはできる限り自分の血(自己血)が使われる。自己
血の貯血は、骨髄採取手術日の3週間前から病院で開始される。

 その事情を踏まえると、骨髄移植を行おうとする日の少なくとも1ヶ月前まで
に今回不足が予想される骨髄採取キットが確保されていなければ、骨髄移植は成
立しない。


【2月中にも枯渇、代替品には莫大な費用負担】

 今回の不足問題は米バクスター社内部の経営問題に端を発し、結果、同社はこ
の器具の製造部門を2007年3月に投資グループへ売却し、米国内の工場も閉鎖し
た。器具の製造はドミニカ工場に引き継がれたものの、そこでの品質・安全確認
が遅れ、工場の稼働開始が3月以降にずれ込んだ。日本では骨髄採取キットとし
て、バクスター社製の「ボーンマロウコレクションキット」のみ使用が許可され
ているため、今回の工場移転に伴って製品の供給不足が生じたものである。

 国内では読売新聞の発表に合わせて、日本造血細胞移植学会から報告があった。
12月29日には器具の在庫数に関して報告があり、年度内の器具不足が現実的となっ
た。それによれば、今年の1月からバクスター社からの供給可能な器具の数は計
185個、国内の病院に残っている在庫が計308個、合計 493 個であった。日本に
おける1ヶ月の骨髄採取数は150-160件であることから、2月中には同社からの国
内への供給が枯渇する計算となる。同社からの185 個の在庫が枯渇した後、病院
間で在庫のキットを必要施設に送り補い合う方法が学会より提案されたが、イン
フラ整備が行われておらず現実的ではない。以上のことからキットの供給不測に
伴い2月中にも移植ができなくなる施設が出てくる。

 日本造血細胞移植学会は、対策として他社製品の使用を検討している。学会は、
唯一の代替品とされるバイオアクセス社の「ボーンマロウコレクションシステム」
に、日本国内の需要を十分満たすだけの在庫・生産能力があると報告した。この
器具は1998年に米国 FDA の認可を受けており、安全性に問題はないといえる。
ただし、この器具は日本国内での使用許可が得られていないために、個人輸入に
よる混合診療が唯一の使用可能な方法である。混合診療が認められてない日本に
おいては、この器具を使用する場合、骨髄移植費用(約600-900万円)について
は健康保険を使用せずに患者本人もしくは病院が負担しなければならない。これ
は大変な経済的負担となる。

 以上、バクスター社の製品が近いうちに不足することは明らかであり、唯一の
代替品であるバイオアクセス社の器具を使用して移植を行うためには、個人輸入、
混合診療、高額医療費の自己負担の問題を解決しなければならない。しかし、学
会の発表のなかでは、それらに関する具体的な解決策は示されなかった。


【全国骨髄バンク推進連絡協議会による署名活動の開始】

 このような状況の中、いち早く動き出した団体が、全国骨髄バンク推進連絡協
議会だった。きっかけは、12月20日の新聞を読んだ骨髄移植を待つ患者の父親か
ら会長の大谷貴子さんのもとへ入った一本の電話である。大谷貴子さんは20年以
上前に骨髄移植を受けた患者で、移植後は、それまで日本になかった骨髄バンク
設立活動の中心人物として活躍した。大谷さんには今も多くの相談が寄せられ、
12月20日の父親の相談もその一つであった。

 事の重大さを感じ取った大谷さんは、協議会のメンバーと相談、知り合いの医
療者などを通じて情報を集めた。そして、3月以降の骨髄移植中止を回避するた
めに協議会を中心とした署名活動を開始したのである。署名活動の趣旨は、不安
を抱える患者や患者家族に対する正確な情報提供と、個人輸入による器具使用に
伴う医療費負担の軽減である。特に費用の問題について、混合診療問題の早期解
決が要となるため、要望書・署名の提出先は厚生労働大臣としている。

 2008年末から始動し、年が明けた1月8日には早くも署名活動をスタート。自筆
署名だけではなくFAXや電子メールでの署名受付も始めている(ちなみに協議会
が以前に行った署名活動の提出先は国会であったため、自筆署名以外は受け取っ
てくれなかった。大谷さんが厚生労働省大臣に要望書と署名用紙を提出する際に
は、自筆署名、FAXによる署名、電子メールによる署名を分けて提出する)。
自筆署名だけではなくFAXや電子メールの署名に踏み切ったのは、今回は活動
期限が短く、その中でより多くの患者や家族の声を厚労大臣に届けるのに有効と
考えたからだ。署名用紙は全国骨髄バンク推進連絡協議会の HP よりダウンロー
ドできる。http://www.marrow.or.jp/

 ところで、そもそも患者団体の活動は、1) Self Help(自助)、2) Support
(支援)、3) Advocacy and Politic action(政策提言) の3つに分類できる。
今回の署名活動の中心団体である全国骨髄バンク推進連絡協議会は、Supportと
Advocacy and Politic actionが主な活動である。

 Support 活動としては、患者や骨髄提供者の悩みに対する電話相談や白血病患
者向けの情報冊子の作成、希望者への配布を行っている。電話相談については、
相談役に医療者のボランティアを募るなど、悩みを抱える患者や骨髄提供者に対
し専門的な知識にも十分対応できるような態勢を整え、長年続けている。配布し
ている冊子は『白血病といわれたら』(500円)というもので、情報は豊富、近
年の医療の発展にも対応している。電話相談や冊子による情報提供はいずれも医
療者や医療機関と連携して行われ、全国骨髄バンク推進連絡協議会はこうした活
動を通じて患者、患者家族、医療者との広いネットワークを構築している。

 Advocacy and Politic actionとしては、2004年に「骨髄バンクを介した仲介
料の保険適用を求める請願署名運動」を全国で展開し、国会に提出した。今回の
署名活動にはこのときのノウハウが活かされている。全国骨髄バンク推進連絡協
議会以外の血液関係の患者団体としては、全国組織の会と、地域や病院ごとの小
さな会が存在する。その多くの会の活動目的は Self Help と Support であり
Advocacy and Politic action ではない。しかし、今回の署名活動には、それら
多くの患者会が協力している。患者会の代表者が自らの患者会に働きかけたり、
仕事仲間に依頼したり、また、患者会の HP でも署名協力を呼びかけている。

 今回の署名活動がAdvocacy and Politic action でありながらも、Self Help
Group や Support Group そして、血液関係以外の患者会へと活動が広がった大
きな理由はやはり、3月に移植ができなくなるという切実かつ具体的な問題が突
きつけられ、多くの共感を呼んだためと考えられる。


【医療を救え――患者主導の支援活動】

 近年、小児患者の母親らが結成した「県立柏原病院の小児科を守る会」(兵庫
県)による医療への支援活動が、地域の小児医療の崩壊を防ぎ、注目を集めてい
る。今回の活動は全国的な活動であるが、柏原病院の小児科を守る会と同様、患
者主導の医療への支援活動である。我々もこの活動に共感し、HP を用いた署名
活動を開始した

https://spreadsheets.google.com/viewform?key=pqieimcJLRy0uIomKE4-eZw&hl=ja


HP で集めた署名は、全国骨髄バンク推進連絡協議会の集めた
署名とあわせて協議会より提出することとなった。 今後の署名活動、そして大
谷貴子さんの要望書の提出、そしてその後の厚生労働大臣や医療界の対応や変化
に注目していきたい。


事故調の議論には、是非、正確な情報を! 弁護士 木ノ元 直樹

事故調の議論には、是非、正確な情報を!

弁護士 木ノ元 直樹

1 「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会」が延
々と果てしなく続いています。その議事録は全て公開されており、何が議論とな
り誰がどのようは発言をしたかを容易に知ることができる状況です。延々と続く
議事録は全て読んでいますが、その中で少々気になる点があったため、筆をとり
ました。


2 気になったのは、第15回「診療行為に関連した死亡に係る死因究明等のあ
り方に関する検討会」(平成20年10月31日(金)16:00~18:00、
於:弘済会館)です。出席者は、委員として、前田座長、鮎澤委員、加藤委員、
木下委員、児玉委員、堺委員、高本委員、辻本委員、豊田委員、永池委員、樋口
委員、南委員、山口委員、山本委員、そして、参考人として、日本麻酔科学会理
事長で札幌医科大学教授の並木昭義参考人、日本産科婦人科学会常任理事で昭和
大学医学部教授の岡井崇参考人、日本救急医学会理事で埼玉医科大学総合医療セ
ンター教授の堤晴彦参考人が出席しました。

当初予定された議題に入る前に、名古屋弁護士会所属の弁護士、加藤委員から
発言がありました。以下議事録からの抜粋です。

「お手元に“安全で質の高い医療を実現するために”という日弁連の基調報告
書が配付されていると思います。これは日弁連が毎“人権擁護大会”というもの
をしておりまして、今年で51回目なのですけれども、10月2日、3日と人権擁護大
会が富山で開かれました。その第2分科会で“医療事故の防止と被害の救済のあ
り方を考える”というサブタイトルで“安全で質の高い医療を実現するために”
というシンポジウムが開かれ、そのときの基調報告書が分厚い資料でございます。
その中で特にこの検討会と関係の強い部分としては、281頁に、院内の医療事故
調査をする場合のガイドラインというものをお示しさせていただいております。
これは日弁連のシンポジウム実行委員会の中で、医療側の弁護士さん、患者側で
日頃やっている弁護士さん、いずれでもない弁護士さん、それぞれがディスカッ
ションをしながらこしらえたガイドラインです。参考にしていただければと思っ
ております。」


3 加藤委員の上記発言内容だと、この「院内の医療事故調査をする場合のガイ
ドライン」は、日弁連の人権擁護大会のシンポジウムで採択された日弁連の総意
に基づくものであるかのように誤解される可能性があるのではないか、と心配に
なりました。「これは日弁連のシンポジウム実行委員会の中で、医療側の弁護士
さん、患者側で日頃やっている弁護士さん、いずれでもない弁護士さん、それぞ
れがディスカッションをしながらこしらえたガイドラインです。」と加藤委員は
発言しているのですが、これだけ言われると、「日弁連の中には、医療側弁護士
と患者側弁護士、そしていずれでもない弁護士という3者があり、今回のガイド
ライン作成にあたっては、あらかじめそれぞれの中から代表者を選任し、その弁
護士がそれぞれの集団の代表として議論し決定した。その手続に際して、ガイド
ラインの案が一定の段階で日弁連全体に公にされ、日弁連の所属弁護士全員がシ
ンポジウム開催前にはその案について知悉していた。」ということが当然の前提
になっているかのように誤解されかねません。弁護士に中に、医療側弁護士と患
者側弁護士、そして医療にかかわっていないそれ以外の弁護士の3類型があるこ
とは間違いないのですが、その他の部分は事実ではないのです。


4 以下、私が認識していることを述べておきます。

1) そもそも、このガイドライン自体は日弁連で議決して採択されたものではあ
りません。

2) 事前に、ガイドライン案が日弁連を通じて、全会員に示された経緯もありま
せん。

3) ガイドライン作成までの手続(これはある関係者からの情報です。)ですが、
まず、人権大会の実行委員会は、平成20年の1月から毎月1回のペースで開催
され、医療側弁護士として東京から弁護士3名、仙台から1名の合計4名が参加
しました(もう一人医療側か患者側か不明の弁護士が1名参加していたようです。)
が、いずれも、医療側弁護士からの推薦なり互選によって参加したのではなく、
加藤良夫弁護士からの一本釣りで集まったメンバーのようです。

4) つまり、今回のガイドラインの議論に参加した医療側の弁護士は「医療側弁
護士の代表」という立場ではなく、加藤委員ら主催者側から誘われたので、自ら
の意志で個人的に参加して意見なりを述べたということなのです。(勿論、参加
された医療側の先生方は皆さん優秀な方々ですが)

5) しかも、上記4名の医療側弁護士に声がかかった時期は平成19年の12月
であったようです。

6) ガイドラインの作成過程で、医療側弁護士全体に対する情報提供は全くなさ
れていません。

現在、東京には3つの弁護士会(東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京
弁護士会)が存在しますが、その各弁護士会から医療側、患者側弁護士が選任さ
れて「三会医療協議会」という委員会が設置され活動しています。平成14年度
から活動を開始し今年で7年目に入っています。医事紛争、医療裁判を中心にさ
まざまな手続論、実体論等を勉強し、裁判所との協議や都内の13の大学病院と
も情報を交換するなど活発な活動を展開しているところですが、今回の富山での
院内調査に関するガイドラインの作成については、この三会医療協議会への正式
な情報提供は一切なく、協議会の特に医療側弁護士の殆どが、人権擁護大会で院
内調査の問題が取り上げられることすら知らなかったと言っても過言ではありま
せん。私自身、昨年4月よりこの三会医療協議会の副委員長として関わっており
ますが、人権擁護大会直前まで全く知りませんでした。

7) 上記シンポジウムの基調報告書(560頁以上に及ぶA4版の分厚い資料)
自体、日弁連の会員全員に配られてはいません。シンポジウム主催者(主に患者
側弁護士)は、医療機関、医学会などに無料で配布しているようですが、私を含
めたシンポジウムに全く関係しない弁護士は、2000円払って購入しなければ
ならない資料とされています(実は、私はある医療側弁護士から無料で貰ったの
ですが、それは「特別」のようです。)。日弁連の会員一般には2000円で販
売しつつ、日弁連会員以外には無償で頒布するという方針がどこでどのように決
定されたのかについても、私は全く知りません。


5 つまり、「ガイドライン作成には医療側弁護士の代表も参加しており、医療
側弁護士全体の意も反映されている」というものではないのです。

私は医療側弁護士ですが、後から読ませてもらった「院内事故調査委員会ガイ
ドライン」については相当異論があります。このような内容のものが、日弁連会
員の総意であるかのように国民全体に誤解されては困ります。

こんなところにも、延々と続く事故調第三次試案、法案大綱の議論の危うさを
感じるのです。果たして、正確な偏りのない情報に従って、正しく議論がなされ
ているのだろうか・・・と。


とにかく、事故調の議論が、是非とも、正確な情報を基にして公明正大になさ
れることを、あらためて強く求めるものです。もしそれができないのであれば、
検討会は中止していただくのが筋だと考えます。(今さらこのようなことを言わ
なければならないこと自体甚だ遺憾ですが・・・)

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