早発閉経の遺伝子 その2  | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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2014.5.14「早発閉経の遺伝子」では、早発閉経(早発卵巣不全、POI)に関連する遺伝子として、PAI-1遺伝子多型についてご紹介いたしました。本論文は、SOHLH2遺伝子変異が早発閉経に関連することを示しています。

Fertil Steril 2014; 101: 1104(中国)
要約:中国人364名、セルビア人197名の早発閉経(40歳未満、半年以上生理がない、2回測定したFSH>40)の女性および中国人対照群400名、セルビア人対照群200名のSOHLH2遺伝子変異を解析しました。中国人の早発閉経では、p.Glu79Lys、p.Glu105Gly、p.Thr321Pro遺伝子変異が、セルビア人の早発閉経では、p.Leu120Phe、p.Leu204Phe遺伝子変異が認められました。

解説:種々の転写調節因子が卵子形成過程で発現されており、その代表格はFIGLA、NOBOX、LHX8、SOHLH1、SOHLH2などです。これらの因子は卵巣に特異的な遺伝子である、BMP15、GDF9、ZP1、ZP2、ZP3、POU5F1の発現に関与しています。特に、SOHLH1とSOHLH2は、ごく初期の段階の卵子形成(原始卵胞から1次卵胞)や精子形成に関与していることが知られており、SOHLH2遺伝子の欠損マウスでは、卵巣萎縮と不妊をきたします。このような背景をもとに本論文の研究が行われました。

p.Glu79Lysとp.Glu105Gly変異箇所については、種を超えて保存されている領域でもあり、おそらく重要な部分であると推察されます。

下記の記事も参考にしてください。
2013.10.23「☆GDF9遺伝子変異でAMHが減少します」
2013.8.29「BRCA遺伝子変異があるとなぜ早発閉経になるか」
2012.10.26「AMHは人種によって違う」