自閉性スペクトラムとインターネットの関係など | kyupinの日記 気が向けば更新

自閉性スペクトラムとインターネットの関係など

今回、向精神薬の離脱症状について、実際に臨床に関わる精神科医としての意見を一連の記事でアップしている。

その際に、コメント欄およびメールなどでいくつか質問や意見がみられた。参考欄でリンクしていないが、過去ログを読めば容易に関係性がわかるものが大半であった。

このブログは2006年から始め、既に8年間を超えているため、過去ログまで全て読んでいる人はかなり少ないのではないかと思う。これはやむを得ない。

そのいくつかの質問の中で、「kyupin先生は精神科の薬を飲んだことがありますか?」というものがあったが、その答えは過去ログにあるし、他の精神科の意見も少ないがアップしている。(その他、星新一など)

その象徴的なものは、「体験・ジェイゾロフト」であろう。その他として、「メラトニン 」の最後のパートにも記載している。以下再掲。

僕は常用している薬はないが、本か何か読んでいて頭が冴えて眠れず、しかももう午前4時近いときは仕方なくメラトニンを服用することがある(年に3回くらい)。でも、僕は薬に弱いので、これでも朝少し残る感じになる。が、おそらく例えばマイスリーとかハルシオンだとそれどころではないと思う。早い時間でたまに眠れない時はリスミーの1mgを飲むことがある(年に2回くらい)。僕は、リスミーはあまり患者さんには処方しないのだが自分は服用する。なぜリスミーなのかと言うと、これしか自分に合うのがなかったから。ハルシオンとかレンドルミンは全然ダメ。患者さんに処方しないのは、リスミーは効かないという訴えが患者さんに多くあまりに不評だからで、他に特に意味はない。少なくとも、自分がたまに服用しているからと言って、じゃんじゃん処方するよりよほどマシと思うのである。そんなわけで、僕がもし狂牛病で死んだら、殉職したと思ってください。


自分は金属アレルギー、油によるアレルギーがあるなど、むしろ特異体質の方だ。しかし、最近、あまりに腰痛が酷くてリリカを服薬した。ところが25㎎では効果も感じず、添付文書通り1日75㎎を2回、つまり150㎎服用したら、全然副作用的には大丈夫だった。効果は秀逸で少なくともロキソニンよりずっと良かった。若干眠いが仕事には支障がない。自分は薬に関しては忍容性は低い方だが、それでも一様ではない。

インターネットの人々と離脱症状については、インターネットにヘビーに関わる(接続時間、つまり閲覧時間が長い)は、自閉性スペクトラムの特性を持つ人が相対的に多いことを言っている。過去ログでは、「2ちゃんねるとアスペルガー 」「マーガレット・サッチャーとモリッシー 」「希死念慮とモリッシー」「Xファイルの宇宙人にさらわれる話」などが参考になる。すぐ思い出した記事がこれらなので、それ以外もたぶんあると思う。

一般に、自閉性スペクトラムのいわゆる三つ組の障害は、

1、対人関係
2、コミュニケーション
3、想像性(こだわり、限定的な興味を含む)


が挙げられているが、それ以外にも良く診られる所見がある。ただし、以下は必要十分条件にはなっていない。(その所見があるからと言って、必ずしも自閉性スペクトラムと診断できないという意味)

例えば、

4、感覚特異性

などである。その他、社会性の問題、性同一性障害を持つ傾向、睡眠障害、発達性協調運動障害(不器用さ、運動神経が良くないことに関係)、心の理論優生思想に陥りやすい傾向(嫌韓やヘイトスピーチに関連)、衒奇的動作など多岐にわたっている。

また、自閉性スペクトラムの人たちは、感情の発達の遅れも指摘されている。例えば、

1、我慢がきかない。
2、かんしゃくを起こす。
3、だだをこねる。
4、大声を出す。
5、物を壊す。
6、引きこもる。
7、他人の感情に気付きにくい。


などである。思春期をとうに過ぎているのに、実質、幼児レベルだったりする。

しかし、テレビなどを観ているとわかるが、例えば性同一性障害があるからといって、必ずしもイコール自閉性スペクトラムとは言えない。他の所見も同様である。ここが混乱しやすい点と思われる。(必要十分条件ではないという意味)

「それはインターネットの人だからです」と言う表現には、上記の「感覚特異性」が大きく関わっていると思われる。最近のコメント欄に、以下の意見、

リア充の人は離脱症状は見られないように思います。普段から外に出て体力があり、人と関わると頭も使いますから気力も充実しています。気力体力共にある人は、薬の離脱症状はあまり見られないです。一方で、引きこもっていてお母さんに病院に行ってもらって薬だけ貰ってきてもらう人は、とんでもなく離脱症状が起こります。こういう人は一日中家でインターネットをしています。離脱症状が出たとしても、1時間くらい散歩をしたら離脱症状が感じなくなったというのは可笑しな話ですがよくあります。外に出て体を動かしましょう。

がある。これは、たぶん擁護していただいたものと思うが、このように見えるのは、上記に記してきた内容の結果だと思われる。つまり、引きこもりだから離脱が出やすいのではなく、引きこもりの人には大きい割合で自閉性スペクトラムの人が含まれていることを示唆している。もちろん、就労していると、他に考えることが多いので、自分の体のことに気が回らないこともある。(自閉的生活では、注意が内向きになりやすく、離脱症状もより気になるであろう)。

離脱症状はkyupin先生の個人的な感想であって、実際は、そうではないのではないかと言う意見もあった。しかし、あらゆる向精神薬の発売前には治験なるものがあり、治験期間は中期~長期にわたり服薬させるが、いったん終われば、発売までに再び中止されるのである。いくら奏功していていてもそうである。また、治験中に何らかの副作用で中止になった人たちも経過観察の管理下に置かれる。

その後、たいてい数年後に発売になるため、少なくとも上梓されている向精神薬は全て中止できているのである(薬自体がなくなるため)。それも大変な数の患者さんたちである。離脱症状がが酷く、その人の人生を変えてしまうようなものが比較的少数でもあれば、問題になって発売できないということもありうる。ところがそうなっていない。

その後、メーカーは発売後も注意して副作用(もちろん重度の離脱も含まれる)を観察する義務があり、発売後、一定の期間後の報告が行われている(結構、厚い文書。実際、発売後に明らかになる副作用もある)

モリッシーは思春期にヴァリウム(セルシン)を服薬していたと言う話が過去ログに出てくる。ということは、このタイプの今も発売され続けている薬は全世界では少なくとも数千万の人々が服薬経験があると考えられる。(モリッシーは現在55歳くらい)

現場感覚と実際は違うと言う意見があるが、上記のようなことから、少なくとも離脱症状で極めて困難な状況に至る人は稀有と言って良いのは確かだと思われる。

自分は結構論理的に記載していると思うが、それでも色々な反論があるのも、インターネットの人々だからなんだろうと思う。それは自閉性スペクトラム的認知のゆがみがたぶん関係している。

自閉性スペクトラム的認知のゆがみとは、
1、全か無か思想
2、一般化のし過ぎ
3、マイナス化思想
4、結論の飛躍
5、過大視と過小評価
6、感情的決めつけ
7、すべき思考
8、レッテル貼り
9、自己関連付け
10、心のフィルター


などを言う。これまで長く臨床経験を積んできて、なおかつ8年以上にわたり、いろいろな症例をアップしてきていることも考慮してほしい(そういう経過、つまり臨床経過に離脱症状が観察されなかったと記載している)

なお、極端な反精神医学的記載をする人がいるが、それは自粛してほしい。このブログは滅多にアクセス禁止やコメント削除はしない方針だが、過去にあまりにも酷い人はアクセス禁止にした人もいる。

その理由は、このブログは、たまたま検索して訪れている人たちも多いからである。そもそも、ここの読者のほとんどの人たちは、そのような話を聴きに来てはいない。

アメブロメールでは、「kyupin先生、もう放っておいて良いですよ」というものもあったが、このまま終わりにするのも良くないと思ったので、今回、特別に補足的なエントリとしてアップしている。

なお、2014年はこのエントリが最後になります。

みなさん、良いお年を。