抗うつ剤は効いて来るのに本当に3ヶ月必要なのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

抗うつ剤は効いて来るのに本当に3ヶ月必要なのか?

最近、NHKや民放で「うつ」と薬物治療についてのドキュメンタリーが立て続けに放映された。僕はリアルタイムでは観ておらず、気が付いたときにDVDレコーダーのハードディスクに予約録画しておいた。

だから、放映されたすべての番組は録画していない。最近になり、まとめて観たが、1つの話題としてSSRIが暴力行為の原因(誘因?)になることが挙げられていた。

まあそういうこともあるが、ああいう放映の仕方だと、SSRIはあまりにも危険な薬であるとユーザーに変な偏見を持たれるような気がした。あのような事件があるのはあるが、確率的には稀といって良い。また、あの放送で出てきた犯罪にしても「責任能力なし」とはされていなかったので、薬物が間接的に関与していると言った感じだ。

過去ログでは、うつ状態の人に安易にSSRIを投与すると希死念慮を悪化させるのではないかと言う意見を書いている。

あの番組はややバイアスがかかりそうな内容だった上に、オチが気にいらなかった。だったらどういう風にしたら良いかと言う対策みたいなものが、変な方向に行っているように思われたからである。

ある番組では「抗うつ剤は効いて来るのに3ヶ月必要」と言うのが出ていたが、これは非常に誤解を与える内容だと思った。

普通、抗うつ剤は早くは効かないものがあると言うのは正しい。例えばSSRIは効果の立ち上がりが遅い抗うつ剤に入り、過去ログでも28日目に突然、不連続に効き始めた人の話をアップしている。

しかし一般的に言えば、SSRIほど効果の発現が遅い薬物はむしろ稀なのである。一般に、アナフラニールの点滴では、実施したその日にかなり自覚症状が改善する人が多い。それも半アンプルくらいでだ。(1アンプルは25㎎)

また、アンプリットやトレドミンは早ければ5日くらいで効果が出てくる。また、ブプロピオンなどは飲んだその夕方には効果が出る人もいるほどだ。ルジオミールなどの4環系抗うつ剤やアモキサンなどもSSRIよりは効果の発現は早い。

3ヶ月とか奇妙な基準はひょっとしたら、うつ状態は3ヶ月くらいは様子をみないと薬物が効いているかどうかわかりませんよ、という意味だったかもしれない。

しかし臨床的には、明らかに効いていないように見えるものを、効果の発現が遅いかもしれないという理由で長く粘るのは非常に苦しい。なぜなら、そこまで効かないものを使い続けることで、患者さんが失望し自殺する危険性があるからである。

普通、抗うつ剤はうつ状態の人に使う。(←基本)

だから効く効かないを早く見極め、無駄な時間をかけず、全速力で治療する方が予後がずっと良いのである。生命予後を含めても。できれば試行錯誤なく一発でベストの薬物を選択したい。

「3ヶ月くらいかかる」というのを間に受けて、治療にダラダラ時間をかけてしまうと、良くなるものもこじれて難治性になりかねないと思う。

先手必勝、後手必敗。

サッカーと同じなのである(サッカーは先制点を取ると、ほぼ負けないチームが存在する)。

参考
デプロメール
希死念慮の謎
パキシルとアンプリット
パキシルはコーティングするのか?
アンプリット