アンプリット | kyupinの日記 気が向けば更新

アンプリット

一般名;塩酸ロフェプラミン

アンプリットが現在どのくらい処方されているか、ちょっと興味ある。病院に置いていないところもあるのではないかと。アンプリットは本邦で開発されている。第一製薬からの発売なので、この会社だと思うが自信なし。剤型は10mgと25mg。150mgまでの用量で治療される。薬価も25mgで21円くらいとかなり安い。150mg処方しても、120円程度である。まあかなり前から発売されているので、まぁこんなもんだろう。

 

アンプリットは代謝されてデシプラミンに変化し、これは強いノルアドレナリンの再取り込み阻害作用を持つ。(トフラニールの項を参照。2006年7月19日のブログ)半減期はアンプリットは2.7時間、デシプラミンが3.4時間であり、一般的な抗うつ剤に比べかなり短い。古典的抗うつ剤、トフラニールやトリプタノールに比べ中枢性抗コリン作用を欠き、鎮静作用、筋弛緩作用、運動失調作用はきわめて弱く、けいれん増強作用はみとめられない。全般に副作用が少なく、抗うつ効果もトリプタノールやトフラニールに比べやや弱いといったところか。

 

臨床上、処方してから効果の出現が3環系にしてはやや早いような印象がある。また効果はやや弱いとは言っても十分な程度で、以前はアンプリットをよく処方する医師がいた。アンプリットにはファンがいるが、その理由は揃っていると言えた。(アンプリットのファンは医師のこと、患者さんではない) 古典的な3環系だと、どうしても口渇や尿閉などが出て使えない時にアンプリットだとうまくいくケースがみられる。しかし、効果的にはやや落ちるかなと思うことはけっこう多いような気がする。例えば、トリプタノールから変更すると効果が不足しているようなことを言う患者さんの方が多い。それでも、効果と副作用をてんびんにかけて、アンプリットでちょうど良いという人はわりといる。あと、統合失調症のうつ状態にあんがい相性が良いような。デプロメールなどよりさっぱりとした効き方をするような気がする。

 

最近、SSRIを含め、唯一アンプリットだけ合うという人に初めてあった。すべての抗うつ剤をためしたわけではないけど。こんな感じ。

 

パキシル・・・・・・・・・最高量で無効
トレドミン・・・・・・・・・最高量で無効
レスリン・・・・・・・・・・最高量ではなかったが無効
テトラミド・・・・・・・・・無効
(ここでうちに転院、入院)
アナフラニールの点滴、内服・・・無効
トフラニール・・・・・・・やや良いが不十分
トリプタノール・・・・・・やや良いが副作用でダメ
アモキサン・・・・・・・・副作用でダメ
ルジオミール・・・・・・副作用でダメ
アンプリット・・・・・・・・奏功、軽快退院

 

これをみると、抗うつ作用が強ければ良いというわけでもないんだな。ちょっと面白いのが、電撃療法は最後まで考えなかったこと。これは希死念慮があるような深刻なうつ状態ではなかったことと、時間をかけて治療してよい状況だったことが大きい。この患者さんは、なぜか薬物療法でなんとかなりそうな気がしたんだな。最初、アナフラニールやトリプタノールでうまくいかないとわかった時はかなり難しい患者さんと感じた。アンプリットでダメだったら電撃療法も考慮していたかもしれない。

 

アンプリットは国産だが、外国でも処方されている。ただアメリカでは発売されていないので、ややエビデンスが少ない。英国は薬物にはいろいろうるさい国だが、アンプリットも使用されている。以下は数年前に2chのメンヘル板で質問に答えた時の過去ログ。

 


500 名前:優しい名無しさん投稿日:2000/11/09(木) 06:53
初めて質問いたします。私は英国在住の主婦(38歳)です。 鬱歴は約2年で、こちらの病院で治療を受けています。 抗鬱剤は、fluoxetine -> fluvoxamine -> citaloprame -> venlafaxineと使ってきましたが効きが今一つ、特に不安焦燥感と倦怠感がひどいということでlofepramineを服用し始めました(主治医はvenlafaxineからの切り換えには1ヶ月以上かけて慎重に進めてくれました)。昨日から朝70mg、夜140mg飲んでいます。 気分的には落ち着いていていいのですが、眩暈、頭痛、ホットフラッシュ、冷えといった自律神経失調症状がひどくなったような気がします。 この自律神経失調症状はlofepramineを服用し続けていれば、改善されるものなのでしょうか。それとも夜の分を少し減らしたほうがいいでしょうか。次の通院まで10日近くあるので若干心配です。 ちなみにそれ以外に服用しているのは、睡眠剤としてpromethazineを就寝1時間前に25mgX2Tのみです(英国では依存の問題があるということでベンゾ系の睡眠薬や抗不安剤はなかなか処方してくれません)。御回答のほど、よろしくお願い申し上げます。

 


507 名前:kyupin投稿日:2000/11/09(木) 20:03
>>500 名前: 優しい名無しさん

ちょっと製品名に書き換えて他の人にもわかりやすいようにします。
fluoxetine -> fluvoxamine -> citaloprame -> venlafaxine
プロザック>>デプロメール>>セレクサ>>エフェクソール

最初3つがSSRI、エフェクソールがSNRI。日本ではデプロメール以外は未発売です。

lofepramine=アンプリット(3環系抗うつ剤、日本でも使用)
promethazine=ヒベルナ、ピレチア。薬剤性パーキンソニズムに使用されるが、この場合抗ヒスタミン作用の眠気を期待したものと思う。 最初SSRIなどを使用しあまりうまくいかなかったため3環系抗うつ剤を使用されたものと思います。

 


508 名前:kyupin投稿日:2000/11/09(木) 20:04
続き。
lofepramine=アンプリットは、日本では随分前から発売されている3環系抗うつ剤です。3環系抗うつ剤の割に効果の出現が早く評判は比較的良いです。 ただ、日本ではたくさんの抗うつ剤があって、頻繁に使用される抗うつ剤ではないです。 イギリスは非常に薬の副作用~有害作用に敏感な国で、すぐに発売中止にしてしまいます。例えばハルシオンは一時期、問題が出た時にすぐに発売中止にしてしまいました。 アンプリットはイギリスでは人気のある3環系抗うつ剤らしいです。その理由は、3環系の割に用量が多い時に副作用が少ないためです。(ここがイギリスらしい)アメリカでは発売されていません。

 


509 名前:kyupin投稿日:2000/11/09(木) 20:05
さて本題ですが、一応アンプリットの力価はトフラニールやトリプタノールなどの3環系抗うつ剤と同等とされていて、日本での使用量は150mgまでになっています。 一般に日本でうつ病を治療している時に、トリプタノールやトフラニール、あるいはアンプリットを使用する際、75~150mgの間で決着がつくことが圧倒的に多い。 これ以上使えないわけではないが、そこまでその薬にこだわらなくても他にたくさん薬はあります。 だから、これが結論ですが、あなたの使用量210mgは日本人にしては多いと思います。同じ薬を使用する場合、アングロサクソンと日本人では使用量がずいぶん違うことが多い。一般に日本人は少ないです。 主治医のドクターはあまりそのあたりのことを知らないのかもしれないです。今あなたにみられる、自律神経症状はアンプリットの副作用の可能性があります。よく自分の症状を主治医に伝えられれば、理解して調整してくれるように思います。

 


511 名前:500です。投稿日:2000/11/09(木) 21:15
kyupin先生、迅速かつ丁寧な御答えをありがとうございました。lofepramineは私の精神状態にはいいような気がします。ひどかった不安感が随分収まりました。以前より、気分的には楽です。 しかし、自律神経失調症状は相変わらずひどいので、とりあえず夜の分を減らしてみようと思います。そして次回の診断の時に、kyupin先生のお話を主治医にしてみます。本当にありがとうございました。