パキシルとアンプリット | kyupinの日記 気が向けば更新

パキシルとアンプリット

パキシルはうつ病圏やパニックなどの人たちに広く使われているが、SSRIの効き味っていまいち好きになれない。もともと、セロトニンなる神経伝達物質は人間の快感というか、喜びみたいな感覚に繋がっていないと思う。これは僕が思っているだけかもしれないけど。だからうつ病がたとえばパキシルやジェイゾロフトでまあまあ良くなっていても、なんとなくグズグズしていてスカッとしている感じではないのよね。

このブログでは僕の親戚の子を治療した話が出てくる。この子は最初はパキシルの最高量まで使っても、かえって希死念慮が高まるようありさまだった。その上トレドミンまで合わされて、なにやってんの?という感じだったけど、うちの病院に来てあっという間に寛解。結局3環系抗うつ剤で良くなった。

最近、来た子の場合、パキシルで異常感覚が出ていた。首筋や後頭部がカッカするのだという。パニックは改善しているのだけど、不快感がトータルでは増していた。パニックが消失していても、その不安感というか苦しさが他の所に分散しているような感じで、今まで通り不快なままなんだ。こういうのは、きわめてセロトニン的というか、SSRI的だと思う。

上のパキシルで失敗している子だけど、アンプリット50mgで気持ち良いほど良くなった。それもあっというまに。アンプリットを服用し始めて爽快さが違うのだという。心地よさというか。こんなタイプの患者さんは、きっぱりとパキシルやデプロメールをやめて、副作用の少ない系の旧来の抗うつ剤で治療したほうが良い。

僕は、SSRIでダメだと思う時、何を使うかはあまり決めていない。その人の雰囲気で良さそうなものを使う。もちろん臨床症状に即して選んでいるが、この薬かこの薬のどちからかが良さそうだと2つくらいに決める。僕の場合、このどちらかが奏功することが多い。この人の場合、2番目にアンプリットを使ったら、あっという間に良くなった。

本人によれば、「以前の自分に戻った」のだという。

数ヶ月前に、これはノリトレンが良いかもしれないと思うことがあった。その理由はノリトレンは心臓に負担が少ないなど全般に副作用が少ないことがある。今は、うちの病院ではノリトレンも再購入して処方している。

SSRIはうつやパニックを治すけど、なんか不全感の残るような治り方しかしないケースも多い。治っているのは治っているけど性欲を喪失していたり、意欲がいまいちわかないというか、何もかも興味を失っていることがある。いわゆる、SSRIっぽい無関心さ、空虚さ。「空虚」というとちょっと統合失調症っぽくて言葉が違うのかもしれないけど。パキシルやデプロメールは治しているのかもしれないけど、自分らしさを失っているのが相当に良くないと思ってる。

これはどんなメカニズムかわからないのだけど、基本的にセロトニンがそういう快感を妨げているのと、セロトニンはドパミンニューロンを抑制するため、セロトニンのアップが引き起こしたパーキンソン的な「うつ」みたいなものも関係があるのかもしれない。

ドーパミンが涸れ気味だと、そりゃ人生、面白くはないわな。

それに比べ、ベンゾジアゼピンはある意味、麻痺させている面もあるけど快感に繋がっている。だから、ベンゾジアゼピンの不安薬や眠剤は大量服薬の薬物によく選ばれている。

患者さんのパキシルやデプロメールの大量服薬は意外に少ない。これはたぶん、パキシルを大量服薬しても、ろくな夢をみないのをみんな直感しているからだと思う。パキシルなどのSSRIはそんな薬たちなのである。

参考 
パキシル
ジェイゾロフト
デプロメール
アンプリット
ノリトレン
サルバドール・ダリ
親戚の子の話