日本未発売の向精神薬と催奇形性の話 | kyupinの日記 気が向けば更新

日本未発売の向精神薬と催奇形性の話

こういう話は書いても仕方がないといえばそうなのだが、今後本邦で発売になる可能性が高い薬物もあるので、少しだけアップすることにした。このような話はインターネットに書く人もあまりいないと思うし。お正月だしね。

まず、今年発売になりそうなミルタザピン。これはレメロンという名前で既にアメリカで発売されており、このブログでも2つエントリとして紹介している。(参考1参考2

アメリカで発売されているレメロンは剤型は15、30、45mgの3剤型という不思議な数字になっている。維持量は15mg~45mgとされているが、こういう用量は日本人では下がることが多い。日本での剤型は10と20mgか、10mg以下の剤型が発売される可能性すらある。アメリカのレメロンのカテゴリーは4環系抗うつ剤となっている。

ミルタザピンの催奇形性ランキングはCである。(参考

シタロプラムというSSRI。シタロプラムはセレクサという商品名で発売されており過去ログでも紹介している(参考)。シタロプラムそのままが、セレクサであり、シタロプラムの中で光学異性体で効果がない薬物を減じたものが、レクサプロである。セレクサとレクサプロの関係はタリビッドとクラビットの関係に似ている(参考)。

セレクサの剤型は錠剤として10、20、40mg錠がある他、10mgの水薬がある。セレクサはアメリカではパニック障害、強迫性障害、社会不安障害の適応はなく、単にうつ状態(うつ病)だけになっている。それに対し、レクサプロは剤型は5、10、20mgの3剤型と5mgの水薬。適応も「大うつ病」に加え、短い期間の全般性不安障害(GAD)も認められている。

セレクサ、レクサプロの催奇形性ランキングはCである(参考)。

ブプロピオン。この薬は僕は発売が近いような気がしていたのだが、未だ発売されない。この薬物は、一応、抗うつ剤ではあるが経口の禁煙薬としても発売され、同じ薬物なのに製品名が異なっている。ウェルブトリンの適応は、うつ状態(うつ病)と季節性感情障害になっている。ウェルブトリンの作用機序はよくわかっていないが、ノルアドレナリン、セロトニン、ドパミンの弱い再取り込み阻害作用を持つと言われる。特徴としては、体重を増やさないらしい?のと催奇形性ランキングが比較的良いことだと思う(参考)。副作用は、口渇、不眠、振戦、中毒疹などがみられ、そう少ないとは言えない。SSRIとの作用の相違だが、SSRIがやや鎮静的に作用するのに対しウェルブトリンは積極的に元気を出すタイプであること。ちょっと思ったのだが、不眠の副作用があがっているとか、元気を出すというのが、エビリファイっぽいと思った。(使ったことはなく勝手に言っていることに注意)

抗うつ剤・・・ウェルブトリン
禁煙薬 ・・・ザイバン

ウェルブトリン、ザイバンの催奇形性ランキングはBである。

ベンラファキシン。エフェクソールという商品名で発売されているSNRI。アメリカの適応は、うつ状態(うつ病)、全般性不安障害、社会不安障害、パニック障害、大うつ病の再発予防となっている。このSNRIであるが、世界で莫大の売り上げを誇っている。2001年に広島のCINPに行った時、重いうつ病にはSNRIの方が良いというようなことを聞いたが(参考)、トレドミンをみる限りそのようには見えない。どうもエフェクソールはトレドミンよりはパンチ力があるような抗うつ剤に見えるが真相は謎だ。

エフェクソールの催奇形性ランキングはCである。

ブスピロン。商品名はBuSpar。これって、なぜ真ん中に大文字が入っているんでしょうか? セロトニン1Aアゴニストで、このブログでもエントリとして上がっている。本邦で発売中のセディールと同系統である。抗不安薬で、5、7.5、10、15mg錠の4剤型がある。不安障害全般に処方されているようである。

ブスピロンの催奇形性ランキングはBである。

過去ログでミフェプリストンという堕胎薬がアップされているが、このエントリで書かれている精神科治療についてはアメリカでは正式な適応がない。よって公式には「堕胎のため」のみを認めているらしく、催奇形性はもちろんXである。

このように見て来ると、本邦未発売の向精神薬は催奇形性のリスクがそう悪くはないものが多いことがわかる。日本の抗うつ剤と抗不安薬には今やBランクがほとんどないからだ。催奇形性の点で考えると、これらの薬物はできるだけ早く発売された方が良い。

リタリンのように中止にするのは素早いが、導入はずいぶんモタモタするのが日本である。お役所仕事なので何かあった時のことを心配しているのだろうが、発売してからでないと臨床の実際はわからないって。これはジプレキサやセロクエルの高血糖の副作用やタミフルの副作用?などを見てもわかる。レニベースなどの咳の副作用は治験時には捕捉されず、発売されて実際に臨床経験を積んでからわかってきたのである。

まとめ 
ミルタザピン  C
セレクサ    C
レクサプロ   C
ウェルブトリン B
ザイバン    B
エフェクソール C
ブスピロン   B
(ミフェプリストンX)


上記以外の薬物、クロザピン、セルチンドール、ジプラシドン(以上、抗精神病薬)、トラニルシプロミン、フェネルジン(以上、抗うつ剤)は重篤な副作用、あるいは他剤相互作用などを持ち、アップすること自体に問題があると思うので紹介しません。クロザピン以外は本邦で発売される可能性も極めて低いというのもあります。

参考
抗うつ剤の最小治療量
抗うつ剤の体重増加について
単極性、双極性の激うつ対策本部

(このような催奇形性の話の責任は一切負いません。このようなことは今後はいちいち書かないこともあるがご了承ください)