ミザリー

“キング・オブ・モダン・ホラー”スティーヴン・キングの同名小説を映画化。吹雪の中事故に遭い重傷を負った人気作家が狂信的なファンの家に監禁される恐怖を描く。

【STORY】
人気作家ポール・シェルダンは、自らの人気シリーズ「ミザリー」を完結させ、新たな作品をコロラドの山荘で執筆していた。そして書きあげた作品をエージェントに届けるため、猛吹雪の中を車で出発する。しかしポールは、途中の雪道で転落するし重傷を負ってしまう。そこへ付近に住むという元看護師でポールの熱狂的なファンであるアニーに助けられ、献身的な介護を受ける。ある日、待望の「ミザリー」最新刊を読んだアニーは、ミザリーが死んだことを知ると激怒し、態度を一変させる。部屋に鍵をかけてポールを監禁したアニーは「ミザリー」を生き返らせる続編を書くように強要する。アニーの異常さを知ったポールは、彼女の機嫌を取りながら自由の利かない身体で何とか脱出しようとするが…。

【REVIEW】
スティーヴン・キングがジョン・レノン暗殺事件をヒントに書いたといわれる原作を『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナーが製作・監督した作品。

本当に「怖い」作品である。
アニーを演じるキャシー・ベイツの怪演に尽きる作品である。すばらしい。
『タイタニック』『地球が静止する日 』など、その後の彼女の出演作品に注目してしまうほどである。
キャシー・ベイツはこの作品でアカデミー主演女優賞を獲得している。
ちなみに人気作家ポール・シェルダンを演じるのは『ゴッド・ファーザー』で主人公マイケルの兄で突貫小僧のソニーを演じたジェームズ・カーン。おぉ、ひさしぶり。

小説「ミザリー」シリーズで人気を博した作家のポール。だがポールは「ミザリー」とは違うテーマの作品に意欲的だった。そこで主人公ミザリーの死によってシリーズを完結させ、新しい作品の執筆に取りかかるのである。ようやく書き上げたポールは毛吹雪の中原稿を届きるために車を走らせる。が、不運にも事故で重傷を負う。そこへ偶然？通りかかった元看護師のアニーに助けられるのである。
アニーの家に運ばれたポール。手当てを受け、献身的な介護を受ける。アニーは命の恩人だった。そしてアニーはペットの豚に「ミザリー」と名付けるほど小説「ミザリー」とポールのファンであった。自称「あなたの一番のファン」らしい。

と、ここまでは非常にほほえましい話である。

だがしかし、待ちに待った「ミザリー」シリーズの新作が発売され、それを読んだ後、アニーは豹変する。

どえらいテンションでポールを罵倒し、自分の家族が殺されたかのように怒り狂う。

誰からも理解されず孤独な日々を送るアニー。唯一の楽しみは小説「ミザリー」。ミザリーに自分を投影し喜怒哀楽をともにしてきたのであろう。たぶん。そんな愛すべき主人公のミザリーが突然死んでしまった。生きる希望を捨て去られ、自分自身も否定された気分だったのであろう。とにかくあの怒り方は尋常ではない。逆に、実はミザリーは死んでおらず生き返ることを聞いた時の喜び方も尋常ではない。とても純粋で情熱的な性格なのだろう。

これぐらい激しい感情の起伏、時折見せる少女のような可愛らしさ、自分の非を認めた時の哀れな表情…。
キャシー・ベイツの演技は本当に素晴らしい。
彼女は友人から「あなたにピッタリの役がある」といわれてこの役を受けたらしい。それはそれで微妙な話だが。

とにかくミザリーを死なせてしまったおかげでアニーとポールの関係は急変する。まさに主人と奴隷の関係である。
自分の納得するようなストーリーを強要され、部屋には鍵をかけられる。おまけに出される食事は以前よりかなり寂しいものになっている。
そして極めつけは、治りかけた両足をでっかいハンマーで殴られ再び歩けないようにさせられるのである。複雑骨折だな、あれは。目を覆いたくなる痛々しいシーン。原作の「バケツ」のくだりも観たかったが…。

ポールは何度も脱出しようとするが、体の自由が利かずうまくいかない。
買い物から帰ってきて家の中に入るまでのアニーと、部屋の外に出たがアニーの帰りに気づいて部屋に戻るポールのシーンが交互に映し出されるくだりはドキドキである。

アニーを下から煽ったように映すアングルは、アニーに迫力を与えるとともに、主従関係を明らかにされているようで、何ともいえない圧力を感じる。ふむ。

とにもかくにも、アニーの恐怖から逃れきったときには、これまで入っていた力が一気に抜けたような思いだった。

この手の作品は、クリント・イーストウッドの『恐怖のメロディ』、ロバート・デ・ニーロの『ザ・ファン』などがあるが、どれも非常に怖い。狂信的なファンを演じる役者も素晴らしい。

●関連作品・記事
『ミスト 』
『ランゴリアーズ 』
『ペット・セメタリー 』
『クリープショー2　怨霊 』
『1408号室 』

【MARKING】
オススメ度：★★★★★★★★★9
えげつない度：★★★★★5
ペンギンの置物は南向きに！度：★★★★★★★★★9
禍々しい度：★★★★★★★★8

【INFORMATION】
・原題：MISERY
・製作年：1990年
・製作国：アメリカ
・監督：ロブ・ライナー
・製作：アンドリュー・シェインマン、ロブ・ライナー
・脚本：ウィリアム・ゴールドマン
・原作：スティーヴン・キング
・出演：ジェームズ・カーン、キャシー・ベイツ、ローレン・バコール、リチャード・ファーンズワース、フランシス・スターンハーゲン

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