ランゴリアーズ | KURI of the DEAD

ランゴリアーズ

“キング・オブ・モダン・ホラー”スティーブン・キングの中編小説を映画化。監督・脚本は『チャイルド・プレイ』のトム・ホランド。旅客機が時間の狭間に迷い込む恐怖を描いたSFホラー。


【STORY】
ロサンゼルスからボストンへ向かう大型旅客機。眠っていた乗客の一人が目を覚ますと、一緒に搭乗したはずの乗客の姿がない。奇妙なことに、座席にはいなくなった乗客が身につけていた貴金属やペースメーカーまでもが残されていた。ある時を境に眠っていた11人の乗客以外は忽然と姿を消してしまったようだ。偶然乗客として乗り合わせていた、同じ航空会社の機長ブライアンの操縦によって旅客機は最寄りの空港に着陸する事ができた。しかし降り立った場所も人の気配はない。人気だけではなく音もまったくない。しかも、そこにあったサンドウィッチを食べてみると味がなく、ビールは炭酸が抜けており、マッチを擦っても火がつかない。やがて飛行機に搭乗していた時からパニック状態に陥っていたビジネスマンのトゥーミーは、幼い頃から父親に聞かされていた、何でも食い尽くす怪物「ランゴリアーズ」の存在に脅えはじめる。どうやら時間が進まない過去の世界に迷い込んでしまったことを発見した乗客たちは、元の世界に戻るため再び飛行機に乗り込むが…。


【REVIEW】
このほど、とうとうDVD化されたということで、この作品を紹介しよう。


原作となる小説は、スティーブン・キングの4作からなる中篇集「四つの深夜(Four Past Midnight)」の中の一つ。
その他の作品は「図書館警察」「秘密の窓 秘密の庭」など。
個人的には、図書館で借りた本を返さないと図書館警察がやってくる、というスティーブン・キングらしい発想がテーマとなっている「図書館警察」も結構好きである。「秘密の窓 秘密の庭」は、今をときめくジョニー・デップ主演で『シークレット・ウィンドウ』というタイトルで映画化されている。剽窃をテーマに、突然「お前は私の作品を盗作した」と言い出す男に翻弄される小説家の話で、こちらもなかなか。


ちなみに、同様の中編集で「恐怖の四季(Different Seasons)」というのがあるが、こちらの方が知名度が高いようで、4作品中3作が映画化されている。一つは、あまりにも有名な「スタンドバイ・ミー」。もう一つは「ゴールデン・ボーイ」。どちらもすばらしい作品。そして3つ目は「刑務所のリタ・ヘイワース」で、これは『ショーシャンクの空に』というタイトルで映画化されている感動作品。


少々前置きが長くなったが、TVシネマ用に製作されたこの作品。日本でも、NHK地上波で放送されたことがある(確か2夜連続放送)。約3時間となかなかの長丁場で、VHSでは2本組だった。


まあそれはいいとして、スティーブン・キングの小説で名作と呼ばれるものは山ほどあるが、個人的にはキング作品の最大の魅力は「大人のおとぎ話」になっていることだと思う。ほんの少し日常から外れたために、とんでもない恐怖に遭遇する、しかもその恐怖は誰にでも降りかかりそうな気がする。そんなリアルな恐怖である。


『ランゴリアーズ』は、その代表格ともいうべきもので、非常に好きな作品である。映像化すると当たらないといわれるが、当たったかどうかは別として、非常に好きな作品である。


時間を無駄にする怠けものは「ランゴリアーズ」に食べられてしまう、という逸話が現実に起こるとどうなるのかを示した作品。機内で起きたミステリアスな出来事と登場人物の中の一人のキャラクターにうまいことリンクさせている。


よくよく考えると、本編のストーリーと「ランゴリアーズ」の存在はあまり関係ない。しかし、単にミステリアスな展開で終わるのではなく「ランゴリアーズ」という名脇役をうまいこと織り交ぜることでスケールの大きい、ファンタジーな世界観ができあがっている。このあたりがキングのすばらしいところ。


数々の謎を乗客たち自身が解いていくストーリーも、一緒になって問題を解決しているような感覚になり、非常に引き込まれる。3時間という長さを感じさせない。


飛行機ごと時間の狭間に落ちてしまうというSF的な話ではあるが、『CUBE 』や『SAW』を思わせる密室パニックの要素もあり、非常に見ごたえがある。


SFにはありがちな、時間を一つの「流れ」として捉え、過去には何もなく徐々に「ランゴリアーズ」に過去の世界を食べられていく。逆に未来に行っても何もなく、現在が追い付いてきてやっと世界ができあがるという設定。やや難解ではあるが、あまり気にせずストーリーが進むのに沿って楽しんでもらいたい。


例によって、スティーブン・キング自身がちょい役で出演しているので、探してみてほしい。すぐわかるけど。


スティーブン・キング原作で感動作品ばかり観てる方にも、この作品はぜひおススメしたい。



●過去に紹介した関連作品
ペット・セメタリー

ミスト


【MARKING】
オススメ度:★★★★★★★★★9
えげつない度:★★★3
新しい人達になりたい度:★★★★★★★★8
禍々しい度:★★★★★★★★8


【INFORMATION】
・原題:The Langoliers
・製作年:1995年
・製作国:アメリカ
・監督:トム・ホランド
・原作:スティーブン・キング
・製作:デビッド・カッペス
・脚本:トム・ホランド
・出演:パトリシア・ウェティグ、ディーン・ストックウェル、ブロンソン・ピンチョット、ケイト・メイバリー、デビッド・モース、マーク・リンゼイ・チャップマン、フランキー・フェイソン、バクスター・ハリス、キンバー・リドル、クリストファー・コレット


langoliers



















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