昨日、機関紙『国公いっぱん』の紙面で、内部留保の問題を取り上げることになったので、ちょっと勉強してみました。明日の夜、「内部留保の社会的還元を! あなたの疑問に応える公開学習会」 にも参加する予定ですので、詳しい話はまたエントリーするとして、昨日勉強したことをエントリーしておきます。
▼内部留保の推移(財務省「法人企業統計」より)
【左から年度・全企業の内部留保・資本金10億円以上の大企業の内部留保】
1988年度 159兆円 87兆円
1998年度 209兆円 143兆円
2008年度 428兆円 241兆円
上記のように、全企業の内部留保は、1998年度の209兆円から2008年度の428兆円まで、10年間で2倍以上、219兆円も増えています。そして、そのうち大企業の内部留保が半分以上を占めています。
それでは、企業が内部留保を2倍以上も増やした1998年から2008年の10年間の労働者の状態はどうでしょうか。
▼労働者の状態
(総務省「労働力調査」、国税庁「民間給与実態統計調査」より)
◆正規労働者数
1998年3,794万人→2008年3,399万人【395万人減】
◆非正規労働者数
1998年1,173万人→2008年1,760万人【587万人増】
◆ワーキングプア
(年収200万円以下※1年を通じて勤務した給与所得者)
1998年793.3万人→2008年1067.5万人【274.2万人増】
◆1年未満勤続者を含む年収200万円以下の労働者数
1998年1339.3万人→2008年1778.6万人【439.3万人増】
(※上記の全労働者に占める割合
98年25.5%→08年32.5%
10年間で4人に1人から3人に1人に増加)
◆労働者の平均給与
(国税庁「民間給与実態統計調査」)
1998年464.8万円→2008年429.6万円【35.2万円減】
上記のように、企業の内部留保が2倍以上になった1998年から2008年の10年間で、労働者の非正規化が進み、ワーキングプアが3人に1人に激増し、労働者の給与は35万円も減ったということです。
普通に考えて、いくらなんでも内部留保が10年前の2倍以上というのは溜め込み過ぎでしょう。少しは労働者や社会に還元してもいいのではないでしょうか。細かい計算含めて、過去エントリー「経済危機打開のための緊急提言 - 内部留保を労働者と社会に還元し内需拡大を」 で指摘していることが必要です。
ところが、日本経団連は、「内部留保は生産設備などに使われており、現金に換えることはほとんど不可能」などといって、雇用にも賃上げにも使えないと主張し続けています。財界の意向をくむ学者・研究者なども盛んに「内部留保は雇用にも賃上げにも使えない」と繰り返しています。
しかし、素朴に考えて、10年前の2倍以上にもなっている内部留保を使えないというのはおかしな話です。
それに、トヨタとキヤノンは、実際に内部留保を取り崩して、株主配当に使っています。
トヨタは、2009年3月に、13兆9,322億円あった内部留保の一部を取り崩して、株主配当3,135億円を払っています。
キヤノンは、2009年12月に、3兆9,436億円あった内部留保を42億円取り崩して、株主配当の一部に使っています。(全体の株主配当は1,358億円)
内部留保は、株主配当には使えるが、雇用・賃上げには使えないという決まりでもあるのでしょうか?
そもそも、企業の内部留保を2008年度の財務省「法人企業統計」で見ると、内部留保のうち現金及びすぐに現金化できる「換金性資産」は、大企業で54.9兆円、全企業で184.4兆円もあります。
内部留保の「換金性資産」の中身を見ると、「現金・預金」は大企業35.5兆円・全企業143.1兆円、「流動性資産の有価証券」は大企業11.5兆円・全企業24.4兆円などがあります。
過去エントリー「経済危機打開のための緊急提言 - 内部留保を労働者と社会に還元し内需拡大を」 で指摘しているように、非正規労働者の正規化に必要な資金は7.7兆円ですから、実際に「現金・預金」で溜め込んでいる内部留保143.1兆円のたった5%に過ぎないのです。
本当の“埋蔵金”は、企業の内部留保です。2010年春闘では、企業の内部留保を労働者と社会に還元させる必要があります。
(byノックオン。ツイッターアカウントはanti_poverty)