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2015-12-17 11:01:56

夫婦別姓禁止を合憲と最高裁が判断、女性裁判官の割合がEU諸国と同等だったなら違憲判断が出た?

テーマ:その他(雑感等)
 NHKの報道です。

 夫婦別姓認めない規定 合憲判断も5人が反対意見
 NHKニュース 12月16日 17時15分

 明治時代から続く夫婦別姓を認めない民法の規定について、最高裁判所大法廷は、「夫婦が同じ名字にする制度は社会に定着してきたもので、家族の呼称を1つにするのは合理性がある」などとして、憲法に違反しないという初めての判断を示しました。一方、裁判官15人のうち、女性全員を含む裁判官5人が「憲法に違反する」という反対意見を述べました。(中略)


 一方、裁判官15人のうち女性裁判官3人全員と、男性の裁判官2人の合わせて5人が夫婦別姓を認めないのは憲法に違反するという意見を述べました。


 日弁連は選択的夫婦別姓について、次のように指摘してきました。

 民法第750条は,夫の姓でも妻の姓でもよいとしていますが,実際には,約96.2%の夫婦において女性が改姓しています(平成24年厚生労働省人口動態調査)。これは長年の男性優位の社会的風潮の反映であり,これをこのまま放置することは,両性の本質的平等(憲法第24条第2項)にも反します。さらに,夫婦同姓の強制は,女性差別撤廃条約にも反します。すなわち,婚姻に際して氏の選択に関する夫婦同一の権利(同条約第16条第1項(g))を侵害し,姓を変更せずに維持しようとすれば婚姻できないのですから,合意のみにより婚姻をする同一の権利(同項(b))をも侵害しています。国連の女性権利条約委員会から,日本政府は,2003年,2009年に選択的夫婦別姓に改めるよう勧告を受けています。事実上の不都合として,姓の変更により,別人と思われ,それまでの信用・実績との連続性が失われるという不利益も大きいものがあります。

 諸外国の制度も,姓の選択の自由を認める方向で改正されてきました。法律で夫婦同姓を強制する国は,現在,ほぼ日本のみのようです。かつて日本同様,夫婦同姓が強制されていたトルコ,タイでも,現在,強制されていません。


 夫婦同姓を強制する国など日本以外にいったいどこにあるのか?という話ですが、世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2015年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は調査対象145カ国のうち101位。今回も日本は相変わらずの女性差別大国であることを最高裁も見せつけた形です。


 裁判官15人のうち女性裁判官3人というのもいかにも女性差別大国日本です。すでに「安倍政権は世界最悪の女性差別政府=公的部門の女性雇用の割合が世界最低、しかも総雇用より公的部門雇用の女性割合が低いのは日本だけ、世界で唯一女性差別を先導する政府持つ日本」でも指摘していますが、日本は政府みずからが女性差別を先導している異常な国です(上のグラフ)。きょうの最高裁による女性を差別する判断について、菅義偉官房長官は「政府の判断が認められた」と言いましたから、安倍政権はこれまでもこれからも政府みずから先導して女性差別政策を続けますよと公言しているわけです。


 政府の男女共同参画白書2015年版の各分野の女性が占める割合(上のグラフ)を見ると、裁判官は18.7%です。今回15人のうち3人が女性裁判官ですから20%です。OECDの『ジェンダー白書』によると、2011年時点でEU諸国の最高裁判所の女性裁判官の割合は33%です。この33%を今回にあてはめると15人のうち5人が女性裁判官になります。すると男性裁判官2人が違憲としていますから7人が違憲となり、10対5が、8対7と拮抗することになりますし、この33%はEU諸国の平均ですし、2011年時点と4年も前の数字ですから、おそらく女性割合は上がっているでしょうから、日本はEU諸国より十数%も女性は少なくなるでしょう。そうすると、今現在のEU諸国の女性割合を日本にもあてはめるとすると今回の判断も逆転することになると思います。結局、日本は男性が優位な地位を占め続けているから女性差別大国になってしまっているというわけです。

 公的な部門に女性を増やすことがいかに重要かを痛感させられた今回の最高裁判断でもあったと思います。

(国公一般執行委員 井上伸)
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2015-07-23 21:09:53

Yahoo!ニュース個人のオーサー終了。たくさんのアクセス、ありがとうございました(井上伸)

テーマ:ブログ、ネットについて
 昨年6月中旬から、Yahoo!ニュース個人のオーサーとして発信してきましたが、今月いっぱいで終了することになりました。スタートした当初は、Yahoo!ニュース個人も全体が試行錯誤の段階ということもあったと思うのですが、私が書いていたこの国公一般すくらむブログのように様々なテーマでの発信も許容してもらっていたのですが、Yahoo!ニュース個人の方針変更等でもう許容できないとのことで終了となりました。おそらく、オーサーの中に労働組合の人間は私以外はいないと思われますのでとても残念ですが、この間、すっかりおろそかになっていたこの国公一般すくらむブログ等をまた地道に発信していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。

 最後に、Yahoo!ではものすごく多くのPV数を得ることができたので振り返っておきたかったのですが、PV数を公表することはできないそうなので、PV数が多かったベスト20の記事を紹介しておきます。以下の記事群を見ると、なんだかんだ言われつつも、やはり労働問題関連の記事数がいちばん多い結果になり、役割を果たせて良かったです。皆さん、たくさんアクセスいただき、どうもありがとうございました。

▼PV数ベスト20
 ※7月いっぱいですべて消えてしまいますが…(T_T)

1)自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもたちの声が届かない日本社会

2)月270時間無給労働で使い捨て!「ガイアの夜明け もう泣き寝入りしない!~立ち上がった働く若者たち」

3)駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、世界ワースト長時間労働で鬱病激増する日本の教員

4)「たかの友梨」は「やりがいの搾取」と「地獄の訓練」の洗脳を動員して「女性を食い潰すブラック企業」

5)ブラックバイトに食い潰される学生、奨学金返済で困窮し20代ホームレス増、サラ金借り入れの7割は若者

6)「たかの友梨」で横行するマタハラ・残業代未払い・数十万円の美容器材購入させる「自爆営業」、そして腐敗

7)アイドルになりたい少女や「関係性の貧困」で孤立する女子高生につけ込むJKビジネス=売春目的の人身売買

8)安倍政権が集団的自衛権行使に執念を燃やす理由 - 戦後の平和主義を根本的に転換し本気で軍事大国めざす

9)吉田証言など一切関係なく安倍首相や櫻井よしこ氏の慰安婦ヘイトスピーチと二枚舌が国際的に批判されている

10)ビリギャルの「努力」と駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生の「努力」する前提すらない貧困

11)AKB48×安倍政権の「赤紙なき徴兵制」-目の前の食べ物を追いかけているうちに気がついたら戦場にいた

12)マクドナルドの時給1,500円で日本は滅ぶ? すでに30年実施してるオーストラリアは滅んでませんが?

13)公務員は市民の敵? 公務員の賃金は下げて当然? 公務員バッシングの正体とは?

14)大阪都構想を葬ったのは「シルバーデモクラシー」ではない=若い世代の人口は70歳以上の2倍以上多い

15)ハリー・ポッターは日本では生まれない - 能力つぶし社会的損失ひろげ機会の平等を保障しない日本社会

16)26歳青年「上司に殴られあごに穴あき栄養ドリンク漏れた」 - パワハラ蔓延し人が壊れてゆく職場

17)大学非常勤講師の三重苦=奨学金ローン地獄・高学歴ワーキングプア・人間破壊と生命の危機

18)人災の就職氷河期、「自身の収入のみ」で暮らす20~34歳は44%、40代へ広がる孤立無業者162万人

19)【派遣労働者の声5】ホテルにつきあえば正社員?断れば派遣?3年クビ切り法案で国が自殺ほう助するのか?

20)産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」

(国公一般執行委員 井上伸)
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2015-06-12 10:17:10

派遣労働者の労災は正規の2倍、派遣事業所数で世界の7割占める日本、「生涯派遣奴隷」の法改悪やめよ

テーマ:労働者派遣法の問題
 佐々木亮弁護士が指摘しているように、今、提出されている派遣法改正案が成立すると派遣社員が激増します。派遣社員が激増すると森岡孝二関西大学名誉教授が指摘しているように「派遣奴隷」のような無権利状態が蔓延し日本の雇用は破壊されてしまいます。そうした「派遣奴隷」の実態を以前いくつかブログで紹介しています。

 ある派遣の青年が、仕事中にケガをして、頭から血を流しているのに、会社側は青年に対して、「君には選択肢が3つある。1つは自分で歩いて病院に行く。2つは会社にある薬を自分で塗る。3つは会社の車で病院に行く。ただし仕事が終わる4時間後だ」と言ったそうです。派遣労働者が仕事中にどんなにひどいケガをしても労災(労働災害)を隠蔽したいがため、絶対に救急車を呼ばないというのがまかりとおっているそうです。また、「労災をつかえば仕事がなくなるぞ」など労災隠蔽の脅しも日常茶飯事。(「人間をボロ雑巾のように使い捨てる派遣法」)

 「立場の弱い、物言えぬ者に対するセクハラ・パワハラ・暴力が横行する」「倉庫に派遣されたら、上から荷袋が落ちてきたり、冷蔵倉庫にスニーカーで入らされ凍傷になったり」「鉄板が入った安全靴で足首を蹴られたり、太ももの上部を大きなボルトで突かれたり」、製造業の派遣現場では「暴力がともなう労務管理」がなされているのです。間接雇用とは、職場の正社員にとって、別の派遣会社の社員である派遣労働者はどこの誰だかわからないということである。そして派遣労働者はすぐにいなくなる。そこから匿名的な人間関係が成立するようになる。派遣労働者は働く現場で、「派遣さん」、さらには「おい、そこの派遣」と呼ばれる。派遣職場では、職場の同僚・働く仲間という意識が喪失してしまった。人間についている「誰々さん」という固有名詞は、その人の個性や人格と結びついている。匿名化されてしまった人間は人格を無視された単なる「道具」でしかない。(「現代の派遣奴隷制が若者を襲う~人格の否定、支配的な強制労働、暴力による労務管理」)

 こうした「派遣奴隷」のような状況は、リーマンショック時の「派遣切り」の嵐が吹き荒れた昔の話などではありません。直近でも奴隷並みの扱いを受ける中高年の派遣労働のブラックすぎる実態の体験ルポなどを見れば同様の状況が引き続いていることが分かります。

 そして、派遣労働者が過酷な労働実態にあることを示すデータがあります。下のグラフにあるように、製造業における派遣労働者の労働災害発生割合は、正社員の2.52倍も高いのです。

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 また、上のグラフにあるように、全業種の派遣労働者の労働災害発生率を見ても、派遣労働者の4.8は全労働者2.8の1.7倍も高くなっているのです。上記で紹介した労災隠しのことも加えて考えると、どれだけ派遣労働者が過酷な労働実態に置かれているかが分かります。


 今でも日本は上のグラフにあるように世界トップの派遣会社事業所数となっています。世界の派遣会社事業所数の7割を日本が占めているのです。

 人格の否定、商品としての売買、支配的な強制労働という特徴が含まれる「派遣奴隷」。匿名化された扱い、労働者をリースのように転がしていく商売、絶対的な指揮命令権、「生涯派遣奴隷」となる今回の派遣法改悪法案は廃案にすべきです。

 最後に、嶋崎量弁護士が、「派遣労働者の声を聴け!~当事者の声を無視した派遣法改悪の採決は許されません~」の中で呼びかけている「私たちみんなが出来ること(2つ)」がとても大事になっていますので紹介しておきます。

私たちみんなが出来ること(2つ)

 1つは、記事でご紹介した、派遣労働者の方々への緊急アンケートへのご協力です(派遣労働者の皆さん)。

 是非、ご協力ください。

【派遣労働者の皆様へ】★緊急アンケート★派遣で働く労働者の不安を国会議員にぶつけるためのアクション

 2つめは、改悪案が成立してしまうかのキャスティングボードを握っている維新の党へ、私たちの声を届けることです。

 下記URLのフォームから声を届けられるようです。

 これは、誰もができるアクションです。

ご意見・ご質問

 みんなで、国会に声を届けていきましょう!

▼参考

派遣労働者300人の声「アンケート回答者のほぼすべてが派遣法改正に反対」
佐々木亮弁護士「与党が派遣法案の成立を急ぐ理由はこれだ!~違法派遣の合法化~」
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2015-05-12 09:44:09

ビリギャルの「努力」と駅前トイレで寝泊まりするトリプルワーク女子高生の「努力」の前提すらない貧困

テーマ:ワーキングプア・貧困問題
 家族そろってハマってたNHK朝の連ドラ「あまちゃん」では、とりわけ有村架純さんのことを長女が注目してたので、その動向は気になるところだったりします。で、いま有村架純さん主演の映画「ビリギャル」がヒットしていて、映画の元ネタにあたる『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)や、『ダメ親と呼ばれても学年ビリの3人の子を信じてどん底家族を再生させた母の話』(ああちゃん著、さやか(ビリギャル)著、KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)の書籍もベストセラーになってるとのこと。しかし、「【支出】ビリギャルとトップギャル 親の学費はどう違う? 映画放映開始にあたり計算してみた。」の指摘を見ると、やはり、「子どもの貧困」問題との関連を紹介しておきたくなります。

 「【支出】ビリギャルとトップギャル 親の学費はどう違う? 映画放映開始にあたり計算してみた。」の指摘が正しいとすると、「中学校と高等学校の合計で335.2万円」「2年間の学習塾240万円」「慶応大学の学費548.5万円」で、ビリギャルの中学から大学までの学費と塾費用の合計は1,235万7千円になります。

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 上のグラフは、文部科学省「子供の学習費調査」(2012年度)による幼稚園3歳から高校3年生までの15年間の学習費総額です。すべて公立に通った場合では約500万円、すべて私立に通った場合では約1,677万円で、最も支出額が多いケースは、最も支出額が少ないケースの約3.36倍にもなっています。ビリギャルの「2年間の学習塾240万円」というのも貧困状態にある世帯ではとても負担できるものではありませんが、そもそも私立の学費自体も貧困世帯では負担できません。

 この「社会経済的格差」と「学力」と「子どもの努力」がどういう関係にあるのかについて、内閣府「第2回子どもの貧困対策に関する検討会」(2014年5月1日)で、耳塚寛明お茶の水女子大学理事・副学長が「全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」という報告をしています。この報告では、「家庭の社会経済的背景」(SES)という概念が使われていて、これは保護者に対する調査結果から、家庭所得、父親学歴、母親学歴の3つの変数を合成した指標で、当該指標を4等分し、Highest SES、Upper middle SES、Lower middle SES、Lowest SESに分割して分析しています。

 この報告の結論をざっくりまとめると、学習時間(=子どもの努力)が学力に与える影響としてはポジティブな効果がどの「家庭の社会経済的背景」の子どもであっても、学習時間(=子どもの努力)が多いほど高い学力になっているけれど、学習時間(=子どもの努力)の効果は限定的で、「家庭の社会経済的背景」がLowest SESの子どもが毎日「3時間以上」勉強して獲得する学力の平均値は、Highest SESで「全く勉強しない」子どもの学力の平均値よりも低くなることから、「家庭の社会経済的背景」の不利を学習時間(=子どもの努力)で克服することは難しいということです。(▼下のグラフ参照)

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 さらにざっくり言うと、貧困状態に置かれている子どもはいくら努力しても、私立学校に通えたり、2年間で学習塾に240万円も支出できる状態にあるような子どもの学力に追いつくことは難しいということです。スタート地点が違い過ぎるということです。このことは、「親の年収多いほど高い学力」と文部科学省が分析していることとも符号しています。

 最近、タレントの方が、「私達夫婦は、親の用意してきた道を歩んできたのではなく、学歴をつかみとってきたという誇りがある。努力の証明書として学歴がある」と発言しネットでも話題になっています。それに対して、赤木智弘さんが「努力という言葉に見る日本の落日」として次のように指摘しています。

 子供の学力は子供の意志に関係なく、子供の親が子供に対してしっかりと金を使い、勉強に没頭するような環境を用意できるかどうかで決まってくる。学歴というのは親が用意した道に他ならず、本人の努力すら親が用意したものなのである。(中略)「努力」が抑圧の言葉、他者を貶める言葉として使われる限り、日本の落日はまだまだ終わらないだろう。
出典:赤木智弘さん「努力という言葉に見る日本の落日」


 この赤木智弘さんの指摘に同感です。上記の文部科学省の客観データも示すように、本人の努力すら親の年収に左右されるわけですから、高収入の人を努力した人と単純に讃え、低収入の人を努力しない人と単純に蔑むという、よく見られる「自己責任論」は客観的事実として間違っているわけです。それから、奨学金問題対策全国会議共同代表の大内裕和中京大学教授はツイートで次のように指摘しています。

 学年ビリのギャルが慶応大学に合格することより、経済的に貧しい家庭の出身で大学に行くことをあきらめていた高校生が、給付型奨学金の導入によって大学進学が可能となることの方が、これからの社会にとってより重要だと思う。
出典:奨学金問題対策全国会議共同代表・大内裕和中京大学教授のツイート


 学年ビリのギャルが慶応大学に合格するのは「努力主義」の物語だ。努力主義とは「頑張れば何とかなる」という考え方だが、家庭の貧困によって進学できないというのは、子ども本人にとって「頑張っても何ともならない」状況だ。給付型奨学金は「頑張っても何ともならない」状況を変えるのに役立つ。
出典:奨学金問題対策全国会議共同代表・大内裕和中京大学教授のツイート


 学年ビリのギャルが慶応大学に合格した背景には、「努力」だけでなく塾に通える「経済力」があった。その点を見ないと、出身家庭が経済的に厳しいという理由で進学できなかったり、「努力」する環境すら与えられていない人々が増えている「格差社会」の現状を見失う危険がある。
出典:奨学金問題対策全国会議共同代表・大内裕和中京大学教授のツイート


 それから、以前、私がブログで紹介している阿部彩さんの指摘です。

 阿部彩さんは、2008年に「子どもの最低限の生活水準」についてのアンケート調査を実施。1800人を対象に、「現在の日本の社会においてすべての子どもに与えられるべきもの」について聞いたところ、いま全世帯の高校進学率は97.5%に達しているのに、アンケート結果では、「希望するすべての子どもが高校に行けるべき」と答えた人は61.5%、「希望するすべての子どもが大学に行けるべき」と答えた人は42.8%しかなかったのです。

 このアンケート結果について、阿部彩さんは、次のようにコメントしています。「子どもが希望したとしても、親が貧困なら、高校にも大学にも行けなくても仕方がない――このような最低限の生活水準に対する貧しい価値観であるというのが残念ながら日本の現状といえます。これは、『貧困は自己責任』とする考え方が、親のみならず、その子どもにまで浸食しているといえるのかもしれません。こうした状況で、『教育の平等』や『機会の平等』を訴えても、支持されないはずです。しかし、『教育の平等』『機会の平等』が支持されない社会とは、どのような社会でしょうか。不利な状況を背負って生まれてきた子どもたちが、そのハンディを乗り越える機会を与えられない社会とは、どんな社会でしょうか。自らが属する社会の『最低限の生活』を低くしか設定せず、向上させようと意識しないことは、次から次へと連鎖する『下方に向けての貧困スパイラル』を加速させ、結局、社会全体の活力や生活レベルを下げていくことにつながります。私たちは、まず、この貧しい価値観、この貧しい“『子どもの貧困』を見る目”を改善しなければなりません。『子どもの貧困』に対する政治の無自覚は、じつは社会の無関心、私たちの無関心の裏返しでもあるのですから」
阿部彩さん談、文責=井上伸


 以上のような指摘にあるように、「ビリギャル」がヒットする日本社会の一面として、いまだに6人に1人にのぼる子どもの貧困が日本を蝕んでいることには無自覚でありつづけ、「貧困は自己責任」「学歴も自己責任」「努力しない人間がダメなのだ」というディストピア的「努力主義」の根強さがあるのだと思います。「ビリギャル」の「ダメな人間などいない。ただ、ダメな指導者がいるだけ」という言葉は印象的だ。――とのことですが、「ダメな人間などいない」ということに本当の意味で共感するのなら、「駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生らの貧困を深刻化させ格差拡大し経済成長損なう安倍政権」「自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもたちの声が届かない日本社会」を改善するために「子どもの貧困」を根絶することにも共感を寄せて欲しいと思います。

 最後に、以前、紹介した大内裕和中京大学教授と、田端博邦東京大学名誉教授の指摘を紹介しておきます。

 戦後経済成長を支えてきた「努力すれば何とかなる」という努力主義が、努力しようと思ってもできない「不平等」や「不公正」を見えなくさせている。努力することは確かに美徳だ。しかしそれが努力を支える条件への視点を欠落させた「努力主義」となった時、新自由主義の「自己責任」を無批判に受容するイデオロギーとなってしまう。
(「生まれながらの差別」に鈍感な日本社会―― 「自分の子どもさえ良ければ」を乗り越えられるか)


 北欧をはじめとするヨーロッパでは、大学の授業料が無料というだけでなく、大学生に生活費が支給されます。つまり、大学に行きたい人は誰でも生活が保障されて通学することができるのです。

 ところが、日本などの「自己責任社会」では、教育費はプライベートに負担する考え方が支配的で、とりわけ高額な授業料となっている日本の大学教育においては自己責任が貫徹しています。教育費が私的に負担される「自己責任社会」では、私的負担の教育費は個人がそれによって将来の利益を得るためだけの投資と考えられ、それで獲得した知識や能力は、個人の利益を追求するためだけに使われるべきものと考えられることが多くならざるをえません。その教育費を負担することができない個人は、そうした利益を得ることができませんが、投資をしていないのだからやむをえないという考えが基本的になってしまいます。

 逆にヨーロッパなどの「社会的責任社会」「連帯社会」では、教育の機会が親の経済的地位で左右されるのではなく、社会の構成メンバーの経済的能力を高めるためにみんなで支え合う公的な教育を提供する必要があるとベースで考えています。「社会的責任社会」「連帯社会」では、教育への投資は、個人の「自己責任」ではなく、「社会の責任」ですから、教育の成果は、個人の利益だけに還元されるべきものではなく、社会に還元されるべきものとなります。ヨーロッパでは、大学まで含む教育全体が公共サービスと考えられているのです。

 私は「自己責任社会」と「社会的責任社会」「連帯社会」の大きな違いが、この教育に対する考え方にあるように思えるのです。教育を提供する社会の考え方と、教育を受ける個人の考え方は、相互に強め合う関係になるのではないでしょうか。教育を自己責任にしないで社会の責任として提供する社会には、社会的な意識の高い個人が生み出され、そうした個人が構成する社会はさらに強い「社会的責任社会」「連帯社会」を生み出していき、まったく逆の流れで、教育を自己責任とする社会では、さらに強い「自己責任社会」が生み出されてしまうことになると考えられるかもしれません。
田端博邦東京大学名誉教授談、文責=井上伸

国公一般執行委員・井上伸
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2015-04-21 09:11:54

日本の最低賃金は物価考慮してもオーストラリアの6割、働くひとり親貧困率は豪の3.5倍、富裕層2倍

テーマ:ワーキングプア・貧困問題
 昨日の「マクドナルドの時給1500円で日本は滅ぶ? すでに30年実施のオーストラリアは滅んでませんが?」のエントリーに対して、「オーストラリアの物価は日本よりやたら高いのだから最低賃金もやたら高くて当然だ」というような指摘がコメントやツイッター等で寄せられています。

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 上のグラフは「安倍政権下でトップ0.7%の富裕層は増大、20歳代5割・単身4割は貯蓄ゼロになり貧困と地域間格差拡大」の中で紹介した富裕層トップ0.7%(個人資産保有額100万米ドル超)の内訳を見たものです。日本は世界第2位で8%、オーストラリアは第7位で日本の半分の4%です。オーストラリアの最低賃金が日本の倍あるのは物価が高いから当然なのだと言われる方は、オーストラリアの富裕層(個人資産保有額100万米ドル超)は日本の半分しかいないという事実をどのように説明されるのでしょうか? 日本はオーストラリアより最低賃金は半分だけど、日本の富裕層はオーストラリアの2倍いるというのは日本が「貧困大国」であり世界第2位の「富裕層大国」である格差社会だということの証拠だと思います。

 それから、OECDは、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金とフルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率という2つのデータも公表しています。

物価水準を考慮に入れても日本の最低賃金はオーストラリアの6割程度しかない

 まず、各国の物価水準も考慮に入れた購買力平価で換算した実質最低賃金を見ると、直近の2013年の数字で、日本は6.7米ドルで、オーストラリアは10.5米ドルです。物価水準を考慮に入れてもオーストラリアは日本の1.56倍の最低賃金額になっているのです。(※日本はオーストラリアの最低賃金の6割程度という水準になります)

 フルタイム労働者の平均賃金に対する最低賃金の比率は、直近の2013年の数字で、日本は39%、オーストラリアは54%です。ここでもオーストラリアの最低賃金は1.38倍になっています。

日本の子どもを持つ女性の賃金はオーストラリアの半分以下

ひとり親が働いている世帯の貧困率はオーストラリアの3.5倍も高い日本


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 こうした日本の最低賃金の低さが現実社会で最も過酷な形であらわれているのが上のグラフです。日本社会の現状の中で最も最低賃金に近いところで働くことを強いられる、子どもを持つ女性の賃金がフルタイム男性労働者のわずか39%になっています。ここでもオーストラリアの81%は、日本の39%の2倍以上になっているのです。

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 そして、上のグラフはこの世界最悪の賃金差別によって生み出されている惨状をあらわすものです。ひとり親が働いている世帯の貧困率で、日本の50.9%は、オーストラリアの14.4%の3.5倍にもなっているのです。

 以上、見て来たように、オーストラリアの物価水準がうんぬんなどと言う方には、オーストラリアより日本の富裕層が2倍も多く存在する一方で、ひとり親が働いている世帯の貧困率が3.5倍もオーストラリアより高いという、「貧困大国日本」の問題をまずもって考えていただきたいと思います。こうした深刻な貧困をもたらしている日本の最低賃金の異常な低さが日本の「反成長戦略」になっているのですから。

(国公一般執行委員 井上伸
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2015-04-20 08:20:12

マクドナルドの時給1500円で日本は滅ぶ? すでに30年実施のオーストラリアは滅んでませんが?

テーマ:ワーキングプア・貧困問題


 マクドナルドの「時給1500円」で日本は滅ぶ。(中嶋よしふみ SCOL編集長)――とのことですが、本当でしょうか?

 OECDのサイトで各国の最低賃金が分かるのですが、直近2013年の最低賃金の時給額ベスト3を見ると、1位がオーストラリアで時給15.6ドル(現在のレートの1ドル118円で計算すると時給1,840円)、2位がルクセンブルクで時給14.3ドル(時給1,687円)、3位がフランスで時給12.5ドル(時給1,475円)です。

オーストラリアはすでに30年間も最低賃金の時給1,500円以上


 1位のオーストラリアの最低賃金の時給額をさかのぼって見ていくと、いちばん昔のデータが1985年で時給14.4ドル(時給1,699円)となっていて、そこから直近の2013年までずっと上がってきているので、ようするにオーストラリアは、ちょうど30年前の1985年からずっと最低賃金は時給1,500円以上なわけです。はて? 「時給1,500円」以上をもう30年間も続けているオーストラリアという国は滅んでいませんが? ルクセンブルクもフランスも滅んでいませんが? 中嶋よしふみ氏は、「時給1,500円」に引き上げると日本を滅ぼすことになるので「100%間違いだ」と断言しているのですが、オーストラリアもルクセンブルクもフランスも実際滅んでいないので、中嶋よしふみ氏の主張の方こそ客観的事実に基づいて「100%間違いだ」と断言しておきます。なので、中嶋よしふみ氏は事実とまったく違うことを書いてしまっているので「訂正記事」を書いた方がいいと私は思います。

 それから、以下の記事にあるように、アメリカのカリフォルニア州オークランド市の最低賃金も3月2日から、時給12.25ドルになっています。オークランド市は、「滅ぶ」どころか「よりよい地域社会をつくれる」と展望を語っています。

最低賃金36%アップ ⇒ 1470円 米・オークランド 労働者と家族に喜び 住民投票で決定 “地域社会よくなる”

 米カリフォルニア州オークランド市の最低賃金が2日から、州の定める時給9ドル(約1080円)から12・25ドル(約1470円)に36%引き上げられました。これは昨年11月の住民投票で約82%の賛成で決まっていたもの。およそ4万8000人の労働者が恩恵を受けることになります。(中略)住民投票実施に尽力した運動団体「リフト・アップ・オークランド」に加わる住民組織「持続可能な経済のためのイースト・ベイ同盟」のケイト・オハラ会長は、最低賃金引き上げで「より多くの家族が家に住み続けられ、より多くの労働者が職場の近くに住めるようになり、家族と過ごす時間が増えて、よりよい地域社会をつくれる」と意義を強調しています。米国では今年中に23州と首都ワシントンで法定最低賃金が引き上げられ、500万人が恩恵を受けます。オバマ政権は政府規定の最賃を10・10ドル(約1212円)に引き上げるよう提案しています。
出典:しんぶん赤旗3月4日付「最低賃金36%アップ ⇒ 1470円 米・オークランド 労働者と家族に喜び 住民投票で決定 “地域社会よくなる”今月から実施」


 また、アメリカのワシントン州のシアトル市では、最低賃金の時給15ドルが決定されています。

シアトル市が下した最低時給15ドルの「英断」
大規模ストライキの圧力で全米でも最高水準の最低賃金を獲得。これで格差は縮まるか
ニューズウィーク日本版 2014年6月18日より)


 米ワシントン州のシアトル市議会が、最低賃金を現行の時給9.32ドルから破格の15ドルに引き上げる法案を満場一致で可決した。アメリカ最高の水準であり、今後7年以内で段階的に導入する計画だ。15ドルの最低賃金は、昨年11月に同州シータック市の住民投票でも承認されている。

 「1年前、15ドルはプラカードに載る『数字』にすぎなかった。それが今日、シアトルの10万人の労働者にとっての現実になった」と、ファストフード店の1年前の大規模ストライキを支援した団体「ワーキング・ワシントン」の広報担当は言う。

 法案の支持者は、シアトルは物価が高いだけでなく、現在の最低賃金ではフルタイムで働いても年収約1万9300ドルにしかならないと指摘していた。「低賃金で生活が苦しいという不満と怒りが、ファストフード店のストライキを生んだのだろう」と、ニック・リカータ市議は言う。「少数の人々の手にどれほどのお金が集中しているか、われわれは分かっている」

 マリー市長は最低賃金引き上げを支持し、法案の投票時には議場の後方で見守っていた。有権者も同様で、先月の調査では賛成が74%に達している。


 このシアトル市に続いて、カリフォルニア州のサンフランシスコ市でも、現在の時給10.74ドルから15ドルへ、2018年までに段階的に引き上げることが決まっています。中嶋よしふみ氏は、今回の「ファストフード世界同時アクション」含め、最低賃金の引き上げを求める労働者の運動についてもバカげてると言わんばかりに批判していますが、新自由主義の元祖アメリカでおいてさえ着々と最低賃金を実際に引き上げていっているのです。中嶋よしふみ氏には、ぜひ本当の意味でのグローバルな視点をきちんと持って記事を書くようにお願いしたいと思います。

国公一般執行委員 井上伸
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2015-03-24 11:56:41

ルミネのセクハラCM 働く女性のリアル=セクハラ相談1年で6千件・セクハラで精神障害4年で3倍

テーマ:働くルールづくり
(朝、出勤してくる男性社員と女性社員)
男性社員「顔が疲れてる。寝てないの?」
女性社員「普通に寝ましたけど」
男性社員「寝て、それ?」

(2人の前に巻き髪に膝上スカート姿等派手な格好で単に男性に媚びているような存在の同僚女性社員があらわれる)
男性社員「やっぱかわいいなあ~、あの子」「大丈夫だよ~、ヨシノ(女性社員の姓)とは“需要”が違うんだから」

文字テロップ「【需要】この場合、『単なる仕事仲間』であり『職場の華』ではないという揶揄」

ひとりになった女性社員ヨシノ、鏡の前で顔を眺め「は~」と溜め息し「変わりたい、変わらなきゃ」というナレーションが流れ、ルミネのロゴ表示


 いま問題になっているルミネの動画CMの内容です。そして、その末路です。

 JR東日本の子会社で商業施設を運営する「ルミネ」(本社・東京都)は20日、インターネット上の動画サイトで公開していた動画CMについて、不快に思われる表現があったとして、ネットから削除したことを明らかにした。削除したのは、「働く女性を応援」をテーマにした約1分間の動画CM。登場人物の男性が、会社の同僚である2人の女性について容姿を比較するような発言をしている。18日から公開していたが、動画を見た人たちから批判が寄せられ、20日午後に削除した。ルミネは「不快に思われる表現があったことを深くおわびする。今後は十分に注意する」(広報担当者)としている。
出典:毎日新聞3月20日付 <ルミネ>「不快に思われる表現」動画CMを削除


 ルミネの制作意図は以下です。

 働く女性のリアルな日常を切り取り、女性の変わりたい気持ちを応援したかったというのが一番にありました。
 出典:ウートピ【ルミネ炎上CM】広報へ制作意図を直撃 「女性の変わりたい気持ちを応援したかった」


 上記のルミネの制作意図からすると、これが「働く女性のリアルな日常」なのだから、女性が変わりたい気持ちを抱くのは当然で、それをルミネは応援して、女性が「職場の華」に変われればハッピーだよね、というようなストーリーってことなんでしょうね。

 では、まず「働く女性のリアルな日常」という点をデータで見てみましょう。

 セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は直近4年間で3倍以上に増加

 厚生労働省が毎年発表している「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」の直近データは2013年度です。これによると、セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は、2013年度で52件です。2012年度の45件から増えています。厚労省サイトでさかのぼって確認できるのは2009年度までなのですが、2009年度の決定件数は16件です。この4年間で、セクハラを受けて精神障害になった労災の決定件数は3.25倍に増加しているのです。そして、厚労省サイトで確認できる限りでは、直近2013年度が過去最悪の数字になっています。

 2013年度のセクハラ相談件数6千件超
 これは氷山の一角、厚労省が職場のセクハラを初の実態調査中


 それから、各地の労働局に2013年度に寄せられた相談は、セクハラが6,183件で、マタハラが3,371件。この膨大な件数についても、厚生労働省は、氷山の一角であり、泣き寝入りしているケースも多いとみられるとして、まず実態を調べる必要があると判断し、職場のセクハラ・マタハラの初の本格実態調査を現在おこなっているところです。

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 そして、全労連が全国各地で取り組んでる労働相談件数は、直近の2014年で1万7,848件で、その労働相談内容を割合で見たものが上のグラフになります。「賃金・残業代未払い」17.8%に次いで、「セクハラ・いじめ」12.9%となっています。前年と比べると「賃金・残業未払い」「解雇」が減って「セクハラ・いじめ」「労働時間・休暇」が増加しているのです。


 ルミネの言うとおり、確かに「働く女性のリアルな日常」は、セクハラ、マタハラの人権侵害にさらされ続けているということが各種データで裏付けられます。しかし、ルミネはこの「働く女性のリアルな日常」が人権侵害のセクハラにあたるとは思ってもみなかったようです。その証拠に、ルミネは制作意図として「女性の変わりたい気持ちを応援したかった」と言っているわけですから、この男性社員の発言は「職場の華」をめざして「女性の変わりたい気持ち」を後押しするものとしてセクハラどころ肯定的に描かれていることになります。

 しかし、これは明らかにセクハラ動画CMです。昨年の7月1日に男女雇用機会均等法が改正施行されているのですが、今後は「性別役割分担意識に基づく言動」、いわゆる「女はお茶汲みをすべき」とか「家庭に入って子育てに専念すべき」など、性の違いによる固定観念を押し付ける言動のこともセクハラを助長するものとして規制対象に明記されているからです。下の二つの画像は厚労省サイトでその部分を説明しているものです。

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 女性社員を、男性社員の“需要”で品定めすることを肯定するだけでなく、男性社員の“需要”である「職場の華」をめざして「変わりたい、変わらなきゃ」と思うことが女性社員の役割であり、これを応援するのがルミネですと宣伝しているわけで、これは明らかに「性別役割分担意識に基づく言動」です。

 もっと言えば、職場の女性社員の役割は、男性社員の“需要”に基づき「職場の華」に変わることがベストなのだ、それでこそ、男性社員は職場で頑張れるのだ、ということでしょう。女性社員は男性社員に「職場の華」としてよく見られなければいけないし、「職場の華」としてよく見られようと「変わりたい、変わらなきゃ」と女性社員自身が頑張るのがベストの女性の役割なのだということでしょう。その男性に「よく見られたい」という気持ちを応援するのがルミネの役割ですから、ルミネの“需要”は「職場の華」をめざしてくれる女性が存在する必要があるという関係にもなるのでしょう。

 女性社員は「単なる仕事仲間」ではなく、「職場の華」として、男性社員の“需要”を満たそうとすることを女性社員自身が内面化させて――あるいは内面化させられて(多くの場合、性別役割分担は女性自身も内面化させられているケースが多い)――その男性社員の“需要”に寄り添いながら、自分だけでも「寝て、それ?」とか「職場の華としての需要はない」などと男性社員に言われないで、「やっぱかわいいなあ~」と言われる女性社員をめざすことになります。これは、女性に「強制された自発性」とも言えるものでしょう。

このセクハラ動画CMは、男性の“需要”に奉仕する性としてのみ女性を描き出すことによって、男性の側のセクハラ行為はむしろ女性を応援しているのだと言わんばかりに肯定され、「職場の華」をめざすためのルミネの“需要”を生み出し、社会的に容認させ、流通させることで、セクハラの土壌となる固定的な性別役割イメージを再生産するものだと思います。
国公一般執行委員 井上伸
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2015-02-27 12:50:40

ピケティの言う格差上位1%、日本では金融資産だけで少なくとも1億円超、年所得のみなら約5千万円超

テーマ:ワーキングプア・貧困問題
 「THE PAGE」にアップされた「ピケティの言う格差上位1%、日本では年収いくらの人か?」という記事(※以下「THE PAGE」の記事)について、少しデータを紹介しながら、検証してみたいと思います。

 この記事のポイントは、ピケティブームによって格差拡大で上位1%の所得シェアが増えてるって言うけど、日本ではアメリカのように大富豪が増えてるわけじゃなく、日本のトップ1%は年収1,500万円前後に過ぎず、トップ5%も年収1,000万円くらいで、「トップ5%に入る富裕層が、身近にいる公務員だというのは、社会が平等である証拠と見ることもでき」、「最近、日本は米国並みに格差が拡大しているといわれていますが、日本の場合には、上の人がたくさん稼いでいるのではなく、所得が低い人が急増しているという「下方向への格差」だということが分かります」というものです。ざっくり言うと、日本は富裕層に富が集中してるわけじゃなくて、基本は平等なんだけど貧困層が急増してるだけの格差拡大だってことを強調しているわけですね。おまけに、文章の最後のところで、「身近な公務員が富裕層で国民からの税金で生活する人が富裕層というのは、筋が通らないという考え方もあるでしょう」などと言って、「身近な公務員」へのルサンチマンを煽るというトンデモ記事でもあります。

 最初に、ピケティ本人がどう言っているのかを見てみましょう。


 ピケティ「所得の主役は資本だ」
 「 r>g 」(「資本収益率」>「成長率」)

 まとめよう。トップ十分位は常に二つのちがう世界を包含している。労働所得が明らかに優勢な「9パーセント」と、資本所得がだんだん(時期によって、その速度はかなり迅速で圧倒的だ)重要になる「1パーセント」だ。二つのグループ間は連続的に変化しているし、当然その境界ではかなりの出入りがあるが、それでもこの両者のちがいは明確だし体系的だ。たとえば資本所得は、「9パーセント」の所得の中で、もちろんゼロではないが、通常は主な所得源ではなく、単なる補完にすぎない。(中略)反対に、「1パーセント」では、労働所得のほうがだんだん補完的な役割になる。所得の主役は資本だ。
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、291ページ)】

 「9パーセント」と「1パーセント」がまったくちがう所得の流れを糧に生きていたことを理解する必要がある。「1パーセント」の所得のほとんどは、資本所得という形で入ってくる。なかでも、このグループの資産である株と債券の利子と配当による所得が大きい。
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、295ページ)】

 (アメリカの)格差拡大の大半は「1パーセント」に起因するもので、国民所得に占めるシェアは1970年代の9パーセントから2000~2010年には約20パーセントにまで上昇した――11ポイントの増加だ。(中略)トップ十分位に加わった15ポイントの国民所得のうち、約11ポイント、あるいは4分の3近くが、「1パーセント」の手に渡り、そのうちのおおよそ半分が「0.1パーセント」の懐に入っている。
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、307~308ページ)】

 日本とヨーロッパの他の国々における国民所得比で2、3ポイントの増大が所得格差の著しい増加を意味することはまちがいない。稼ぎ手のトップ1パーセントは平均よりも目に見えて大きな賃上げを経験している。(中略)フランスと日本では、トップ千分位のシェアは1980年代初めには国民所得のわずか1.5パーセントしかなかったものが2010年代初めには2.5パーセント近くまで増えている――ほぼ2倍近い増大だ。(中略)人口の0.1パーセントが国民所得の2パーセントを占めるということは、このグループの平均的個人が国平均の20倍の高所得を享受していることなのだ。10パーセントのシェアなら、平均所得の100倍の所得の享受を意味する。(中略)重要な事実は、大陸ヨーロッパと日本を含むすべての富裕国で、1990年から2010年にかけて、平均的個人の購買力が沈滞していたのに対し、上位0.1パーセントは購買力の著しい増加を享受したということだ。
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、330~333ページ)】

 最も裕福な1パーセント――45億人中4,500万人――は、1人当たり平均約300万ユーロを所有している。これは世界の富の平均の50倍、世界の富の総額の50パーセントに相当する。
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、454ページ)】

 不等式 r>g が、当初のポートフォリオ規模に比例する資本収益の格差に増幅されて、爆発的な上昇軌道と、コントロール不能な不平等スパイラルを特徴とする、世界的な蓄積の動学と富の分配をもたらす可能性はまちがいなくある。これはぜひとも認識しなければならない。これから見るように、累進資本税のみが、このような動学を効果的に阻止できるのだ。(※rは「資本収益率」、gは「成長率」)
【出典:トマ・ピケティ著『21世紀の資本』(みすず書房、456ページ)】


 以上がピケティ本人の主張です。読めば分かるように、「ピケティの言う格差上位1%」というのは、「労働所得のほうがだんだん補完的な役割になる。所得の主役は資本だ。」という言葉に集約されます。そして、不等式 r>g という「資本収益率」>「成長率」によって格差は拡大していくから、ピケティは、累進資本税でそれを阻止する必要があると訴えているわけです。『21世紀の資本』が問題なのに、「THE PAGE」の記事は「給与所得者」にすりかえているのです。

 それでは、日本の富裕層はどうなっているのでしょう。


 日本の富裕層は過去最大の101万世帯、純金融資産総額は241兆円
 この2年間で世帯数は24.3%、純金融資産総額は28.2%増加


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 上の図表は野村総研が作成したものに赤字を加えたものです。野村総研は次のように発表しています。

 純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると、2013年時点で100.7万世帯でした。(中略)2011年と比較すると、富裕層は25.4%、超富裕層は8.0%、両者を合わせた世帯数は24.3%の増加となりました。また、NRIが同様の方法で推計した中で、2000年以降のピークである2007年の合計世帯数90.3万世帯を約10万世帯上回りました。(中略)2012年12月に発足した安倍政権下の経済政策(いわゆるアベノミクス)による株価上昇がもたらした金融資産増加の影響が大きかったと考えられます。
【出典:野村総合研究所の調査発表


 この野村総研の図表を見ても分かる通り、日本のトップ1%は、「THE PAGE」の記事が言っているような年収1,500万円前後どころの話ではなく、少なくとも純金融資産保有額が1億円以上であり、アメリカと同じように、「プライベート・ジェットに乗っているような大富豪を想像」できるものです。

 日本の富裕層がますます裕福にアジアで最も急速に資産増加
 富裕層人口の増加率で日本は世界一


 それから、ブルームバーグが「日本の富裕層がますます裕福に、アジアで最も急速に資産増加」という記事を配信しています。

 ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)とキャップ・ジェミニが21日公表したリポートによれば、日本で100万ドル(約1億700万円)以上の投資可能資産を持つ個人富裕層の純資産は前年比24%増えて5兆5000億ドル。日本のミリオネア数は22%増加し230万人となった。
【出典:ブルームバーグ「日本の富裕層がますます裕福に、アジアで最も急速に資産増加」


 そして、上の記事の元になっているデータが以下です。

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 上のグラフにあるように、日本の富裕層は、2012年の190万2千人から、2013年の232万7千人へと、42万5千人増で、対前年比22.3%も増えています。富裕層人口の増加率では、日本は世界一となっているのです。

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 また、上のグラフは、東京商工リサーチのサイトに掲載されているものです。東京商工リサーチは、「2014年3月期決算 役員報酬1億円以上開示企業191社・361人で過去最多」で、「361人の役員報酬総額は664億8,400万円(前年同期301人、508億3,000万円)で、前年同期より156億5,400万円増加した。」と指摘しています。

 大企業の役員報酬は8~10%アップ、労働者の賃金はマイナス

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 それから、上のグラフは、「役員報酬サーベイ」(デロイトトーマツコンサルティング株式会社の発表)の最新版です。労働者の賃金は下がり続けているのに、グラフにあるように、上場企業の役員報酬は、会長が32%アップ、「社長の報酬水準は8%増加し、常務と取締役は10%以上の増加率」(「役員報酬サーベイ」の報告書より)と、役員報酬は軒並みアップしているのです。

 大企業の配当金は3.52倍増、労働者の賃金はマイナス

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 それから、上の表は、私が所属する労働総研の労働者状態分析部会で作成したものですが、表にあるように「大企業の配当金は急増し、賃金と設備投資は減少」しています。1998年度から2013年度までの15年間で、配当金は3.52倍にも増えているのに、従業員賃金は0.96倍、1人当たりの賃金は0.94倍で、賃金額で見ると、591.1万円から558万円へと33.1万円もの賃下げになっています。また、設備投資も0.89倍と減少しているのです。

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 それから、上のグラフは、資本金10億円以上の大企業の内部留保額の推移と、阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部長)が作成されている「相対的貧困率の推移」を合体して私が作ったグラフです。

 上のグラフを見ると一目瞭然ですが、大企業の内部留保は、リーマンショックだろうが不況だろうが一切関係なく一貫して増え続けています。とりわけ、2013年の内部留保は285兆円と前年から13兆円も増やしており、これはまさにアベノミクスの成果でしょう。

 相対的貧困率は、3年ごとになっていますので直近は2012年の数字になっていますが、過去の推移を見ると、大企業の内部留保に比例して増えています。このグラフが示すのは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という「トリクルダウン」はまったくのデタラメだということです。もっと言えば、「トリクルダウン」の本当の意味は、じつはまったく逆で、「富める者が富めば、それに比例して、貧しい者はますます貧しくなる」ということです。


 トップ1%の所得税負担率が下がっている

 以上がピケティが問題視している、放置しておくとトップ1%の「資本」が増大し格差は拡大していくということが日本でも生まれているという問題です。それと最後になりますが、「THE PAGE」の記事は、「資本」の問題のすりかえを二重に行っている点を指摘しておきます。

 国税庁の調査によると、給与所得者のうち上位1%に該当する年収は1500万円以上となっています。これは給与所得者だけのデータですが、それ以外の人を加えてもそれほど大きな違いにはならないと考えられます。そうなってくると、日本では年収1500万円前後がトップ1%の入り口ということになるわけです。
【出典:THE PAGE 「ピケティの言う格差上位1%、日本では年収いくらの人か?」


 これはピケティが最も問題にしている「資本」を「給与所得」にすりかえる姑息な手段というだけでなく、「所得」を「給与所得」のみにさらに矮小化して、トップ1%の年収を小さく見せようというものです。それは、私が所属する労働総研・労働者状態分析部会で、国税庁「2012年分申告所得税標本調査結果」(2014年2月発表)のデータにより作成した下の表を見れば分かります。国税庁は、「申告所得税」のもとになる「所得」として、「給与所得」のほかに「事業所得」「不動産所得」「雑所得」「他の区分に該当しない所得」としています。これらすべての所得を見たものが下の表になるのです。

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 そうすると、全体が609万2,502人で、所得が5千万円より上の人数が4万7,125人で、上位0.77%になります。所得3千万円より上の人数にしてしまうと12万600人で、上位2%になってしまうので、ここでは約5千万円以上の所得の人が上位1%としておきましょう。そして、上の表から、所得税負担率をグラフにしたものが以下になります。下のグラフを見て分かるように、トップ1%の所得税負担率が下がっているのです。だから、ピケティは来日した際、日本における消費税増税には反対で、「低・中賃金の所得の税率を下げて、累積した資産やトップ層の所得税率を上げるということ」が日本では必要だと思う(朝日新聞1月31日付)と発言しているのです。

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(国公一般執行委員 井上伸)
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2015-02-13 10:42:16

見捨てられる命、不平等がテロをうむ-後藤健二さんらシリア人質事件を受けて私たちに何ができるのか?

テーマ:憲法9条・平和の問題

後藤健二さん


 2月6日、「後藤健二さんらのシリア人質事件を受けて今考える~私たちは中東の平和にどう貢献できるのか~」をテーマに緊急集会が開催されました。

 緊急集会で戦場ジャーナリストらが共通して強調されていたことなどを私の受け止め含め最初にまとめておくと次のようになります。

 「テロには屈しない」などとしてアメリカなどが行っているイラク戦争や空爆などの犠牲になっているのは圧倒的に罪のない子どもら一般市民であるということ。じつはこの事実に対して、日本に住んでいる多くの人々が無関心であったり、対テロ戦争やテロに対する空爆などの報復はテロをなくすためにはしょうがないのではないかなどという感じの無関心や現状追認に流されてしまっていることがそもそも大きな問題であること。

 テロの見方についても、突如うまれた残虐な極悪非道のモンスターとだけとらえ、アメリカによるイラク戦争をはじめとする武力行使や残虐な行為こそが残虐なイスラム国を育んで来たというテロを生み出す構造上の問題として把握できないこと。そして、とにかく報復の武力行使でそのモンスターを殺しさえすればテロがなくなるかのような単純な思考で空爆などへ流されてしまっていることが問題で、イスラム国の地域にも700万から800万人の一般市民が暮らしていることを見落とし、報復の空爆によって、罪のない多くの子どもら一般市民の命が奪われていることに思いを寄せることができないでいることが大きな問題であること。

 イラク戦争はじめ、中東諸国で奪われている罪のない一般市民数十万人の命は国際的にも見捨てられていること。イラク戦争はじめ空爆は国際法から見ても明らかに違法であり犯罪であるにもかかわらずアメリカはじめ先進主要大国や関連国の罪は一切問われないという不平等な扱いが、中東諸国の一般市民の見捨てられた命として不平等感を日々増殖させ、それがテロをうむという悪循環になっている。日本も協力したイラク戦争をはじめ、アメリカなどによる中東諸国の罪なき一般市民の殺戮は許されて、それを背景とする中東諸国の側によるアメリカ人や日本人の殺戮は「テロ」と呼ばれ「極悪非道」「絶対悪」として「根絶」しなければいけないモンスターとされるこの不平等がテロをうむ大きなファクターになっているということ。

 イスラム国が生まれる背景にあるイラクの一般市民十数万人の命を奪ったイラク戦争に協力した日本はこのイラク戦争を反省していないこと。もっと言えば、70年前の日本がイスラム国同様の残虐な侵略戦争を遂行したことについても反省するどころか肯定するかのような言動を繰り返している安倍政権を許してしまっている問題がある。これは日本の一般市民の中東諸国への無関心と現状追認にも連動して、問題を歴史的事実としてとらえ社会構造上の問題として把握できずにいるわけで、戦争する国づくりに前のめりになる安倍政権の暴走を許すことにつながっていること。

 戦場を取材すると、「暴力は暴力で止められない」「戦争は戦争で止められない」「テロは対テロ戦争や空爆では止めれない」という結論に至る。そしてこのことを、後藤健二さんはじめ戦場ジャーナリストはできるだけ多くの人に伝えたいがために自分の命をもかけて戦場で取材活動をしている。後藤健二さんがとりわけ戦火の中の子どもらに心を寄せていたのは偶然ではなく、戦争で最も犠牲になるのが罪のない子どもたちであることが戦争のリアルな実態であるということ。

 今回の事態を受けて私たち日本人にできることは、どこの国の誰であっても人を殺すことは犯罪であり許してはいけないということ。中東諸国の政治や社会を私たちは直接変えることはできないが、中東諸国への本当の人道支援とともに、日本という国が中東諸国はじめ世界のどの国に対しても空爆する側に回らない、報復する側に回らない、戦争する側に回らない日本政府を私たちの手でつくること。無関心で安倍政権の暴走を許すことになれば、日本が世界中で人を殺していくことになる。一方で殺しておいて一方で人道支援ということにはならない。日本が世界中で人を殺していくことになれば無関心は罪になる。

 ――以上のような受け止めを私はしました。あくまで私の受け止めですので御了承ください。それから、以下は緊急集会を聴きながら私が走り書きしたメモの一部です。逐条起こしでなく簡単なメモに過ぎませんので、入り組んでいたイラクやシリアの宗派や民族間の問題についてはメモできなかったので御了承ください。

 ▼安田純平氏 フリージャーナリスト
 日本を戦争へスタートさせないために
 憲法で戦争を止めること


 この間のマスコミ報道を見ていると、後藤健二さんが戦火の中の子どもたちや女性たちに寄り添っていたという映像を流すのだけど、後藤さんが最も訴えたかったアサド政権の空爆によって子どもらが殺されているという部分を全部切ってしまっていた。ただの一般論にしてしまっている。これは後藤さんに対する大変な侮辱だと私は思った。

 アサド政権も酷いが反政府勢力にも酷いのがいる。それぞれに対し武器を提供する国々の代理戦争という側面もある。泥沼状態でどうやって平和を取り戻せばいいのかそう簡単ではないのでみんなフリーズして思考停止になり、空爆で子どもらを殺すアサド政権のような存在もしょうがないよねとなる。しかし、現場を取材すれば目の前で子どもらが殺され続けている。シリアを世界が放置し20万人が殺されていった。イスラム国が広がっていった背景には、私も含めて世界中があれほど殺されていった人たちを見捨ててきたことがあると思っている。多くの見捨てられた人たちがいる中で残虐なことをするイスラム国がつけいるすきができたといったことなどが背景にあると思う。泥沼状態のなかで生活ができないからイスラム国でも行くしかないという人たちも見てきた。積極的にあんな酷いことをやろうと思っているわけじゃないけど、どうしようもないじゃないかと。イスラム国が残虐だからつぶせばいいという話ではない。日本は、そもそも戦争をスタートさせないためにいまある憲法で止めることが何より大事だ。

 ▼佐藤真紀氏 日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)事務局長
 経済的利益のために戦争に協力する日本を変えよう/
 ODAの軍事目的利用の監視を

 後藤さんとは11年前のイラク戦争で知り合った。NGOと戦場ジャーナリストは協力しあいながらやっていくところがあって、戦場ジャーナリストが現場の実態を知らせ、そして私たちNGOが人道支援を展開する。こういう狂った世の中を変えていく点で同じ。昨年からクルド地区で活動しているが難民がどんどん増えている。マスメディアが報道してくれないため、人々は無関心で資金集めも大変だ。人道支援は焼き石に水のようだが水を持っていけは市民は喜んでくれる。

 日本はODAを軍事目的にも使えるように1月の終わりに閣議決定で変えて行こうとしていた段階にあった。エジプトでの演説は今の段階ではまだできないけれど、先のことを見越して安倍首相は発言したのではないか。日本は国益、経済的な利益を何より優先してそのためには積極的平和主義となっている。イラクの復興は日本の国益でそのために侵略戦争に協力するし、日本は石油のためなら軍隊を出そうということ。今後、ODAの軍事目的への活用について私たち市民の監視が必要だ。

 ▼綿井健陽氏 ジャーナリスト・映画監督(アジアプレス所属)
 ベトナム戦争のときは映像や写真が戦争のブレーキになった/
 ところが今回は映像がブレーキではなくアクセルになっている/
 私たちに何ができるのか? 何ができるのかではなく、何を日本政府にさせてはいけないのかが重要


 99年、直接の同僚が取材中に惨殺された。この10年を見ても多くの日本人ジャーナリストが命を落としている。こういった事件が起こったときだけ、注目されその日本人ジャーナリストの物語がそのときだけ報道されるケースが多いが、ジャーナリストの死の前後で何が起こっているかという問題をみんなで考えるべきだ。CPJというアメリカの団体の調査結果によると、2003年のイラク戦争開戦以降、取材中に165人のジャーナリストが死亡している。そのうち85%がイラク人のジャーナリストだ。シリアも同様で、この4年ぐらいで79人のジャーナリストが死亡しているが、85%がシリア人のジャーナリストだ。普段の報道を支えているのは現地のジャーナリストであり、もちろんその背景には多くの一般市民の死があるわけで、ジャーナリストの死だけをクローズアップすることも違うと思う。後藤健二さんの場合は今までのジャーナリストの殺害とは違う。とりわけ映像がこういう形でつかわれることは残念だ。ベトナム戦争のときは映像や写真が戦争のブレーキになった。映像や写真が起点になってベトナムの子どもら市民を殺すな、戦争をやめろ、アメリカはベトナムから引き上げろと戦争をやめさせる方向にはたらいた。ところが今は残虐な映像が流れるとそれに対して報復をするという流れになってしまっている。2004年にイラクで米兵が引きずり回された映像がファルージャで流れ、そのあと大規模な報復空爆がなされた。残虐な映像が流れたときに、それに対しての報復、さらに残虐な行為をするという流れになってしまっている。今回も典型でヨルダンは空爆をし、残虐な映像にさらに残虐な報復という悪循環が生まれている。映像がブレーキではなくアクセルになっている。本来の映像は他者を理解したり他者とコミュニケーションを取ったりするものだと思っているのに、こういう形で使われているということに危惧している。

 私たちに何ができるのか? 何ができるのかではなく、何を日本政府にさせてはいけないのかが重要だ。直接的には何もできなくてもイスラム国で暮らす市民との交流を地道に続けて行くしかない。少しずつしか信頼は得られない。逆に日本の軍事的なかかわりが増していくと、必然的に民間人の危険も増していくことになる。

 ▼志葉玲氏 ジャーナリスト、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長
 ISISは米軍の刑務所が育んだ/
 「不平等がテロをうむ」


 ISISのそもそもの起源はイラク戦争だ。リーダーのバグダディはイラク南部バスラにある米軍の刑務所で逮捕拘束されている間に暴行虐待を受け過激思想を育んでいった。私は同じ刑務所にいた人に取材した。その人も何も悪いことはしていないのに米軍に逮捕拘束されその刑務所に入れられた。そこで酷い扱いを受けた。そうすると刑務所の中では米軍への怒りが充満していく。その中で米軍に対する武装勢力からリクルートされるということがあった。このことはイギリスのガーディアン紙も米軍の刑務所なしにはイスラム国はありえなかったと報道している。

 よく「貧困がテロをうむ」という見方がある。もちろん貧困問題を解決する必要もあるが、正確に言うと「不平等がテロをうむ」ということだ。どこかの国は人を殺してもいいのに、どこかの国が人を殺すとテロと言われる。この不平等がテロをうむ大きなファクターになっている。どの国だろうと国際法違反の犯罪を許さないということが必要だ。ガザの命より日本人の命が大事という風潮ではダメだ。戦争だからといって何をやってもいいというわけではない。暴力をいつまで見逃すのかという問題を私たちは考える必要がある。

 ▼豊田直巳氏 ジャーナリスト、日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)会員
 イスラム国が残虐だと言うが70年前の日本兵は同様のことをいくらでもやっていた。私たちは何者なのだろうかと振り返る必要がある


 後藤さんと湯川さんだけではなく毎日何十人も殺されているということを私たちがしっかり認識することが大事だ。戦場を取材すると暴力では戦争は止まらないということを実感する。非暴力でしか解決できないのだから知恵を出さなければいけない。この会場に来ない人に知ってもらわなければテロや戦争は止まらない。イスラム国の地域には700万人から800万人の庶民が住んでいる。私たちにはその地域を直接変えることはできないが、しかしそこに自衛隊を送り込むと言っている安倍政権を私たちは変えることができる。

 私たちは何者なのだろうかと振り返る必要がある。イスラム国が残虐だと言うが、70年前の日本兵は同様のことをいくらでもやっていた上にそれを安倍政権は反省しないとも言っているような日本の状況を放置しておいて戦争は止められない。イスラム国を特殊だと言っているだけではご都合主義だ。人道支援は難民支援と難民が出ないようにすることが基本であって、安倍政権がやろうとしていることは逆だ。

 テロは不平等の蔓延がつくっていく。まず知ることがスタートで知らなければ考えようがない。今の安倍政権に対してどこかで歯止めをかけなければいけない。本当のことを知るためにはプロパガンダとは違うジャーナリズムが必要だ。そのために戦場ジャーナリストは取材に行く責任がある。事実を知らせること、事実を知ることが大事で、つらいことは忘れたい、と思うだろうが、ときどき思い出す必要がある。

 ▼高遠菜穂子氏 ※難民支援活動を行っているヨルダンからSkypeで参加
 現地の反発が大きい安倍政権の「人道支援」


 ヨルダンに滞在中。私たちができることを続けていくことが大事だと思っている。昨年、イラクはイラク戦争後最悪の事態に見舞われた。そうした事態をマスメディアが報道しないことが問題だ。今回の安倍政権による「人道支援」については現地の反発が大きかった。命からがら逃げて来た避難民にとってはイラク政府にお金を渡すのは、有志連合の空爆に使われてしまうのではないかという危惧と、イラク政府にお金を渡すこと自体が問題だと多くの市民が思っているということ。なぜなら今のイラク政府は世界でトップクラスと言われるほど腐敗汚職がひどく、イラク政府が市民から信頼されていないためだ。

 ▼伊藤和子氏 弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長
 一方で殺しておいて一方で人道支援ということにはならない。日本が世界中で人を殺していくことになれば無関心は罪になる


 アメリカの残虐さを棚に上げてイスラム国を邪悪だと言う。どれだけイラク戦争で市民が殺されたか。イラク政府による人権侵害について誰も何も言わない。国際社会を構成している大国は見て見ぬふりだ。人権侵害が追及されない。イスラエルの責任は追及されない。イスラム国だけが邪悪なのか。構造的な暴力で弱者を殺してきた。弱者への人権侵害が追及されない。そして、報復にとらわれて日本も戦争への道を行くことに危惧している。

 どれだけ虐殺されても誰も責任を取らない。そして憎悪が広がる。ここでイスラム国をつぶして本当に平和が訪れるのか。無関心ではすまされない。日本は空爆する側に向かっている。一方で殺しておいて一方で人道支援ということにはならない。日本が世界中で人を殺していくことになれば無関心は罪になる。

【文責=国公一般執行委員・井上伸

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2014-12-30 14:07:31

ベビー服や絵本等が国から届くフィンランドと衣食住不足し教育も医療も受けられない日本の子どもの貧困

テーマ:ワーキングプア・貧困問題

ひとり親


 一昨日放送されたNHKスペシャル「子どもの未来を救え~貧困の連鎖を断ち切るために~」のメモです。(※私が関心を向けたところだけで、全体を通してのメモでないこと御了承を)

 ◆日本の子どもの貧困率は16.3%。6人に1人の子ども300万人が貧困状態にあり、先進国の中でも非常に深刻な状況です。年々高まる日本の子どもの貧困率は、直近のOECDの2010年のデータによると、アメリカ、スペイン、イタリアに次ぎ先進国で4番目に高くなっています。OECDによる現在の日本の貧困ラインは、3人世帯で年収211万円未満、1人世帯で年収122万円未満です。これを下回る家庭では、学ぶ・遊ぶ・医療を受けるなど子どもにとって当たり前の生活が難しい状態に置かれています。

 ◆日本の子どもの貧困の特徴は、家庭という閉ざされた環境の中で見えにくい“見えない貧困”であることです。子どもたちが満足な食事すら取れない状況が広がるなか、山梨県のNPO法人は、食事への支援している子どものいる家庭270世帯に実態調査を実施。この実態調査によると、世帯主の多くが非正規雇用で、平均年収は187万円。1日の1人あたりの食費は平均329円。全国平均の半分です。2割の家庭は200円未満でした。さらに子どもたちの様々な機会が奪われていることも分かりました。「塾や習い事に行かせられない」「遊びに連れて行けない」が44%。「十分な医療を受けさせられない」が23%。「貧困が子どもの健康や精神状態に影響を与えている」は59%。子どもの貧困が、子どもの心の成長や体の成長に悪影響を及ぼしていることが判明。とりわけ、母子家庭が深刻であることが分かりました。例えば派遣社員として働くシングルマザーのケース。月収は8万円で児童扶養手当等の7万円をあわせて生活。幼い2人の子どもの冬服が買えず、家賃も滞り気味。月末には所持金がなくなり、「もう3人で死んじゃおうかなって。そうすれば楽になるんじゃないかと何度も考えたことがある」と話すシングルマザー。

 ◆日本のひとり親世帯の貧困率は54.6%(2012年)、先進20カ国の中で最悪です。とくに母子家庭は年々増え続け、2011年時点で124万世帯(全国母子世帯等調査)。そのうち8割が働いていますが、その多くが貧困状態に置かれているのです。

 ◆《阿部彩さんのコメント》経済的な困窮は子どものあらゆる側面に悪影響を及ぼす。学力にも体力にも悪影響を与えますから、貧困状態に置かれる子どもは、「自分は価値のない人間だ」ということが内在化し、自分の肯定感が失われてしまうのです。

 ◆《阿部彩さんのコメント》子どもの貧困問題は、女性の就労の問題ともつながっています。女性は男性と結婚して、男性が主な稼ぎ手で女性はサブの稼ぎ手であるという固定観念からつくられた労働環境というのが、女性が一人で子どもを育てるときには大きな障壁になってしまう。子育てをしながら正社員の職に就くのが非常に難しいというのは、ひとり親世帯だけでなくすべての女性の問題でもありますし、働く世代の単身女性の貧困率が33.33%(2012年)と高く、ましてひとりで子育てもし稼がなければいけないとなると二重三重の困難に立ち向かわなければ行けないということになる。女性はそのうち男性と結婚するだろうという先入観のもとに女性の貧困を政府も社会も見てこなかったのです。

 ◆当事者自身が声をあげにくい。お金がないとは言えない。――そうした日本社会のなかで、心身に不調をきたし病院に運び込まれてようやく経済的な困窮が明らかになるケースが増えています。[救急病院での実態→]この日、救急病院に運び込まれた23歳の女性は、非正規雇用で働いていましたが3カ月前に失業。また衰弱して倒れ運び込まれた20代の女性は2児の母親。厳しい暮らしの中で追い詰められた母親は重い肺炎を引き起こし倒れ現在会話もできない状態で病院に運び込まれたのです。「SOSをもっと早くキャッチしていたらこんなに長く苦しまなくてすんだのに」(病院職員等の声)

 ◆見えない貧困、届かない公的支援――衰弱して病院に運び込まれるなど、あれほど追い詰められないとSOSが見えない日本社会。「助けて」と言えない親子や女性。番組内では、母子世帯への支援、児童扶養手当、就労支援など、最後のセーフティーネットである生活保護など公的支援にきちんとつなげていく必要性が語られると同時に、今年8月、政府が閣議決定した「子どもの貧困対策に関する大綱」や関連法整備に乗り出すなど、国をあげた課題となっていること紹介していましたが、阿部彩さんは、以下のように指摘していました。

 ◆《阿部彩さんのコメント》低所得者への家計支援策が圧倒的に足りない。諸外国においては、公的な住宅を提供していますが、日本は絶対的に足りていないのです。諸外国は、家賃補助や食料費の補助、光熱費の補助などいろいろなメニューをもうけて低所得者の家計を支える支援策を用意しています。日本は低所得者への支援策の拡充が絶対的に必要です。行政には圧倒的な情報量があり、本来は行政がいちばん困窮のサインをキャッチできますが、情報をキャッチするだけでは不十分で、キャッチしても低所得者への支援策が少なすぎることが大問題なのです。社会が支援もしないのに母親を責めてはいけないのです。そして、子どもの貧困対策は長い目でみた投資なのです。子どもの貧困対策を行うことで、子どもは社会で働き、国に税金を納めることができるのです。子どもの貧困への理解促進が必要です。

 ――以上が番組を見ていての私の簡単なメモですが、阿部彩さんが指摘されていた、低所得者への家計支援策が圧倒的に足りないというのと、子どもの貧困問題は女性の就労の問題ともつながっている、という2つの点が大事なのではないかと思いました。

 番組の中でも紹介されていた、昨年の「子どもの貧困対策法」を受け安倍政権が閣議決定(8/29)した「子どもの貧困大綱」は、「親から子への貧困の連鎖を断ち切る」ことをうたい、「教育支援」「生活支援」「保護者に対する支援」「経済支援」の4分野の課題を掲げてはいるのですが、多くの諸外国で掲げられている貧困率改善の数値目標がないことをはじめ、ほぼ従来の延長線の政策に過ぎず、児童扶養手当の拡充、給付型奨学金の導入、就学援助の拡充、子どもの医療費の窓口負担ゼロなど、阿部彩さんが指摘するところの圧倒的に足りていない「低所得者への家計支援策」の抜本的拡充こそ最も必要なのに盛り込まれていません。最も大事な「低所得者への家計支援策」がない安倍政権の子どもの貧困対策には実効性がないと言わざるをえない上に、逆に、生活保護世帯の学習支援は国庫負担補助を半減させる計画になっています。

 さらに、厚生労働省は12月26日、生活保護費の住宅扶助と、暖房費の冬季加算を2015年度から引き下げる方針を打ち出しました。昨年の8月から、生活保護の生活扶助は最大で10%削減が強行されていますから、すでに苦しい生活を強いられている生活保護利用者の命を危険にさらすもので、安倍政権は子どもの貧困対策とはまったく逆向きの政策を実際は打っているというのが客観的事実です。

 それから、子どもの貧困問題は女性の就労の問題ともつながっているという点です。12月26日に総務省が発表した「労働力調査」によると、非正規雇用の労働者数がこの11月に初めて2千万人を超えて過去最高の2,012万人となり、雇用者に占める非正規の比率は38%に達しました。なかでも派遣労働者が増加数・増加率とも最大で男性が6万人増の56万人、女性が13万人増の79万人となっていて、女性の派遣労働者が急増しているのです。

 今回のNHKスペシャルの中でも、幼い子ども2人を育てながら派遣社員で働くシングルマザーが月収8万円しかなく、「もう3人で死んじゃおうかなって。そうすれば楽になるんじゃないかと何度も考えたことがある」と語っていましたが、阿部彩さんが指摘しているように、女性の劣悪な雇用が女性の貧困をもたらし子どもの貧困につながっていくわけですから、今回の「女性の派遣労働者が急増」→「女性の貧困が急増」→「子どもの貧困が急増」ということにつながっていくということです。そして前年同月比で見ると、非正規労働者が48万人増えた一方、正規労働者は29万人減。正規を減らし非正規に置き換える動きが一層進み、さらに安倍政権は雇用を守るルールを「岩盤規制」と呼んで安倍首相は私のドリルで打ち破るとしています。そして12月28日、自公両党が「生涯派遣・正社員ゼロ」となる労働者派遣法改悪法案を来年の通常国会に提出するよう政府に求める方針を固めています。今回の「労働力調査」で、女性の非正規比率は57.3%と6割近くです。年齢階層別に見ると、15~24歳が50.5%で、65歳以上の74.2%を除けば最も高くなっています。労働者派遣法の改悪は、多くの労働者の貧困をもたらし、とりわけ女性の貧困を増大させ、子どもの貧困を深刻化させるものであり、安倍政権が子どもの貧困対策を真剣に考えるならば、労働者派遣法の改悪は断念すべきです。



 そして、すでに何度か紹介していますが、▲上のグラフにあるような「子を持つ女性に世界最悪の賃金差別=男性のわずか39%、OECD30カ国平均の半分」という状況を抜本的に改善する必要があります。

貧困率



 それから、阿部彩さんが指摘していた「子どもの貧困対策は投資だ」という点ですが、OECDの中で子どもの貧困率(2010年データ)が低いベストスリーは、デンマーク3.7%、フィンランド3.9%、ノルウェー5.1%です。日本は15.7%ですから、デンマーク、フィンランドの4倍以上も日本の子どもの貧困率は高いのです(▲上の表参照。内閣府「子ども・若者白書」2014年版)。それで「子どもの貧困対策は投資」と考えて政策を打っているフィンランドの例を以前ブログにアップしていますので最後に紹介しておきます。

 フィンランドでは、子育ては、親だけの責任ではなく、社会全体の仕事だと考えられています。子どもに平等な教育を提供するのは、親にではなく政府の責任にあると考えられています。ノートや鉛筆など学校で必要なものはすべて教室にそろっています。理解するまで一人ひとりに丁寧に教えていく授業。フィンランドに学習塾はありません。子どもに授業の内容を理解させるのは学校の責任です。フィンランドでは、教育は子どもの可能性を引き出すものと考えられています。家庭の経済状況によって、子どもの未来が閉ざされてしまうことはありません。家庭の経済状況にかかわらず、すべての子どもに平等な教育機会を保証するフィンランド。その背景には社会全体で支え合う国民全体の合意があります。フィンランドの企業の社会保険料負担は日本の2倍です。1991年の不況で、フィンランドの失業率は18.4%に跳ね上がり、財政危機に陥りました。しかし、フィンランド政府は、教育費を増額したのです。財政危機にもかかわらず、教育費を増額したのには次のような裏付けがあったのです。教育が受けられないため、働けない人に対する国の負担は、生活保護など年間1人当たり96万円、生涯で2,230万円もの負担になります。一方、教育を受けて働くことができれば、国に税収が年間1人当たり76万円、生涯で1,770万円の税収を得ることができるのです。教育への投資を最優先することが財政危機を解決することなのです。教育への投資は、将来の経済成長につながり、税収が拡大するのです。教育にかかるコストよりも教育で得られる利益の方が大きく、「平等」と経済の活力というものは相反するものではなく、「教育機会の平等」があってこそ、活力ある社会が生まれるのです。
セーフティーネット・クライシス - 子どもの貧困は社会の損失、子育ては「自己責任」ではない

 フィンランドの教育の主な特徴をあげると――

 ◆子どもが生まれると、国から母親全員にベビー服や布団、哺乳びんや絵本などのセットが届き、17歳までの子ども全員に月1万3千円が支給される。

 ◆高校や大学はもちろん大学院や専門学校を含めすべての教育段階が無償である。

 ◆授業料が無料というだけでなく、子どもたちには通学手段、食事(給食)、教科書や学用品が無償で提供される。さらに、校医・学校看護婦・学校ソーシャルワーカー・学校心理士・生徒カウンセラー等のサービスを無償で必要に応じて受けることができる。フィンランドの基本は「生徒の必要に応じて無償サービスを受けることができる」ということ。

 ◆大学生などには月数万円の返済不要の奨学金が支給され、貧富の差なく教育が受けられる。

 ◆労働者に残業はほとんどなく、夕方5時には家族そろって親と子どもがゆっくりすごせる。

 ◆夏休みは2カ月あり、宿題もない。

 ◆授業時間数はOECD加盟34カ国の中で最も少ない。

 ◆ひとつの学級は24人以下の少人数で、実際には20人以下の学級が多い。

 ◆「全国いっせい学力テスト」のような国レベルのテストはもとより、地域レベルでのテストも無い。フィンランド教育省は、「テストと序列付けを無くし、発達の視点に立った生徒評価」が重要と述べており、とりわけ「子ども期」における「競争による序列」を問題視し、小学6年生までは通知表も無い。

 ◆すべての子どもがわかるまでを基本に、結果平等の教育が徹底され、学習に困難が生じている子どもに対しては、即座に特別支援教育によるケアが実施される。とりわけ、低学年時を重視し、学習のつまずきの早期発見によって、学習困難の子どもの問題発生を最小限に抑えている。

 ◆イギリスやドイツなどがフィンランドの「学力世界一」に衝撃を受けたのは、エリート教育に力を注ぐイギリスやドイツよりもフィンランドの「学力上位層」の学力が上だったこと。

 ◆学校や家庭での体罰は厳しく禁止されている。

 ◆学校の運営機関に生徒代表が参加する。

 ――以上のように、フィンランドの教育の特徴を見ていくと、日本の現状がほとんどの場合、フィンランドとはまったく逆の教育になっていることがわかります。

 フィンランドの憲法には第16条に、「すべてのもの――フィンランド国籍であるかどうかにかかわらず――は無償の教育を受ける権利を持つ。国および地方教育当局は法律に則って、すべてのものが義務教育だけでなく能力と必要に応じた教育を平等に受けられる機会を保障し、経済的状況を問わず自己を発達させる機会を保障しなければならない。科学、芸術、高等教育の自由は保障されなければならない」と明記されていて、まさに憲法どおりの教育実践がめざされているのです。
競争が子どもの学力と幸せ奪う - テストやめ学力世界一のフィンランド、競争で学力低下させる日本

国公一般執行委員 井上伸

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