■省庁の再編(通称・橋本行革)
各省の権限を法律から削除する提言(各省設置法の改正)
→1999年1月 法律として成立
■公益法人・寄付税制改革
法人の設立が自由にできる非営利法人制度への変更と寄付税制の大幅緩和の提言
→2006年5月 「公益法人制度改革関連法」に規定
■年金制度改革
制度全体の見直しを政府が確約する旨の提言
→2004年4月 年金改革法の「附則」として成立
■「三位一体」改革
国から地方への分権(法律から条例への授権)を大幅に拡大する提言
→2004年6月 閣議決定
■国の「事業仕分け」
国の仕事を国民/住民の視点からオープンな場で個々具体的にチェックする作業を提言(行財政改革の切り札)
→2006年5月 「行政改革推進法」に規定
上記は、何の列挙だと思いますか? 「橋本行革」から「小泉構造改革」で行われた自民党政権による「行政改革」のメニューの一覧だと普通は思うでしょう。
ところが、これは、鳩山政権が新しく作った「行政刷新会議」の事務局長に抜擢された加藤秀樹氏が代表をつとめるシンクタンク「構想日本」が誇る「成果」の一覧なのです。上記の列挙は、「構想日本」のホームページに、「構想日本のこれまでの主な成果」 として、掲載されているものです。
自民党政権のもとで、1999年の「橋本行革」から「小泉構造改革」まで、実際の政治を具体的に動かしてきたと自慢する「構想日本」の代表である加藤秀樹氏が、鳩山政権でも「行政刷新」の先頭に立つわけです。
先の総選挙で、自民党政治に審判を下した国民の願いは、「貧困と格差」を拡大した構造改革路線を転換してもらいたいということです。とりわけ、地域における「貧困と格差」は深刻です。「構想日本」が成果と誇る「地方分権」の美名で実施された「三位一体改革」を少し検証してみたいと思います。
「三位一体改革」の「成果」とは一体何だったのでしょうか? 数字で見ると、「三位一体改革」として、2004年度から2006年度の3年間に、地方に移譲された税源は3兆円です。しかし、地方交付税は5.1兆円、補助金(国庫支出金)は4.7兆円が削減されました。結局、差し引き6.8兆円ものマイナスが、地方に押しつけられというのが、「三位一体改革」の「成果」です。
上記の表は、総務省「地方財政審議会」の「地方公共団体間の財政力格差の是正についての意見」(2007年11月16日)
の中に掲載されているものです。地方財政審議会は、上記の表を示しながら次のように指摘しています。
「この取組み(構造改革)により、地方歳出の抑制が続く中で、特に財政力の弱い地方公共団体においては、税収が増加しても、それを上回って地方交付税が抑制され、歳出削減に懸命の努力を続けているにもかかわらず、厳しい財政運営を強いられている。地方全体の一般歳出決算額は、平成11年度(1999年度)から平成17年度(2005年度)までの間に、国の一般歳出削減を上回る14.6%(11.5兆円)の削減がなされている。特に、財政力指数が0.3未満の県にあっては24.3%、人口5,000人規模の町村にあっては24.9%もの削減に及んでいる。」
また、2000年から2005年の都道府県別法人所得額の推移を国税庁統計で見ると、東京都の全国シェアが43.2%から46.0%へ、愛知県が7.3%から9.0%へ増える一方、高知県は38.7%減少、秋田県は32.6%減少など法人所得額を大幅に減少させている道府県は27にも及んでいます。
さらに、利子所得と配当所得を含む金融所得の「地域間格差」は異常です。2000年から2005年にかけて、金融所得が増えているのは、東京都と埼玉県だけで、とくに東京都は1兆1158億円の増加と倍増を記録し、全国シェアは2000年の21.9%から2005年の65.8%へと3倍以上も増加しています。小泉構造改革の目玉であった「金融の規制緩和」の恩恵は、東京の一極集中という形で、ますます「地域間格差」を拡大してしまったのです。
上記グラフの上半分は都道府県別の「県内総生産」「県民所得」の増減率、下半分は「県民所得」を構成する3部門(「財産所得」「雇用者報酬」「企業所得」)の増減率(2000~2005年度)を見たものです。(内閣府「平成17年度県民経済計算」
)
「県内総生産」は、愛知や東京などで高い増加率を示す一方、高知や青森などでは5%を超える減少率となっています。しかも、「県民所得」については、東京を除いて「県内総生産」の増加率を下回った上、減少している道府県は39にものぼっています。
「県民所得」を構成する「財産所得」「雇用者報酬」「企業所得」の増減率を見ると、「財産所得」は東京だけが突出して328%もの増加となっているのに、44道府県では減少しています。
「県民所得」が増加していた東京や愛知でさえ、「雇用者報酬」は減少していて、「企業所得」だけが増加しています。「雇用者報酬」が増えているのは、神奈川と三重だけで、ほとんどの都道府県の「県民所得」の増加は、「企業所得」だけが増加し、「雇用者報酬」は減少しているのです。
以上、見てきたように、鳩山政権の目玉である「行政刷新会議」の事務局長・加藤秀樹氏が「構想日本」代表として誇る「成果」は、本当の意味での「地方分権」とは正反対の「地域間格差の拡大」と「地方の切り捨て」、「雇用者報酬の減少によるワーキングプア、貧困の拡大」以外の何ものでもありません。
マスコミの「行政刷新会議」の報道を見ると、民間メンバーに経団連の代表が入らなかったことを“様変わり”とする向きもありますが、キッコーマンの茂木友三郎会長は、経済同友会終身幹事で、自公政権において「行政減量・効率化有識者会議座長」や、「行政支出総点検会議座長」を財界代表としてつとめてきた人物です。さらに、茂木氏は、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)の共同代表で、その21世紀臨調の顧問会議議長は、御手洗冨士夫・経団連会長なのですから、経団連の人間が直接メンバーでなくても、財界代表としての役割を十二分に発揮できる人物でしょう。
国民の願いは、「貧困と格差」をなくすための「国民の生活が第一」「暮らしのための政治」の実現です。そのためには、「行政刷新会議事務局長」の加藤秀樹氏は、ただちにシンクタンク「構想日本」代表としてやってきたことを、まず見つめ直さなければならないでしょう。
(byノックオン)