この世界の片隅に

 

衝撃的。

アニメーションの可能性は無限だと思わせてくれる。

 

昭和20年の広島県呉市である。

戦時下でも人は暮らし、食べ、笑い、営んでいる。

 

戦中の人々は泣いてばかりかと思えば、違う。

現在と変わらない人々の心根である。

 

違うのは、生き死にがすぐ隣に転がっていること。

 

 

 

すず役は能年玲奈改め、のん

アニメと声が一体化しており、血肉が透けて見える。

自らを追い込むセリフ語りが秀逸。得難い才能かと思う。

 

夫役は細谷佳正で、純粋さを醸し出す声。

 

旧友役は小野大輔で、またしても違う声。大好きです。

 

遊郭のリン役、岩井七世の切なさが耳に残った。

 

 

監督・脚本の片渕須直は、革命を起こしてしまったのだろう。

広島出身・こうの史代のマンガ原作を熱意をもって映画化。

街並みや天気、警報発令の時間といった実際の日々の資料を集めたのだそう。

そうして、劇場に時代の空気を現出させた。

 

資金はクラウドファンディングも駆使して調達。

口コミで上映館が広がり、今や全国的に公開されている。

 

そもそも、あのアニメ制作会社STUDIO 4℃を設立して、マッドハウスに移籍した才能だとは!

当初の計画通り、片渕須直監督による『魔女の宅急便』も観てみたかった。

 

 

 

音響が凄まじく、死の恐怖を感じるほど。

轟音や、弾く音。

まさに、体感である。

 

すずさんのおっちょこに、クスクス笑い。

食材の工夫、いわば戦時下「ぐるなび」に感心し。

家族のやり取りや愛情の可愛らしさに、ニコニコする。

 

楽しいのである。

だから、脳天に突き刺さる現実に震えが走る。

少し、タイムスリップするような感覚だ。

目の当たりなのである。

 

過酷をファンタジーで包んで差し出す映像表現。

コトリンゴの楽曲が染み渡り。

エンドロールまでもが物語の範疇。

 

昭和18年生まれの母が号泣したと、当時2歳だった自分を育ててくれた親の苦労を思って改めて感謝したと、メールをくれた。

 

何かを糾弾するのではなく、ありのままの日本人。

イデオロギーを超えた、対戦争論でもある。

傑作かと思う。

 

 

 

映画 スクリーン

 

『この世界の片隅に』
IN THIS CORNER OF THE WORLD
2016年/日本

原作: こうの史代

監督・脚本: 片渕須直
音楽: コトリンゴ
出演: 

 

 


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※鑑賞の感想です。情報に誤りがございましたら御一報頂けましたら幸いです。