化粧品犬です。
2016/9/7に発売された新製品 資生堂 TSUBAKIオイルエクストラ モイストバランスケアの解析の2回目です。
今回はシャンプー処方の解析編をお送りします。
第1回の概要編はこちら。
資生堂 TSUBAKIオイルエクストラ モイストバランスケアの解析1 シャンプー・コンディショナーの概編編
さて本製品は、去年出た2015年限定版のオイルシャンプーを製品化した製品のはず・・・なのですが。
実際には、2015年限定版とは、全く似ていない、ちょっと詐欺的な製品です。
むしろ既存のTSUBAKIに良く似ています。
大人の事情ってやつですかね。
容器はなかなか力が入っているけれどね・・・。
今回はそこのところを明確にしたいので。
その2015年の限定版と、2015年のレギュラー品のTSUBAKIについても、新製品と横並びで見ていこうと思います。
2015年のレギュラー品のTSUBAKIは、ダメージケアを選びました(それしか使った事が無い)。
では早速、処方の解析を始めます。
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は、2015年の限定版オイルシャンプーと、2015年のレギュラー品ダメージケアのTSUBAKIの裏面表示も、整理し、新製品と併記してみます。
ちなみに、2016/9/7にはこのレギュラー品のTSUBAKIダメージケアもマイナーチェンジされてリニューアル発売されているのですが、意外に色々チャレンジしていて(^_^;)
話がややこしくなるので、その2016年新製品はいずれ取り上げます(^_^;)
原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。
こんな感じになりました。
左の二つが旧製品、右端が新製品になります。
ぱっと見てもわかるのは、2015年限定オイルシャンプーだけが、非ラウレス硫酸系と言うことですね。
これだけが昔の資生堂のようなAMT(ココイルメチルタウリン)主剤です。
そのため独特のマイルド感があり、コンセプトの「一番搾りツバキ油使用」とマッチしていました。
しかし、新製品は普通のラウレス系で、いつものTSUBAKIです(^_^;)
ただ、カチオンポリマー多めな使用感で、すすぎのぬめりは強化されており、一番搾りツバキ油使用という、「イメージ」は作っていますね。
ではパート毎に見ていきましょう。
まず洗浄剤のパートです。
見て分かるように、内容的にも2015年のレギュラー品(ダメージケア)の焼き直しです。
ただ最近の資生堂さんの流行なのですが、酸性石けんの一種である、ラウリルグリコール酢酸Naを加えています。
ここで、あえてアミノ酸系洗浄剤を使わないという辺りで、コーセーのジュレームと差別化しているのかもしれません。
次はコンディショニング剤、オイル類のパート。
ここは2015年のレギュラー品よりも、2015年限定版に近くなっています。
これは資生堂さんにも一片の良心があったのか?」とかではなくて、透明系なので同じ透明系の2015年限定版品と似ざるを得なかったのだと思います。
2015レギュラー品には、 ステアリルトリモニウムクロリド等が濁りぞうなのですがパール化剤のジステアリン酸グリコールがそれを隠している構成となっています。
また2015年限定品と新製品は良く似ているのですが、カチオン化ポリマーが3種併用(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-7)から、2種併用に減らされ、コストダウンは進んでいるようです(これは、コストダウンで無く、すすぎ時の使用感の変更のためかもしれませんが)。
次は防腐剤。
理油ははっきりしませんが、抗菌力が強いサリチル酸が増えてます。
サリチル酸も微妙ですよね、、、何かトラブルがあったのかもしれません(腐っちゃったとか)。
パラベンが増えなかっただけ良いともいえますが。
次は保湿剤、香料等のパートです。
ツバキ麹の主成分であるアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液が共通していることも有り、新製品はやはり2015年レギュラー品に似ています。
2015年限定品の方には色々異なエキスが配合されており、製品に華を添えていたのですが、新製品では一部を残してエキスは省いてしまっていますね(^_^;)
これもなあ・・露骨なコストダウンですね。
残したエキス(ユキノシタ、カミツレ、オトギリソウ)にも特に関連性無いし。
処方的には、油の可溶化力の強いPEG-60水添ヒマシ油を新規配合したことで、ツバキ油を更に安定配合しやすくなっているのだろうなと思います。定番化って夢が無いですね(^_^;)
こんなところです。
いやあ、しょっぱい製品ですね。
この製品が出たということは、今年からは冬季の限定品も、もう出ないと言うことでしょう。
ほんと、夢が無いです(^_^;)
あとは、パート毎の成分についてコメントを書いていきます。
洗浄剤
・ラウレス硫酸Na:シャンプーでよく使われる洗浄剤。ネットでの評判は悪いが、洗浄力は強めであるものの、刺激はそれほどは高くない。そもそも、ラウリル硫酸Naという刺激の強い洗浄剤の、安全性を改良した洗浄剤。
下記エントリー参照です。
花王 メリットシャンプーの解析(前哨編2 ラウレス硫酸塩の安全性)
・コカミドプロピルベタイン;そこそこ安全性が高く、価格が安い両性洗浄剤。
・ラウリルグリコール酢酸Na:エーテルカルボン酸型洗浄剤の仲間です。「カルボン酸=石けん」のイメージさっぱりとした豊かな泡立ちが特徴と書かれることが多いのですが、実際には石けんほど泡立ちも良くなく、それほどさっぱりもしていません(化粧品犬の個人的な感想ですが)。そもそも、エーテルカルボン酸型洗浄剤はイメージほど泡立ちもさっぱり感も強くない原料なのですが、そのエーテルカルボン酸型洗浄剤の範疇としては泡立ちは良い方・・・といった感じですね。
エーテルカルボン酸型洗浄剤のよさとは、泡立ちやさっぱり感にあるのでは無く、色々な理由でアミノ酸型洗浄剤を使いたくないときに、違う択肢の一つになりうる所にあります。そういう点ではノニオン系洗浄剤のアルキルグルコシドなどとも、使い所は似てくる原料かもしれません。
・ラウリン酸PEG-2:若干泡は立つのですが、主には増粘剤として働く原料です。
・ココイルメチルタウリンタウリンNa:その昔の資生堂が使っていたAMT(ココイルタウリンNa)の改良品で、ココイルメチルタウリンを、水酸化ナトリウムで無くタウリンで中和して作られた洗浄剤。W-AMTとも言われることがある。性能はAMと類似している。
コンディショニング剤、オイル類
・グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド:昔から使われているカチオン化ポリマーの1つだが、最近再度よく使われるようになっている。
・アルギニン:髪や肌に吸着しやすい、塩基性アミノ産の一種。安全性が高いため、化粧品ではpH調整に使われる事が多い。血行促進効果や、ビタミン並みの細胞活性化・創傷治療効果を有し、抗酸化抗糖・化効果も発揮する。必須アミノ酸では無いが、生体内に広く分布しており、胎児の成長に必要なことから、生命の根幹に関わるアミノ酸であることが示唆される。味は苦い。
・ポリクオタニウム-7:シャンプーによく使われている、カチオン化ポリマーと言われる成分の一種。特に、毛髪上に柔らかい皮膜を作る事と、シャンプーの刺激を弱める事、それにシャンプーの泡立ちを高めるという特徴がある。ボディソープや洗顔料に使われる事も多い。
・ツバキ種子油;TSUBAKIの語源となっている素材。いわゆる椿油のこと。不飽和結合としてオレイン酸を多く含むため、比較的酸化されにくいという性質がある。
・レシチン:大豆から抽出したリン脂質。天然の界面活性剤として幅広く利用されている。実際の利用分野としては乳化剤や保湿剤としてクリームや乳液に使われる事が多く、食品分野に使われる事も多い。
・イソステアリルアルコール:分岐鎖タイプの液状のワックスで安定性の高い油剤。他の油性成分との相溶性が良いため、流動性の改善などに使われることが多い。
・トコフェロール:別名ビタミンE。油性成分ですが、酸化安定剤として働きます。
防腐剤
・サリチル酸:殺菌作用が強く角質溶解作用もある防腐剤。化粧品の防腐剤としては0.2%以下の添加であるが、医薬品用の角質溶解剤としては、2〜50%配合の軟膏が作られている。また化粧品や医薬部外品のふけ防止用ヘアトニックや育毛用のヘアトニックの他、ニキビ防止用の製品人も用いられることがある。
・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。
当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。
・安息香酸Na:広く使われている、比較的低刺激な防腐剤。食品にも使われる。
保湿剤、香料等
・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。
・ソルビトール:糖系の天然保湿剤。資生堂のオリジナル成分「椿麹S」のSは、ソルビトールを意味しています。
・DPG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。やや抗菌性がある。ネットでは安全性について疑問の声もあるが、ほぼ誤解だと思われる。詳しくは以下のエントリーに書きました。
牛乳石鹸 カウブランド 無添加シャンプー・トリートメントの解析 番外編 DPGの安全性
・PEG-60水添ヒマシ油:安全性の高い乳化剤。特に油性成分の可溶化力に優れている。
・塩化Na:いわゆる食塩と同じ物。シャンプーの種類によっては、少量の塩化Naの配合で増粘することが出来る。
・ユキノシタエキス:ユキノシタは、昔から葉を食用にしたり、エキスを薬用として用いられてきた植物。化粧品ではその抗炎症や抗菌作用を生かして、スキンケアに用いられることが多い。近年では紫外線によるDNA損傷が引き起こす、細胞の突然変異を抑える作用が報告されています。
・ツバキ葉エキス:椿の葉から抽出した美肌エキス。活性成分としてカテキン類、カメリアタンニン、カメリアノシドなどを含有します。抗酸化作用、エラスターゼ活性阻害作用、コラーゲン産生促進作用及び女性ホルモン用作用などが期待できるとのこと。
・アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液:最近のTSUBAKIは保湿剤「椿麹S」配合、というのが売りです。「椿麹S」とは、「椿麹」と「S」の個雲号物という意味なのですが、このうち「S」は糖系保湿剤のソルビトールを指しています。処方からわかるように、この処方はソルビトールが多く配合されていますね。
残った「椿麹」が指しているのが、このアスペルギルス/ツバキ種子発酵エキス液です。
アスペルギルス/ツバキ種子発酵エキスですが、資生堂のHPの中に特集ページがあります(^_^;)
それによると、
「椿油を絞ったあとの豊富な美容成分が残っている椿の種に、麹菌を加えて発酵させ、そこから抽出したエキス」
とのことです。
特集ページ
・カミツレ花エキス::抗炎症効果、皮膚代謝促進効果、抗菌効果があるエキスで、敏感肌や乾燥肌用の化粧品に使われる事が多いエキスです。
・硫酸Na:無機塩の一種。シャンプーでは製剤と増粘させる食塩の代わりに用いられることが多い。
・クエン酸:pH調整剤。実はクエン酸はピーリング効果のあるAHAの一種でも有り、濃度やpHによっては、ピーリング効果を発揮する。
・EDTA-2Na、EDTA-3Na:キレート剤、製剤のpHを維持し、酸化や着色を防ぐなどの効果がある。
・エタノール:いわゆるエタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・PPG-70ポリグリセリル-10:親水性のポリマー。資生堂のみ詩か歌kっていないのではっきりしないが、スタインリング剤的な効果があるらしい。主に資生堂のマシェリなどに使われている、実質的に資生堂の開発原料。
・BG :多価アルコールとも呼ばれる、グリセリンの親戚のような保湿成分です。若干の抗菌性があります。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・BHT:防腐効果、抗酸化効果なども示すが、今回の製品のように紫外線吸収剤が使われている製剤の場合、大抵の場合はその紫外線吸収剤の安定化剤として配合されている。
オトギリソウ花/葉/茎エキス:セイヨウオトギリソウのエキス。セイヨウオトギリソウは、別名セントジョンズワートとも言われる植物で、抗炎症効果、抗酸化効果に優れています。
香料