コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析3 トリートメントの処方解析編 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
ノラ犬となった化粧品犬が、面白いと思った情報を発信していくブログです。
化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

前々回から、2016/8/22にリニューアル発売された、新しいジュレームアミノシリーズの解析を開始しています。
ジュレームアミノシリーズには、モイスト&スムースとエクストラモイストという2ラインがあるのですが、化粧品犬ブログでは、まずモイスト&スムースから取り上げていってます。

これまでの関連エントリーはこちら。
コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析1 シャンプー・トリートメント概要編
コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析2 シャンプーの処方解析編

前バージョンは去年の2015.1.13に発売されています。
化粧品犬ブログでは、前バージョンについてもエントリーを上げています。
こちらです。
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 前編(AOSの安全性について)
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 後編(処方内容について)
コーセー ジュレーム アミノトリートメント モイスト&スムースの解析

さて今回取り上げるのは、モイスト&スムーストリートメント(2016)ですね。
処方の解析になります。
シャンプー同様にトリートメントも、製品の基本を丁寧に改良した、好ましいリニューアルになっています

では早速、処方の解析を始めます。
いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は、リニューアル前の製品(2015年品)の裏面表示も整理し、新製品と併記してみます。
原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。

こんな感じになりました。
シャンプー同様、製品写真が小さくて新旧の違いが分かりにくいですが、気になる人は概要編を見てください。


では、パートごとにみていきましょう。

まずワックスのパート。
ワックスは、トリートメントの背骨となる重要な成分なのですが、ここは製品によって変えられることはほとんどありません。
本製品でも、一般的なものが使用されています。

次はコンディショニング剤のパート。
ここはリニューアル前は、主にベヘントリモニウムクロリドと、ジステアリルジモニウムクロリドという2種類のカチオン界面活性剤からなっていました。この2種類と髪に吸着しやすい成分です。そのためかリニューアル前はやや皮膜感が強く、髪がごわつく傾向がありました。カチオン界面活性剤の過度の配合は良くなかったようですね。
リニューアル後はこのジステアリルジモニウムクロリドの方が量が減らされており、皮膜感が弱くなり、ごわつきがかなり改善されています。またそもそもあまり効果の無かったカチン化ヒアルロン酸もシャンプー同様に外されていますが、毛髪への塩基性アミノ酸類(アルギニン、ヒスチジン、リシン)はそのまま配合継続になっています。

次は油剤のパートです。
基本的には似ているのですが、スクワラン、水添ヤシ油、水添パーム油といったエモリエント効果高い油が追加されています。
後はトコフェロールですね。ビタミンEとも呼ばれますが、実態は植物から抽出された、べったりした感触の油状の成分です。
これらは先ほどのカチオン活性剤の減らされた分を、油で置き換えたと見ることもできます。
シャンプー同様に、新規な化粧品原料である、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールと言うエステル油も今回から配合されました。水にも溶ける油(?)ということで、最近売りだしている原料です。毛髪表面のキューティクルは親油性椎乳性なので、とくに表面に吸着すると思われます。コーセーはこの原料を「アクティベーター」と名付けています。

次は防腐剤のパート。
リニューアルによって、プロピルパラベンが削減されています。
プロピルパラベンは、メチルパラベン折り刺激が強いので、地味ながら良い改良だと思います。

化粧品犬ブログの、プロピルパラベン関係のエントリーはこちら。
プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介
プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介(続き)

最後は、保湿剤・香料などのパートです。
このパートも基本的には、シャンプーと同様の方針でリニューアルされてます。
大きく変わったのは、クレマティス葉エキスやライム果汁等の華やかな花・果実や草のエキスが一掃され、ハイビスカス花エキス1つに集約されたことです。しかし海藻系はマコンブエキスだけからマコンブ・アルゲの2つの効果の高そうなエキスに増やされ、より効果のある、海系の素材に集中したことを感じさせます。
実際に使ってみると、いまいち保湿実感が湧かない、ヒアルロン酸も外されていますし。
それとシャンプーと同様に、トリートメントでもイソステアロイル加水分解コラーゲンAMPDの新規配合です。
長い名前のイソステアロイル加水分解コラーゲンAMPDは、コラーゲンの浸透性を高めた原料で、これまでにもグレイスワンやジュレームモイストリペアなどに配合されていた、実績のある原料です。満を持して人気製品のリニューアルに投入してきたのは、やはり効果が高いからだと思います。

またシャンプーと違うところとして、トリートメントはやたらとアミノ酸が多いんですね(^_^;)
保湿剤のパートに7種類、前のコンディショニング剤のパートに3種類で合計10種類も配合されています(^_^;)
味の素が出している、アミノ酸の化粧品用途のプレミックス原料があるので、それを使うと一気に配合できて楽なのですが、配合パターンが違う(^_^;)
効果を確認して一つ一つ配合している様です。さすがコーセーさんです!

全体的に丁寧に改良され、使ってみてそれが分かるいいリニューアルでした。

あとは、パート毎の成分についてコメントを書いていきます。
化粧品犬も気合いを入れて、アミノ酸の一品一品コメントを書きました(^_^;)
興味がある方がいるかどうかは分かりませんが、知ってる限り「味」も書きました。甘いとか(^_^;)

ワックス
・セテアリルアルコール:コンディショナーやトリートメントに良く使われる、一般的な固形油の1種。
・ベヘニルアルコール:コンディショナーやトリートメントに良く使われる、一般的な固形油の1種。やや硬いクリームが得られる。

コンディショニング剤
・ベヘントリモニウムクロリド:ヘアコンディショナーやトリートメントでは主要な基剤の一つで、ワックス成分を乳化してクリーム状に巣r効果と、髪を柔軟にする2つの効果を持つ成分。一般的には、四級カチオンやカチオン界面活性剤と言われる成分で有り、コンディショナーやトリートメントを作るために欠かせない成分でもある。特にこのベヘントリモニウムクロリドは、水をはじく疎水基部分が長いため、親油性である毛髪表面に吸着する効果が高く、高い柔軟効果やコンディショニング効果を発揮させやすい。現在、最も良く使われているコンディショナー基剤です。
・アルギニン:髪や肌に吸着しやすい、塩基性アミノ産の一種。安全性が高いため、化粧品ではpH調整に使われる事が多い。血行促進効果や、ビタミン並みの細胞活性化・創傷治療効果を有し、抗酸化抗糖・化効果も発揮する。必須アミノ酸では無いが、生体内に広く分布しており、胎児の成長に必要なことから、生命の根幹に関わるアミノ酸であることが示唆される。味は苦い。
・ヒスチジン:髪や肌に吸着しやすい、塩基性アミノ産の一種。アルギニンほどでは無いが、pH調整に使われる。抗酸化抗糖・化効果を有している。味は苦い。
・リシンHCl:髪や肌に吸着しやすい、塩基性アミノ産の一種。抗酸化抗糖・化効果を有している。味はすこし苦く、うま味がある。
・ジステアリルジモニウムクロリド:ヘアコンディショナーやトリートメントでは主要な基剤の一つで、ワックス成分を乳化してクリーム状に巣r効果と、髪を柔軟にする2つの効果を持つ成分。一般的には、四級カチオンやカチオン界面活性剤と言われる成分で有り、コンディショナーやトリートメントを作るために欠かせない成分でもある。特にこのジステアリルジモニウムクロリドは、水をはじく疎水基部分が2本有り、親油性である毛髪表面に吸着する効果が高い。髪に高いコンディショニング効果と、油性感を与えることが出来る基剤。

油剤
・ジメチコン:化粧品では一般的に使われているシリコン油。
・ミリスチン酸イソプロピル:比較的鎖長が短く、サラッとした感触が強いエステル油。
・水添ヤシ油:ヤシ油(ココナッツオイル)を水素添加して不飽和結合を無くし、安定にした油。ペースト状でエモリエント感が高い。
・トコフェロール:別名ビタミンE。油性成分ですが、酸化安定剤として働きます。
・シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール:水にも油にも溶解する新規両親媒性エステル油。水溶性有効成分の浸透促進効果があります。
・スクワラン:スクワランは通常サメから取られるべたつきの少ない油です。化学構造的には、石油由来の油とも似ていますし、オリーブ油を精製しても得られます。一時期サメから取ったものが入手困難になったことが有り、最近はオリーブから取ったものもだいぶ増えました。今回のジュレームアミノは、あえてサメ由来のスクワランを使っているようです。
・ステアリン酸グリセリル;乳化機能を持つ、植物由来の固形油。化粧品でよく使われる。
・水添ナタネ油脂肪酸グリセリズ:水素添加して不飽和結合を無くし、安定性を高めた菜種油。ペースト状〜固形の油で、エモリエント感が高い。
・水添パーム油:水素添加して不飽和結合を無くし、安定性を高めパーム油。ペースト状〜固形の油で、エモリエント感が高い。

防腐剤
・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。
当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。
プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介
・メチルパラベン:比較的低刺激な防腐剤。ただし、環境ホルモンや蓄積性の点で叩かれることも多い。環境ホルモンについては多くは根拠の無い噂であるが、蓄積性についてはファンケル社が学会で報告し、報文を出している。(ただし、防腐剤の蓄積による影響は、可能性レベル)
化粧品中の防腐剤は皮膚に残り、肌にストレスを与える(IFSCC*2005 in フローレンス中間大会)

保湿剤、 増粘剤他
・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。
・PG;多価アルコールとも呼ばれる、代表的な保湿成分。グリセリンと似た性質であるが、ややさっぱり感がある。油を可溶化する力が強く、皮膚への浸透性や刺激性を疑う声もある。国内では、昔の薬事法で表示指定成分として扱われていたこともあり、むしろ海外で使用されていることが多い(ただし、国内で食品添加物として許可されている成分でもある)。弱い抗菌性も有している。
・アルゲエキス:藻類のエキスです。主に海藻のエキスですね。
・イソステアロイル加水分解コラーゲンAMPD:複雑な処理をして、浸透性を高めたコラーゲン系の原料です。
まずコラーゲンに加水分解という処理をして分子の大きさを小さくし、次にアシル化という化学処理をしてイソステアロイル加水分解コラーゲンという成分にします。このままではアニオン性(酸性)の成分なのですが、これをさらにアミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)と言うアルカリ性成分で中和して作られる成分です。
加水分解することで毛髪内部への吸収力を高め、アシル化することで毛髪への吸着力を高めています。
イソロイシン:分岐鎖アミノ酸の一種。人の筋タンパク中に多く含まれ(約35%)、運動中にも分解されるため、アスリート御用達のアミノ酸。意外にも水溶性が低いアミノ酸で有り、肌からの水分蒸発を防ぐ効果があるとする研究もある。甘い香りがするが、味は苦い。
・グリシン:中性アミノ酸の一種。最も小さな化学構造を持つアミノ酸で有り、体内で様々なアミノ酸に代謝される。化粧品では保湿剤として使われるるが、一般的にはパンに照りを出すなどの食品用途や、栄養剤に使われている事も多い。味は甘い。
・システイン:含硫アミノ酸の一種。爪や髪に含まれるタンパク質のシスチンの元になるアミノ酸であるが、硫黄を含み臭いため、化粧品には配合しにくい原料の1つ。pHによっては強い還元性を示し、システインパーマに用いられる。また美白効果も強く、医薬品のハイチオールCにも用いられている。
・シトルリン:中性アミノ酸の一種。体の中で代謝されてアルギニンになり、様々な効果を発揮する。効果はアルギニンに準ずる。
・セリン:中性アミノ酸の一種。角質層に最も多いアミノ酸。
・ハイビスカス花エキス:保湿効果、皮膚保護効果、収斂・鎮静効果に優れたエキスです。
・バリン:分岐鎖アミノ酸の一種。人の筋タンパク中に多く含まれ(約35%)、運動中にも分解されるため、アスリート御用達のアミノ酸。意外にも水溶性が低いアミノ酸で有り、肌からの水分蒸発を防ぐ効果があるとする研究もある。味は苦い。
・プロリン:中性アミノ酸の一種。アミノ酸の中では、PCAソーダと並び最も保湿性が高いアミノ酸。味は甘い。
・マコンブエキス:褐藻類の一種マコンブから抽出されたエキス。保湿効果のほかヒアルロニダーゼ阻害作用(皮膚中のヒアルロン酸の分解酵素の働きを、阻害する作用)、 収斂作用等の効果がある。
・BG :多価アルコールとも呼ばれる、グリセリンの親戚のような保湿成分です。若干の抗菌性があります。
・EDTA-2Na:一般的なキレート剤。製品の品質変化を防ぐ。
・イソプロパノール:アルコールの一種だが、エタノールより強い臭いがあり、化粧品で使われる事は少ない。殺菌力もエタノールより強いが、安全性は同程度と言われている。トリートメント基剤となるカチオン活性剤の溶媒として使われている事が多い。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・グリセリン:多価アルコールと呼ばれる、代表的な保湿剤
・ジラウロイルグルタミン酸リシンNa:アミノ酸をベースにしたジェミニ型界面活性剤のお一種で、様々な効果があるとされている。