このエントリーは2015/1/13に発売された、ジュレームアミノシリーズについてのエントリーです。
関連エントリーは以下の3編あります。
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 前編(AOSの安全性について)
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 後編(処方内容について)
コーセー ジュレーム アミノトリートメント モイスト&スムースの解析
2016/8/22にリニューアル発売された、新しいジュレームアミノシリーズの解析は以下のエントリーになります。
コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析1 シャンプー・トリートメント概要編
コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析2 シャンプーの処方解析編
コーセー ジュレームアミノモイスト&スムース(2016)解析3 トリートメントの処方解析編
以下、本文になります。
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2回に分けてコーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析を書きましたが。
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 前編(AOSの安全性について)
コーセー ジュレーム アミノシャンプー モイスト&スムースの解析 後編(処方内容について)
このシャンプーは、対になるコンディショナーがなく、トリートメントが設定されてます。
今回は、このトリートメントの処方解析をやろうと思います。
この商品には最近使われ始めたアミノ酸である、シトルリンが配合されているので、エントリー中で触れています。
その辺りが今回のエントリーの読みどころです(^_^;)
では例によって写真から。
とはいっても、トライアルセットなので、シャンプーの時と一緒です(^_^;)
写真の右側部分になりますね。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150506/22/kesyouhinken/a2/f1/j/o0300040013298903920.jpg?caw=800)
値段は本製品では、本体 500ml 900円なので、結構高めです。
商品の説明は、以下の感じです。
1)10種のアミノ酸配合 トリートメント。
髪の構成成分でもあるアミノ酸を10種類も配合し、髪の内外に働きかける。
スッとすばやくなじんで、やわらかな手ざわりの髪へとみちびきます。
サルフェート(ラウレス硫酸Naなど)フリー・弱酸性・無着色・ノンアルコール(エチルアルコール)・動物由来原料フリー
2)トリプルの補修成分配合で、傷みきった髪も集中補修。
高密着ヒアルロン酸・高浸透ヒアルロン酸・浸透性にすぐれた天然由来アミノ酸誘導体 配合
自然の恵みで髪をうるおし、ツヤあふれる髪へみちびく。
3)乾燥しきった髪にも、濃密なうるおいを届ける厳選天然由来成分を贅沢に配合(南欧産海藻エキス・ケルプエキス・クレマティスエキス・ライムエキス・レモンエキス・カレンデュラエキス・グリセリン)。天然香料を使用した、こだわりの香り。
以上のうち、トリートメント独自の部分は1)だけで、2)3)はシャンプーと共通ですね。
今回の解説も、1)のアミノさんを中心にやることになると思います。
さて処方を整理してみましょう。
シャンプーとの共通成分については、印を付けてあります。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150508/01/kesyouhinken/c4/a7/j/o0400060413300206998.jpg?caw=800)
トリートメントは基本的に、ワックスとコンディショニング剤でベースとなるクリームを作り、そこに油剤や防腐剤を含有させたものと考えると分かりやすいです。
では解説に入ります。
ワックスは、普通です。ここはあまり変えようのないパートです。
コンディショニング剤は、ベヘントリモニウムクロリドとジステアリルジモニウムクロリドがメインで、そのほかが若干効果が弱いサブ的な感じです。
ベヘントリモニウムクロリドは、今や最も一般的なカチオン界面活性剤で、ツバキもラックスもこれを使ってましたね。
この素材は、昔よく使われたステアリルトリモニウムクロリドの分子を長くして、髪への吸着効果を高めた素材です。長鎖型カチオンとも呼ばれます。、
同様に、その昔使われていたステアリルトリモニウムクロリドの分子はそのままに、二股にしてやはり吸着効果を高めたのがジステアリルジモニウムクロリドです。二鎖型カチオンとも呼ばれます。
つまりかっこよくいうと、この処方は「長鎖型カチオン+二鎖型カチオン」で、吸着効果を高めた配合です、と言えます。
この配合もサロン向けでは古くから使われていたものですが、それを一般品で使うところにコーセーさんのやる気が見えます。
あとコンディショニング剤でシャンプーに使われていない成分としては、アルギニン、リシン、ヒスチジンというアミノ酸があります。この三種は塩基性アミノ酸といって、特に髪に吸着しやすいものです。
資生堂さんやユニリーバさんでも塩基性アミノ酸は使ってましたが、2種まででした。3種使っているのは、一般品では珍しい。
油剤を見ますと。
メインはシリコンとミリスチン酸イソプロピルで、どちらも軽い油です。
吸着しやすいものを多く配合したので、ここで調整したのかもしれません。
しかしシリコンはともかく、ミリスチン酸イソプロピルは、化粧品犬的にはイケてないですね。
化粧品の全成分表示をしなくて良かった頃の話ですが。
ミリスチン酸イソプロピルは、その昔はいろいろな肌トラブルを出したため、配合する際には表示しなければならなかった(表示指定成分になっていた) 素材です。
現在は、全成分表示に制度が移行したため忘れがちですが、要チェックではある成分です。
これをこの商品に入れてくるのはどうかなー、ほかの油じゃだめなのかなー、と思います。
油剤の残りの2品のステアリン酸グリセリルと水添ナタネ油脂肪酸グリセリルズは、クリームの状態を調整して、より粘度をあげたり、なめらかにしたりする素材です。
防腐剤は、シャンプーと同様に、プロピルパラベンが残念です。
湿潤剤はPG (プロピレングリコールの略称)がメインのようで。
PGも昔の表示指定成分なんですよね。
なんで使うかなー、グリセリンで良かったのではないかなー、と、思います。
その下のPPG-52ブチルは初見だったので調べてみましたが、通常考えられる乳化剤効果以外に、泡質改善とか皮膚潤滑効果のあるノニオンのようです。
そのつぎから、アミノ酸が続きます。
その中でまず目を引くのが、システインです。
これは毛髪や爪に特徴的に含まれるアミノ酸なのですが、含硫アミノ酸とも呼ばれ、いろいろな効果はあるのですが、とにかく臭いです。
タマネギの腐った系です(^_^;)。
女性の方は、システインパーマにもつかわれているので、よく知っていらっしゃると思います(^_^;)
もちろん、ごく少量にすれば配合できるのですが、「この臭いの入れるの?」とか社内でいろいろ言われただろうな、とか想像されます(^_^;)
あとになって臭いが強くならないか確認しなければならなかったり、面倒な原料です。
その他のアミノ酸である、イソロイシン、グリシン、セリン、バリン、プロリンについては、溶解性や保湿性などいろいろありますが、比較的配合しやすい成分です。
ただ毛髪を作るアミノ酸という感じてはないかなー、毛髪に多いアミノ酸であるグルタミン酸も配合されてないし(^_^;)
ちょっと単なる数合わせかな、と思われるきらいがあります(^_^;)
でも、アミノ酸は高いので、気合は入っているんだなと思います、とフォローしておこう(^_^;)
で、問題なのがシトルリンです。
シトルリンは日本では2007年に医薬品から食品に認可が下りたアミノ酸です。
化粧品としては、元が医薬品ということてなかなか利用が進まなかったのですか、2009年ごろからノエビアさんなどで商品化が始まっています。
アミノ酸といえば味の素と思いがちですが、これは協和発酵バイオさんですね。
協和発酵さんのリンク
協和発酵さんといえば、石油化学華やかな頃の話ですが。
真剣に石油から化学合成して調味料「味の素」を作ろうとしていた味の素社の機先を制して、調味料「味の素」と同等成分のアミノ酸を世界で初めて発酵法で作った会社です。
味の素は研究所を作って、大急ぎで自分たちも発酵法に舵を切ったという(^_^;)
そんなポテンシャルのある協和発酵さんのシトルリンですが。
シトルリンは、体を構成するアミノ酸ではありません。
野菜に含まれているが、動物のたんぱく質にはなれないアミノ酸です。
この段階でイマイチですね。
化粧品としての効能は、NOを介しての血行促進ということで、アルギニンと似てるなあ、と思って調べたら、体内でアルギニンに変換されてからNO産生すると。
だったら最初からアルギニンを配合すればいいのでは?
まあ、もう配合されてるけど(^_^;)
やっばり数合わせっぽいです(^_^;)
ということで、決して使用感は悪くないトリートメントですが。
叩かれたいんですか?と、聞きたくなるような点も多い。
基本の処方は良いのに、とても惜しいです。。
小さいことにこだわらず使えば、なかなか良い商品だと思います。
本項は以上です。