371.絶縁~そんなに縁が切りたければ勝手にするがいい もう此処へは来るでない! | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→370.譲位の御意向~これはきっと…僕と彼が天に試されている もし彼に皇帝の資質が無いとしたら…に引き続きユル目線です

夏休みに入って シンは再び東宮殿から出て来なくなった
いや 多分 出て来れなくなったんだ
シンにはストライキなんか出来ない

陛下の御意向に沿って時間稼ぎの為に 僕が皇位に就くなんて有り得ないと即答したものの…
今のままでは皇帝どころか皇太子で居ることさえ危うい状態だ
時間稼ぎが必要だという考えが湧くのも頷ける
だけど…そんな…
どれだけ考えたって僕には シンの上に立つ事なんて考えられない
あの頃とは違う 僕が皇太孫だった頃とは 全てが変わってしまったんだ
それを受け入れられない元皇太子妃を母に持つ皇位継承第二位の皇子ではあるけど…
僕には解るんだ

シンが皇位に就く姿を思い描く
神々しいまでの姿が容易に浮かぶ
うん やっぱりな…
僕がシンの先帝として立つ姿なんて いくら想像しても思い描けないのに シンの即位する姿ならすぐに鮮明に浮かび上がる

それなのに…
東宮殿の女官達によれば 夜中に庭に飛び出して 泣き崩れる事もあったのだとか…
シン…
そうさ 忘れるなんて やっぱり無理なんだよ

シンは許嫁だと言われてただチェギョンを受け入れたんじゃない
皆がチェギョンを忘れても 僕は忘れられない
だって僕は知ってる 僕だけが知ってる
自転車を漕いで風を切るチェギョンを見つめるシンの表情
僕の絵の中に見つけたチェギョンを愛おしく見つめる瞳
このままじゃシンが壊れてしまう

彼の本当の姿を取り戻す為にも 早くチェギョンを見つけ出さなきゃ
僕は皇帝になんて成れないし 継妃なんかにイ・シンは支えられない

目先の騒ぎに囚われて過去に葬られそうになってるけど チェギョンが放火なんてするわけない
なぜ離婚だなんて口にしたのか なぜ自分が放火したなんて手紙が届いたのか この真相を明らかにしなきゃ問題は何一つ解決しない

突然 またしても疑われているんだと知った時には 心底失望したけど… シンは理由も無しに僕を疑ったんじゃない
警察や皇室警察とは別の方向からチェギョンを探してる筈だ
きっとチェギョンが居なくなる迄の動向を調べるうちに 母や僕に繋がる何かを掴んだんだ
それで母さんと僕に疑念を抱いた
シンには出来ない僕に出来る事をやるのが 僕の役目だ
ただ… 母さんを直接問いただすには 色々と準備が必要だ 簡単には落ちないからね
疑った理由があるんなら 言ってくれればいいのにな…
彼に信じて貰えない以上 独自に調べるしかないか

「ジュヨン久しぶりだね 元気?
最近ジテに連絡がつかないんだけど 何か知ってる?」
「ユル…実は私も 貴方と会って話さなきゃと思っていたの」

僕は その日暫くジテに連絡が付かなくなっていた為に 久しぶりにジュヨンに連絡をして 衝撃の事実を初めて知った
ジテが… チェギョンと一緒かもしれないだって?
そうか シンも何か掴んで? どうりで僕を信じられない筈だ


ソ・ジテがシンを好きではないことは 僕も知っていた
いや 正直知らない人は余り居ない シンでさえ知ってる
それくらいはっきりとアンチイ・シンだった
でも僕は ずっとジテに言い聞かせて来た
いくら抗ったって いつかきっと好きになるとね
だけど 彼がシンを嫌うのには 僕にさえ打ち明けられない深い事情が有ったんだ
シンに関するある重要な秘密 それがジテの心に棘のように刺さって膿んだせいだったんだ

今年の5月 シンのハタチの誕生日に 皇太子夫妻が翌日の皇女の結婚式に出席するためにタイへ出かけた日に ジュヨンはジヌと一緒に その事情を知ったらしい

「ユルは知ってたかしら?
5月16日は 皇太子殿下の誕生日だけど ウリジヌのセンイルでもあるの」
「あれ?そうだったっけ?」
ジヌは ジテの弟で シンと同い年 王立大学の経済学部に通っている
「ふうん凄い偶然だね」
「それが… 偶然じゃなかったの
ジテは ハタチになった弟に その出生の秘密を打ち明けたの
ソ・ジヌは
イ・シン皇太子殿下と同じ日に皇后様がご出産されたもう一人の皇子
彼らは 双子の兄弟だったの」

驚きのあまり 声も出なかった

「片方の存在を消されたのは 皇室にとって 多胎児が不吉だという ただそれだけの理由で
お体の弱かった皇后様の意識が朦朧としているうちに 抱き上げ連れ去られたそれがジヌだったって…
逆だった可能性も充分有ったと思えば 複雑な心境よね…」

ジュヨンが何を言ってるのか… 僕はなんだか 遠い別の世界で起こった出来事を聞いてるような錯覚に陥った
「ユル?大丈夫?」
「あ ああ…ごめん… でもまさか…そんな…」

シンが皇太子に即位した時に ジテは母親からそれを聞かされたらしく 以来複雑な思いを抱えて来たのだとジュヨンは言った

そうしてシンとジヌとの形容しがたい関係を憎むとも恨むとも なんとも整理のつかない感情で皇太子を観察して来た間に 王族の子供達を軽視するような 敵視するような… そんな振る舞いを目にするにつれ ジテはシンを”とにかく嫌悪するべき存在”と位置付けたらしい

でもそれは!臣下に騙されたり 欲に溺れたりと 悪政を招かぬよう戒められてきた朝鮮王朝から続く王世子への訓育の為す物で… 誤解だよ

そうした間にも シンは訓育に倣いその身を貴みに極めて行った
結局 僕の言った通り 僕から見ても ジテは拭っても拭いきれないシンの絶対的カリスマに惹かれてたんだ
ジテは王族会から期待されてた
ジュヨンの父親であるソ家の長男 ソ・ジョンナム氏には ジュヨンの他には姉二人 娘だけだった為に
王立大学の法学部を優秀な成績で卒業すれば ジテは準王族から王族に引き上げられるはずだった
きっと 僕と共に王族会を束ね 皇帝となるシンを支えてくれる
疾うに心は決まっていると そう信じていたんだ

それなのに…
「殿下が大学に上がった頃 酒に酔ってご友人のカン・インさんを殴って 騒がれたでしょう?陛下からボランティアまで命じられて… あの頃既に 彼女は皇太子の傍に居るべきじゃないとか 言ってたわ」
「それってどういう意味なの?」
「実は…」

ジテは畏れ多くも シンが心を許したチェギョンに興味を抱き…
ジュヨンが言うには…好意を寄せるまでに至ったのだとか…
更にジュヨンは ジヌの事を打ち明けられたとき 彼がこの事実を知らないまま皇帝に即位するべきじゃないとも言ってたとか…
ジテが 母さんの危険性を軽視して全てを明かしたとは思えないが…
何か漏らしたのは確かだね
ジテから知り得たその何かを利用したのか?


夏中東宮殿に籠って ピアノを弾く以外は薬を飲んで眠っているらしいシン
僕は 夏休みが明けても ジテと連絡がつかないまま ジテやチェギョンに繋がるこれと言った手がかりも無く 苛ついていた…

香園亭(ヒャンウォンジョン)で 残暑を憂う茶会が行われたとか…
ミルは僕の妃だから参加しなかった つまりその茶会
実は王族会が水面下で準備しているシンの継妃候補の集まりだったらしい
その中から 皇后さまが初揀擇に相応しくないものを弾いたなんて噂を 妻が聞きつけて来た
「冗談だろ…」
更にはその後日から 東宮殿のシンの元に 僕の妃の従姉であるキム・ミニョンが通っているなんて言うじゃないか!

ミルは…彼女が王立学校の初等部の頃から シンを好きだった
チェギョンには悪いが… いや 自らドロップアウトしたんだから この際応援したいなんて言ったけど…
僕は とても同意できなかった

もう 時間が無い
なんとかしてチェギョンを取り戻すべきだ

僕は陛下が御自身の皇位を僕に譲位するお考えだとシンに告げた
シンを覚醒させなきゃ!
敢えてシンを挑発したっていうのに…
僕のやったことは裏目に出た
シンは 陛下の譲位を阻むために 初揀擇を受諾し 再揀擇の相手を選出してくれと 継妃を娶ることを受け入れたと言うじゃないか!
嗚呼…もう!


「僕が何も知らないと思っているの?
ジテに何をさせたの?6月から大学を休学してる
チェギョン妃と同時期に姿を消した準王族のソ・ジテが 春頃チェギョン妃の友人ホン・モネに チェギョン妃への恋文を託していたと噂されてる
夏休みが明けて 大学が後期に入ったのに 法学部2年で最も優秀な学生が復学しないなんて 騒ぎになるに決まってるじゃないか!そんなことも解らなかったの?
母さんはいったい何に囚われててそんなに周りが見えないのさ?!」
窓の外に視線を移して 僕の話が鬱陶しいとばかりに顔を顰める

「ホン・モネは母さんの従兄ホン・ジョンスの娘だとか…
シンに譲位を訴えてる王族の一人じゃないか!
ジテが彼女に託したのは恋文なんかじゃない!
手紙の主はジテじゃなくて母さんなんだろ!?」
「馬鹿を言うでない!
ソ・ジテが勝手にホン・モネを…」
そこまで言いかけて慌てて口を噤んだけど ちゃんと聞こえた

「じゃあボヤは!?自作自演では…?」
「どうしてこの私が自らの住まいに火を放つ必要がある?」
「シンとチェギョンを陥れる為さ 前にもやっただろう!?
チェギョンが皇太子妃になるのを阻止しようと 指輪を盗んだと騒ぎ立てたじゃないか!」
「…そんな昔の事 忘れたわ」
「やったのは母さんで 母さんはチェギョンの居所を知ってる そうだろう?」
「知らん!違うと言っているであろう!」
「嘘だ 母さんが ジテをそそのかしてチェギョンを連れ出させたんだ!」

「知らぬと言っておるであろう?
証拠も無しに よくも母親にそのような不遜な事を…
私が死にかけたのは芝居だったとでもいうのか?!」
「違うの?死にかけただなんて大袈裟な…」
これは流石に言い過ぎだった
母さんは外傷こそ無かったが 肺と気管支に火傷を負い 王立病院に二週間入院した
でももう遅かった
「外に誰か居らぬか?!」
「この者を下がらせよ!」
現れたイギサ達に腕を取られる
「母さん!?」
「そんなに縁が切りたければ勝手にするがいい もう此処へは来るでない!」
母さん…
瞳に貯めた涙を零さないように僕を睨みつけて唇を噛む
駄目だ 焦り過ぎた また失敗だ…

そしてついに シンは信用ならない僕から 陛下の位を守る為だろうね… キム・ミニョンとの婚約式の日取りを決めてしまった
反対する者も多く 反対する理由も妥当だった
彼女は王族と言っても実は叔父夫婦の養女だったし 両親は離縁しているし父親は他界している
加えて従兄である僕の 妻の従姉だ
韓国では一般的に姻戚同士での婚姻を避けるのに…
おそらく此処に至るまでシンの心に添う事が出来なかったせいか
皇后さまやおばあ様 陛下までもが これはシンの意向だとして 退かなかった

正直僕はもう どうしていいか解らなくなってしまった

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ
お待たせしたせいで 二つに分けたかったお話を一つにぶっこんで
長くなってしまいました
ちょんまるみあねよ

 


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