128.最悪の誕生日~サンキャッチャーを見上げていてもなお 溢れる涙を止めることができなかった | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→127.ペク女官~何も考えずに押せばいいじゃないか…
このお話 122.雪だるま~わかるさ こんなの景福宮に作ろうなんて誰も思わないよね に続く ユル目線です


チェギョンと別れた後 部屋へ帰って急いでシャワーを浴びた
東宮殿の庭に在るチェギョンが作った二体の雪だるま…シンとチェギョンか…
あの子… 今はまだ 生まれたてのひよこが親を頼るみたいでは有るけど 着実にシンを好きになってるよね…

髪が乾き切らないうちに 客人はやって来た
「こんにちは あれ? 来るの早かった?悪かったかな…」
僕の濡れた髪を見て彼はそう言った
「いや そんな事無いよ 時間を忘れて雪遊びに興じてたなんて 我ながら驚いてるんだ」
?!ジテは目を丸くして肩をすくめた ふふ
「ジテはコーヒーだよね?」
夏にパーティーで会って以来 ソ・ジテとは 何度も連絡を取り合い 交流した
僕は紅茶党だけどジテはコーヒー党
本音で話してくれない人ばかりに囲まれてすごす僕らには そうゆう些細な事こそ遠慮なく言ってくれる事なんかが心に響く
すぐに打ち解けたし 信用してもよさそうだと直感した
「あ おかまいなく 頼まれてた 例の…」
恵政殿皇太后となった母さんに近づく ムン・フェウォン ホン・ジョンス ユ・マンドク 僕にもこと有るごとに近づいてくる 父上の古い友人である王族について
調べて貰った
僕が直接王族について嗅ぎまわっては どこでどう繋がって母さんにバレたり 皇室に迷惑が掛かったりしてはいけないからね
ジテは快く僕と興信所との間に入ってくれた

元々ソ家とは対立関係にあるはずのムン家は王族の中でも最大の派閥… 母さんに近づく理由はやっぱり父上が望んだ王族を議会へ送り込み より強い王族会を作る際の地位固めらしい
ユ家 ホン家ともそれぞれに大財閥 ホン家の令嬢モネは シンの妃候補の最終選考に残っていた… ああ…確かに記憶に在る…
ムン家 ユ家 いずれも シンの妃候補に娘を上げていたが いずれも選考もれ… パーティーには来ていたんだろうが…写真を見ても思い出せない
気にするほどの事も…ナイのか…

「ありがとう 引き続き調べて貰って またなんかわかったら教えて? 悪いね」
「全然構わないよ
それより 明日誕生日だろう? おめでとう」
「わ~ ありがとう 嬉しいな コッチにきてから 友達は学校内の一部の人だけだったから」
「大袈裟だよ 大したものじゃない」
細長い箱を開けると 見慣れない… クリスタルのようなキラキラした物が連なる…ワイヤーのような物が出てきた
「これは?」
「サンキャッチャーっていうんだ 初めて此処に来た時から気になってたんだ なんかこの部屋…ユルらしくなく殺風景だろう?
これを窓辺に掛けて置けば 幸運が訪れるよ」
「へぇ~ ありがとう!」


「誕生日は 産んでくれた人や 周りの人に感謝する日なんですよ」
昨日 雪だるまを作りながらチェギョンが僕にそう教えてくれた
自分一人で生まれて此処まで生きてきたわけじゃない 頭ではわかっていても そう言われてみれば 改まってお礼なんて言った事無かったかも…
そう思ったから 上殿に上がる前に 母さんに会いに来た
母さんの殿閣近くの庭を通ると 昨日僕らが作った二体の雪だるまが出迎えてくれた
母さんと 僕 か…
だけど母さんは留守で… もう上殿へ行ったのかな?と思い上殿のおばあ様の元へお邪魔した
なのに 今朝の景福宮は挨拶どころじゃ無かった
そこで…とんでも無い話を耳にすることになるとは思ってもみなかった

「嘘… そんなわけ無いよ… だって…」
おばあ様も詳しい事は解らないようだったが とにかく 此処に毎朝集まる面々で知らなかったのは 宮外に住んでいる僕だけだった
「私も信じがたいのじゃが… 何も知らぬと口を閉ざしておるのじゃ」
どうして!?僕がチェギョンを母さんの庭に連れて行ったのに そのことにも触れないで?
「おばあ様…それでチェギョンは今…」
「宮内庁警察が宮中で事情聴取をしておる…」
なぜ?なぜ何も言わないの?!何かわけでも…?
とりあえずシンに訳を聞くまで僕も話さない方がいいのか?
「シンは?」
「東宮殿の執務室に籠っておるらしい」
聞くなり僕は席を立った

「シン!僕だよ ちょっといい?!」
「ダメだ」
「どうして?」
「今 兄さんと話す気分になれない…」
「なんでさ!?チェギョンから聞いたんだろう?僕と一緒だったんだ」
ドアが開いて 不安げな表情のシンが手を伸ばし 僕を中に引き入れて鍵を掛けた
「大声を出さないでくれないか?
きっと東宮殿(ココ)にもスパイが居る…
正直俺は今… 兄さんさえ…」
シンは僕に背を向けたまま言いかけて…
「!?」
「なぜチェギョンを皇太后の庭へ連れて行ったりしたんだ!」
!?
「疑いたくはなかった… だが…疑心暗鬼になる気持ちも…解るだろう?」
なぜ僕と一緒だったとチェギョンに言わせないのか…今はっきりとわかった
母さんと僕が繋がっていたら まんまと罠に嵌ることになる…
「ごめん…僕と母さんのせいだね チェギョンは僕と一緒だった事 僕が証言する
それから 母さんと話して見るよ」
シンは苦い顔をしたまま 項垂れている

その足で正殿に向かい 皇帝陛下に チェギョンは僕と一緒だった 僕が誘って雪だるまを作ったと証言し 庭に雪だるまがあるから 間違いないと伝えた

だけど…

母さんの部屋の前で 立ち止まった
誰かが退出するようだったから 一歩下がった
部屋から出てきた尚宮は 僕がそこに立っている事に気付いた途端「ひぃっ!」と小さく悲鳴を上げて 小さな箱を落とした
落とした箱は 僕のつま先に当たり 金具が外れて中から何かが転がり出す
「!?」
キラリと輝くそれを指で摘まんで拾い上げる…
コレは?無くなったと騒ぎになっている例のエリザベス女王から頂いた指輪じゃないかっ!?
「クァク尚宮?コレは…どういうこと? 何故コレをあなたが持っているの?
母の部屋から出てきたよね? 無くなったんじゃ無かったの?
この部屋にあったんじゃないか!!」

僕はクァク尚宮の腕を掴んで 引き戸を力いっぱい開け放つと 母さんの前に突き出した
「母さん?どういう事!?クァク尚宮が何故コレを!?」
手にした指輪を掲げて母さんを問い詰めた
「コレ… 無いと騒いでる指輪じゃない!?
僕は知ってるよ?
頂いた指輪を着けてイギリスの社交界へ出掛けたよね?!何度もエスコートしたんだから!」
あきらかに狼狽えたよね 母さん… なのに 直ぐに居直った

「黙りなさいユル!全ては そなたと私を守る為…
シンの婚約者ごとき…そなたが気にすることではない」
「シンとチェギョンに謝って!
僕は母さんの考えに賛成できないとずっと言ってきたよね?!
こんなことして人を貶めてまで いったい何を手に入れようと言うんだよ?!」
「意に沿わぬまま手放した物を取り戻すのだ…ただそれだけ」

母さんの瞳の色が変わった…?

「取り戻すのだ
殿下と私とそなたの城だった 甥に乗っ取られただけでも不愉快だったのに
あんな…あんな小娘が… あの娘が使っている部屋は そなたの部屋であったのだぞ!」
母さんは震えていた
「いつの話してるんだ!そんな昔の事 僕はもう覚えても居ないんだ!
目を覚ましてよ母さん!」
解らなくもない 父上が皇太子だった頃 母さんと結婚するときに建てて貰った洋館だということは 僕も知ってる シンだって知ってるだろう…
だけどもう…
「終わったことなんだ… 僕らの人生は入れ替わったんだから」
小刻みに首を横に振りながら懇願するように僕の顔を覗き込む母さんは… 正気じゃない
「取り戻そうではないか うん? なぜ諦める必要がある?」
「シンが!シンが皇帝にふさわしいから 僕は外されたんだ それが天命なんだよ!
もういいかげん解って!」
母さんの肩を強く押し返す僕を 驚いたように目を見開いて見つめる
「なぜ?ユルはイ・ヒョンではなく イ・スの子なのに なぜ解って下さらないの?!お義父さま…」
は?今お義父さまって言った…?
「何をいってるの…母さん…そんなの 解ってるよ?だから父上亡き後 僕らイギリスへ行ったんだろう?」
正気を失っていた母さんの瞳に色が戻る
「あ…あ… そ そうさ! まぎれも無く正当な王の血を受け継ぐ者!何ゆえ諦められようか!」
「とにかく!
この件について 僕は真相を知った
早いとこシンとチェギョンに謝罪しないと 僕が全てシンに… いや 皇帝陛下に話すからね!」
冷静さを欠いた母さんと いつまで話しても埒が明かない
僕は母さんの部屋の引き戸をピシャンと激しい音を立てて 足早にペントハウス(ヘヤ)へ帰った

今の僕は…とてもシンに電話できる精神状態じゃない…
To:シン
From:ユル
Title:無題
本文: 大丈夫 詳しくは話せないけど すぐに解決できそうだ

ペントハウス(ヘヤ)に向かって景福宮の外壁に沿って歩きながら… それだけの短いメールを送信した

部屋に帰ると 窓辺に昨日下げたばかりのサンキャッチャーに 真昼のキラキラした太陽が降り注ぎ その輝きを床に落としていた
「あ~あ… 産んでくれてありがとう そう言うつもりだったのに… 言いそびれちゃったよ」
明るくひとりごちるつもりだったけど 声が震えてる ふふ…
誰にも…誕生日おめでとうと 言って貰えなかった… しょうがないか…
僕は下瞼にいっぱいに溜まった涙が零れないように サンキャッチャーを見上げていた
大丈夫 幸運が訪れる そう信じたかった

メールの着信音が鳴る
To:ユル兄さん
From:シン
Title:Re.
本文:ありがとう 
   忘れていたわけでは無かったんだが…
    素直になれなくて… ごめん
   誕生日おめでとう

シン…
そこへ今度は電話が鳴り 僕が言葉を発する前に相手が話し始めた

「あ もしもし?ユル殿下!? ミルですぅ~ 今日殿下 御誕生日ですよね? プレゼント届きました?!」
「え…あ…いや…留守してたから…」
「いや~ん!そうなんだ~ でもでも 管理室に届いてますよきっと!
私ぃ 会いに行きたかったんですけど 今フランスに居て 行けなくて~
来週会いに行きますわね!ではでは!
センシンチュッカドゥリムニダ~(お誕生日おめでとうございます)」
嵐のような電話が切れて ツーッツーッっと耳元でなり続ける受話器を握りしめたまま
はは…
僕は サンキャッチャーを見上げていてもなお 溢れる涙を止めることができなかった…



今日もお読み頂き ありがとうございます
バースデーケーキ胸の痛む展開…本当に申し訳ありません

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