127.ペク女官~何も考えずに押せばいいじゃないか… | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→126.新しい物語~辛い事は辛いと 悲鳴を上げなきゃ
このお話 125.罠Ⅱ~それができたらどんなにいいだろう… に続く シン目線です


内命婦を統括する母上…皇后陛下へ ペク女官の解雇の件は もう少しよく調べてからにしてくれと食い下がった
「無論 チェギョンと関わりが無いと 明確にしておきたい思いは 母とて同じである…
だが長くは待てぬ…
無くなったものと その持ち主が悪すぎる… 黙ってはおらぬだろう…」

結局 処分を保留にするよりはと 一週間の謹慎処分と半年間の減給 ソウル特別市外の離宮へ転属と定められ
木曜の朝には景福宮を出されてしまった

木曜の放課後… 俺は ペク女官の左遷先の離宮へ直行した
恐れ慄き 額を床につけたまま なかなか顔を上げなかったペク女官は なんの毒気も悪意も感じられない 大学を出たばかりの ごく普通の二十代半ばの女にしか見えなかった
指輪なんて知らないし 皇太后様の殿閣に赴いたことも無いのにと 涙を堪え震える声で答えた
おかしい…チェギョンとも 皇太后とも…なんの接点も無いのになぜ…

「兎に角… 真実を有耶無耶にしたまま こんな仕打ちなど… 時代錯誤だ
もう少し調べてみる故 今しばらく堪えてくれ」
「本当に わざわざおいでくださって ありがとうございます 皇太子殿下
こんな事になって なんと申し上げて良いものか…
それなのに 私のような者にお言葉をくださるなど 勿体無い事でございます
先だって 義誠大君殿下までも お越しくださいました お二人のような高貴な御方々が 私ごときに侘びようと為さるなど…畏れ多い事でございます」
ユルが…来た…?
「お二人共 兄上のおっしゃっていた通りの方でございます
お優しく…一女官にお気遣いくださって…
私はもう お話することも侭ならぬ雲の上のお二方に 疑われてしかりの処を かように温かいお声を掛けて頂いただけで 充分でございます
チェギョン様にもご迷惑を掛けてしまうことになり…本当に申し訳ございません」
床に額を付けるペク女官を見下ろす…
ユルが…来たって…下校時に真っ直ぐここへ来た…俺よりも早く?
「義誠大君殿下は…なんと?」
「しきりに 母さんのせいで済まないと…何度も頭を下げようとなさって…」
ユル…やっぱり何か知ってるんだな…
「兄上がうんぬんと言うのは?」
「はい…義誠大君殿下がイギリスにおられた頃ボディーガードをさせて頂いておりまして…今は 東宮殿で殿下のイギサをさせて頂いております」
そういうことか…

帰りの車中…ユルにどう切り出そうか思案しながらも 昼間電話に出なかったチェギョンが今どうしているのか 気にかかっていた…
電話なんか滅多に掛けないが…今週は何度か経緯を伝える電話を掛けた
もう帰宅しているだろう…
発信履歴の一番上はシン・チェギョン… ボタンを押せば声が聞ける…
何も考えずに押せばいいじゃないか… 躊躇する俺を哂うもう一人の俺がボタンを押した
プップップッ…プルルル…プルルル…
発信音はするのに 出ない…
二度目も… 三度目も… おかしい… なんだよ 俺からだから出ないのか?
東宮殿に帰ってからもムキになって何度も掛けた
掛けても掛けても 何度かけても出ない…着信拒否かよ?!段々ムカついてきた…
チェギョンの無事を確認しようと思えば キム内官か…運転手やイギサに問えばすぐにわかる
だけど そうじゃないんだ…
ただ声が聞きたい…
元気なわけないのはわかっているが その声で「あたしなら大丈夫だよ」と言って欲しくて…
馬鹿だな…大丈夫なわけないんだ…
きっとまた 俺と婚約したことを後悔しているに違いない…

ユルに電話する気にもなれず…
諦めてベッドに潜り込んだところで 着信音が鳴った
「も…もしもし?殿下?」
チェギョン… 甘い疼きが喉の奥で拡がりだし燻ぶる
「な…なにしてたんだ!?なんで電話に出ない!?」
「はいぃっ!?」
素っ頓狂なチェギョンの声…ただそれだけなのに…
「なんで怒られなきゃなんないのよぉっ!?今日は平日だよ!?」
不平を訴える不機嫌な声…ただそれだけなのに胸が熱くなって…思うように言葉が出てこないなんてな…
「もしもし?…どうしちゃったの?なんでなんにも言わなくなっちゃったの?
怒ったの?ああもう…電話だと顔が見えないからちゃんと喋ってくれなきゃわかんないよ?
いや…あの…だから…えっと…ごめんなさい…携帯を家に忘れてて…」
は?
なんだよ?!俺がどれだけ不安に苛まれたか…全然解ってないんだな!!
「もしもし?殿下?怒ってるんですか?もう!そんなに怒ることないでしょう?
だってあたしの所在なんて 内官さんに…」
電話の向こうでふくれっ面してるチェギョンの顔が目に浮かぶ…
なんだよ…ちょっと元気になったんじゃないか?
とにかく…何か言わなきゃと思って開いた口から出たのは
「平日でもなんでもお前は所在をハッキリさせとかなきゃならないんだ!」
これだもんな…我ながら溜め息が出たよ…
「だから所在なら内官さんに聞…」
「もういい! 無事ならいいんだ 明日 放課後 いつも通り乗って来るんだろ?」
「むぅぅ…行くよ 行きます ちぇ なんなのさ…」
「じゃあな 早く寝ろ」
「は~い…おやすみなさい」

翌日チェギョンは拍子抜けするくらい元気そうで…
俺の胃痛は杞憂も良いとこだったわけだ…と腹も立ったが…
まあ いつまでも落ち込んでいられるよりずっと良かった いや…シン・チェギョンの明朗病に 救われたとさえ言えるだろう

ユルは朝から上殿で 俺に謝れと皇太后に詰め寄ったが
「東宮殿の女官の仕業だったのだから 主にも責任は有る… もしや あの娘の差し金やもしれぬしな…」
なんて食い下がり 言い争いをはじめるから もうやめてくれと俺が止めた
ユルはやっぱり何か知ってる…
だが皇太后の策略でしかなく ユルは阻止しようとしてくれている様子だ…
母親の悪行を知りながら 従弟の俺に言いたくても言えない気持ちを思えば…問いただすことも憚られる
それでも ペク女官がなぜ罪を被ることになったのかは コン内官に調べて貰わないとな…

暫くはギクシャクしたが 卒業式も近い… 送辞と答辞を任された俺とユルは 何事もなかったように皇太子と大君を演じるしかなかった


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