初めての方は かならず はじめまして を お読みください 
前のお話→24.初めての二学期は大忙し～ウブな女の子なのよ！
このお話は23.夏の終わり ～知らなかったな…いつからお前 に続くシン目線のお話です
俺たちの初めての芸高祭が近づくある日
俺は 宮から目と鼻の先にある ユルが一人で住むペントハウスを尋ねた
エントランスでインターフォンを押して ロックを解除してくれただけじゃなく
わざわざ玄関のドアを開けたユルが顔を出す
「いらっしゃい シンが遊びに来てくれるなんて 嬉しいよ」
「急に訪ねてきて 悪いな」
「全然 構わないよ どうしたの？」
「別にどうもしないよ… 最近朝挨拶に来て学校に行く以外 会ってなかっただろう？
どうしてるかと思って… その…追尊のことも…宮じゃ話せないし…」
俺は先日ユルと話しかけた追尊について 何か問題があるのではと思い出向いた事を告げた
「なるほど コーヒーでいい？」
「ああ」
ユルがキッチンへ向かう
ここへ来るのはもう何度目か… 勝手知ったるリビングのソファに座りかけたが…
あ 絵具の匂い？ アトリエとして使っている部屋の扉が開いていた
さっきまでそこに居てその扉を開けて俺を迎えに玄関へ向かったんだろう…
「あ 悪いな… 絵を描いてたんだろう？」
「うん 芸高祭に出展しようと思ってね
追尊の話が浮上してきて 色々忙しかったし
公務も重なって…残念ながら共同制作にほとんど参加できなかったんだ
だから 個人出展しようと思い立って描いてみたんだ
このくらいのサイズなら ここで描けるし 持ち運びできるからね
自分で言うのもなんだけど 結構良く描けたと思うんだ」
ユルの目の前のイーゼルには 半切より小さい 四つ切よりやや大きいくらいのカンバスが 横長に乗っていた
「見てもいいか？」
「もちろん」
「…！！！！」
カンバスを覗いた瞬間 俺は言葉を失った
いったい俺がどんな顔をしたのかも わからなかったが ユルがおかしなことを言った
「何？シン？僕の絵の中の女の子に一目惚れでもした？」
「はぁっ？！突然何言い出すんだ？」
「いや だって…」
なんだかわからないが ひとりでくすくす笑っている
ユルの絵の中には四人の少女が笑っていた 俺はその中の一人を指差して
「コレ誰？」と尋ねた
尋ねたと言っても 本当は俺 その女の名前を知っていた
「何シン？ チェギョンのこと気に入ったの？美術部の後輩でシンと同い年だよ」
それから からかうように 続けた
「一目惚れ？上手く描きすぎてて実物と違ってたらゴメンね
でも すごく 元気で 素直で 可愛い子だよ？
そうだ！ 今度紹介してあげるよ
彼女ね すごく絵が上手いんだ 他の子と違って僕目当てでも無いしね
そっかそっか～シンはこういう子がタイプなんだね～」
いったい俺がどんな顔をしたっていうんだ！？なんでそんなにニヤニヤするんだ？！
「そんなこと どうでもいいよ！ 最近どうしてたんだ？ 追尊の件で色々ってなんだよ？ 何が有ったんだ？」
「いいよそんなの たいしたことじゃない
父上を慕っていた王族の一人が言い寄ってくるだけさ もう終わったから心配しないで
それよりシン チェギョンを紹介してあげるよ 芸高祭の日 絵を見に来なよ～♪」
ユルがあんまり楽しそうにからかうので 黙っていた例の話をすることにした
「そんなんじゃないって ほら 兄さん 覚えてないか？
去年の芸高祭前に ミュシャ展で バックの中身をぶちまけた… あの女だよ」
ユルは流石に驚いたように一瞬目を丸くして そしてやっぱりニンマリと笑う
「へぇ～！ そうなんだ～！ じゃあ 僕の絵の中で 彼女と運命の再会じゃないか～❤」
「！？」 俺は言葉を失った… ま… ますますからかわれた…
ったく…なんだよ… 俺は女なんて あんな女なんて 興味無いのに…
俺が気になってるのはアルフレッドそっくりのテディベアのことだけなのに…
美術館で出会ったおっちょこちょいな女 シン・チェギョンか…
芸術高校に入学出来て 自転車通学しているのを見かけるけど
棟が違うせいか通学時以外には全く見かけないのに
まさかユルの絵の中に居るとはな… ホント驚いたよ…
美術部に入部してたんだな…
今日も読んで下さって ありがとうございました。余談：ユルくんのイーゼルに乗っていた 半切より小さい四つ切よりやや大きいくらいのカンバスというのは 実は日本規格５号Fサイズ（350cm× 270cm）なのですが シンくんは絵より写真に詳しいので 写真サイズの呼び方です
次のお話は明朝08：18：18→26.芸高祭 ～じゃぁさ もしかして…