312.初めて二人で海外公務~ どういたしまして 俺は胸の中で呟く | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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きらきら初めての方は本編はじめましてから順に読み進めて読みください

離陸に向けて飛行機が加速すると 胃の辺りに負荷がかかってシートに押し付けられる嫌な感覚は…正直何度経験しても慣れることが無い
幼い頃初めて乗ったのがいつだったか 何処へ向かう飛行機だったかは記憶していないが お爺さまの手を握りしめて離陸したときの恐怖心を離陸するたびに鮮明に思い出す
でもまあ 訓育の為せる業だよな
俺は別に騒ぐわけでもなく只ひっそりと蒼ざめるだけなのに… それでもコン内官は毎回酷く心配する
だが今回 コン内官は居ない
居てどうにかしてくれるというわけではないが やはり少し…落ち着かない
随行する予定だったんだが 直前になってキム内官が代行することになったのだ
というのも…

「コン内官のアジョッシ 息子さんの結婚式始まってるかな?」
「ああ ったくなんだって息子の結婚式を隠してまで 仕事を優先しようとするんだか」

俺が王立学校の初等部を卒業する日 長女の結婚式を黙って居て 式に参列する他の内官からコン内官が来ないと連絡が入って騒ぎになったというのに 懲りずに次女の結婚式も 中等部二年の冬 皇太子に即位した俺の初めての単独公務に随行しようと黙って居て またも他の内官から聞かされた
今回もまたキム内官から直前になって聞かされたんだ
「なんど御止めしてもフランスへ随行すると仰られて譲らないのです
畏れ多い事ですが… 殿下から式へ出席するように命を下しては頂けないかと…」
またなのか?!呆れた…
「コン内官 貴方はなぜそうまで仕事優先なんだ?フランスへの随行はチェ尚宮も居るし キム内官でもなんら不足は無い ご子息の結婚式へ出席するように」
「ですが殿下…」
「ああもう これは私からの命令だ」
受け取れないと拒む祝儀を握らせて 昨日やっとのことで自宅へ帰したのだった

「そう言わないの コン内官のアジョッシにとっては 息子さんの結婚式と天秤にかけるくらい今回の私達のフランス行きが大切だったんだよ」
そう言いながらチェギョンはペットボトルの水をグラスに注いでいる
「今回はそんなに大事じゃないさ 去年もあんな事件が起こって お前の傍に置いて行こうとしたのに…」
ん?聞いてるのか?
チェギョンがペットボトルの水をグラスに注ぐのを目にするのは さっきからもう何度目だ?
お前 やけに水を飲んでる気がするが…
ガブガブと煽る様に水を飲むチェギョンを不審に思ったのは 俺だけでは無かった
「妃宮様…もう離陸する時間が迫っておりますので お水はお控えください
化粧室をお使いでしたら今のうちに…」
「ええ!?うそっ もうそんな時間なのっ?やだ急いで行ってくる!」
チェ尚宮の諫言に慌ててトイレへと向かう
トイレから戻って シートベルトを締めて貰うその表情は… 完全に引き攣っている
ああ…なるほどね

「わぁっ!びびび…ビックリしたぁ 脅かさないでよシンくん…」
おいおい…そっと手を取ったのに お前が勝手に驚いてるだけだろう?
「握ってろ どうってこと無い すぐに空の上だ」
「あ…あはは バレちゃった?
済州島行きの飛行機とは レベルが違うじゃない? こ…怖くてさ…」
「ば~か 逆だ 小さい飛行機より安定していて安全だ」
「うそだぁ~!ジャンボ機の事故って大惨事になるじゃん!」
「そりゃあ 事故になれば乗客が多い分被害者が多くなるのは当たり前だろう?
そうじゃなくて 構造上は小さい飛行機よりも………」
「でも…」「だって…」
俺がどれだけ飛行機について説明しようが 今のチェギョンの恐怖を和らげる事は出来ないらしい
「もういいから黙って俺の手を握ってろ 音楽でも聴くか?ほら」
イヤホンを片方チェギョンの耳に射し込んで もう片方を俺の耳に入れる
ギュッと手を握りなおしてやると やっと落ち着いたのか 潤んだ瞳で俺を見上げて
「ありがとう」
しおらしく呟く
どういたしまして 俺は胸の中で呟く

無事に離陸して 機体が安定すると…
お菓子を広げ尚宮も女官も女性のイギサまでも呼び集めて女子会が始まる
ふふふ
チェギョンが怖がってくれたお陰で 俺は今回初めて離陸の恐怖を忘れていられたってのにな(笑)

食べたり喋ったり眠ったり 初めての海外渡航を愉しむ妻を見ていたら あっという間の12時間 大きな揺れなども無く快適な空路だった
着陸態勢に入ると またひと騒ぎしたものの 俺の手を握り締めて恐怖を和らげる妻…
お前の恐怖心をこの俺が緩和してやれるなんて こっちが光栄さ
いい気分を味あわせてくれてありがとな


内人達によって入国審査を済ませ 荷物を積み終わるまで待機する部屋の前で壁に凭れ トイレに行ったチェギョンを待って居た俺の耳に その声が届いた
「シン!」
こんな嬉しいサプライズだ 自然に顔が綻ぶのは止められない
「ヒョリン!どうしたんだよ」


今日もありがとうございますカムサハムニダ
 
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