310.スーパーマン~まあいいか… きっと俺もそう遠くない未来に…あんな風になる | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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「俺も行こうか?」
ソンの生まれた日から数日後
チェギョンが王立病院へ行くというのでそう言ったのだが ばっさりと断られた
「えっ!?だっ ダメダメ!ダメよ!絶対駄目!」
「な…なんでだよ」
「だって…め 目立つわ…直ぐにパパラッチに見つかっちゃうわよ」
「…そうか?」
「そうよ!!」
なんか…それ以外にも理由が有りそうだと感じたが…追及して欲しくないオーラが半端なくて…引き下がるしかなかった


周りはみんな大学生活初の長い夏休みに入り浮かれているのに 俺達は…産後間もない皇后と 幼い弟に夢中の皇帝の替わりに韓国中を飛び回っている
伝統芸能 伝統工芸の観覧や 水害被災地の視察と慰問 平和祈念式典
スポーツ各種の大会開会式での挨拶に観戦 (それも時間の都合で最後まで見れないんだ 途中で切り上げるから試合結果は結局ニュースのダイジェストなんだぜ 馬鹿馬鹿しい…)
今日の世界各国からの留学生を招いたレセプシンは 同世代の集まりで元々俺達が行く予定の物だったから まだマシな方だった

「あ~ もうくったくた~!
今日特別暑かったよね~ 目の前の池にジャブジャブ入りたい気分だったよ~」
チェギョンは東宮殿に着くなりリビングのカウチに倒れ込まんばかりに突っ伏し 行儀悪くつま先を使って靴を脱ぎ捨てた
以前の俺ならこんな愚行…きっと嫌悪していただろうに 随分チェギョンに慣らされたもんだ
そんな風に内心苦笑しつつそれを見下ろす俺は ネクタイを緩めシャツのボタンを外しながら 一人掛けの方にドカッと腰を下ろした

「良くぞ堪えたな なんだったら庭の池に飛び込んできても良いぞ?
今ならイギサにしか見られることもないだろ」
真顔で庭を指差す
昼間程暑くないし 真っ暗闇では無いがだだっ広く人気のない静かな庭が楽しい筈も無い
「じょ 冗談だよぉっ!」
くくくっ 勿論本気で言ったわけじゃないのに 慌てて腕を振り回す姿が面白い
「でもな~ 二人きり海岸でバカンスなんて贅沢言わないけど 願望を言えば…
一日くらいあたし達を知らない人しか居ない処でのんびりしたい
ってそんなの無理か ははっ」
うつ伏せのチェギョンの細い躰が くるりと身を捩って仰向けになる様を一人掛けのソファに背中を預けたままで眺めながら…
「海外に…行くか?」
ポツリと言ってみた

「えっ?」
俺の言葉に パッと身を起こすチェギョン
あ 期待させたか?そうじゃ無くてだな…
「この夏は忙し過ぎて無理だと断ってた公務があるんだが…」
「それが…海外 なの?」
俄かに目を輝かせ始めるから 言いたくないが打ち明けるしかない
「ああ…あんまり気が乗らなくてな」
今度はしゅんと顔を曇らせる
「シンくんにもそういうの有るの?」
「有るさ…俺だってスーパーマンじゃない なんでもかんでも俺に持ちかけられても…難しい事に尻込みもする」
「難しい事?」
心配そうに俺を伺い見る瞳を直視できず 天を仰いで遠くを見るふりをしたが…耐えかねて顔を覆う

「ああ…
去年 お前が行けなかったフランスだ
『外奎章閣図書(ウェギュジャンガクトソ)』の返還がスムーズに行われていない事に 有識者がご立腹なんだそうだ
俺は 確かに手応えを感じて帰国したと言うのに… 仏国立図書館内で館長派と副館長派が揉めているらしく 外相が口出しを渋って 日程が全く具体化されずに 学者たちがヤキモキしているんだ
今年五月に大統領が変わったもんだから…
俺に 行ってもう一押しして来いって言うんだが…そっち(学者や外交官達)で何とかしてくれって断ったんだ
正直… あの前後 お前がどんな目に合ったか…思い出すと怖いんだ」
スクリと立ち上がって脱ぎ捨てた靴も履かずに俺の側に来て 両手で覆い隠した俺の顔を覗き込む
「あたしなら…平気だよ?脚は完全には戻らないみたいだけど…顔の傷は全く残らなかったし」
「心は?」
指の隙間から 俺を見下ろすチェギョンと目を合わす
「心…? う~ん…もう 忘れちゃった」
「卒業記念の壁画に参加できなかったのにか?」
背凭れから身を起こさず両手を伸ばす俺に 身を預けるチェギョンを俺の膝に抱く
まだ直視できない…
「あ~うん…それは残念だけど… でもあの事故がシンくんの優しさを引き出してくれたんだもん」
「…」
「あ!ご ご ごめんっ!!そんなつもりじゃ無くて…
でもあの事故の頃から…それまでとはシンくん…変わったわ?本当に」

俺がどんな顔をしたらそんなに慌てるんだ?
俺が変わったのは…正確にはあの事件の少し前だろう?
チェギョンを抱き寄せて その肩の上に顎を乗せたのは…
これから話す俺の顔を見られたくなかったから

「いいよ 認める お前のこと ぞんざいに扱ってた
きっとすぐ音を上げて 出て行くと決めつけてたし
ちっとも大事にしてなかった
俺の所為でこんな窮屈な場所に閉じ込められて 不憫に思ってたが…
あまりにも何もかもが俺と違っていて… どう接していいか解らなかったんだ
でも 居るのが当たり前になって来ると今度は 居なくなるのが怖くなった
それで…無理に自分の物にしようとしたってわけだ… 馬鹿だよな
謝らせてもくれないし 愛想を尽かして出て行くんじゃないかと不安だったのに
更にあんな目に合わせて 帰国したら居なくなってるんじゃないかとまで… 思ったほどだ
あの一週間は地獄だった」
あの夜の真意を…やっと言えた
完全に今更だな…はは

「うそ…」
身を剥そうとするチェギョンをギュッと抱きしめた こんな顔 絶対に見られたくない
「本当だ 此処に居てくれ 東宮殿に 誰にも干渉されない処に行きたいなんて…言うなよ」
「どこにも行かないよ?ひとりでは 行く時は一緒に行こう?」
「絶対だぞ?
ふっ イク時は一緒に…か… なかなか大胆な事言うんだな」
やっと身を剥してチェギョンと目を合わせる というか からかう様な視線を送る
「え?…あっ////…ちがっ!」
慌てて赤らむ可愛い妻の頬を摘まむ
「違うのか?」
「えっ? ち 違わないけど そうじゃ無くてっ!」
「ふふん ば~か」
「もおぉっ!!」

「よし じゃあフランスに連れてってやる 専用機じゃ無くてファーストクラスのVIP席でいいだろう?」
「うはっ!そんなの贅沢過ぎるよっ!」
「いや それ以下だと出国時に騒ぎになる 専用機だと向こうの入国時に騒がれるしな」
「そっか 色々大変だぁ」
急に決めても サルコジ大統領が会ってくれるかは解らないが…
夏休みに公務三昧なんだ
公務に託けて行って無い新婚旅行に行かせて貰っても撥は当たらないだろう


「そうか行ってくれるか 私の方にも再三嘆願書が届いていたので気にはなっていたのだが…
この夏もそなたには随分大きな負担を背負わせているからな…
大統領と直接話せるよう調整を頼んでみるが もし会えずとも昨年の皇太子訪仏に続いて今年は更に夫婦が揃って訪仏と成れば 仏国立図書館がどうあれフランス外相が進展に尽力してくれるだろう」
母上はまだ産後の療養中で 朝の挨拶には見えない
なのに 生後間もない弟を乳母が連れに来ても渡さず腕に抱いたまま大殿に登場する父上
おばあさまへの孝行を名分にしてはいるが…
何をどう発言してもデレデレの印象がだだ漏れている

「ったく 鼻の下伸び切ってるよな?」
チェギョンは 弟に夢中の皇帝に呆れる俺を横目にクスクスと終始楽しそうに笑っていた
まあいいか…
きっと俺もそう遠くない未来に…あんな風になる

 

 

 

 

 

今日もありがとうございますカムサハムニダ

※大変な間違いを犯して居ました みあなむにだ
大統領は2007年のジフニの誕生日にシラク大統領からサルコジ大統領に変わっていました
まあ そもそも架空の物語では有るのですが 一応気付いたからには…
という事でお話を少し訂正しました
↑2016/2/29(月)←閏年ですね~(笑)

この続きは9/28(月)にまず1話
311.妃宮初めての海外公務~じゃあ …でもやるか? 覚悟しろよ?
 
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