142.国婚式Ⅰ ~と…チョルスが言いました…と…さ… | かおり流 もうひとつの「宮」

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「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→141.十八歳の誕生日Ⅱ ~ふっ なんだよ勝手に 俺何も言ってないだろ?
このお話は 引き続きシン目線ですl


「伴侶を迎え 子孫を残せ 互いを敬い 変わることなかれ」
「臣 陛下のご命令に 謹んで従います」
ほんの一口の酒を口に含み 陛下の訓示を受け チェギョンを迎えに雲峴宮(ウニョングン)へ向かう輿(コシ)に揺られながら俺は考えていた
結局
この日を迎えるまで チェギョンがどれだけ泣こうが アイツを手放すことなど出来なかった…
国民に祝福されて 国婚式を執り行えば 俺達は国中で一番有名な夫婦になる
俺は勿論満足してたさ…
なのに…夕べあいつは泣いていた 声を殺して…
23時… 妃宮の部屋にまだ灯りが付いていて…
明日の準備はもう充分だから 今日は早く寝ろと言うつもりだったが…
硝子の扉を開けるとしゃくりあげる小さな泣き声が聞こえてきた

昨日 大学を休んでまで帰国することないのに わざわざ帰宮した姉さんが
明後日にはイギリスに戻るからと 東宮殿に押しかけてきて 夕食を共にした時には普通に見えたのに…
いや…むしろあれはハイになってたのか…あるいは演じていたのか…

ひとりになってひっそり流すその涙の理由 俺には話せないんだな…
俺は黙って自室に戻り 青い箱の上のアルフレッドを抱き上げた
今更どうにもなりゃしない…
只のマリッジブルーってヤツだろう…
そう思うことで心を保つしかなかった
「アルフレッド久しぶりに一緒に寝るか?」


俺は卑怯者だ… この結婚がアイツを形式上手に入れ 傍に置くだけであったとしても その充足感には叶わなかった
済まない…チェギョン…
お前のその笑顔が 作り物であることくらい 解っている
俺は 何より輝くお前の本当の笑顔を知っているから… それなのに…

俺の横や後ろには曾てないほどのカメラの台数…
皇室の伝統を惜しみなく披露し 威厳を誇示するための 国婚式中継…
ゆっくりと 女官達の介添えを従えて 歩くチェギョン…
重そうな翟衣(チョグイ/世子嬪の婚礼衣装)と大首(デシュ/婚礼用のカチェ(カツラ) ひとりで歩くことも儘ならない様子だ…
そしてこの表情…
俺の妃になったばかりに さらし者の花嫁人形だ… 彼女らしさなんてどこにも無い…
ふん…皮肉だな… 俺は自分の右の頬が引き攣るのを感じた

「父母を い…戒め?敬い…その言葉に従い仕え… 朝から晩まで…え~…」
震える声で 手に書いた戒めの言葉を読み上げる父君を見て くすりと笑うチェギョン…
そのチェギョンの大首と翟衣をスッと指先で整え 優しい眼差しを贈る母君は 父君とは反対に スラスラと戒めの言葉を読み上げる
最後にもう一度 お二人揃って読み上げる
「「父母を慎み敬い その言葉に従い仕えたまえ 朝から晩まで父母に背くこと無かれ」」
両親の潤んだ瞳と チェギョンの揺れる瞳が 俺の中の罪悪感を掻き立てる…
庭に 叔父のキム・スヒョン氏と共に並んだアイツの中学生の弟は あどけない笑顔で姉に手を振っている… 俺に 大切な姉を奪われたとも解さぬまま…
俺は 本当に罪深い…

「早くしろ後が押すだろう?」
早く終わらせて 休ませてやりたい一心で言ったつもりの言葉さえも尖ってしまう…
きっと冷たく聞こえたのだろう…なにも言わずに目を伏せる…
だけど
パレードの後 大殿(テジョン)の謁見の間に 政府を代表して祝辞を述べに来た総理に うっかり頭を下げたのには驚いた
総理の頭に乗っかった10Kgにもなる大首(デシュ)をかぶった自分の頭を起こせずにいたチェギョンが 俺に助けを求めたのに あまりの可笑しさに 吹き出しそうになったからって… 顔を背けたのは不味かったか?
すっかり機嫌を損ねてしまったようだ…

続く同牢の礼… 義愛合(ウェイハプ)の支度が整うまで 別室で待つ間
何を話していい物やら 気まずくて 黙ったまま 腕組みして寝たふりをしていた


「ふぅ…」
聞こえてくる小さな溜め息はチェギョンのもの…
何をするでもなく待つ時間は長く感じるものだが あからさまに溜め息をつかれるのは面白くない
窓の外 天を仰いで またひとつ…
「はふ…」
憂いの籠った溜め息に 俺がこんなに切なくなるのを お前は気付きもせず何を あるいは誰を想うているのだ…
「疲れたのか?お前も少し寝ればいい…」
俺が 閉じた片目を開いて紡ぎ出した言葉に 唇を尖らせる
「む…無理だよ…こんな状況でよく眠れるね…」
同牢と言っても 俺達の合房(ハプパン)は 成人してからとされ 固めの盃を酌み交わし 婚礼の膳を食すだけだぞ?なんでそんなにも溜め息を漏らす?
「別に眠っちゃいない…目を閉じて休んでいるだけだ…」
今度はへの字口だ
「あ…そっか…あたしなんかよりずっと神経質だものね~ ふ~んだ ベ~ロン!」
そんな強がりさえ愛らしい新妻に…俺は優しい言葉の一つもかけてやれやしない…

「前にも言ったが…同じ船に乗ってしまったからには 必要に応じて助け合おうじゃないか…
まあ…俺がお前に助けられることなんか有るかは怪しいが…
圧倒的に迷惑を蒙りそうだな…」
「ちっ…そんなの 言われなくても解ってるわよ… ふ~んだ」
しかめっ面を俺に向けて そうやって強がって笑うお前を 見ては 罪悪感に苛まれるんだろうな…
いっそ泣けよ コソコソ隠れて泣かずに 俺を罵って俺の前で泣いてくれれれば…こんなにも自分を蔑まなくて済むのに…

「なにか不都合があればメソメソする前に俺に言え
くだらないことでもなんでもとりあえず聞いてやる その上でどうにか出来そうなことはどうにかするよう検討するから 兎に角その辛気臭い顔をなんとかしろ
別にめでたくも無いが 葬儀ではなく婚儀なんだぞ?」
こんな日は…幸せにすると約束してやるのが一般的だろうに…お前に俺がしてやれる約束は…

「…それでもお前が 皇室になじめずにメソメソするんだったら…
俺がお前に約束できることは 離婚だけだ」
俺を振り返ったチェギョンの目は過去最高かと言うほどこれでもかと見開かれている
ふん…まあそりゃそうか…
結婚そうそう 離婚話なんて ありえないよな でもそうでも言わなきゃ
今のお前をどう慰めていいか…わからないんだ…仕方ないだろう?
「まあ… 俺たちはまだ子供だ 先の話さ
先帝の約束を守るために結婚に承諾したが お前がこんなにも馴染めないとはな…
俺が成人して 少しは自分の事を自分で決る自由を得られた時… お前がまだ皇室に馴染むこともできずそんな風にメソメソするんだったら…
いつまでもなきべそかいてる妃の面倒をみるのなんかお断りだ ってことさ」
なんだよその顔は…
「期待するな? まだずっと先の話さ…
しかも俺は皇太子なんだ お前が離婚してくれなきゃもう死んじまうとでも言わなきゃ 実現しない
成人したら… 合房か… 離婚か… どっちになるか 見ものだな…」


準備が整い 席に着いてまず盃を受け取る
巫女に運ばれてきた御神酒を 俺の盃に注ぐ女官
一口に煽ると 盃は女官の手を渡りチェギョンへ 彼女は俺を睨むように見据え 注がれたお神酒をクイッと煽る
おいおい…飲み過ぎんなよ?
俺達は箸にも器にも手を触れることなく… 誰がこんなに食うんだというような量の料理を 女官の箸によって口元へ運ばれる
俺とチェギョンに交互に運ばれる料理を 一言も交わさず 黙々と食す…

本来ならこの後夫婦の契りを結ぶ合房だ…いわゆるその…初夜ってやつなんだが…
昔は成人なんか待つことなく行われていた
廊下に並んだ尚宮達によって その行為を細かに記録するらしい
いつぞや見た夢の様に 白く透き通るような肌をしているんだろうか…
そんな邪な事を考えているのが無性に恥ずかしくなって
「もう結構だ…」と箸を断る

「え?もう食べないの?料理こんなに沢山あるのに!」
勘弁してくれ 俺は今日一日中続いた 喜びと罪悪感の鬩ぎ合い(セメギアイ)に疲れ果てたんだ
飯なんか味も感じない…
「おまえが食べればいいじゃないか」
「や やだよ ひとりで食べてもつまんないし 恥ずかしいよ…」
「はっ 今更… もう既にみんな知っているだろう 俺よりお前の方が良く食うことぐらい」
「そうはいっても 儀式なんだし…」
「うるさいなぁ…じゃあコレ ソレと…ソレ もうそれ以上は無理だ」
そうやってもう三口ほど交互に口に運ばせる

「合房は先に延ばすとか言っても 深夜零時までは此処にいなきゃならないらしい
TVも携帯も無いし 仮眠でもするしかないな」
開け放たれた襖に凭れてさっさと眠ったふりをする俺とは反対の襖に おずおずと背中を預ける気配を感じる
やがて 静かな寝息が聞こえてくる 早いな… ふっ 流石に疲れたか…

うとうとと眠ったような起きているような朦朧とした意識の中で
「シンくん…」とアイツが呟く声を聞いたような気がして目を覚ます
「ん?今何と言った?」
アイツの顔に少しずつ近づいて話しかけてみたが 寝言だったのか?
「なんだ?なんか言っただろう?」
ムニャムニャと口を動かしていたアイツが突然俺の襟首をガシッと掴み
「小母さん!このスンデ レバーが入ってないわ!ハツもガンガン刻んで…」
そこでようやく目を開けて 自分が今何をしているか気付いたらしいアイツは
「と…チョルスが言いました…と…さ…」
げ…寝たふりかよ!こんのっ!
「狸寝入りするなっ!ふざけやがって!こら起きろ!スンデ!」


「シンくん…」 あれは 聴き間違いだったんだろうか…
あいつ 昔の事を何か覚えてるのか?



いつも ありがとうございます


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