番外編13 入宮まで~過度な期待を寄せられても 応じられないだなんて… | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
「宮」~Love in palace~のYouTube自動再生を止めたい方は
画面右側サイドバーに貼っています 停止して下さい

初めての方は是非 はじめまして から順にお読みください リンクを貼ってます
前のお話は→141.十八歳の誕生日Ⅱ ~ふっ なんだよ勝手に 俺何も言ってないだろう?
今日のお話は数話分の本編を皇帝陛下ことイ・ヒョン目線で語って頂き ます


表情が豊かになった… というにはあまりにもまだまだ乏しいのだが…
私達の息子が 皇太子の鉄仮面を崩す瞬間を 我々が度々目にする事ができるようになったのは確かだった


恵政殿皇太后となったソ・ファヨンは 私の息子を疎んじている
いや…正しくは皇后ミン・ユソンの息子を疎んじているというべきなのか…
過去を想えば致し方無い事かもしれない
私の妻という座では得られるはずのなかった皇后という地位… 自分が就くことが叶わなかった皇后と言う地位に 私の隣に居ながら即位したミン・ユソンに 嫉妬の念が沸くのだろう
皇太子妃の先に在る皇后と言う地位に目が眩み 私の手を放して兄を選んだのはあたたではないか…
結局その座に就く事が叶わなかったのは あなたが自ら 私のこの手を放したからではないのか?

あの愛は幻だったと 忘れたころに あなたと身を結ぶことができて 天にも昇る気持ちだった
私は 誠意を示し あの日の事を “過ち”などにしたく無かった
どんな罰をも受けるつもりだった…
なのに やっぱりあなたは逃げ出したではないか
それなのに 妻と子供たちを守るために 最後まであなたを守れなかった私や 私の妻でも息子でもなく 曾て(カツテ)の自分の位置に居る 甥の婚約者に牙を剝こうとは…

エリザベス女王から授かった指輪が盗まれ 皇太子の婚約者が一人で庭を歩いて居るのを目撃した尚宮が居ると乗り込んできた恵政殿皇太后は 冷静さを失っていて…
うっかり信じてしまいそうなほど名演技であった 流石元女優ソ・ファヨンだ
だがそれが事実であったなら 婚約は白紙に戻すことになるだろう
もしやあなたの狙いはそれなのかと疑うことが 息子の婚約者を信じる理由になるなんて…

「…あんな小娘をこれ以上此処に置いておくなんて 脈々と受け継がれてきた王の血を汚すことになります!」
「恵政殿皇太后様…私の婚約者を侮辱するのは止めて下さいと さっきも申したはずです!」
「クァク尚宮があの娘を見ておる 一人で私の庭をうろついていたそうではないか!
今日の午後!そなたあの娘がどこで何をしておったか 把握しておるのか!?」
私は 息子が言葉に詰まるのを前にしても 残念ながら余所の父親の様に優しく諭し 話を引き出してやれる立場では無かった

翌日の昼になってユルが私の元へ赴き
自分が彼女を誘い 母上の庭に一緒に雪だるまを作った そう聞いたときは 驚いた
シンはその事を知らなかったというのか?
いや…そんなわけはないチェ尚宮かコン内官から報告を受けていただろうに…
なぜ翌日の昼になるまでこんな簡単な事を引きずったのだ?
コン内官によれば このところユルとチェギョンが妙に親しい故 二人を信じられなかったか あるいは恵政殿とユルの繋がりを恐れたのかであろうと…
私はまだほんの高校二年生の息子が 自分の婚約者と従兄を信じることができずに胸を痛めた事実を知り 胸が潰れる思いだった

私は 今でこそ孤独な皇帝だが… 少なくとも 今の彼と同じ年の頃は そんなにも他人と距離を置く必要も無く過ごしていた… 
シンは…五歳で一人住まいを始めて以来 我々親にさえ壁を作った そして 帝王学を学ぶにつれ… 強い孤独を耐え抜く覚悟を積み上げてきている…
ユルにさえ心を見せぬシン…
チェギョン嬢との婚姻… もしや…思いのほか難航するやもしれぬ…


それでも…私の懸念を余所に チェギョン嬢の英語の追試問題について 恵政殿の放ったワイルドピッチを的確に捉えて打ち返し 婚約者を守った
「よりにもよって英語が苦手とは… 未来の国母にあるまじき事ではないか…」
「何処から聞きつけたのかは存じませんが…
彼女が英語で赤点を取った事をご存じなら 第二外国語で専攻している日本語で 唯一人 満点を取った事もご存じなのでは?
人には得手不得手と言うものが有ります
英語は僕が充分精通していますから 彼女にはむしろ日本語をより学習して貰えば 今後の課題である日韓の友好関係に きっと役立って貰えると期待しています
まあ流石に赤点は不味いですし 基本的な単語や文法を理解し リスニングくらいは出来ないと外交に差し支えるので…僕が責任を持って学ばせています ご心配には及びません」
あれは実に痛快であった
しかしチェギョンも 日本語で満点とはあっぱれ
幼き頃シンと共に学んだ経験が今に活きているのであれば 我々も誇らしい

東宮殿での様子を コン内官からの報告にて聞くにつれ
シンの孤独は 少しずつ チェギョン嬢によって埋められようとしていることが解ってきた
二月には追試の試験勉強に手を貸したとか…
加えて…
チェギョンの従妹が生まれたとかで キム・スヒョン イ・スジ夫妻の邸宅を訪れ その腕に赤ん坊を抱いたとか…
内官も…
「チェギョン様にお写真を見せて頂いた時には 小生涙が込み上げてまいりました…」
などと言っておったが…
あのシンが… チェギョン嬢に絆されて だいぶ心を許しているようだ…

二人が幼い頃 皇后がいつも言っていた シンがチェギョンを慕っておると… 彼女と離れ 我々と離れて暮らすことで陥った孤独の闇 心を閉ざしてしまったシンを 彼女の放つ光が救ってくれるかもしれない…

三月…
仕来りに従い チェギョン嬢を 国婚式のふた月程前に離宮へ入宮させる時期が近付き どの離宮に入宮させようかという事を話題にしたのは まだ雪の残る寒さ厳しい朝だった
我々はその日改めて 息子の成長を心から喜ぶこととなった
 
「え?彼女一人で ふた月も 離宮に住むのですか?」
始めは 顔を顰める息子を 私はただ訝しく思ったほどだった
だが続く息子の言葉に 私達大人が 仕来りに囚われ チェギョン嬢に配慮も無く 嫁ぐ前からどれ程の不安を与える処だったかを 思い知らされたのだ

「あの…そんなことは無意味では有りませんか?
もう既に彼女の部屋は東宮殿に用意され 半年もの間毎週末使っているのに…
それに…普段使っていない古い離宮に 女の子が一人でふた月も… あまり嬉しくはないのでは?」
「ふむ…」
「彼女は一人っ子ではありませんから… 家では家族と良く会話するのでしょう… 僕が殆ど口を開かなくても 東宮殿で彼女はとても良く話します
話し相手も無く TVもインターネットも無い 古びた宮殿に 一人で住まわせるなんて…
婚前に 宮家に対する 不安を抱くのでは… ありませんか?」
そうはいっても仕来りが…
「一人でと言ったって 尚宮に女官 世話をする宮女が何名も入るが…」
しかし反論を試みる私自身も 内心 確かにその通りだと感じていた…

「確かに イギサまでもが女性で 男子禁制 防犯カメラなどの警備も充分では無い古びた宮殿で 太子の言う通り TVもインターネットも無い…」
皇后もシンの意見に同意する
「静かさ故 学ぶのにはうってつけで有る反面… いまどきの若い娘の好む場所ではあるまいな…私もかつて 幽霊が出そうで怖いと感じた事を覚えておる…」
母上までも…
そうか…そうだ…と頷く皇太后と皇后
「そなたが提案してくれなければ 我々頭の固い大人達は そなたの妃の心を遠ざけてしまうところであった ではそうするとしよう」
「ありがとうございます
ただ… 余計な事は言わないで下さいませんか?
彼女に過度な期待を寄せられても 応じられることには限りが有ります故…」
「ふむ… わかった ではそうしよう…」

まったく可愛げの無いことを言うものだ…
シンが下がった後も みな一堂にシンの成長に顔を綻ばせた
「彼女に過度な期待を寄せられても 応じられないだなんて… あんなにも彼女の事を考えてやれる器量を持っているのに」
皇后の零した言葉に 私も母上も微笑み 幾度も頷いた


「仕来りにより従来通り 一旦 雲峴宮(ウニョングン)や慶熙宮(キョンヒグン)などの離宮へ入宮し ふた月ほどそこで暮らしながら 妃教育を受け 国婚式のあと景福宮へ嫁ぐよう計画していたのだが…
そなたは既に東宮殿の書筵堂で教育を始めておる… しかも 普段主も無く寂しい離宮での生活は静かすぎてそなたが侘しかろうと…」
「んんっ! ああ ぅんんっ!」
皇太子が…激しく咳払いをし 私へ目で訴えかける
―話が違うじゃないですか!余計な事を言わないでと言ったのに なぜ今それを!?―
余計な事… 本当にそうだろうか?
父としては 嫁いでくれる嫁に 息子の意外な優しさを 知って欲しいものだが…
チェギョン嬢が負担に感じるだけであろうか?

「まあ とにかく すでに東宮殿へ通っているそなたを 敢えて離宮に一人住まいさせずとも 今日より そなたを皇太子の妃として東宮殿へ迎えようではないかという事になった」


そしてついに この嘉き日を迎えた
「伴侶を迎え 子孫を残せ 互いを敬い 変わることなかれ」
「臣 陛下のご命令に 謹んで従います」
さあ行けシン… 今朝そなたの東宮殿を出て 雲峴宮(ウニョングン)で冊嬪を受け そなたの到着を待ちわびるシン・チェギョン嬢を そなたを闇から救ってくれるであろう妃を ご両親から頂いてくるのだ


今日もお読み頂き ありがとうございます
いよいよ 国婚式 親迎の礼です

にほんブログ村 ←or↑ポチ ちゃるぷったっかむにだ好
くりご ↓ペタ ちゃるぷったっけよろしくです



次のお話は4/20→142.国婚式Ⅰ ~と…チョルスが言いました…と…さ…