働く女性たち…「黒猫ドライバーの女 通子」巨大宅急便会社に風穴をあける 駆け込み寺居酒屋ポン吉 38話
JR西大路駅近くにある「洋風居酒屋ポン吉」には毎日午後5時半ごろ必ずといっていいほど宅急便が届く。これは店のアルバイトの娘やこの店の近くにあるワコールや日本新薬、それにGSユアサのOL達が通販で買った物の届け先をこの「ポン吉」にしていたからだ。マスターの音吉はその荷物の宛先の女性にLINEで知らせればそれらのものが退社後にこの店で受け取ることになる。
この地区を担当している宅急便のセールスドライバーは黒谷通子でまだ若い27歳だった。音吉はこの通子が配達に来るとなにかと飲み物を出していた。ある日、その通子が二週間ぶりの休みになったというので店に遊びに来ていた。そして音吉に、
「いつもお荷物を預かっていただいてありがとうございます。こういうお荷物を預かっていただけるお店がほうぼうにあれば荷主さんにも早く届き、そしてこちらも早く配達ができます」
「そう、荷物を送る場合は色々な店で送れるが、配達の受け取り窓口はそんなにない」
「はい、そうです。ですから私はこの「ポン吉」さんを例に上げて営業所の上司に進言しました。たとえば荷受け手数料があるように、配達時の荷受けにもなにかしらの手数料をだせばこういうお店が増えてメーカーも宅急便業者も荷主も喜びます」
「そう、それに宅急便のドライバー不足、それになによりドライバーの労働時間が減ります。それで上司は?」
「はい、ドライバーはそんなことを考えずもっと働けといわれました」
「そうかもネ…どうせ末端の管理職というのはそんなもんです」
「それで私は東京本社の企画課にメールで同じことを訴えましたが、その返事もつれないものでした」
それから10日ほど経ったある日にその通子さんが、これが最後の配達になります。長い間お世話になりましたと挨拶しているので音吉は、
「あらら、宅急便のドライバーを辞めるの?」
「はい、実はこないだの本社にメールを送った件が京都支社で問題になり私が上司を無視したということで厳重注意を受けました」
「まぁ~そんなもんやな組織というのは、それで?」
「それで私は頭にきて会社に辞表を叩きつけて明日付で辞めます」
この音吉はこの宅急便のトラックを売る自動車メーカーの京都販売の営業部長だった。この京都が発祥の佐川急便が最初の1台目のトラックを買おうと思ったが、佐川急便はそんな信用がないとどのトラックメーカーも月賦では売らなかった。ところが音吉の先輩の営業部長が「この佐川は信用できる男」と判断してトラックを売った。これに恩義を感じた佐川は「わしの目の黒いうちはこのメーカーのトラックしか買わない」といった逸話があった。そしてこの音吉はこの佐川急便や黒猫の担当になっていた。その縁で通子が勤めていた黒猫宅急便の本社幹部たちともかなり親しかった。
そこで音吉はその現職の幹部に電話をしている。音吉はありのままを話すとその幹部は、
「いや、そんないいアイデアは私の耳には届いていない」
「これを考えた若い通子というドライバーが明日で辞めるというが…」
「わかった、その黒谷さんの企画の実現を本人にやってもらう。今からすぐに京都本社にフアックスでその黒谷通子を東京本社直属の京都支社企画部に配属するという辞令を出す」
「ありがとうございます。このことが社内中に知れ渡るとまた若いドライバーたちも素晴らしいアイデアをだすと思います」
「そう、ここまで会社が大きくなると風通しが悪くなる。その黒谷さんのおかげで我社も風が通りやすくなる」
この夜、最後の配達が終わったのが夜10時、通子は東京本社直属の京都企画課勤務の辞令を京都支社の支社長が直接営業所まで来て手渡していた。この本社直属というのは通子が勤めていた営業所の所長よりも社内の位は上になる。通子はポン吉の店が閉まる時間を気にして風呂にも入らず宅急便のユニホームのまま店にきた。通子はその辞令を音吉に見せながら、
「音吉さん、京都支所の支所長さんに聞けばなんでもこのポン吉さんから本社専務への助言があったといっていました」
「いや、それはそうだが、その本社を動かしたのはやはり通子さんの会社に対しての情熱があったからです」
「いえ、それは違います。でも、本当にありがとうございました」
「それで京都支社勤務はいつからですか?」
「はい、それはその準備のために3日間の有給休暇をもらいました。そしてそのあくる日から一週間東京本社の研修があります。そして京都本社に出向という形で京都勤務になります」
その話をこれまた横で聞いていたママの幸子が通子に、
「それはそうと着替えは持ってきたの?」
「はい、こうして紙袋に…」
「そう、それなら音吉さんのマンションでゆっくりお風呂に入ったら?」
それを聞いていた音吉は、
「おいおい、ママ、通子さんはまだ27歳でワケアリの女性とは違う。そんな世界にひきずり込むのはよくない」
そこで通子が、
「いえいえ、私も実は20歳で結婚しています。その夫も宅急便のドライバーでしたが交通事故で亡くなったのです。その彼の仕事を引き継いでこの世界に入りました。しかし、私もこのことをいつまでもひきずってはいけないと思いかねてからママに相談をしていたのです」
「しかし、それは私ではなくて次の彼氏に期待してください」
「いえ、それでは私は音吉さんになんのお礼もできません。それにママさんも「女性がけじめをつける時は好きな人に抱かれることだと」いっていました。そしてその瞬間から新しい人生が始まるとも…」
「そうか~、女というのは一生の内で何回も「けじめ」をつけられからいいよね~」
この時、有線から閉店を知らせる「蛍の光」が流れた。幸子は、
「ささ、店は私が閉めますから音吉どんは早く通子さんをお風呂に入らせてあげて」
と同時に通子は着替えの紙袋を持って満面の笑顔で幸子と抱き合って喜んでいる。音吉は心の中で、
「しまった!またママの策略に…」
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