JR西大路駅前、近くには約50軒の飲食店がある。いわゆる都会の飲食ピルというのは一つで残りは民家を改造したテナントになる。したがってほぼすべての店は1階にあり店は道路に面している。この店の前の歩道の掃除は当然ながらその店の管轄であって常に綺麗にしとかなければならない。
京都の有名な日ごろの習慣に「門履き」(かどはき)というのがある。これは毎朝のように自分の家の前をホウキで掃くのだが両隣の境界線より少しだけ侵入してそこも履くという京都流エチケットがある。しかし、これをしなかったその家は「無粋」だとしてこの狭い町内からも村八分まではいかないがなにかと「いけず」をされる。
この「洋風居酒屋ポン吉」も1階にありここのマスターの音吉が店に出勤して最初にする仕事はこの「門掃き」になる。履いた後は水を撒いて玄関には盛塩をするのが日課になる。この行為とは道路の表でするから町内の人々とも会って立ち話などのコミュニケーションもできるし、通行人も観ることになる。これこそこの店の人格の宣伝になって京都人が安心して行ける店の証拠となっている。
このポン吉の並びの空き店舗にまた新規の店ができた。店の工事の規模からして改装費は確実に一千万円は超えているとこの地域の人々の噂になっていた。店のオープンには派手に祝いの「蘭」が飾られ、有名人の花輪も並べられていた。店の名前は「和風居酒屋 朱美」でママは30歳前後の超ベッピンだということだが、この超ビックな噂の割にはポン吉の客はまだ誰も行ってはいないという。
それから半年ほど経ったある日、その「和風居酒屋 朱美」という店のママが挨拶に来たというのでマスターの音吉は店に行った。そこにはやはり噂の超ベッピンのママがいた。朱美は、
「ご挨拶が遅くなってすいませんでした」
「いゃいゃ、こちらこそ、それで店はうまくいっていますか?」
「それが~開店当初は前の店のお客様が来てくれましたが、それも三か月ほどで…」
「そうですか~この京都は商売が難しいのです。で、どこの出身ですか?」
「はい。宮崎県の都城ですが、色々あってそれで木屋町のビルの4階のビルでスナックを経営していましたが、私も35歳になって料理をウリにした居酒屋をしょうと決心したのです」
「そうですかビルの4階だと「門掃き」は知らなかったのですネ」
「えっ?その門掃きとはなんです?」
「それはまたおいおい教えます。それと朱美さんはここの町内会費の月にすれば500円ですがこれを払っていますか?」
「いえ、町内の方が集金にこられましたが、私は住まいのマンションで町内会費を払っていますからとお断りしました」
「そうですか~こういう店をしていますと客が近所で立ち小便をしたり大声を上げたり、煙草をポイ捨、それに夜中に出す業務用の生ゴミ袋を猫やカラスが荒らしてその後始末もこの町内の誰かがしてくれています。その迷惑料というか町内とのコミュニケーションとして町内会費は必要なんです」
「そうですか~それはいいことを教えていただきました。生ゴミのことまでまったく気がつきませんでした」
この町内費を払わないということを各町内の集まりである学区連合会の集まりで雑談として店の名前が発表されることがよくある。そうなると学区の体振や消防団、それに福祉、ママさんバレー、老人会などの各種団体の宴会やその二次会には絶対に使われない。またこういう話には必ず尾ひれがついてあの店のママは暴力団の愛人だという噂にもなりかねない怖さがある。つまり、町内会費を払わないというだけでこの村の仲間に入れてもらえなくなる。
たしかに全国チェンの居酒屋やコンビニはこの町内会費を払っている店は少ない。しかし、もしこの地域密着で商売をするならまずその店の町内、それに近所の飲食店に開店の挨拶ぐらいはするのが京都の一般常識になるが、こういうことを教えてくれないで陰口で仕返しするのが京都の「いけず」でもあった。それを聞いていた朱美は赤面しながら、
「そうでしたか~このポン吉さんとは同じ並びなのに…挨拶が半年も遅れてすいませんでした」
「いゃいゃ、こういう挨拶の中でこの地域の仕来りを覚えるのです」
それからママの朱美は開店前には必ずゆっくり時間をかけて「門掃き」をするようになっていた。元々、この地域ではNO1の美人だからそのママが店の前で掃除をしていればこの付近の会社帰りのサラリーマンが見つけないわけがない。それが客となり一人増え二人増えて店もやっと赤字ギリギリの経営までに盛り返していた。そんなころ音吉は朱美に店の休日に招待されていた。そして朱美は、
「音吉さん、おかげさまで新規のお客様が増えてきました。それでも赤字なので住んでいたマンションを引き払ってこの店の二階に引っ越しをしてきました」
「ほう、そうでしたか~それはよかった」
「はい、もし店がオープンして順調だったら私は天狗になっていたと思います。そしてこの京都の仕来りも知らない「無粋」な女のままだったかもと思うと今でも赤面します」
「それで町内会費は?」
「はい、これはこちらから頭を下げて町内会に入らしてもらいました。するとすぐに消防分団の懇親会の二次会に貸し切りで使ってもらいその中の何人かが常連客になってくれました」
「それはよかった…もし、なにか困ったことが合ったら言ってください」
「はい、実は~二階のベッドの位置が悪くて少し動かしてほしいのです」
この店は元々民家の二階建てだった。その分家賃も2倍していた。その二階に上がるとやはり綺麗好きなのか部屋はピンクで統一され、そのベッドにはほのかな色気が漂っていた。そして朱美が、
「音吉さん、私は何もマスターに恩返しができません。もしあの時に音吉さんに相談していなければ私は莫大な借金を抱えて路頭に迷っていました。恩返しというのもなんですけれども私を抱いてください」
というなり朱美は音吉に抱き付きキスを迫ってきた。音吉はこういう場面でこれを拒否するとその女性のプライドがズタズタに切り裂かれて取り返しがつかなくなるのは経験から知っていた。しかし、頭の中にはママの幸子が現れたが、音吉はここに招待をされたことはママは知らないというより、知らせていないので安心して朱美を優しく抱いていた。
男の安くて不味い料理…北海道産の蛸(427円)
これはタイトルとは違い高くて旨いタコになる。年金支給日まで後5日、今月もなんとかいけそうなので清水の舞台からら飛び降りるつもりで買った。ところがこの魚屋さんの女店員があまりにも綺麗だったので、次のこの小説の主人公は魚屋さんの「鮎子」さんにした。やっぱり人間は旨いものと綺麗なものを見ると創作意欲というか妄想が沸いてくるものだ。(合掌)
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