≪日米協構造協議≫と「ハコ物公共投資」との関係~その1~ |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

前回は、
なぜ省庁はムダづかいをするのか?
なぜ役人が「ムダ遣い」するのか

そのムダ遣いぶりから、
なぜ役人の仕事観は、
国民不在になってしまうのか

について見てきました。

 しかし、見てきたような省庁システムに問題があるからといって、
その改革手段として
構造改革」や「規制緩和自由化」など「新自由主義経済を採用することの根拠には成らない事を、述べさせていただきました。

 私たちが、”お役人によるムダ遣い”に立腹する事柄には、
税金のムダ遣い、さらに借金してまでの「ムダ遣い」が、あります。
そのムダ遣いの象徴として、
テレビなどが、「ムダな公共事業」を取り上げます。
取り上げるからには、テレビは、最大限に強調して取り上げます。

 その事から、テレビで「ムダな公共投資」や「ムダな公共事業」を見せつけられて、
腹を立てない人はいないでしょう。

 公共投資公共事業ですから、
お役人が関係していないわけがありません

 しかし、ムダな公共投資、ムダな公共事業の舞台裏に、
もし”アメリカからの要望圧力働いていたとしたら、
私たちは、ムダ遣い」≒「省庁利権」という図式を、
撤回、そして修正しなおす必要が出てくるのではないでしょうか?

 事の発端は、
1989年のアルシュ・サミットで行なわれた日米首脳会談の席上で、
ブッシュSr.大統領が、宇野宗佑(そうすけ)首相に突きつけ、宇野首相が受け入れた日米構造協議にあります。

 この≪日米構造協議≫は、
わずか20分の会談で決められてしまったようです。

 sらに、一説によれば、
いまの経団連
新自由主義」路線に、舵(かじ)を切るキッカケになったのは、
じつは、この≪日米構造協議≫であることを知ると、
とても20分の会談で決まるような問題では無いことだったのではないでしょうか。

 そして、まったくの安請け合いで、
≪日米構造協議≫を呑んでしまったのではないでしょうか?

 じつは、アメリカによる不意打ちであったようです。

 「年次改革要望書」をはじめ、アメリカによる対日要求構造といえば、関岡英之氏で、
関岡氏による『拒否できない日本』によれば、
この≪日米構造協議≫という名称は、
苦しまぎれの意訳で、
英語原文は”Structure Impediments Initiative (SII)”で、
的確に訳すとすれば、
構造障壁イニシアティブ」となり、
意味合いは、
アメリカが日本の市場に参入しようとする上でジャマになる日本の構造的な障害を
アメリカ主導で取り除こう

とするものだ、と言います。
イニシアティブ>は、
主導権」と訳すべき単語であって、
「協議」という語義は無い、と。

 現に関岡氏は、
通産省(現・経済産業省)の日米構造協議の交渉担当であった畠山襄氏の叙述を引用して、
≪日米構造協議≫をして、
「それは『内政干渉の制度化」であることを浮きぼりにし、
この≪日米構造協議≫というものが、
日本の制度をアメリカの都合のいいように変更する事を、
アメリカ側から一方的に要求する不公平なものである事を、
教えてくれています。

 ≪日米構造協議≫に向けての、アメリカ側の用意周到ぶりは流石で、
アメリカ政府は、膨大な人員と労力を費やして
日本の商習慣や社会構造を、調べ上げてきたと言います。

 しかも、≪日米構造協議≫の場で、
 アメリカ政府側が、
日本政府側に向けて突きつけてきた様々な要求は、
農作物など具体的な品目についてを交渉する、それまでの通商交渉とは、
まったく様相が異なっていた
、と言います。
「価格問題」などといった抽象的なテーマで、
しかも、縦割り行政構造である日本の省庁体質であることを突いて
日本の官僚にとっては対応しきれない
分野横断的なテーマ”が、
その協議の場に持ち出されてきた、という。

 そうした≪日米構造協議≫で、
アメリカが、日本に突きつけてきた様々な要求が、
海部俊樹首相とブッシュSr.大統領との間で、
1990年6月に、最終報告として、まとめられます。

 この最終報告書で、アメリカから突きつけられてきた要求に、
日本政府は、
ただ諾々(だくだく)と応えるのでありますが、
 
 この要求内容は、
アメリカ企業が、”日本の市場に参入するに当たり
ジャマとなる障壁(つまり規制緩和や撤廃を求めるものであるのでした。

さらに要求は、(国内産業などを保護する)規制障壁――規制というものが、官僚の権力の源泉で、その規制をめぐって、これまで利権政治家が、官僚に口利きをする形で、政治屋商売を繰り広げる事ができたとしても――の緩和や撤廃という、”日本国内への要求”ばかりでなく、
アメリカの企業と競合する事になる海外投資や、
また日本国内でも、
先端産業の技術開発への日本(企業)による投資を阻い止めるべく、
ムダな公共事業に投資することを、
アメリカ政府は、
日本政府に求めてくるのでした。

いま自分は、
20年以上まえの出来事についての、
この今回の記事を書いているのに、
<規制緩和>や<構造改革>そして<TPP>のことを連想してしまうのは、
気のせいでしょうか。

わたしには、どうしても<TPP>が、
日米構造協議の路線にある気がしてなりません。

<規制緩和>や<構造改革>を推進するの当たり、
悪者として取り上げられてきた「官僚」や「規制」、
そしてその”悪業の証拠”として持ちだされる「ハコ物建設」。
アメリカ政府経団連が、<規制緩和>や<構造改革を求めてきた一方で、
その<規制緩和>や<構造改革>を推進するの当たり、持ち出される「ハコ物建設
米国による日本への内政干渉の制度化」というべき≪日米構造協議(イニシアティブ)≫で、求めてきたのであれば、
私たちは、この事実を、
どのように理解・整理すべきなのでしょうか?


省庁における出世尺度の構造の問題上、
官僚によるムダ遣いは事実だとしても、
官僚によるムダ遣いが、
財政危機の原因とは言えず、
また財務省は、
海外に向けては
「日本は財政危機ではない」と抗議する一方で、
国内の国民に向けては
「日本は財政危機だ」と扇動する二枚舌ぶり。

規制緩和>や<構造改革>、<郵政民営化>などを求めてきたアメリカ政府が、
じつは日本政府に
その<構造改革支持者が、
槍玉に挙げるハコ物建設の公共事業投資をシフト・チェンジする事も
求めていた事実

 どうやら私たちは、
従来の二項対立の図式を
考え直し、整理する必要がある

のではないでしょうか?

この二項対立の図式にこだわる内は
権力の手の内で
踊らされるだけなのではないでしょうか?


 過去に受けた被害(傷)を、以降においては避けたいがばかりに、
その防衛意識やトラウマ意識が、
過剰になりすぎる皮肉を、
言わんとしている(と高樹が思っている)、
テオドール・W・アドルノの言葉を、
いま上に見てきた文脈のなかで、
別な意味あいで表現するために、
引用したくなります。


「個人は、
自分の心の奥底にある小部屋で、
彼がそれに直面して、
自分自身のうちに逃げこんだはずの、
あの権力と同じ権力に出くわす」

(テオドール・W・アドルノ
『ミニマ・モラリア』より)



次回は、
「日米構造協議」と「ハコ物建設」との関係ついて、
もうすこし具体的に、
一緒に見ていきたいと思います。

関連記事
○ 
小泉政権時の「緊縮財政」も、アメリカが要求し、仕組んだものだった!?
○ 関岡英之『国家の存亡』(私物化されている米国政府からの対日要求)
○ 日本への”連結納税”の導入の舞台裏(関岡英之『国家の存亡』その2)
 私物化・買収される政府(『私物化される世界』)~プロローグ/その0~
 「構造改革」の正体 (プロローグ・私物化・買収される政治~日本編~)


 追伸、Twitterで、岸博幸 慶大大学院教授が、どうもラジオ番組で、
反TPP論を展開する中野剛志 京大助教授を批判すると同時に、TPP賛成論を展開していたようですが、
竹中平蔵 元総務相、
岸博幸 慶大教授にしても、

大田 弘子
  政策研究大学院大学大学院教授にしても、
小泉政権で”活躍した”人間がたは、
なぜ口をそろえて「TPP」賛成論を、
展開するのでしょうか?


Wikipedia「岸博幸」より
・・・大学卒業後の1986年(昭和61年)、通商産業省(当時)に入省。同期入省者には、後に国会議員となる鈴木寛藤末健三、現経済産業省国際経済課長の中尾泰久らがいた。1992年よりコロンビア大学経営大学院に留学し、MBA取得。
             (中略)
2001年(平成13年)の第1次小泉内閣発足を機に、経済財政政策担当大臣補佐官に就任(大臣は竹中平蔵)、2002年からは金融担当大臣補佐官兼務。2004年以降は竹中の政務担当秘書官に就任。側近として、情報通信政策や郵政民営化などに携わる。「B層」の言葉が生まれるきっかけとなった宣伝企画立案を行なった、広告会社・スリードの代表を竹中に引き合わせたのも岸である。こうした竹中との親密ぶりにより、岸は高杉良の経済小説において竹中・木村剛とともに、外資への売国的な政策を行う代表的人物としてたびたび登場する。


(つづく)

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<参考文献>
関岡英之『拒否できない日本』

ニュージーランド外交貿易省マーク・シンクレア主席交渉官(アメリカ大使館公電)

TPPは、
将来のアジア太平洋通商の統合に向けた基盤である。
もし、当初のTPP交渉8ヶ国で、
ゴールド・スタンダード(絶対基準)に合意できれば
日本、韓国その他の国々を仕留めることになるだろう
それが長期目標だ」

(On multilateral issues,
Sinclair emphasized
that New Zealand sees the TPP as a platform
for future trade integration in the the Asia Pasific .
If the eight initial members can reach the "gold standard" on the TPP,
it will "put the squeeze" on Japan, Korea and others ,which is when the "real payoff" will come
in the long term.)
<http://wikileaks.org/cable/2010/02/10WELLINGTON65.>
(機密情報暴露サイト”ウィキリークス”

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《米が露骨な対日圧力
輸入米食べよ、BSE牛緩和
通商代表部報告書》
(しんぶん赤旗 2012年4月4日(水))
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-04/2012040401_01_1.html

 米国通商代表部(USTR)は2日発表した2012年貿易障壁報告書など一連の年次報告で、農産物の市場開放など露骨な対日要求を繰り返しました。


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 米国から輸入されたミニマムアクセス米の「ごく一部しか日本の消費者のもとに届いていない」と非難し、日本市場での流通を増やすよう要求しました。

 日本政府が牛海綿状脳症(BSE)対策として実施している牛肉の輸入規制を緩和しようとしていることを「重要なステップ」と評価しつつ、「米国は引き続きあらゆる段階、機会に日本に圧力をかけていく」と宣言しました。

 政府調達に関しても報告書は「大型高速道路、公共建造物、鉄道、都市再開発、港湾」などに「米政府は特別の関心を払っている」として、公共事業の開放を求めました。

 「郵政改革」については「利害当事者」が日本政府に意見を表明する機会を要求。米国の保険会社が介入できる仕組みを求めました。米国が使用している食品添加物をさらに容認するよう主張しました。

  USTRはこれに先立ち3月に発表した「2012年通商政策の課題・2011年年次報告書」では、米議会や国内業界とともに「環太平洋連携協定(TPP) の高い基準を日本が満たす用意があるか、農業、サービス、工業品貿易の障壁に関する米国の特定の関心事項に日本が取り組む用意があるか査定を始めた」と表 明しています。米側が「貿易障壁報告書」などで列挙した対日要求を日本が受け入れるかどうかをTPPの事前協議の焦点にしていることは明らかです。


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「2012年貿易障壁報告書」
 米通商代表部(USTR)が2日発表した「2012年貿易障壁報告書」は、日本について要旨次のように述べています。

 ◎牛肉輸入

 日本は引き続き、牛肉と牛肉製品の輸入を月齢20カ月かそれ以下のものに制限することで、米国産の牛肉と牛肉製品の利用を制限している。日本の牛肉市場を再開放することは、重要な優先事項だ。

 ◎米輸入

 輸入米に対する日本の高度に規制され、不透明な輸入と流通の制度は、日本の消費者への意味ある接近を制限している。

 農林水産省食糧局が関税割り当ての枠内で定期的な通常のミニマムアクセス(最低輸入機会)買い入れを通じ、また同時的な購入・売却買い入れを通じて米輸入を管理している。

 ◎日本郵政

 日本が日本郵政の改革を検討するにあたり、米国政府はまた引き続き、透明性と情報開示の重要性を強調する。
決定がなされる前に利害関係者が政府高官や諮問機関に見解を表明する機会を含め、
郵政改革の過程が十分に透明であるよう保障するよう要求する。

 ◎政府調達

 米国政府は、米国企業が特別の関心を持っている公共事業協定で賄われる特定の大型事業に特別な注意を払っている。
大型高速道路事業、大型公共建造物、鉄道調達、都市開発、再開発事業など。