関岡英之『国家の存亡』(私物化されている米国政府からの対日要求) |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。

 これまで遠回りしながら、
”アメリカの政治が買収・私物化”されている模様と、
その舞台裏を見てきました。
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今回は、上記のような、これまでの記事との関連で、
関岡英之『国家の存亡』(PHP新書)で
紹介されている内容を拾い上げる形で、
関岡氏が世に広められた《イニシアティブ
=主導権(「年次改革要望書」など)》に
もういちど立ち寄ってみたいと思います。

 ”日米摩擦”という形で、アメリカが外交で、
日本に対して、
いつしか露骨に圧力をかけて来なくなった、
と思ったらば、
そうした露骨な「外圧」という形ではなく、
『年次改革要望書』などという、
米国による日本に対する内政干渉
いや日本改造を、
文書で要求するトロイの木馬により、
内側から徐々に、日本が、
アメリカ好みに改造されてきた事を、私たちは、
関岡氏による労作で、知ることが出来ます。

 1989年当時に、
宇野宗佑(そうすけ)首相とブッシュSr大統領との間で、
米国による日本の改造を「合法化」したような
日米構造協議」が、合意されました。

しかし、その「
日米構造協議」は、
2年間だけの時限的措置であった為に、
「日米構造協議」に続くものとして、
993年の、
宮沢喜一首相とクリントン大統領との日米首脳会議で、
年次企画要望書』が、
毎年日本に突きつけられてくることになる
日米経済包括協議」が合意されたのでした。

その「日米経済包括協議」の一環として
投資・企業間関係作業部会
(後の「
日米投資イニシアティブ」)が、
設置されています。(『国家の存亡』p.87)

1998年10月26日に、
アメリカのサンフランシスコで開催された
「投資・企業間関係作業部会」で、
アメリカ政府が日本側に対して、
対日直接投資環境の改善に関する米国政府の提言
という
文書を、提示したようです。

関岡氏によれば、
この「対日直接投資環境の改善に関する
米国政府の提言」は、
アメリカの投資家ファンドが、
日本企業を買収するのを
容易にするための措置
である、と言います。

興味深いのは、
日本企業の買収を容易にするために、
アメリカ側が要求してきたのは
M&A」、「土地
そして「
労働の分野に関する18項目であった、
と言うのです。


その「
労働」に関する項目では、



1)確定拠出型年金の早期導入
 :確定拠出型年金は、
従業員が自己負担で運用しなければならない為に、
アメリカの企業が日本の企業を買収しようとも
それにより、
年金給付負担を軽減できるばかりでなく、
1998年の提言書自体に書かれてあるとおり、
労働市場の流動性を高める
従業員のリストラを容易にする
」という狙い
あったのでした。
 というのは、確定拠出型年金は、
その運用の責任が、
従業者個人に掛かってくるために、
企業と従業員との関係を希薄にするから、
リストラを容易にできる
終身雇用制度を破壊する効果がある
から、
と言います。


2)有料職業紹介事業の規制撤廃
 :従業員を削減したい企業から依頼を受けて、
解雇される従業員の再就職を支援する事業を、
「有料職業紹介事業(アウトプレースメント)」
と言うようなのですが、
アメリカ政府は、
このアウトプレースメントの自由化を要求したのでした。
この自由化により
リストラが容易になる
からでした。


3)労働者派遣事業の自由化
 :1999年の改正派遣法により、
特定業務に限らず、
どの業務・仕事でも原則的には、
派遣が自由化されたのですが、
その最たるは、
小泉政権中の2004年の改正派遣法で、
派遣期間が1年から3年に延長され、
そして反対意見を押し切って、
製造業への労働者派遣も解禁となり、
雇用融解」に拍車がかかったのでした。
 小泉政権の政策グローバル化(と規制緩和
からくる「デフレ経済」のもと、
企業は、人件費を抑えるために
正社員採用を手控えると同時に
その人手を派遣社員契約社員採用
補いました
(⇒「労働ダンピング
および「フリーター資本主義」の成立と常態化)
(<関連記事>
フリーター資本主義」と「合成の誤謬」(社会保障のために本当に必要な改革)


4)労働基準法
 :労働基準法は、労働者が、
人としての生活を営むことができるように

労働者を保護する法律であるはずです。
そうした労働者を保護するための規制や、
書類の提出などの事務手続きは
企業にとって、煩(わずら)わしいコストとなり、
企業活動の効率を低下させるから、
うした労働基準法の規制などを変えろ
要求してきたのでした。


さらに2006年に、アメリカ政府が突きつけてきた
日米投資イニシアティブ報告書』には、
労働法制」という項目があり、その中では、
労働者派遣法の更(さら)なる緩和」、
確定拠出型年金の更なる規制緩和」、
解雇紛争への金銭的解決の導入」、
そして「ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入」が、
要求されたようです。(同書p.100)

「解雇紛争への金銭的解決の導入」というのは、
日本の企業は基本的に、滅多なことでは、
解雇することはできない事になっていて、
「不当解雇」という判決が、裁判で下されると、
解雇した従業員を
復職しなければならない事になっています。

その事から、裁判での決着ではなく、
金銭的な解決を制度的に導入する事で
正社員の解雇を容易にする
ことが、
それで可能になります。

ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入
というのは、日本の労働基準法では、
1日8時間、週40時間以上を越えて働かせてはいけない事に、法律の上では成っています。

ホワイトカラーエグゼンプション」というのは、
そうした「1日8時間、週40時間」という
労働時間基準の適用から労働者を外
(=適用除外する)ことを意味します。
ホワイトカラー・エグゼンプション」が導入されれば
さきの労働時間規制に守られずに、労働者は、
長時間労働と無制限な
「サービス残業=タダ働き」が「
」になり
労働者の長時間労働」や「タダ働きに対して

法律上ですら守れなくなることを意味します。

『日米投資イニシアティブ報告書』が
日本に突きつけられた半年後の2006年12月に、
安倍政権が、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を
審議会に諮問して導入させようとしましたが、
安倍政権の退陣により、導入されずに済んだのでした。

がしかし、
みんなの党が、
2011年3月4日に発表した
規制改革緊急推進プラン(素案)」では、

解雇規制の見直しについて早急に検討し、
国際標準にあった労働法制を再構築する。

(注)我が国の労働法制については、かねてより、
正社員(労働組合構成員)を過度に保護し
(いったん雇ったら原則解雇できない)、
労働の流動性や企業活動を妨げているとの指摘あり。
経済状況が悪化した際に
新規採用が過渡に抑制される
のも、
こうした労働法制が一因」という、
みんなの党提案が
米国からの『提言書』における主張と一致している
と関岡氏は指摘しています。(p.102)

また関岡氏は、
みんなの党が、
日本経済新聞でのアンケートで、
TPP交渉参加に賛成」している唯一の政党である事も、付け加えています。
(川田龍平議員は、TPPに反対)

過労死>や<過労自殺
(また<
サービス残業タダ働き)>)をもたらす
「長時間労働」(
を合法化するホワイトカラー・
エグゼンプショ
」)、
リストラ>や<非正規雇用の駆使>、
労働ダンピング労働(人間)の価格競争化
(≒「食べていけない」・「自立できない」
・「健康に生きられない」・「仕事で生活が犠牲になる」
etc.)>
の常態化に見られる「
雇用融解」を、
アメリカ政府側が
提案書』(=「イニシアティブ」)という形で内々に
日本政府に要求してき
そして
日本政府(とくに小泉政権)が、
その要求、いくつか実現させてきた事を、
私たちは、よくよく心に留めておく必要があります。


しかし、いままで見てきたように、
そうしたアメリカ政府からの要求は、
アメリカの業界の要望に沿ったものなど、
偏っている政策や制度づくりである事を、
いま改めて意識すべきであります。
というのも、アメリカ国内政治ですら、
業界や業界ロビーの利益や要望
また
CFRの意図に沿ったものであり、
アメリカ国民のほうを向いたものですら無い
(=アメリカ国民無視)からであります。

これまで見てきた事について、
整理してまとめる事のできる要諦
(ようてい)を、
ひとつ導き出すとすれば、
政府が打ち出す「政策」を、
その国の「国益になるかどうか」という視点で覩
ると、
その本質を見誤るおそれが、十分にある、
という事です。
また仮に、その政策が、その国の国益になる、
という意見に従うにしても、だからと言って、
その政策が大部分の国民に利するとは限らない
という視点を提示します。


話を戻せば、
上に見てきたように
私物化買収されてしまっているアメリカ政府・議会が、
日本に向けて要求してきた事項は、
日本人労働者商品化
より完全にしてくれる制度
(≒規制緩和の実現により
国際的な価格競争の荒波にさらす事
(しかも日本円は、国際的に高い通貨)で、
さらなる「雇用融解が実現するために、
日本の土地も、広い意味での財産も、
そして人も、外国企業や外国資本が
手軽に安く買い叩き
造作なくポイ捨て”することができる空間づくりを、
望んでいるように、私には映ります。


しかも、さらに今ひとつ拝察(はいさつ)すれば、
外国企業や外資が直接に
日本人を“買い叩き・ポイ捨てする”必要もなく
日本企業の株式を買い占めてしまえば
非人間的な経営批判の矢面に立たされるのは
国内の日本企業経営者であって
株主配当などの利益をえる外資外国企業では無い
という事です。

彼らハゲタカ外資からすれば、そういった格好だと、
痛くも痒(かゆ)くも無ければ
なおさら気軽になる訳です。

こうした「労働の商品化」や「株価至上主義経営化」は
市場原理主義経済政策をとった
レーガン政権(共和党)に始まり、
クリントン政権(民主党)でも深められたもので、
そうした政権のもとアメリカ国民じたいが
犠牲になってきたのでした。

こうした悪魔的な制度や政策が、
アメリカから日本に
イニシアティブを通じて内々的に
どんどん輸入されようとして来ています。

こういった非常に重要な視点の他方で、
しかし気がかりなのは、
そうした「イニシアティブ」が公式文書で、
アメリカ政府から日本側に突きつけられる以前から
アメリカ型の企業経営・経済モデル>を
実践できる、日本の経済環境づくりを

日本国内の
経団連など財界も求めてきた事です。


(次回につづく)



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