2002年から、TV朝日で、連続TVドラマとしてオンエアされいる刑事ドラマ「相棒」劇場版第三弾。TVシリーズとなる前、2000年6月が第一作となる土曜ワイド劇場での単発ドラマの時からTVを観ていますし、劇場版の 、スピンオフ作品(米沢守編伊丹刑事編 )も観ています。


東京から約300キロ離れた"鳳凰島"で、男性が馬に蹴られて死亡するという事故が発生します。警視庁特命係の杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)は、この島を巡るある疑いを確認するための調査を命じられます。その島は実業家(宅麻伸)が個人で所有する島で、元自衛隊員が集まり、民兵としての訓練に励んでいました。右京は男性が事故死したのではなく、殺されたのだと確信します。島には特命係、捜査一課トリオ、鑑識の米沢が集結しますが、何者かが彼らを襲撃し...。


"これまでとは違う相棒"が意識され作られた...という面もあるのでしょうけれど、少々、違和感がありました。ヘンに大風呂敷広げ過ぎというか、派手にし過ぎというか...。まぁ、劇場版だからということもあるのでしょうけれど、


舞台になっている島が"東京から300km"にしては、随分、亜熱帯っぽい感じです。右京たちが行くのだから"東京都"でなければならないワケで、"絶海の孤島"なら、小笠原方面でしょうか...。そちらの設定であれば、違和感は薄らいだのではないかと...。そもそも、"絶海の孤島"である必要があったのか...。奥多摩辺りの人里離れたどこかでも良かったような...。


民兵組織の人々も本気で国防を考えているにしては、訓練の状況についても、思想的な部分についても、甘いというか、ゲーム感覚というか、どこか、本気さが感じられません。この規模の"軍隊"が"国防"の戦いをしようとするなら、基本的には、ネットで各国の中枢機関にウイルスをばらまいて国の組織を混乱させるとかってことになるのではないかと...。この人数で、肉弾戦やっても勝ち目はないような...。もちろん、"だから、生物兵器"なのかもしれませんが、それならそれで、もっと、科学的な手段を講じるべきで、本作の民兵組織は、"身体機能を鍛える"部分だけに偏り過ぎているような...。


男性の死の現場も、"馬に蹴られて死んだ"って感じの状況ではなかったような...。普通に眠る時のような上を向いて真っ直ぐ寝そべっていましたよね...。


それに、男性を殺すのに、何も相葉を巻き込まなくたって良かったような...。あの島の環境なら、間違って落ちても不思議ではない崖やら川やら滝やら穴やらいっぱいありそうだし...。


相棒の面白さは、犯人側のどうしようもない切迫した事情や観る者が犯人側に心を寄せたくなるような人間的魅力があることで、犯罪を暴いていく右京の推理の冴えが際立っていくところにあるのではないかと思うのですが、本作の場合、そこが欠けているような...。


"大切なものを守る"ということについて、スッキリした回答を追い求めているようなラストでしたが、本当は、そんなものはないのかもしれません。自分や自分の大切なを守るということは、"攻撃されることを防ぐための攻撃"に繋がる可能性があります。これまでの歴史の中で、"防衛のために始められた戦争"がいかに多いことか。目指すべきは、矛盾のないスッキリした答えではなく、矛盾に耐えるための力を身に付けることなのかもしれません。甲斐亨くんの「出口はある」というあまりに単純明快に言い切る純朴さは、ちょっと、痛かったです。亨くんも、もう、そんなに青くても違和感ないほど若いワケではありませんから...。


とは言え、本作にも良かったところもあります。他にも、クスッと笑える部分もところどころに散りばめられ、ファンには面白く観られる部分も少なくなかったと思います。そして、何と言っても、神戸尊の登場!!!


相棒ファンがあまり期待せずに観に行けばそこそこ楽しめる作品、といっところでしょうか...。



公式サイト

http://www.aibou-movie.jp/