2000年の番組スタート以来、高視聴率を記録し続けている刑事ドラマ「相棒」。このシリーズの人気キャラクター、川原和久演じる捜査一課の伊丹憲一刑事を主人公とするスピンオフ映画。相棒はシリーズ化される前の2時間ドラマの最初の作品から観ています。


謎のデータがネット上にバラ撒かれます。そのデータが削除された直後、燃え残った数十枚の一万円札とともに男の死体が発見されます。その男は東京明和銀行本店システム部の中山雄吾。ネットに不正にアクセスし、機密情報を流していた疑いでサイバー犯罪対策課にマークされていた人物でした。殺人事件として事件を担当する警視庁捜査一課刑事、伊丹憲一と、不正アクセス容疑を追うサイバー犯罪対策課専門捜査官、岩月彬は、いがみ合いながら捜査を進めていきますが、目に見えない圧力に曝され、やがて捜査は行き詰っていきます。そんな中、特命係の杉下右京を始めとする面々も、事態に巻き込まれていきます。事件の裏に蠢くのは、政官財の巨大な権力構造、さらには金融封鎖計画"X DAY"の存在が浮上し...。


TVドラマをよく観ていての映画鑑賞だったから、という部分もあったのだとは思いますが、かなり楽しめました。TVシリーズを知らなくても、十分楽しめる内容になっていたのではないかと思います。テンポも良く、社会的な問題提起もあり、ユーモラスなやり取りも笑える場面もあり、作品全体のバランスも良かったと思います。


反発しあいながらも、ともに仕事をする中で理解しあい、認め合うようになるコンビ。互いに持っているものが違うから相手の嫌な部分が目に付くけれど、その分、協力し合えるようになれば、互いに足りないものを補い合い、大きな成果をあげることもできるわけです。


TVドラマの相棒は、どちらかというと、杉下の果たす役割が大きく、「杉下&部下」という感じが強いのですが、本作の伊丹&岩月は、対等の立場にいる感じがします。他にも、大河内監察官&角田課長という異色コンビも登場しますし、本家相棒の杉下&神戸も、ちょっとですが、姿を見せ、相棒ファンへのサービスも忘れていません。


日本の国債は、その多くが日本の銀行に買われています。日本の銀行が、政府の意向に背くような行動をとらないであろうことを考えると、何があっても国債を買い支えるでしょうし、本作のような事件が起きる可能性はあまりないのではないかと思います。けれど、"起こるはずのないことが起きる"のも歴史の常。"想定外"という言い訳が飛び交った大きな天災とそれに伴う事故の起こったのがほんの2年ばかり前のこと。本当に日本の国債が暴落する事態も絶対に起きないとは言い切れないでしょうし、そう言い切るのは、あまりに人類の歴史に対する認識が薄いと言うことになるでしょう。


ある意味、私たちの中にある弱さ、欠点を抉り出している部分もあって、痛さも感じますが、それは、私たちが直視し、真剣に受け止めなければならない部分でもあります。自分自身の弱さや愚かさに向き合えない人間が本当に強くなることなどできるワケないのですから。


ラストは、中途半端な感じもしないではありませんでしたが、下手に単純な希望を持たせない形になっていたところは良かったと思います。


エンドロールが終わった後に、デカデカと「この作品はフィクションです」と表示されます。この一文に、ドキッとさせられました。


クライマックスの逮捕劇。逃げる側も追う側も、かなり超人的な走りを見せます。伊丹刑事は、普段鍛えているから大丈夫と言えなくもないでしょうけれど、対して運動もしていない普通の中年サラリーマンにしか見えない犯人があれだけ頑張るというのは、いくら捕まりたくなくて必死になっているとはいえ、ちょっと無理があるような気がしました。それに、あの部分は、相棒らしさから離れてしまったような...。


この逃走劇がもうちょっとスマートに処理されているともっと良かった気がして、その部分が残念でした。伊丹の執念を表している場面ではあるのですが、それにしてもちょっと...でした。


面白かったです。お勧め。



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