それでも、日本人は「戦争」を選んだ

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日本近現代史を専門とする東京大学大学院人文社会系研究科、加藤陽子教授が栄光学園高等学校の生徒を相手に行った講義を基にまとめられた本。

 

近代日本の戦争の歴史について語られていますが、有数の進学校の生徒、しかも歴史研究部に所属する歴史についての高度の知識を持つ生徒を相手にしているだけあって、結構、高度な内容が語られています。少なくとも、基本的な日本と世界の近現代史の知識は持っておかないと置いてきぼりを食うかもしれません。年度末が近付き、学校の授業でも十分な時間が無くなって飛ばされがちな近現代史ですから、学校でも勉強していないし、興味も持っておらずあまり知識を持っていないという人は、ある程度予習をしてから読んだ方がいいかもしれません。

 

戦争を巡る庶民の熱狂が描かれ、戦争というものに人々がどう向き合ったのか、そこに何を求めていたのかが論じられています。

 

戦争の原因を探る場合、太平洋戦争に関連したことが語られることが多いですし、本作でももちろん言及されていますが、そこに日本を導いた満州事変と日中戦争、それ以前の第一次世界大戦、その前の日露戦争、日清戦争からの日本について述べられています。

 

戦争の原因を追究する時、ともすれば、"戦争をすると決めて、普通の国民を戦争に巻き込んだのは政府首脳や官僚たち"という論調に偏りがちです。確かに、戦争の被害を一番受け、戦争による利益を一番受けにくい一般国民が積極的に戦争を起こそうとするとはイメージしにくい部分もありますが、けれど、戦争を肯定する論調が一般の人々の中に広がりつつある現在の状況を考えても、戦争の責任を国家の上層部だけに押し付けて済ませられる問題ではないことは理解できます。

 

どのように戦争への道を歩んだのか、その原因に近付く一つの視点を提示している本として、一度は読んでおいた方が良いと思います。

 

私たちは、歴史を一つの視点から眺めがちですが、今の時代を見ても分かる通り、同じ時代を眺めても、ちょっと視点を変えるだけで、全く違った印象を受けることでしょう。一つの出来事、一つの状況を、色々な視点から見てみることの大切さを知ることができるという点でも貴重な一冊だと思います。

 

多少の予習の手間をかけなければならないとしても、読んでおく価値のある一冊です。

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シークレット・アイズ

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2009年制作のアルゼンチン映画「瞳の奥の秘密」のハリウッド版。アルゼンチンのオリジナル版も観ています。

 

2002年、ロサンゼルス。殺人事件の現場に駆け付けたFBI捜査官のレイは、若い女性の遺体を見て絶句します。被害者は、テロ対策合同捜査班でのパートナーで、親友でもある検察局捜査官ジェスの最愛の娘でした。レイはエリート検事補のクレアと共に捜査に乗り出し、一度は容疑者の男を捕まえますが、FBI組織内の事情により、上層部は男を釈放して自由も身にしてしまいます。レイは、FBIを辞めますが、13年後、クレアとジェスの元に姿を見せます。新たな手掛かりを見つけた彼は、捜査を再開し、容疑者を突きとめますが...。

 

オリジナルを分かりやすく纏め、現代風に、よりドラマチックに味付けした感じの作品でした。ただ、一方で、原作の湿度が高く息が詰まるような濃厚な空気感は薄れてしまった感じがします。

 

オリジナルは、革命とかクーデターとか、アルゼンチンの政治的、社会的背景を反映した物語となっていますが、アメリカに物語を移植しているので、その辺りは、かなりオリジナルと趣を異にしています。まぁ、それは仕方ないとして、事件から"現在"まで、オリジナルでは25年だったのを13年と約半分に縮めてしまったことで、"登場人物たちが背負った年月の重さ"も随分と軽く感じられてしまいました。13年でも長いことは長いですし、ハリウッドの恐らくアルゼンチンより時の流れが速い土地柄を反映しているのかもしれませんが...。

 

オリジナルと本作の味わいの違いは、国柄と時代を反映しているのかもしれません。

 

ジェスが、彼女の行為を秘密にしていたため(秘密にしないわけにもいかなかったでしょうけれど)、レイは職を変え、13年もの年月を犠牲にし、その例の行動が1人の警察官の殉職に繋がってしまいました。例え、相手が極悪人だとしても、それを罰すれば、、罰する側も下手すれば罰を受ける側以上に大きな重荷を抱えることになる。オリジナル同様、単純に、"正義が悪を懲らしめた。万歳!!"的な結末にならなかった点は良かったと思います。まぁ、ここも、オリジナルよりは、分かりやすい希望が感じられる纏め方になっていて、その分、軽くなってしまった感じもしますが、スッキリ感はありました。

 

やはり、ハリウッドテイストが濃くなっている分、原作を観た時に良かったと思えた部分が薄まっている感じはあり、全体にガッカリ感がありました。ハリウッドテイストにして、原作とは違った味わいながら面白い作品に仕上げるとしたら、事件の影響を絡めつつ、レイとクレアのラブロマンスに仕立てた方が良かったような気がします。

 

オリジナルを知らずに観ていたら、もっと面白く感じられたのかもしれませんが、オリジナルと比較してしまうと残念な感じがあります。

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デッドプール

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ウェイド・ウィルソンは、以前は特殊部隊で活躍する傭兵でしたが、引退し、気まぐれに悪者を痛めつけては金を稼いでいました。正義のヒーロー気取りの彼は恋人、ヴァネッサとの結婚も決まっていましたが、そんな時、末期ガンだと診断されます。ある組織にガンを根治できると聞いたウェイドは、彼らに同行して人体実験を受けますが...。

 

恋人と別れたくはないけれど、醜い姿では会えない。恋人と会うために元に戻りたい。ただただひたすらに、そのために突進していく...というオハナシ。基本的にはシンプルなストーリーで、随所にジョークやおふざけが散りばめられていますが、展開も王道なヒーロー物から大きくは外れていません。

 

どこか、もっと、尖がった部分があっても良かったのではないかと思います。もっと徹底的に"正義"の愚かさや滑稽さを抉り出すとか、ベタなラブロマンスに意義を唱えるとか、もうちょっとオーソドックスな枠組みを破壊する力を見せて欲しかったような...。まぁ、その部分でがっかりしたのは、単に期待し過ぎただけなのかもしれませんが...。

 

そして、自分を醜くくしたフランシスへの"復讐"と言っても、フランシスが、余命僅かで否が応でも間もなくヴァネッサと死別することになるはずだったウェイドの病気を治したのは紛れもない事実。病気のままだったら、ヴァネッサとの将来を考えることなどできなかったわけで、ヴァネッサとの時を取り戻せたのは、フランシスのお陰でもあるのです。確かに、ウェイドも大変だったことでしょうし、ヴァネッサを誘拐してしまったりということはあるのですが、ウェイドにとって、フランシスは恩人でもあったのです。ウェイドのフランシスへの仕打ちはやり過ぎなのではないかと...。

 

テンポが速く、頭空っぽで何も考えずに眺める分には、軽く楽しめる作品と言えるのかもしれません。

 

登場人物たちがかなりのスピードで話しています。字幕ではなかり端折っている部分があるのではないかと思います。それでも、結構、笑える部分があったのは、翻訳者のウデ、でしょうか。多分、相当にしっかりと米語を理解していないと分からない部分もある作品なのだと思います。そういう意味では、本作の本当の魅力を理解することはできなかったということなのかもしれません。

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1963年に放映が始まった国産初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」の音響効果を務めた音響デザイナー、大野松雄を追ったドキュメンタリー。1950年代に生まれたばかりの電子音楽の技術で未来都市の音を創造し、日本の音響界に多大な影響を与えた彼の功績を辿ります。

 

大野松雄を追ったドキュメンタリーであると同時に、日本の音響効果の歴史を紐解く作品となっています。"音響の仕事"について、きちんとした知識を持っていなかったので、改めて、音響の仕事の重要性、その技の凄さについて認識させられました。いろいろな種類の鳥の鳴き声が示される場面で、我が家の犬が本物の鳥が集まっていると思ったのか不思議そうにテレビのモニターに見入っていたのは面白かったです。

 

最初の1/3以上、大野自身は登場しません。まぁ、メジャーな作品の製作に参加しなくなって久しいので、彼の業績を描くうえで、本人の不在は全く問題ないということなのでしょう。

 

そして、その後、"現在の本人"が登場するのですが、最初の分部で語られたイメージとは違った人の良いお爺さん的な雰囲気に驚かされました。

 

活動する場を変えながらも、まだ聞いたことのない未知の音を追及するという姿勢は変わらず、80歳という年齢を感じさせないパワフルな姿自体が感動的ですらありました。

 

大野の説く"プロフェッショナルの条件"が面白かったです。ひとつは、いつでもアマチュアに戻れること、もうひとつは、どんなに手を抜いても相手をだまくらかせること。なかなかユニークな考え方ですが、成程と思わされる部分もあります。プロである以上、一生懸命かどうかではなく、結果で勝負すべき、さすがと思わせる結果を出すこと、顧客を満足させることこそプロの価値ということなのかもしれません。まぁ、この大野の説自体、"いい加減"なのかもしれませんが...。

エデンより彼方に

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1957年、コネティカット州、ハートフォード。キャシーは、地域社会において中心的な存在で、あちらこちらのパーティに出かけたり、自分でも主催して人々を招いたり、周囲との交流もそつなくこなし、黒人のメイドを使いながら、一流企業の重役である夫を支え、息子と娘の2人の子育てに励んでいました。ところが、ある日、残業で帰りが遅くなると電話してきたフランクに差し入れをするため、キャシーがオフィスを訪ねると、そこには、若い男性とキスをするフランクの姿が...。

 

意外に自由でも平等でもないアメリカの姿が描かれています。

 

アメリカを象徴するように思えるニューヨークに自由の女神が聳え立つアメリカ。自由の国で、そこから、次々と先進的な考え方や文化が生まれていく...というイメージを持ってしまったりもしますが、アメリカっていうのも、意外に自由じゃぁない...というより、アメリカにもいろいろあって、その広い国土の中にはとても保守的で窮屈で、変化を嫌う地域もあって、その社会の中での理想的なあり方に近付くことに重きを置く人たちもいて、そのあり方に疲弊し、そこから逃れたくなってしまう人たちもいるのだということなのでしょうか。

 

もちろん、時代の影響も大きいとは思います。

 

社会問題も絡んでいます。本作で描かれている1957年は、その2年前に"モントゴメリー・バス・ボイコット事件"が起き、マルティン・ルーサー・キング牧師が社会的に大きな影響を与えるような活動をするになり、人種差別を撤廃しようという動きが盛んになっていってはいたけれど、まだまだ差別が色濃く残っていた頃です。理想の家庭の主婦であるはずのキャシーが黒人男性と2人きりで過ごすなどあり得ないという感覚だったでしょう。もっとも、例え、相手が白人男性だったとしても、夫も子どももいる身のキャシーが、成人男性と2人きりというのは、問題ありだったことでしょうし、あまりに不用心に行動しているような印象は受けました。

 

ただ、キャシーは、元から人種差別に問題意識を持っていたというよりは、少なくとも最初は、"誰にでも優しい良妻賢母"として、レイモンドに接していたように見受けられます。それまで守ってきた理想像を貫いた延長として、地域社会から排除されてしまう色恋沙汰に行き着いてしまったのはある種、皮肉なのかもしれません。

 

キャシーを良妻として成立させていた夫に去られ、心の頼りにできた相手を失い、経済的な支えもない中、彼女はどう生きていくのか、その点については、何も示されません。かなり厳しくなりそうなことが予測される彼女のこの先について、何も示唆されることなく、突然、物語は終わりを迎えます。あまりに唐突な幕切れで、正直、戸惑ってしまいました。

 

この当時は、同性愛に厳しかった時代だったと思うのですが、フランクとその相手が、特に問題なく2人で生活しているようで、その点は、不思議な感じがしました。

 

今の視点から眺めれば、人種差別も同性愛の否定も、無知や愚かさ、偏見のなせる業と捉えられるワケですが、当時の社会においては、むしろそれが正義だったのだと思います。だとすれば、今の私たちが正義と信じることでも、実は、愚かさからたどり着いた結論だったりすることがあるのでしょう。アメリカが、大量破壊兵器を隠し持つとして"成敗"しようとしたイラクで何も発見できなかったことを考えても、今の時代の人間が、キャシーを貶めようとする人々を笑うことはできないのだと思います。

 

本作は、1957年をその当時に映し出したように描いています。それを今の時代の私たちが観ることで、当時の人々が気付かなかった社会の愚かさに気づかされます。その視点を少し未来に持っていったら、今の時代の私たちの愚かさに気付き、進む道を修正することができるのでしょうか。

 

映像が美しかったです。幸福な家庭、地域社会を象徴するようなパーティの場面など、それぞれの身に纏うドレスの色のバランスも綺麗で、典型的な"古き良き時代"がそこにあるような感じでした。

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Don 幸庵は"どんこうあん"と読むのだそうです。

 

初めてこのお店を知ったのは、とあるデパートの催事でのこと。ショーケースに並べられたサシがしっかりと入った美味しそうなローストビーフを見て、どうしても食べてみたくなって衝動買いしたのが出会いでした。

 

ローストビーフは、ブロックのサーロインとスライスされたサーロイン、黒毛和牛サーロインの3種類。折角だから(?)、黒毛和牛を買ってみました。

 

見た感じからして美味しそうだったのですが、食べてみて満足。これまでに食べたローストビーフの中でも、結構、美味しい部類の味だと思います。

 

やや、レア過ぎる感じなのですが、お店の方のお勧めに従って、食べる前にレンジで15秒程度チン。添えられていたソースをつけて口に入れると、ほどよい柔らかさのお肉の感触とじんわりと沁みだしてくる肉汁で口の中に幸せが拡がります。

 

若干、バラツキがあるようで、中には噛み切りにくい部分が含まれているスライス片もありましたが、基本的には、質の良い牛肉が使われている感じで、誤魔化しのない肉のおいしさが楽しめました。

 

お安くはありませんが、お勧めです。

 

元々は精肉店で、お肉料理中心のレストランとなったとのこと。静岡のお店とのことで、私の生活圏からはだいぶ遠く、レストランに食事をしに行くのは、少々、難しいと思うのですが、時々、よく行くデパートの催事に登場するので、その都度、いただいています。

 

お店のホームページからもローストビーフやハンバーグなどの製品を購入できます。

 

公式サイト

http://donkoan.com/

オーシャンズ13

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オーシャンズ1112に続く第三弾。

 

オーシャンの師であるルーベンは、ホテル王、バンクと手を組もうとして裏切りに遭います。そして、そのショックから心筋梗塞を起こし、死の淵を彷徨っていました。オーシャンは、強盗の途中で盗むはずの金も放り投げ、ルーベンの元に駆けつけます。オーシャンは、仲間たちと、最強のセキュリティを誇るオープン予定のバンクのカジノを潰すことにし...。
 

これまでは、利益を得るためだったり、身の安全のためだったり、自分のための犯罪でしたが、今回は、ルーベンの敵討ち。そして、その過程で、自分たち以外の人々に利益がもたらされるよう考慮されています。彼らの作戦の中で"被害者"となってしまう人物にも高額な報酬が用意されています。自分たちのことだけでなく、仲間を想い、そこに居合わせる人々にも配慮し、迷惑をかけた相手にはそれ以上の埋め合わせをし...。

 

ベネディクトが狙ったダイヤの処理についても、なかなか粋な方法で良かったです。ベネディクトの思惑通りにはさせず、けれど、彼を裏切って後で制裁を加えられるような形でもなく、巧い落としどころだったと思います。

 

ただ、盗みのプロットなど、設定やストーリーには甘さが感じられます。肝心の盗みの手段も、知恵や熟練の技を駆使するというよりは、とにかくお金をかけたという感じ。まぁ、知恵を使う場面もありますが、それは、本筋の盗みよりも、ホテルへの嫌がらせなどに使われている感じで、"大変な想いをして数々の危機を乗り越えて目的を達した"という盛り上がりや爽快感には欠けてしまっています。

 

周囲に気を配る余裕というかゆとりというか、その辺りが、11や12との違いかもしれません。そして、その余裕が、コミカルな雰囲気と合っていると思います。やはり、大物たちが楽しそうに演じているのは、観ていて楽しいものです。

 

このシリーズの中で順位をつけるとすれば、一位は11で本作が二位といったところでしょうか。レンタルのDVDなどで気軽に楽しむ分には悪くないと思います。

サムライ

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4,104円
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殺し屋ジェフ・コステロは、依頼を受けてナイト・クラブのオーナーを殺害しますが、その日に出演していた女性のピアニスト、ヴァレリーに顔を見られてしまいます。ジェフも警察に呼び出され、クラブの従業員たちを前に面通しをされますが、なぜかジェフをしっかり見ていたはずのヴァレリーは彼ではなかったと証言をします。ジェフは放免されますが、捜査責任者の警視はジェフへの疑いを消し去ることが出来ず、彼に尾行をつけ...。

 

ジェフ・コステロを演じたアラン・ドロンが実に格好良かったです。

 

プロの殺し屋なのですが、その殺しの手段は、あまりにシンプルというか、芸がないというか、真正面から拳銃で銃声を響かせつつズドン。殺人行為を隠そうとか、捕まらないようにしようとか、余計なことは一切考慮していません。で、ともすれば、間が抜けて見えてしまいそうな殺し屋をカッコよくプロフェッショナルに見せてしまうのは、アラン・ドロンの存在故でしょう。

 

セリフが最小限に抑えられ、感情の揺らぎも、動作も控えめで、とても静かで緊張感のある映像となっています。この辺りは、"侍"を彷彿とさせるものを感じさせてくれます。

 

そしてラストの展開も印象的です。裏切り者に対してはきっちり制裁を加え、自身のミスに対しても落とし前をつけ、守るべき相手を守り切る。このコステロの美学は、"サムライ"というタイトルに通じるものと言えるでしょう。

 

とは言え、人を殺して報酬を得るのですから、"侍"というよりは、"人斬り"と言うべきではないかと...。侍は、必ずしも相手を殺すことを第一にしているわけではないと思うのですが...。本物の侍にとって、人殺しを生業にすることは真っ当な生き方とは言えないと思うのですが...。普通のフランスの人が"サムライ"に対して抱いているイメージがこれということなのでしょうか...。

 

何はともあれ、アラン・ドロンの魅力を堪能できる作品です。アラン・ドロンの佇まいに魂を奪われる107分でした。

オーシャンズ12

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「オーシャンズ11」の続編。前作については、ここに感想を書いています。

 

ラスベガスのホテル王ベネディクトから1億5000万ドル強奪し、テスを取り戻したオーシャン。その3年後、ベネディクトから、盗んだ1億5000万ドルに3年分の利息をつけた1億9000万ドルを2週間以内に返さないと命はないと脅されます。かつての仲間、ラスティは、車を爆破され、命を狙われており、本気だと悟ったオーシャンは、昔の仲間を集めます。3年前の金など全員で山分けして、既に全部使ってしまった者も。ベネディクトの要求を飲まざるを得ないと観念しますが、そのためにはどこかから大金を奪うしかなく、新たな強盗計画を立て...。

 

どうしても、前作と比べてしまいますが、少なくとも、ストーリーの面白さについては、だいぶ落ちる感じがしました。

 

豪華キャストはさらに豪華になっているのですが、それぞれの見せ場が十分にあるワケではありません。まぁ、ヘンに大物に気を遣ってグダグダな作品になるよりはマシと言えるのでしょうけれど、折角の豪華さを活かしきれていないのは勿体ない感じがしてなりません。

 

何も考えずに楽屋落ち的なお遊びを楽しむ分には悪くないのでしょうけれど、これだけの面々を揃えておふざけだけで済ましてしまうのはどうかと...。おふざけを楽しめる作品に仕上げるためには、本来、生真面目な支えが必要なのだと思いますが、そこが弱いのではないかと思います。全体に緩い感じで、今一つ、物語の世界に浸れませんでした。

 

カラクリが全て"実はこうだったのよ"的なネタ晴らしには、釈然としないものがありました。まぁ、オーシャンがルマークに「(ナイト・フォックスは挑戦をした時点から監視を始めるから)凝った演技をしろよ」と意味深な忠告をする場面を思い出せば、成程とは思えるのですが、それにしても後出し感たっぷりで...。そして、本作でオーシャンたちの敵役であるナイト・フォックスの動機があまりに子どもっぽいのも気になります。それに、オーシャンズvsナイトフォックスの勝負も、オーシャンズの泥棒としての力量がナイト・フォックスを上回ったことより、オーシャンが大物からの力添えを得られたことが勝敗を左右している感じで、その点も、消化不良感の原因となっていると思います。

 

テスが自分にそっくりなジュリア・ロバーツに扮する場面とか、まぁ、ありがちなギャグではありますが、それでも、出演陣が皆、本心から楽しそうなので、それなりに愉快な気持ちで観ることができる作品だということは間違いないと思います。

 

レンタルで気軽な気持ちで観る分には悪くない作品だと思います。

オーシャンズ11

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"オーシャンと11人の仲間"のリメイク作品。オリジナルは以前観ていて、感想をここに書いています。

 

4年間服役していた、ダニー・オーシャンは、仮釈放の日から次の犯罪に向けて行動を開始します。狙いは、ベガスの3大カジノ、ベラージオ、ミラージュ、MGMグランドから入金される地下金庫。3大カジノのオーナーは、ホテル王ベネディクトで、彼の現在の恋人テスは、泥棒稼業から足を洗う気のないオーシャンに愛想をつかした彼の元妻でした。オーシャンは、古くからの親友でイカサマ師のラスティ、スリの名人のライナス、爆薬の達人バシャー、元カジノオーナーのルーベン、車両のプロのバーシルとダークの兄弟、カードディーラーのフランク、配線のプロのピングストン、アクロバットの達人イエンら11人の仲間を集め...。

 

それなりに爽快感もあり、面白く観ることができました。気軽に楽しめる良質な娯楽作品だとは思うのですが...。

 

オーシャンたちの計画も綿密に練られ、盗みの過程もしっかりとしているのですが、出演陣の豪華さも相俟って成功するに決まっている感が半端なく、ハラハラドキドキは薄くなってしまった感じがします。計画の進行を妨げるような事態が起こったり、ちょっとした狂いが生じたりはするのですが、それも、都合の良い偶然に救われたりして、あまり危うさは感じられません。

 

オーシャンを演じたジョージ・クルーニー、ラスティを演じたブラット・ピット、ライナスを演じたマット・デイモン、バシャーを演じたドン・チードル、バーシルを演じたケイシー・アフレック、敵役のベネディクトを演じたアンディ・ガルシア、テスを演じたジュリア・ロバーツ...。出演陣が、オーシャンたちが盗み出した金額にも負けず劣らず豪華なのですが、それでも、無理して各々に見せ場を作るようなヘンな"配慮"はせず、ストーリー重視で描かれていた点も良かったと思います。

 

全然悪い奴ではない(敵対する相手には容赦ないようですが、まぁ、それは、彼らの世界においてはそういうものではないかと...)ベネディクトが、大きな被害に遭ってしまうのはかわいそうな気もします。テスの件についても、ベネディクトが略奪したわけではないのですし...。

 

最後、テスがベネディクトに愛想をつかすのは分かる気がするのですが、だからと言って、即、オーシャンとよりを戻すというのもヘンな気がします。あの美貌なら、他の選択肢も山ほどあるはず。やはり映画である以上、ヒロインが必要...ということなのかもしれませんが、テスの存在なしで物語を構成しても良かったのではないかと...。

 

それでも、お洒落な雰囲気が漂い、映像も音楽もカッコよくて、思いの外、作品の世界を楽しむことができました。あれこれ背景などを考えず、頭を空っぽにして物語の世界に浸れば、結構、楽しめる作品だと思います。

 

肩肘の張らない娯楽の世界に浸りたい時にお勧めです。