ザ・サークル

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デイブ・エガーズの同名小説を映画化した作品。原作は未読です。

 

世界 No.1 のシェアを誇る巨大SNS企業"サークル"。憧れの企業に採用された新人のメイは、ある事件を きっかけに、カリスマ経営者のベイリーの目に留まり、サークルの開発した超小型カメラによる新サービス"シーチェン ジ"のモデルケースに大抜擢されます。自らの 24 時間をカメラの前に公開したメイは、瞬く間に 1000 万人超のフォロワーを得てアイドル的な存在になりますが...。

 

今の世の中、ネット上に全く個人情報を上げないというのはかなりの便利さを手放すことになるでしょう。時間の制約なく、しかも、多くの場合安くできる買い物をするには、クレジットカードの情報などを入力する必要があるワケで、商品を送り届けてもらうためには、住所などの入力をすることになります。そこには、個人情報が悪用される危険性が付きまとうわけで、本気で誰かに狙われれば、自分のクレジットカード情報で身に覚えのない買い物をされてしまったりといったことも起こりうるワケです。けれど、墜落するかもしれないから飛行機に乗らないとか、事故に巻き込まれるかもしれないから道路を歩かないとか言っていたら生活できないように、ネットに個人情報を全く載せずに生活するというのも不便なものです。

 

けれど、プライベートを全てネットに公開するというのはまた別の話。メイが、比較的、アッサリと"シーチェンジ"のモデルケースになることを受け入れることにも違和感がありました。入社当初から、そこはかとない違和感を抱いているように見受けられたメイが、意外に企業の方針に心酔しているように見受けられる場面もあったり、その辺り、メイが本当のところ何を考えているのか分からないモヤモヤ感が残ります。

 

大量のフォロワーを得たことを特別に喜んでいるようにも、両親や友人が自身から離れていくことを受け入れているようにも思われませんでしたし、そんな状況がどんどん深刻化していくことをどう受け止めているのかについても描き方も中途半端で消化不良な感じが残ります。

 

ラストにしても、結局、サークル社や幹部たちとメイの関係がどうなったのか、ネット社会にどのような影響があったのか、その辺りは放置です。そこも本作の消化不良感を強めてしまっている感じがしました。2台のドローンを引き連れて微笑んでいるメイの様子を見ると、ネットに全てを公開することを是とし、メイがサークル社で高い地位を確保していることが想像されるのですが、メイが何を考えどう生きて行こうとしているのかということは、やはり、本作の一番のキモだったと思いますし、そこのことろはもっと丁寧に描いて欲しかったです。

 

映画作品としては色々と不満も感じざるを得ませんでしたが、相互監視社会がどう作られ、そこで何が起こるのかということを考えさせられるきっかけにはなる作品だと思います。全く関係ない人間の個人情報に簡単にアクセス出来るようになり、思いがけないところで自分の個人情報が覗かれたり悪用されたりする可能性が高まっている今の社会で生活する私たちが考えなければならないことが描かれている作品であり、本作の問題提起は私たちにとって大事なものであることは確かだと思います。そうした意味で観ておくべき作品だと思います。

 

 

1976年、オランダのアムステルダム。記者のハンス・クノープは、大富豪で美術品収集家でもあるピーター・メンテンがかつてナチスドイツに加担し、ユダヤ人を虐殺していたという内容の電話を受けます。最初は半信半疑だったハンスですが、当時の証人たちを探し出し、取材を進めるうちに確信を抱くようになり、メンテンの罪を暴くことを決意します。様々な妨害を受けながらもメンテンを追い詰めていき...。

 

実話ベースのお話で、歴史の中に埋もれかけていた真実を突きとめようとする執念、妨害にも負けない粘り強さが印象的です。ただ、それだけなら、隠されていたナチスやナチスの協力者の罪が明らかにされていくことを描いた様々な作品と変わり映えのしないものになってしまったかもしれません。

 

けれど、本作では、メンテンにユダヤ人とも友好的な関係を持っていた時期もあったことが描かれ、根っからの冷酷な人間ではないことも伝えられます。メンテンが、本来、人を惹きつける魅力を持った人物でした。認知症の症状が重くなった夫を愛し続け、支え続ける妻の存在。妻が非常に献身的な人物だということもあるのかもしれませんが、やはり、メンテン自身の中に魅力的な部分があることも確かなのだと思います。そして、彼にも、家族やユダヤ人の友人と温かい交流を持っていた時期があったのです。メンテンも、根っからの極悪人ではないのでしょう。特別に異常で残酷な人間が虐殺を行ったという以上に、ごく普通に周囲と温かな関係を築くことができる人物が状況によって虐殺者になってしまうことに恐ろしさを感じます。

 

メンテンを法廷に引っ張り出し、隠され埋もれていきそうになっていた歴史を掘り起こし、彼の罪を裁き、罰を与えることもできました。それはそれで有意義なことだと思います。けれど、それだけで、何かを本当に解決したと言えるのでしょうか。そんな疑問が湧き上がってくるラストでした。

 

何故、歴史の中でこのような残酷な出来事が繰り返されていくのか。今、この瞬間にも世界のあちらこちらで起こっている悲惨な状況を何故止めることができないのか。そこに少しでも迫れれば、私たちは歴史から学ぶという技能を獲得することになるのでしょう。

 

メンテンの罪や歴史的な事実以外の部分についても色々と考えさせられました。

 

一度は観ておきたい作品だと思います。

バターコーヒーキャンディ

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先日、バターコーヒーについて書きましたが、今度は、バターコーヒーキャンディを発見。バターコーヒーダイエット中な私としては試してみねばと思い、即購入。3月20日から販売されているのだということでしたが、4月中旬に入ってやっとその存在に気付きました。

 

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バターコーヒー同様、グラスフェッドバター、MTCオイルが使用されているとのことで、確かにバターコーヒーな味でした。

 

従来のコーヒー飴に比べたら、かなり甘さ控えめだし、ベタベタした甘さはありませんでしたが、それでも、"スッキリ甘くない"という宣伝文句の割には甘さを感じました。まぁ、"糖質ゼロ"を謳っているバターコーヒーとは違い、このキャンディは"糖質50%"なのですから、そういうことなのでしょう。その甘さもあってか、腹持ちのよい感じはあり、ちょっと小腹がすいた時に食べたいという気持ちを落ち着かせる効果はあるのだろうと思います。

 

効能的にはバターコーヒーにはかなわないと思いますが、バターコーヒーよりは手軽に食せるものなわけですし、食べる時間でないのにどうしても食べ物に手が伸びてしまいそうな時の救いにはなるかもしれません。

 

カロリーは1個4.9kcal。甘いキャンディーだと1個15~20kcal、のど飴やノンシュガータイプで1個8~15kcalということですから、飴としてはかなり控えめです。

 

これからも、バターコーヒーの関連商品が登場する予定なのだとか。完全に取り込まれている悔しさも感じますが、暫くは、追っかけて観たいと思います。

 

 

FamilyMartの商品紹介ページ

http://www.family.co.jp/goods/snack/4730576.html

ビニー/信じる男

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アメリカ、ロードアイランド州プロビデンス。世界ミドル級のタイトルを獲得したビニー・パジェンサは、交通事故で首を骨折し瀕死の重傷を負います。医師からも再起不能と宣告され、彼から離れていく人も多い中、ビニー自身は再起を信じ、トレーナーのケビンとともに王座奪還を目指し...。

 

大怪我からの奇跡の復活を遂げた実在のプロボクサーの物語です。

 

怪我に至るまでの過程でのビニーはかなり自堕落な生活をしていて、彼の様子を見ても、正直、真摯にボクシングと人生に向き合っているとも思われず、交通事故での怪我も多少なりとも自業自得な部分もあったりして、なかなか心を寄せる気持ちにはなれませんでした。

 

けれど、怪我から復帰を目指す過程での迷いのなさは、それだけで感動的ですらあります。復活を成し遂げるのはあまりに酷い怪我。その状態から歩けるようになるだけでもかなりの努力が必要だっただろうと思いますが、そんなレベルを遥かに超える段階まで到達した背景にあった苦悩と鍛錬を考えると気が遠くなりそうです。

 

ただ、本作を観ている限りでは、あまりにアッサリと問題が解決された印象があり、拍子抜けというか、苦しみもがいて大きな壁を乗り越えていく姿を見られることへの膨らんだ期待をはぐらかされるようで、気持ちの持って行き場に困る感じがしました。

 

周知の事実を取り上げていることもあって、敢えて感動を盛り立てようとはせず、安っぽい感動を排除してリアリティを重視した結果なのかもしれません。実在の、それも、存命中の人物を取り上げるとなると、表現などにある種の抑制がかかりがちということもあるのかもしれません。

 

ボクシングの試合のシーンなど、確かにリアリティが感じられましたし、迫力もありましたが、物語としての盛り上がりとか、一つの作品としての面白さという点では、全体にいまいち感がありました。

 

悪くはないと思います。けれど、"奇跡の復活を描いた実話を基にした物語"という部分に、勝手に期待を強めてしまったことが良くなかったのかもしれません。もう少し面白くなり得た素材なだけに残念です。

裁き

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ある下水道清掃人の死体が、ムンバイのマンホールの中で発見され、年老いた民謡歌手カンブレが逮捕されます。彼の扇動的な歌が、下水清掃人を自殺へと駆り立てたという理由で逮捕の容疑は自殺ほう助罪でした。不条理にも被告人となった彼の裁判が下級裁判所で始まります。理論的で人権を尊重する若手弁護士、100年以上前の法律を持ち出して刑の確定を急ぐ検察官、何とか公正に事を運ぼうとする裁判官、そして偽証をする目撃者や無関心な被害者の未亡人といった証人たち...。

 

一つの事件に関する裁判の流れを追いながら、インドの社会の様々な面を浮かび上がらせています。

 

取り立てて物語に起伏を持たせようともせず、ドラマチックな盛り上がりをさせようともせず、追い詰められる者の悲劇を強調するでもなく、淡々と裁判の様子とそこに係る人々の姿が描かれていきます。静かな描写が続きますが、そこに、厳然と存在するカースト制度や種族間の差別の問題、貧富の差、インドが抱える様々な問題点が現れてきていて、観る者を退屈させません。

 

淡々とした静かな描写の背景に透けて見える冷静な視線が、様々な理不尽や不条理に取り囲まれながらも、それぞれの日常を生きている人々の姿が浮かび上がらせていきます。そこに人間のリアルが感じられ、一種の諦観とともに、生きる者たちの逞しさが感じられ、絶望的な状況の中に一筋の光を感じさせてくれます。

 

カンブレを目の敵にし、執拗に追い詰めていく検察官。けれど、彼女は、特別に権力をかさに着たような振る舞いをする尊大な人間でもなく、弱い立場にいる者を見下すような傲慢な人間でもなく、仕事を終えれば学校に息子を迎えに行き、家族のために食事の用意をする普通の日々を生きる普通の女性。一方の若手"人権派弁護士"は、結構、ブルジョアな生活を楽しんでいる様子だったりします。

 

普通の働く女性な検察官にほとんどでっち上げのような共謀罪で訴えられるカンブレ。この理不尽な状況を私たちは笑うことができるのか。今の私たちが置かれている状況を考えると無関係な世界の出来事と流せないところに恐ろしさが感じられます。

 

そして、本作では、この裁判の結果に大きく運命を左右されるカンブレがあまり多くは登場しません。裁かれている当人の姿があまり見られない裁判劇。本人そっちのけで裁判が進んでいってしまうところにこそ、本当の怖さがあるのかもしれません。

 

エンターテイメント作品としての面白さに欠けているきらいはありますが、それでも、ともすれば忘れられがちではあるけれど、本当はしっかりと目を向けなければならない部分に光を当てた作品として評価されるべき作品だと思います。色々な意味で、裁判激の定石を破っている点でも印象的な作品です。一度は観ておきたい作品だと思います。

プラネタリウム

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1930年代。アメリカ人心霊術師のローラとケイトのバロウズ姉妹は、憧れのパリへと向かいます。美しく聡明な姉のローラはショーを仕切る野心家で、妹のケイトは好奇心はあるものの自分の世界に閉じこもりがちな純粋な少女。ショーでは死者を呼び寄せる降霊術を披露し、話題の美人姉妹として活躍し稼いでいました。そんな2人の才能に魅せられた映画プロデユーサーのコルベンは、世界初の心霊映画を撮影しようと姉妹と契約し...。

 

ローラを演じたナタリー・ポートマン、ケイトを演じたリリー=ローズ・デップ、それぞれに綺麗で、衣装も美しく豪華でしたし、1930年代の華やかなパリの様子が印象的で、まさに眼福な作品でした。

 

ただ、残念ながら美術と衣装とバロウズ姉妹の美しさ以外に見所はありません。まぁ、それだけでも印象にの頃部分があるのならヨシとすべきなのかもしれませんが...。

 

バロウズ姉妹の降霊術についても、超心理学の研究者を持ち出している割には彼女たちの降霊術が何だったのかの検証に熱意を注いでいるようにも思えませんし、姉妹の置かれた環境の変化に伴う2人の関係性の変化やケイトのローラからの自立といった姉妹のドラマとしても深みが感じられませんし、コルベンを挟んだ姉妹の関係に絡んだ三角関係の物語としても薄味だし、映画作りへの情熱を中心にしたコルベンの物語としても浅かったですし、全体に中途半端感が否めませんでした。

 

「華やかなりしパリ」、「降霊術を行う美人姉妹」、「映画プロデューサー」の3つを提示されて作った三題噺的な映画作品といったところでしょうか。

 

それでも、ナタリー・ポートマンとリリー=ローズ・デップはその美貌だけでなく、演技力という面でも存在感を出していたと思いますが...。

 

お守り その1[肉球]

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お家の人たちを守ってあげているアタクチを守ってくれるのが、お守りなんですって。

お母しゃんが御朱印とかを集めるのが大好きで、あっちこっちの神社やお寺に行って、お守りがあると買ってくるの。

 

それで、いままでにお母しゃんが買ってきたお守りのご紹介。

 

今日は、肉球型編。

 

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赤いのと青いのがあって、アタクチ用にお母しゃんが買ってきたのは赤。女の子だからってことね。

お母しゃんは、これまでに愛宕神社(東京都港区)、桜神宮(東京都世田谷区)、磐井神社(東京都品川区)、赤羽八幡神社(東京都北区)、等々力不動尊(東京都世田谷区)、鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)、八雲神社(神奈川県鎌倉市)でも見たことがあるんですって。割とよくある定番のデザインみたい。

 

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こっちは、ラインストーンがキラキラしているの。アタクチ用はピンクだけど、男の子用には水色のラインストーンが入っているの。キラキラして可愛いでしょ。これは、群馬県大沼の赤城神社のもの。

 

そして、アタクチの肉球...

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黒くなっちゃっているのは、それだけ一生懸命お散歩しているってことね。

質屋

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ソル・ナザーマンは、ニューヨークの貧民街で質屋を経営しています。故郷のポーランドでは大学教授でしたが、家族はナチの強制収容所に入れられ、苦しみの中で妻と子どもは死んでいきました。妻の妹家族とともに暮らしていますが、彼の心は冷たく冷え切り、孤独と収容所生活の忌まわしい記憶にさいなまれていました。死んだようなソルの店に、毎朝活気をもたらすのは助手のヘスースでした。プエルトリコ生まれの元気な若者の彼はソルを師と仰ぎ、いつか自分の店を持ちたいと願っていました。ある夜、スラム街のボスの使いから大金が持ち込まれます。実はソルの店はボスの資金の隠れ蓑にもなっていて...。

 

世話になっている義妹家族にも、彼のことを心の底から慕っているヘスースにも、彼を心配して気遣ってくれる女性にも、頑なに心を閉ざし、殻に閉じこもるナザーマン。質屋を訪れる客への対応にも温かさは全く感じられません。まぁ、それが商売だと言えばそうですし、顧客たちが結局、ナザーマンの提示した金額を受け入れるのも、他の店に持ち込んだところで状況が変わるワケではないことを分かっているからなのでしょう。それでも、一切表情を動かさずナザーマンの様子には、彼の心の温度の低さが現れているようです。

 

ナザーマンの過去の酷い体験がフラッシュバックする映像が織り込まれ、観る者は彼が心に傷を負った背景を知ることになるのですが、それでもなおナザーマンに心を寄せることが難しいほどの偏屈振りです。

 

そして、そんなナザーマンの心にでさえ、溶かされほぐされる時がやってきます。そんな奇跡とも言える瞬間も苦く後味の悪い形でやってきます。予定調和的な心地よさを一切排したラストは、トラウマになりかねない重い結末になっています。

 

どんな苦しみにあったとしても、だからと言って周囲に心を閉ざしてしまうのは、周囲をも自身をも傷つける刃を振り回すのと同じなのかもしれません。ナザーマンの周囲には温かさもあり、彼にはいくつかのチャンスが与えられていました。彼の不幸は、彼の責任ではありませんが、折角のチャンスに背を向け全ての機会を潰し周囲の行為を無にしたことは彼の罪なのかもしれません。

 

ヘスースは"Jesus(イエス)"の意味だそうです。イエスを裏切ったユダも引き返す機会が与えらえていたのにそちらに進むことはありませんでした。イエスを裏切ることになったユダと、意図したことではないながらもヘスースの命が奪われる直接のきっかけを作ってしまったナザーマンが重ねられているのかもしれません。

 

ナザーマンを演じたロッド・スタイガーの演技が光っています。というより、彼の演技あってこその作品だと思います。永久凍土のような冷え切った心情と、それが変化していく過程が見事に表現されていて、とても印象的でした。

 

決して、気持ちよく観ることができる作品ではありませんが、それでも、一度は観ておきたい作品だと思います。

パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち

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パリ・オペラ座のバレエ団で1980年代に芸術監督を務めた伝説のダンサー、ルドルフ・ヌレエフは、現代作品を採用し若手の育成にも熱心でした。彼の教えを受けた元エトワール、アニエス・ルテステュが後輩たちを指導する姿、それを見つめるオペラ座バレエ学校の生徒たちを追いながら、伝統が受け継がれていく様子を映し出します。

 

レッスンやリハーサルの映像が中心になっています。華やかで美しい舞台が作られていく過程が描写され、元エトワールが後輩を指導する風景が描かれ、伝統が受け継がれていく様子が伝えられていく...、という物語になっているのですが、全体としては中途半端感が否めません。

 

舞台を見ても聞こえてこないようなトゥーシューズが床に擦れる音が伝わってきたり、バレエダンサーの鍛え上げられた無駄のない身体や細部まで気を配られた所作の美しさを味わえる作品でした。

 

けれど、レッスンの何がどう舞台の質を上げることに繋がるのか、今一つ伝わってきませんし、アニエスの指導者としての成長という面でも彼の心情の変化や指導技術の向上という部分が今一つ見えてきませんし、バレエ団の現状という部分では現在の芸術監督が登場しませんし、舞台を作り上げていく過程という視点から見ても完成された舞台の描写が不十分でピンときません。

 

一つ一つの映像は良かったと思うのですが、全体の構成とか演出の問題でしょうか。ところどころ惹かれる映像があるのですが、全体として何を伝えたいのかよく分からないし、観ていても散漫な印象が拭えません。折角の映像が生かし切れておらず残念です。

 

パリ・オペラ座の伝統の継承を伝えるというより、バレエファンに向けた映像集といったところでしょうか。パリ・オペラ座バレエ団を扱ったドキュメンタリーを観るのであれば、本作よりも「パリ・オペラ座のすべて」の方がずっとお勧めです。

ローサは密告された

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マニラのスラム街で、小さな雑貨屋を営みながら、4人の子どもたちを育てるローサ夫婦。ローサは地元の顔役でしたが、家計のために少量の麻薬を扱っていたことが原因で、夫とともに警官たちに連行されてしまいます。2人は、警察官たちに賄賂を要求され、支払わないと終身刑だと脅されます。けれど、貧しいローサの家族にとって、要求された金額はあまりに大金。けれど、子どもたちは両親を解放してもらうため必死にお金を掻き集め...。

 

汚職まみれの警察官と彼らに不当に扱われるローサたち...という単純な構図ではありません。警察官たちの横暴にローサたちが抗議することもほとんどないのは、そうしたことがあまりに日常茶飯事で抵抗することがあまりに無駄だとローサたちも身に沁みて知っているからなのでしょう。

 

金策に走る子どもたちにローサが捕まったことについて"自業自得"だと言い放つ人もいましたが、それも一理ありなローサです。決して、単なる一方的に虐げられた可哀想な被害者ではありません。あまりに当然のように堂々とローサたちの賄賂を要求する警察官も酷いものですが、ローサもローサ。それ程、同情できる状況ではありません。

 

けれど、ローサの周囲の人々も、そんなしょうもない彼女を非難しながらも、手元不如意な中からなけなしのお金を出したりしています。自業自得な彼女を見捨てない寛容さ。そんなところに、貧しい生活を強いられている人々の豊かさが感じられました。

 

東日本大震災の時にも、貧しい国でも、スラム街でも募金が行われ、寄付した人々にとっては相当に大金と言える支援金が届けられました。厳しい家計の中からでも、困っている誰かのためにできることをする。厳しい現実に対応するためのシビアな面を持ちながらも、原因はどうあれ本当に困っている人に対しては精一杯手を差し伸べる温かさ。困っている者を善悪で断罪せず、多少の無理はしても助ける懐の深さ。そんなところに人間という存在の中の希望が見えてきました。

 

子どもたちが"親を助ける"という目的に迷うことなく疑いをはさむことなく一致団結する姿も健気で眩しかったです。

 

ドキュメンタリータッチの映像はリアリティに満ちています。一方で、物語としての作り込みが甘いというか、リアリティを出すことばかりにこだわり過ぎて映画作品としての構成が甘くなってしまった感じも無きにしも非ずですし、中盤、だらけた感じもありましたが、何よりもローサの生に向かうエネルギーの強さには元気づけられましたし、ラストのローサの表情が印象的でしたし、所々、見応えあったことも確かです。

 

一度は観ておきたい作品だと思います。