進歩のない人たち | 池上秀司のブログ

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ファイナンシャルプランニングに関することを中心に、好き勝手に書きます。


以前、不動産コンサルタントの長嶋修さんという方の記事について取り上げました。

変動金利に関するダメ記事 2

一向に進歩がなく、変動金利に関してまたもや不適切と思われる記述がありましたので取り上げます。

日本でも進行 住宅ローンの「マイナス金利」

どこかといえばまずは以下の一文です。

例えば金利が2%上がったらどうなるだろうか?

この手の記事で致命的なのは「2%なったらどうなるかで終わらせてしまい、「2%になるということはどういうことか?その可能性は?」ということが欠落している点です。

何度でも繰り返します。

・変動金利は日銀の金融政策(無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導値)に影響を受けます
・無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導値のゼロ金利政策後の推移は
 0%→0.25%→0.5%→0.3%→0.1%→0.1%~0%
 となっていて、短期間で2%もの変動をさせたことはありません
・日銀は現在大規模金融緩和中
・日銀が金融政策を実施する際は、「物価の安定を図ることを通じて、国民経済の健全な発展に資することをもってその理念とする」と日銀法で規定されている

この前提条件において、「金利が2%上がる」ということの妥当性はどの程度あるのでしょうか。こういった記事を読めば消費者の皆さんが不安になるのも当然ですが、大切な情報が記載されていない欠陥記事ですので、真に受ける必要はありません。

上記一文はあくまで「例え話」に過ぎず(例え話にしても盛りすぎ)、妥当性という面では一切担保されていません。確かに未来は不確定ですから、なにが起こるかわからないということは同意します。しかし、一方で今2%もの利上げを日銀が行う理由は世界中どこを探しても見当たりません。長嶋さんが自分の論調を受け入れて欲しければ、「その2%上昇する根拠」を明示しなければいけないのです(できる訳がないのですが)。

そもそも、金利が上昇し始めたからといって、容易に固定金利へと借り換えができるとも限らない。住宅ローン金利はまず、長期金利に連動する固定金利が上昇し、後になって短期金利に連動する変動金利が上昇する。変動金利が上昇し始めたタイミングではすでに固定金利が相当程度上がっているものとみるべきだろう。

これも何度も指摘してきましたが、そのときには「残高」は減っています。この「残高の減少」という観点も欠落しています。なにより、上記のようなことは散々いわれてきましたが、その長期金利はこの10年でどうなったかは以下のグラフで一目瞭然です。


ずっと下がりっぱなしです。「変動金利よりも固定金利の方が先に上昇する」というのはセオリーで同意します。しかし、その論調通りに考えれば、その固定金利が下がってきたのですから、変動金利は上がりにくいと考える方が妥当ではないでしょうか。

こういった考察を彼(彼女)らはしません。なぜならば、自分達の間違いを公にしたくない、自分の保身を優先しているからです(もしくはただの不勉強)。一方で、過去上記の言説を信じて固定に変更した方達は被害者です。しかし、この論調をはってきた人達は一切その責任は負いません。つまり、無責任だということです。

変動金利に関しては、こんな戯言よりも伝えなければいけないことはいくらでもあります。特に今の時期は大変重要です。3月17日に日銀金融政策決定会合か開かれました。結果は「現状維持」です。そうすると、変動金利で借り入れ中の方の次回金利見直しは4月1日ですが、そこでも「現状維持」という公算が高く、その金利は今年の7月から12月の返済で使います。つまり、「2015年中の金利変更の可能性は低い」ということです。私は以前から同じようなことをいってきました。

変動金利の推移
変動金利の動向

確かに「未払い利息」も大切ですが、そんなことばかり繰り返していないでこういった情報をなぜ今伝えないのか不思議でなりません。日銀の金融政策決定会合が終わった日にツイッターで「変動金利」で検索しても、普段「金利の選び方は?」みたいなことをいっている人達は常に無反応です。もうちょっと真面目に仕事をしたらいかがでしょうか。

2年前の5月に長期金利が一時0.9%台まで上昇し、メディアやFPが「住宅ローンの金利上昇があぁぁあーー」と騒ぎ立てました。しかし、その時でさえ変動金利はピクリともしていません。その時から変動金利を継続している方は、固定に変更した場合と比較して、「少ない返済額で残高が減っている」という素晴らしい状況です。しかも、当時より長期金利が下がってきたということですから、なおさら昼寝継続でいいのではないでしょうか。

そういった学ぶべき事例がたった2年前にあったというのにこの調子なのですから、日本経済(音痴)新聞とそこに登場する似非専門家の住宅ローン指南は、まったく進歩していないといっていいいでしょう。